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ソウル オブ ナイト  作者: 古狐さん
3章 世界と龍
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夕日ダイブ その3

 誰よりも朝早く、メルディスはいつも通り日課のパルクールを開始する。


 ただし、障害物や高い場所がないこの村の中ではなく、周りの迷いの森を走り抜ける。


 迷いの森を一定範囲まで制覇すると投影機の場所で立ち止まり、影から黒い猫を出す。


【お呼びですか?】


「ファル君、久しぶり」


【会えなくとも私は影ゆえ、常に一緒でありますよ】


「そうなんだけど⋯まぁいいや。それよりも今日の深夜手伝ってもらいたいんだけど」


【畏まりました。ただ⋯いえ、なにも問題ありません】


「気になるから言ってよ。些細な事でも構わないんだし」


【私に手伝うことはあるんでしょうか? 私が見た物や地理範囲などはすべて誓書に記されますゆえ⋯】


「あぁ、その程度の認識しかないのね」


【っと、申しますと?】


「元々1つの巨大な力だったのを、何千に分裂出来て諜報行動を起こすのが役割と思ってたんだろうけど違うよ」


【そうなのですか?】


「まぁ、単体でいえばそれしかできないけど、ファル君は誓書に関連付けされた悪魔だよ。随分丸くなってるようだけど、折角の強力な悪魔を姿を可愛くしただけで終わらせる事をするわけないでしょ。誓書に記されている人の全てのデータを影にコピーできる。ただし同じデータは写せず、写せるのは影一つに対して1人ね」


【まさか⋯】


「そう、対大軍用兼諜報工作が本来の役目。まぁ大軍戦なんて滅多な事で起こる事はないし、私1人で国家と戦うことはないから使うことはないと思ってたから話す必要もなかったけどねぇ」


【それをあの村を蹂躙するために使うと?】


「えぇ、それしか手がないもの。嫌?」


【クフフ、何を仰られますか! もう今にもはち切れんばかりに気持ちが膨らんでおりますよ!】


「一応、私とも同化してもらうね。カレ⋯操らないと行けない場面もあるし」


【了解いたしました】


 一匹がメルディスに絡みつくと、そのまま全身に巻きつく。


 服もそれに合わすように毛の様に密着し、耳と尻尾も生える。


「じゃあ夜までにはいつでも動けるよう待機お願いね。あと数匹程村に忍びこまして、日付けが代わり次第、決行の合図として発火起こしてちょうだい」


【畏まりました】


 メルディスがこの投影機を誓書に記述させると別の投影機に向かう。


 夢の中、外側からしか見てない夕日の夢の中の投影機を色んな角度から写していくだけで、現実の壊れた投影機の記述が見事に修復していった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今日の出来事が嘘のようだ。


