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ソウル オブ ナイト  作者: 古狐さん
3章 世界と龍
42/50

悪女メルディス (中編)

文字数が意外に膨らみすぎて中編となりましたorz

 黒い壁に沈みながらも進んだ先は、普通のダンジョンのように薄気味悪くロウソクがユラユラと揺れて辺り一面を照らしていた。


「な⋯中は至って普通なんだな」


「普通?」

 ビルが少し疑問を持ちつつ聞く。


「いや、ここにくる途中にメイドさんに連れてきてもらう方法も、この入り口の扉に関しても分からない事だらけだったからな。まだ少し混乱しているのかもな⋯」


「あ〜なるほど。メル姉は道具とかならともかくこういう(ダンジョン)の場合は普通だから大丈夫だよ。陥れる罠とか絶対に作る人ではないから」


「そうか⋯! 正直に悪女とか生娘など聞いてはいるが⋯姿が想像できないのだ。ここまで自由に動く女性は会ったことがなくてな」


「まぁ、姿は特にいう事はないけど性格はかなり変わってると思うかも」

「ビル! 余計な事は言わない! 姉様がもし出てきたら私さっさと脱退するからね! それと皆様の考えも色々とあると思いますが、ひとえに言っておきます」

 一呼吸おいて。

「姉様に善悪という概念はありません。性善説でも性悪説でもどちらとも適応しますし、どちらも拒否をします。そもそも性善説というのはですね⋯人は生まれながらにして善であるという考えの論点をーー」


 訳のわからない言葉を永遠に語り始めるアクアは息つぎをする事もなく語り続ける。


「なんかすみませんね。うちのアクアが⋯」


「いや構わんよ」


「まぁ聞き流してていいので、その間にダンジョンの事でも話しておきますね」


「あぁ、よろしく頼む」


「さて、まずはダンジョンは10階まであってそれをクリアーしたら宝箱がもらえる仕組みになってるんです。そして最初に黒い扉をくぐり足を踏み入れたらそのままパーティを組んでる状態になってます」


「けど、ここは英雄技の修練場などではなかったのかね?」


「風打ちの事ですよね? あれは説明がめんどいので省きますけど意味がないので破棄になりましたよ」


「意味がない?」


「えぇ、メル姉がいうにはここで学ぶ程度の風打ちは風打ちにあらず、只の曲芸であり実用性もなく利便性もなく逆に怪我をする元って言ってましたね」


「それはまた大きくでたな⋯。まぁ、中には英雄技を軽く使えるなどと軽視していた輩も出ていたのも事実だが⋯」


「今現在、この遺跡は駆け出しの子が学ぶ為に存在する練習場みたいなもので、名前は勇者の軌跡LV1ですね。因みに命の危険はほぼ無しで更には10回程度なら死んでも生き返れます」


「死んでも生き返る?? LV1ってことは他にも数カ所あるのかね?」


「死んでも生き返る原理は俺も説明は無理です。軌跡に関しては最高LV10まで作るっていってましたよ。武器も防具も凄いのを用意するっていってましたね」


「武防具? それは彼女が作るのかね?」


「えぇ、メル姉は見かけによらず何でもしますからね。例えばコレとか」

 そういって取り出した短剣を出すが、どうみても安物の果物ナイフにしか見えない。


「それを⋯作ったのかね? どこからどう見ても粗悪品の果物ナイフにしか見えないが⋯」


「そう思うでしょ? 実際銅貨1枚で買ったんだけどメル姉が少し弄るとこうなるんです」

 そういって無造作にナイフをそのまま落とすと地面にストンと刀身が見えなくなるまで沈みカチンと持ち手の金具で止まる。


「⋯⋯⋯は?!」

 そのナイフを持ち抜こうとするとスルリと抜ける。

 同じ事をすると刀身が地面に弾き返される。

「どういう事だね?」


「セーフティーロックって言ってたよ。いわゆる安全装置。使いたい場合は魔力をほんの少しだけ通したらいいよ。ちなみに魔力を持ってない人はいないから戦士職でも魔力を少しだけ通せばいいよ」


 再度チャレンジすると、先程みたいに音もなく刀身だけが沈む。


「すごいな⋯この武器は⋯」


「そういっても元は果物ナイフですけどね。原理としては風魔法の言語図式を刀身に刻んでるんだけどワザと間違った式にして入れているみたいなんだ。で、その失敗した図式に魔力を流すと超高速で振動するように暴れるみたい」


「魔法の言語図式? 魔法に言語など⋯さらにわざと失敗するような事など⋯」


「そう言われても俺にも分からないですから直接聞いた方がいいと思いますよ。理解できるかはしりませんが⋯まぁ、そういう訳なので軌跡クリアしたらそういう類の武防具が貰える可能性あります。ちなみにLV1程度は出来て当然らしいですよ?」


