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ソウル オブ ナイト  作者: 古狐さん
3章 世界と龍
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悪女メルディス(前編)

 騒動から数日が経ち、支配されていた村人も徐々に記憶のがハッキリと統合され目覚めていく。

 生活は出来ないわけでもないが、脳が働いてないように浮ついた感覚が残っていた為、メルディス達は村に滞在していた。


 ただ1番深く支配されていた大地の家は大騒動である。

 母は家がいつのまにか道場に改造されている事に卒倒し、戻そうにもお金のプールはなく、まだ支配されていた方が幸せだったぐらいに落ち込んでいる。


 夕日に関してはいまだ眼を覚ますことはなく、悪夢にうなされているかのように時折暴れる為、手足を縛り、縄をベットの柱に括り付けてなお、身体は勢いよく跳ね上がったり急に気絶する事もしばしばあり目が離せない状態であった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 村の中はミキとヒタリの2人のメイドが積極的にアフターフォローをしている中、メルディスは今回の問題であった遺跡もといダンジョンの最深部で色々いじくり回している。


「ふんふん♪ ん〜やっぱり機械あるといいわね。ダンジョンとかもっと地味に作業して作るだけかと思ってたよ」

【っといっても、コレが特殊なケースだろうけどね。実際は魔力が溜まり溢れそうになったらジワジワと形成されて形が出来上がり、そこに魔物が住み着いたあとにコアから守護者が産まれる感じかのぅ。まぁ誓書に保存されたこのダンジョンは幾らでも複製できるけどね】

「そっか。まぁ今回は色々素材と知識が手に入ったから、また色々やりたい事できちゃったなぁ」

【ウチも今まで漫画しかない誓書がとうとうゲーム機も導入しパワーアップして満足じゃよ】


 少し前に遡る。

 案内人ミミィが誓書に吸収された後、エコーがミミィのハッキング能力などの侵入するための情報に目をつけて自分と統合する一歩手前まで用意し、あとはメルディスの許可のみまで用意していた。


「⋯⋯」

 メルディスが夜に誓書を開くと、肌色に丸まったエコーと紙がゴロンと出てきた。

 いわゆる蛹の状態であり、紙の内容に眼を通す。

【エコーはこの度成長する事が可能になりました。エコーact2を希望される場合は許可をお願いします】

「⋯⋯⋯」

 フッと一瞬微笑むとそのまま不許可を押す。


 蛹が溶けるように誓書に沈んで行くと、ポンッとエコーが言葉にならない顔をして出てくる。


【なぜ! なぜじゃぁぁ!】


「いい事にならないから?」


【oh⋯⋯】


「けど、今回は少し感謝してるからご褒美をあげるわ」


【ほう⋯⋯】


「誓書からゲームを解禁してあげる」


【フゥゥゥ!! マジ女神! act2より遥かに良き事だZE】

 早速やってみようと誓書に潜り召喚すると、レトロなゲーム機がでてきた。

【oh⋯ファミっすか。いや、嫌いではないよ? 嫌いではないけど⋯act2になってたほうがまだ近未来までいけてたはず⋯】


 そんなやりとりを数時間前にしており、今はダンジョン作りに調整をしていた。


「それで、ミミィはどうなったの?」


【ん〜、いい事にはならないからデータ化にして書に記したよ。喰われた瞬間から寝返る事しか考えてなく隙ばっかり探してたし、人格云々よりハイエナみたいにおいしいところしか探してなかったからね。スレイプニルの方はもうデータは完全に喰われてたから、もぬけの殻っていうか鎧しか残ってないから好きに使って大丈夫よ】


「了解。鎧は色々考えてるけど、とりあえず保留としてダンジョンはここから調整していこうかな」


 勇者の軌跡LV1

 推奨人数1〜4人

 推奨LV1〜50

 最深部10階

 到達報酬:武器と防具一式


【まぁいいんじゃない? あぁ、今回のスレイプニルミミィから手に入ったLV方式使うのね】


「ランク別にするのは難しい所があるからね。とりあえず各地を旅しながら軌跡はLV10まで作ろうかなと」


【ダンジョン見る限りそういうのもありかもね。少なくともLV1は良いと思うよ。いかにもチュートリアルって感じはいいね】


「じゃあ、とりあえず演習だね」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「本当にこっちでいいのか?」


