第17話 草原の狼
6日目の朝
目覚めると朝だった。
と言うか疲れで熟睡していたのだろう。
セーフティーゾーンの外に出ていた。
そして‥
一匹のワーウルフと目があった。
冷や汗が出る。
今日も最低の目覚めだ‥
しかし、何故かどこも喰われていない。
というか襲われる様子も無いどころか、ワーウルフは毛づくろいをして、欠伸までしている?
なんだろう?
俺が見えて無いのか?
いや、目があったし。
何か理由があるのだろうか?
あいつも朝に弱い?
んなわけ無いだろう。
理由があるはず、考えろ。
そういえば、今日は魔獣の皮のマントにくるまって寝ていたな‥
これが原因?
魔獣系に認識されない効果、もしくは同族認識か?
とにかく、起き上がろう。
立ち上がって鉈を構える。
相変わらず気づいてなさそうだ‥
そのまま近づき、鉈で一閃してワーウルフの
首を落とす。
これなら楽勝だな‥
魔石を取り出し殺したのを確認してから肉をゲットする。
このマントがあれば肉の回収も楽そうだ。
少し歩くともう一匹ワーウルフがいたので、目の前でマントを脱いでみる。
あ、戦闘モードになった。
すぐにマントをつけ直すと‥
ワーウルフはキョトンとした顔になる。
状況を把握できていないようだ。
さっくり殺して、次へ。
今度は2匹だ!
しかし、1匹殺してももう1匹は気にもしない。
仲間が殺されても気にしないのか?
試しに、軽く斬りかかってみると、流石に戦闘モードになった。
ガウガウと追い払うみたいなそぶりで、本格的に争う感じでは無い。
一旦隠れてまた行った時は、敵として認識されなかった。
やはり同族認識じゃないだろうか?
正直このマントがあればこの草原もチョロいな。
いかんいかん、また油断しそうだった。
この油断が慢心を産み、死に繋がる。
それに、あのボスにも効くとは限らない。
徐々に近づいているしな。
まずはボス周り半径100mくらいのワーウルフを刈り尽くす。
呼ばれると困るし。
肉は‥
20匹分くらいあるし、魔石のみ回収する。
さて、やはり遠くから見えるだけあって赤い狼はデカイ。
全長で3mくらいのありそうだ。
牛とかサイの大きさくらいはあるが、象程では無い。
近づいて首を落とすのは難しいかも?
どうするかな‥
いつも通り忍び足で近づいて攻撃?
一撃ならなんとかなるが‥
踏みつぶされたり噛まれたらヤバそうだしなぁ。
魔法は?
凍らせたりボムで爆破するには大きすぎる。
弓は、当てるのは楽そうだが毛皮を貫通してダメージを与えられる自信は無い。
やはり近づいて真空斬りか‥
狙いは脚にしてみるか。
首よりは細いし。
ただ、通常あの大きな狼は座っている。
なので脚は狙いにくい。
餌でも出して食べさせてみるか?
ワーウルフの肉は‥
流石に同族はマズイだろう。
カワズモドキは一個だけ残っている。
恐る恐る近づいて、口の前にカワズモドキ焼きを投げる。
あっ!
一瞬で食べた。
動きは素早いな、多分俺以上だ。
体格からパワーも上回っているだろう。
気づかれたら、死ぬな‥
だが、忍び足で逃げようとしたが目の前に回り込まれた。
終わった、そう思った瞬間に威圧的な声が聞こえる。
「まだ食べ物を持っているのか?」
誰が喋っている?
いや、音声ではなかった、テレパシーみたいなものかもしれない。
この狼だろうか?
取り敢えず、目の前の狼の目を見て返事をする。
「カワズモドキは残っていないです。ワーウルフの肉ならありますが?」
威圧感に思わず敬語になってしまう。
「そこいらの雑魚の肉か?それでもいいから早く寄越せ、久々の食い物だからな、いいから早くしろ!」
俺はビビって焼いた肉を5個出して投げる。
狼は一瞬で食べる。
「まあまあか、もう無いのか?」
「焼いてないのならばまだあります。」
「生は不味いからな、じゃあすぐ焼け」
「火を使ってもいいですか?」
「構わんからね早くしろ!」
そう言われて、渋々焚き木を準備し、ワーウルフの肉を焼いて行く。
でもうまくすれば、この狼を仲間にできるかもしれないな。
これはチャンスか?
焼けたら投げる、狼食べるを繰り返し、全ての肉を使い切る。
「もうこれで最後です」
さあ、また食べたいから付いてくるとか、御礼に秘宝をやるとか、代わりに他の勇者を殺してくれるとか、とにかくなんか礼をしてくれ。
「ならば今回は見逃してやるから去れ。」
えっ?
「そんな、肉を出したのに何もないのか?」
「お前は確実に倒せる雑魚敵から何か奪って、それで礼で何かくれてやるのか?我とお前は敵同士、今回はたまたま機嫌が良いから見逃してやるだけだ。攻撃をしてこなかったからな。全く運が良かったな。」
確かにそうだ、こいつにはとても勝てそうもない。
生きているだけでも重畳だ。
火を片付けて立ち去ろうとすると、最後に声をかけてきた。
「一つだけ教えてやろう、赤いボスは別格だから手を出すな。逃走防止の役目を持った最強レベルの守護獣だからな、最低でも50レベルは無いと傷もつけられ無いだろう。まぁ、そこまで行ったらレッドドラゴンが出てくるだろうから詰んでいるがな。」
意外と有用な情報だ。
赤くなければここまで強くないということだしな。
「ありがとうございます」
俺は礼を言って立ち去った。
「ふんっ次はないからな二度と来るなよ」
狼はそういうとまた休み始めた。
狼は追って来なかった。
良かった‥
しかし、またワーウルフ狩りからのスタートか、まぁ狩り自体は楽だから良しとしよう。
先ずは草原のワーウルフを刈り尽くすか。
魔獣の皮のマントの効果で楽勝だしな。
俺は、昼までワーウルフを狩り続けなんとか20匹分の肉を確保したのだった。
そして、レベルアップを確認したのだった。
名前 齊藤縁司
種族 人間
LV9
HP 16/17 up
MP 10/10
Str 10
Vit 11 up
Dex 11
Agi 13
Int 10 up
まだまだ先は長いようだが取り敢えず、全ステータスが10を超えたようだ。
ワーウルフの肉を食べながら、午後もがんばろう。そう思った。
残り19匹分の肉を焼いて、もう一度赤い狼のところに持って行く。
「もう来るなと言ったつもりだが、何の用だ?」
狼は威嚇してくる。
「いや、最後に名前だけ教えてもらえないですか?」
俺は聞いた。
「変な奴だ、良いだろう。我が名はガルム、覚えておくが良い、ついでだ、貴様の名前はなんだ?」
「サイトウです、ありがとうございます」
そう言って今度こそ本当に立ち去った。
ただなんとなく、なんとなく異世界に来て初めて普通の会話ができた気がした。
それがちょっと嬉しかった。
まぁ相手は人間じゃなく、敵モンスターだけど‥
次はどこへ行こうかな。
サイトウは脇目もふらず、先に進む。
そこに新たな敵が待ち構えていようと‥
次回 第18話 南へ向かう。