「だが、先程は8階で死んだといってたな」


「う⋯。あれは色々と理由があり付き合ってるだけです⋯。本来なら余裕でいけるはず」


「そ⋯そうか」



「で、あるからしてメル姉様に限りは性善説も性悪説も関係ないというわけなのです。まだ説明したりませんがとりあえずここまでで質問はありませんか?」

 独り言のようにずっと呟いていたアクアがやっと一息をつく。


「お、やっと終わった。アクア、にいちゃん達特に質問ないからそろそろ行きたいってさ」


「そう? ならまた別の機会でいいかしら」


「そうしなよ。早くメル姉の所にいこうぜ」


 ーー1階ーー


 道なりに進んでいくと、壁にぶつかり一行は足を止める。


「行き止まり? 道はこれしかなかったよね?」

 そういいながら壁を触ると、青白く光る。


【勇者の軌跡LV1へようこそ! ここは初心者様向けの練習場みたいな場所なのであまり緊張しないように頑張ってください♪まずはダンジョンで1番危ない罠について学びましょう】

 壁に文字が記されていく。

【あ、ちなみに上級者様の方は、初級とはいえ遊び半分でしないようにお願いしますね☆じゃないと死んじゃうよ♪】

 青白い文字が消えると、壁が真ん中から左右に開き、先に進めるようになる。


「どうやらここからは罠の通路らしいですね」

 先程までのビルとは違い少し顔に緊張感を持つ。


「こんな罠ぐらいで緊張するなよ。どこにどうあるかぐらい一目でわかるぜ」

 ヒョロっとした男が一行から前にでる。

「まずはココを押せば壁から飛び出す仕組みだろ?」

 いくらでも対応できると思っているのか遊び半分に押すと、チチチチと絡繰が動く音を出しながら壁からユックリと剣が横薙ぎに出てきたが、あまりに速度が遅く男は笑う。

「ぎゃはは!! なんだコレ。こんな速度で何が切れるんだよ!! なぁ? みんな!」

 そう言って男が振り返り一行を見ると全員青ざめて男を見る。

「な⋯なんだよ。みんな、そんな顔して⋯」

 一行の目線は男の首にあり、そっと手を当てると首に矢が生えていた。

「な⋯なんだ⋯コ⋯⋯レぇ?」

 その間約3秒、チチチチとなっていた音が止まると同時に剣は瞬時に視界から消え、男の首を綺麗に切断して壁の中に消えていた。

「あふぇ? オレのからふぁ⋯ソコにあるんダ?」

 そう言って事切れると、床に飲み込まれていきパーティの中にポンと下から吐き出されるようにでてくる。

「うあ!! オレの!! オレの体がそこに!! え? あれ? オレいきてる?!」

 ビルとアクア以外のパーティは、後ろに先程しんだ男がいつのまにかいた事に更に驚いていると、壁に再び文字が浮き出る。


【罠をもし発動さしてしまったなら、初心向けなので3秒後に動くようにしてます。だから焦らず避けましょう。ただし、その前に矢など飛んできた場合は遊び半分で押したりしないとダメな所にスイッチがあるので以後気をつけるようにしましょうね】


 一行は静まり返る。


「ちなみにこれがメル姉です。きっちりしないとこうなるので緊張感は持った方がいいですよ」

「まぁまぁ、これが初めてだから仕方ないですよね。死の体験もできたことですし、改めていきましょうか」

 ビルとアクアは何事もなかったように進める。


「待て待て待て! なぜ死んでおらんのだ!」


「説明ができないってさっきも言ったでしょう? 聞きたければ直接会うしかないですよ」


「っっ!! 全員なにが起こるか分からん! 気を引き締めていくぞ!」

 

 ーー6階通路ーー

「罠ばかりでしたね。流石に飽きるというかなんというか⋯」


「⋯そうはいっても、冷静に考えてみれば駆け出しの冒険者にはかなりの教育にもなるだろうな。5階分とはいえ罠の種類は豊富で間違いなく経験にはなる」


 通路を歩いていくとパーティの筋肉質な男が膝をつく。


「どうした? 大丈夫か?」


「あ⋯あぁ⋯」

 フラフラと立ち上がり、壁に身体を預ける。


「すまないが、少し聞いていいか?」

 悩んだ末、筋肉質の男はビルに質問をする。


「そのメル姉と言われてる悪女は⋯もしかしてクイーンなのか?」


「クイーン??」


「そうか⋯知らないか。クイーンは動物をかたどった模った面をつけており、長い首巻きに右は短くで左は足まで長いスカートをした黒い服を着ているんだが⋯」


「あ、それメル姉ですね。正直、人が住む街で真っ黒な私服を持ってるのもメル姉ぐらいだし」


「そうか⋯ありがとう」

 