 重装備すら軽そうに歩く巨躯の男が数十人の男を引き連れて歩いている。


「えぇ、ツテから確認はとったから間違いはないわ」

 数人の美女が男達を引き連れるように歩いている。


「で、本当に払えるんだろうな? その女さえどうにかすれば巨額な報酬は」


「えぇ、見せたでしょ? その娘も処女だしほしければあげるしまわしていいわよ。その後すべて奪って奴隷に落としてやる」


「女ってのは怖いねぇ〜。まぁ、報酬さえもらえればいいけどな」


(ふん。そんなお金、再び勇者さまの取り巻きにさえなればすぐに集まる。いい男達も選り取り見取りだったあの環境は絶対に返してもらうわ)

 復讐の目を輝かせ、元勇者の取巻きだった女達は村を目指す。


 それから数時間後⋯


「着いたわ⋯⋯」

 全員ゼェゼェと息を切らしながらも村に辿り着いた。

「で、これから⋯どうするんだ?」

「と⋯⋯」

「⋯⋯と?」

「とりあえず⋯今日は休んで明日から動きましょう」

 皆、無言で頷いた。

「とりあえず⋯宿屋に⋯」


『こんばんは、旅の方ですか?』

 メイド姿をした2人が不思議な喋り方で声をかけてきたが、追求する元気もなかった。

「えぇ、すみませんが⋯全員疲弊してまして団体ですがご飯付きで泊まれるところはありますか?」


『大丈夫ですよ。歩けますか? それともすぐに連れて行きましょうか?』

 ⋯どういう事? まぁなんでもいいけど連れていってもらえるならありがたい。

「お願いできますか?」

『わかりました。ではいきます』

 目の前でパラパラとカードを落としたと思った瞬間に、目に眩い光が差し込んできた。


「おや? 新しい人かい?」

『はい。旅人のようで体力が限界のようでしたので運ばしていただきました。宿泊と食べ物をお願いできますか?』

「おうよ。まかせておきな」

『ありがとうございます。では、失礼さしていただきますね」

 こちらに振り返り、そう言った2人のメイドは再び消えた。


「⋯⋯ぇ?」

 何が起こったか分からないまま、全員キョトンとしている。

「あ〜、外から来たなら分かんねぇかもしれんが、少し前までこの村は全員洗脳みたいにされていたのを解放してもらったのさ」


「あのお二方にですか?」


「いや⋯、違うらしいが、ミキさんとヒタリさんは、その人のメイドさんで村の復興に手を貸してくれてるのさ」


「そうだったのですか⋯⋯」


「まぁなんだ、とりあえず寝る場所はあるから、今日はタップリ喰って寝な! 代金なども必要ないから安心しな!」


「あ・ありがとうございます!!」

 当初の目的を忘れて、全員お腹いっぱいに食べて、倒れるように寝たのである。


 翌日、太陽が真上に登りつめるまで死んだように眠っていた一行はようやく行動を再開する。


「さて、昨日はなんでしたが⋯ひとまず我々の目的をはじめましょう」

「っていっても、どうするんだ? 正直、この村の人達にあまり迷惑はかけたくないんだが⋯我々は勇者を騙した悪女がいると話を聞いて動いているのだからな」

「うっ⋯⋯それは⋯そうですが⋯なら、森におびき寄せてから」

「それなら⋯まぁいいが⋯」


 コンコンっと扉を叩く音がする。

「はい? どうぞ」


「失礼致します」

 交互に喋りつつも、自然な口調で聞き取れ二人のメイドが部屋に入ってくる。


「たしか、ミキさんとヒタリさんでしたか? 昨日は色々とお世話になりました」


「いえ、お気になさらずに」

 そういうと深々とお辞儀をする。


「なにか私達にご用でしょうか?」


「えぇ、宿屋のマスターに聞きましたが、勇者をたぶらかした悪女を探しているのだと聞きましたので」


 昨日の食事の時にでも酔って口が滑ったのだろうか? バツが悪そうにお互いの顔を見つめる。


「大丈夫です。争いなどは私達は致しません。むしろ悪女メルディス様の元にご案内いたしますよ」


「どういう考えなんです? 普通に考えてもソレは怪しまれてもおかしくはないでしょう?」

 今からあなた達の主人を倒しにいくと言っているようなものなのに案内するは異質に感じたのである。


「私たちはメル様の言葉に忠実に動くだけですよ。案内していいと言われたので案内をするだけです。探してもよろしいですが、村にはいませんので森を探す事をお勧めいたします。ただ時間がかかるとすれ違う確率もありますので非常に非効率ですが⋯」


