俺にとっての転生という奇跡
結果から言うと魔力量は増えていた。
体内で魔力を循環できる時間が1分間から2分間へと変化した。
これは凄いことだと思う。
使い切るだけで魔力量が2倍になったのだ。
この特性は赤ん坊の今しかないものかもしれない。
だから俺は修行僧の如く、魔力量を増やすことに専念しようと思う。
どうせ一日中寝ている位しかやることが無いのだ。
時間を有効に使わないとな...
意外と楽な作業だ。
前世での社畜生活が活きて、こういう単純作業には強いからだ。
魔力を体内で循環しては気絶、循環しては気絶、循環しては気絶...
それを狂ったように何度も繰り返す。
ある時、倍々とはいかずとも増加していた循環時間が1時間から増えなくなった。
少し焦った。
これが俺の限界なのかと終わりが来てしまったように思えたからだ。
しかし杞憂に終わった。
一週間の間、体内循環をめげずに続けていたら順調に増え始めた。
考察してみたが、恐らく俺の魔力消費のスピードが上がり魔力増加の量と拮抗していた期間が増えなくなった時で、俺の魔力消費のスピードの上げ幅より魔力増加の量の上げ幅が上回ったために増加していったと考えられる。
yを俺の魔力量、xを時間と定義したy=x^3のグラフのような形で増加していったと想像してもらえれば分かりやすいだろう。x=0の所が拮抗していた部分という具合である。
そんな感じで俺は魔力増加に勤しんだ。
魔力の限界は1年たった今でも訪れていない。
そうなると体内循環だけでは一日で魔力を消費しきれなくなる訳で、俺は体外に魔力を放出する方法も併用した。
内容は自分で放出した魔力を吸収するということを繰り返すだけである。
それじゃ魔力消費できなくね?と思うかもしれないが、意外に体内循環よりも魔力を消費する。
体内と体外を魔力が移動する時に魔力は恐ろしく減少するのだ。
およそ100分の1程度である。
まだ検証中だが、体内魔力から体外魔力、体外魔力から体内魔力へと変換する変換効率が良くないからなのだろう。
「体外にある魔力を使えれば最強じゃね?」と思って始めたことだったが、世の中そんなに甘くなかった。
そんなに減るならそれだけやればいいだろう、と思う人もいるだろう。
しかし、体内循環はやればやるほど効率が上がっているから続けている。
それにある程度動けるようになって気付いたのだが、この体内循環は身体能力と防御力が上がる。
体内循環で魔力を消費する量によって比例することも分かった。
誰もいない時にハイハイしながら体内循環をしたら、速過ぎて制御できずに部屋の壁に突っ込んだのは苦い思い出である。
防御力も上がってなかったらどうなっていたかと思うと背筋が凍る思いだった。
隠すつもりは無いが、そんなことをしていると怪しまれるかと思っていたのに、全て「うちの子は天才。」で片付けられた。
器が広いのか、頭が悪いのか分からないママンであった。
使用人のナナは流石に訝しんでいたが、俺は元々気にするつもりは無いので放っておいた。
俺の読んだ異世界転生ものではコソコソ隠れて修行しているが、俺から言わせれば、それは愚の骨頂だと思ってる。
そんなの気にしたって、しょうがないだろうと思うのは俺だけだろうか?
ずっと周りに自分の実力を隠すのならまだ分かるが、いつかはバレる、またはバラすことだと思う。
それが早いか遅いかの違いでしかない。
だったら気にして修行出来ないよりも、気にせず修行した方がいいじゃないか。
信頼関係も関係しているというのは分かってる。
しかし、隠すってことはそれだけその人を信じていないと教えているものではないだろうか?
俺は観察してみて、ママンやナナは悪人ではないと信じてる。
これで自分に危害が及んだのなら、それは自分の責任ということで納得できるのでいい。
しかし、自重したことによって、本来守れたものが守れなかった場合はどうだろうか?
後悔してもし切れないとは思わないだろうか?
「あの時、気にせず修行していれば守れたのではないか?」と前世のように後悔するのはもう懲り懲りだ。
俺は後悔したくないから自重しないと誓ったのだ。
自己満足だと思うかもしれない。
それでも、俺は『しない後悔よりする後悔』という言葉があるように努力は惜しまない。
そうでないと転生した意味が無いではないか。
せっかく前世の経験を活かせる転生という奇跡が巡ってきたのだ。
後悔のない人生を俺は送りたい。
それは無理でも納得できるような人生にしたい。
それが俺の願いでもあるのだから...
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