「話はもう大丈夫なのか」


「あぁ⋯もう大丈夫だ。さっさと攻略しよう」

 そう言い立ち直った男の眼には、覚悟を決めたように炎が宿っていた。


 ーー6階行き止まりーー

 壁がゆっくりと開いていくと、目の前に青白く光った小さな女の子が仁王立ちしていた。


【とりま、5階層突破おめでとう! これで埃程度からミジンコぐらいまでは昇格したということだ!】


『あぁん?!! なにいってんだおめぇ?! やんのか?!』

 男共がいい返す。


【教官にその態度とはいい度胸だな! 雑種! 後悔させてやろうか!】


「できるもんならやってみろや!! このチヴぃ⋯」

 最後の言葉まで伝えることもなく天井から落ちてきた壁に頭をぶつけそのまま押しつぶされかける。


【ふん。思い知ったか! お前たちも上官に逆らうとこうなるとその小さな脳みそに刻んでおけ!】


【こらぁ! まだ案内の看板できてないから案内だけお願いしたよね! なに教官気取ってやってるのよ!】


【私に任すという事はこういう事だ! メルとはいえ私のやる事に口を出すことはゆるさんぞ!】


【はぁぁ〜、忙しいのにめんどくさいなぁ〜もう!】


【あ! まて! やめろ! それだけは⋯⋯ぎゃぁぁぁぁ!】

 誓書からのお仕置き電流を流され、青白く光ってた小さな女の子は消え、代わりに女の子が姿を現わす。


【さてっと、とりあえず5階層突破おめでとうございます。ここからはモンスターに追われながらの逃走になります。モンスターを討伐する事は不可能なので、焦らず罠を意識して冷静に逃げてね。7階層からはモンスター戦なので頑張ってください】


「あんた! こんな茶番にいつまで付き合わせるのよ! 私達はあんたに用事があって、しょうもないダンジョンで遊んでる時間はないのよ!」

 女性が吠える。


【といっても、貴女が誰かも分からないだけどね。ただ、この村まで来たなら大地君関係でいいのかな? 勇者関係でいえば国王から認可されてるけどソレ(・・)を踏まえてきてるのでいいのよね? まぁどうでもいいけど、用件あるなら早く最後までおいで。初級用だから簡単でしょ? では、皆さま頑張ってくださいね】

 それだけ言い残し消えていった。


「国王っていったが本当なのかね?」


「そうだけど、絶対に国王も操られているわよ! 謁見の時もだけど礼儀もなく友達感覚に勇者もらっていい? みたいな事いってたんだから!」


「なんと!? それは⋯確かにおかしい。君達もソレは知ってるのか?」


「あ〜うん⋯。確かに国王様にも友達っていうより使う側には見えるね⋯」


「ううむ。分からん事だらけだが、今は一刻も早く女に会いに行くしかあるまい」

 結果、怒りなども含まれ士気高揚の効果になったのである。


 6階層に入り、アドバイス通りモンスターを倒す事はできないが戦う事はできたので、盾役が時間を稼いでる間にシーフ達が罠に数種類のペイントマーカーを付けていく。

 時間差でみんなが後退しつつ、盾役と一緒にいたビルが赤いマーカーのスイッチをワザと発動させモンスター達を妨害しつつ安全にゴールまで辿り着いた。


 ーー7階層ーー

 ゴブリン集団戦。

 ドーム状の部屋に入り中心まで辿り着くと、周囲からゴブリンが押し寄せてくる。

 魔導師達は後衛のゴブリン達を次々と討伐していき、接近してくるゴブリンは盾役が抑え他が呼吸を合わせ迎撃していく。

 それでも飛んでくる矢などは、アクアが水を巧みに操り落とし、ビルは単騎でゴブリン後衛の余りを蹴散らしゴブリン達を翻弄してかく乱させた。



【うっわ〜、姉さん⋯ちとペースが早いっす。今のペースだと、最終まで間に合わないっす】

「ん〜流石に戦闘特化の冒険者達だねぇ。おまけにあの2人がバランス壊してるんだろうね。CとBが多いパーティの中にAがいても平均Bパーティとしてとらえられてるんでしょう」

【で、どうするの?】

「どうしよっかなぁ〜。とりあえず8階層はゴーレム系みたいな大きめの敵で9階層はスケルトンキングにして7と8階層合わした感じでいいんだけど⋯最後は〜、ん〜、どうしようかなぁ⋯妥協はしたくないしなぁ」

 腕を組みながら悩んでいる。

 

【姉さんそんな余裕ないっす。そして今回は文字数の影響でここで終わり次回に持ち越しになりそうっす】


「なるほど! なら次回まではゆっくり考えられるってことね」


【姉さんアクティブすぎてパネェッす!】

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