 逃げ惑う村人を助ける事もせずに、一直線に家族の元に走りぬけた。


「姉ちゃん!」


「大地無事だったのね! どうなってるの! 投影機があるから、何かに襲われる事なんてなかったのに!」


「夕日、外はもうダメだ。あの黒い影に倒された人もみんな他を襲いはじめてる!」


「お母さんは?!」


「ごめん⋯駆けつけた時にはもう⋯」


 ウェインが夕日と赤ちゃんの元に駆け寄ると、入り口にまた医者であるお婆ちゃんが入ってくる。


「なにをグズグズしとるか!! さっさと裏口から森に逃げるんじゃ! もう村は駄目じゃ。お主らは逃げ⋯」


 口から鮮血が流れ落ち、腹からは剣が生えていた。


「⋯⋯大地、何やってるの?」


「⋯⋯ぇ?」


 その剣は前面から刺さっており、その持ち手に握られていたのは大地の手であった。


「グボッ⋯にげ⋯るん⋯」


【婆さん⋯俺が旅に出る前に本当は死んでんだよ。なのに生きてるなんて胸糞悪い。さっさと逝けよ】


 腹から剣を抜き、そのまま首をはねた。


「ち・違う⋯俺じゃない、俺が言ったんじゃない⋯」


 剣を落とし、よろめき、震えながら夕日の方を向くと、恐怖に顔を歪めた姉さんがいた。


 ウェインが夕日を立たせる。


 腕から黒い根が生え身体に巻きついていくと、再び剣を取りユックリと大地が近いていく。


【ウェイン、あんたも死んでる。沢山の贄を喰らい悍ましい化け物となってな】


「おれは死んでない! こうして夕日の手を握り赤ちゃんもしっかり抱きしめている!」


【クフフ⋯思い出せよ。姉ちゃん⋯いや、アンタがした業の深さをな!!】


 剣を振るが寸前で止められる。


「ね⋯姉ちゃん! 逃げて!! 俺じゃあ抑えきれない」


「⋯でも!」


「夕日こっちへ!」


 大地とウェインがアイコンタクトをすると、無理やりウェインが夕日を連れていく。


「ウェインさん、姉ちゃんと赤ちゃんをお願いします⋯」


 コクリと頷くと裏口から森へと走って行く。


 立ちつくしていると⋯黒く染まった右腕から黒い液体が落ちていく。


「どうすればいいかなんて分からないけど⋯あんまりだ⋯!!」


 両手でとめどなく溢れる涙を抑えるように屈む。


「助ける為に正しい? これが正しい? 現実の方が地獄じゃないのか! このまま夢の中で終わらしていたほうが!! でも! それでも! 現実でもやっぱり生きててほしいんだ! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 自分の無力さに、これ以上関われないーー先を見る事が怖くなったゆえ、ただ燃え盛る村に響き渡るように泣くしかできなかった。



「はぁ⋯はぁ⋯」


「夕日頑張って⋯」


 夕日達は真っ暗な森を走っている。


 後ろからたくさんの元村人が来ている為、休む暇もなく走る。


 どれぐらい走ったのか分からないが、もう走れなくなろうとした時に入り口が見えた。


「ウェイン⋯ココはないはずよ⋯ここだけはやめよ⋯」


 走ったせいで頭痛が激しいのか、この遺跡の入り口らしきものが影響しているのかは分からない。


「駄目だ⋯。夕日⋯もう囲まれている」


「そんな⋯」


 赤ちゃんも守らないといけない夕日は、選択肢がない為、遺跡の中へとはいっていく。


 遺跡の中は一本道であり中に入ると、黒い影も村人も追ってくる事はなかった。


「追いかけてこない⋯俺たち助かったみたいだな」


「えぇ、でも、朝まで待ってすぐに出ましょうよ」


「いや、それよりも奥に進んだ方がいいんじゃないかな? あいつらが近寄れない何かがこの奥にあるかもしれない」


「だめ!! それだけはやめて!!」


 急な大声に赤ちゃんが泣いた為、すぐにあやす。


「悪い、そうだな。朝までここにいて、朝になったら様子を見に外にいこう」


「私こそごめんなさい⋯。でもココはなにか嫌なの⋯」


「そうか⋯明日も忙しいはずだから今日はもう休もう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「⋯⋯ん」


 赤ちゃんが泣いたので母乳をあげようとするが、目の前の光景に手が止まる。


「⋯何よ⋯コレ」


 ウェインの姿はない。


 その代わりに2つの扉がある。


 バッと後ろを振り向くが、そこには壁しか無い。


 赤ちゃんをギュッと抱きしめようとすると、妙な違和感を感じる。


「⋯⋯きゃあぁ!!」


 ふいに前に落とすように投げてしまったが、ガシャンと音が響く。


「どうして⋯私の赤ちゃんが人形に⋯。ウェイン?! 私の赤ちゃん⋯どこ? どこなの? 返事してよ!! 私を1人にしないで!!」


 再び頭に鈍痛が走る。


 色んな場面が頭に浮かぶ。


「⋯⋯あはは⋯そう⋯そういうこと⋯」


 両膝を地面に着き、腕をダラんとしたまま泣きながら壊れるように笑うと長かった髪がボーイッシュになるように抜け落ちる。


 人形も含め全てが茶色に変色すると砂の様に舞い、キャンプ用のテントが2つと左の扉に何かが引きずっていった跡があらわれる。


「⋯どんなにいい夢を見ていても⋯最後には⋯必ずこの場所にもどってくるのね⋯これが私の罪⋯あはは⋯」


 涙を流しながら、足に鉄球がついているかのようにーー囚人のように足を引きずりながら左の扉へ入っていった。

対大軍用兵器:シャドール

シャドウウォーカーであるファル君の本来の使い方。


疲弊しない、量産は無限に可能、影移動可能という万能兵器。


ただし体力はない為、単体は倒しやすい。

ただ誓書に記された最強クラスは死にやすいだけで性能は高い。


シャドールという名前はシャドウとドールを合わしただけだが、メルディスは意外に気に入ってるらしい。

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