 森にいるなら好都合であり、一行は案内してもらう事にした。


「では、参ります」

 そういって黒いカードをばら撒くと瞬時に画面が切り替わる。


「あ⋯」

 魔法か何かも分からないまま瞬間転移をされ、話しかけようにも一瞬でも呆気にとられていた一行に2人のメイドは一礼をしすぐに消えた。


「この場所⋯たしか初代勇者の墓だっけ?」

「昔はね⋯、街の話によると英雄技【風打ち】の修練場にもなっていたっていってたけど⋯」

「入り口らしきものはあるが⋯埋められているな?」

 

 入り口部分は黒い壁があり奥が一切見えておらず、その黒い壁に触ってみようとするとゆっくりと飲み込まれるように沈んでいく。


「うおっ!」

 咄嗟に手を引き一歩後ずさり様子を見たが、何かが起こる事はなかった。


「い⋯一応、入り口らしいな⋯」

「なら、この奥にいるってことなの?」

「そうだろう⋯罠を仕掛けていなければだけどな⋯」

 一行はどうしようか迷っていると、黒い扉が波紋を描きグニョグニョと蠢くように見え、全員が身構えていると、2人のダンジョンが吐き出されてきた。

 

「くっそ〜! もう少しで8階までクリアできてたのに!!」

「そういっても、それまでに9回死んでたんだしクリアは無理だったでしょ」

「けど、なんか楽しいな。死ぬ瞬間は味わいたくはないけど、実戦としては成長してるきがするよ」

「はいはい。あまり死に慣れて軽く感じるのはダメだと思うけど、今回の罰はテストプレイっていってたし、これからやってくる人達の為の微調整だから、もう一踏ん張りしましょう」

「了解! 付き合ってくれてありがとな!」


 ようやくこちらに気づく。


「あれ? ここにいるって事は、にいちゃんとねえちゃん達もメル姉に用事なの?」

「あぁ⋯そうだが⋯」

「こらビル、どう見てもパーティを組まれた強そうな人達にそんな喋り方しないの!」

「え〜、そ⋯むごっ!」

 どこからか飛んで来た水がビルの口に直接入る。

「うふふ⋯失礼しました。メル姉様に用事があればこの遺跡を10階までいかないとダメみたいなので一緒にいかれませんか?」

「あぁ⋯俺らは構わないんだが⋯メルディスという女と話をして場合によっては戦う事になるんだぞ?」

「そうなんですね? 大丈夫ですよ。10階までいけたらその後はお好きになさっていただいて」

 言ってる事に後ろめたさもなく、虚言でもなく本心で言ってるようにしか聞こえず、わけが分からなくなる。

「お前達の姉さんなんだろう! ここは普通は行かせないとかになるところじゃないのか?!」

 一行の1人が堪らず声をあげる。


「あぁ、なるほど。けど、そうした場合は私達が戦う、もしくは捕らえられて酷い目に合うかもしれないですよね?」

「そうかもしれんが⋯」

「メル姉様の場合、そっち(・・・)のほうが怒られそうなので⋯途中まで一緒に行きましょうっていってるんです」


「それはそうかもしれんが⋯」


「にいちゃんもねえちゃんもあまり考えないほうがいいよ。とりあえず目的達成の第一歩としてメル姉と会うまでいくまでは気にしないほうがいいんじゃないかな?」

「もう! ビルはもうちょっと考えて欲しいけどね!」


「まぁ⋯そうだな。とりあえずは一緒にいこうか。が、足は引っ張るんじゃねぇぞ」


「了解!」


 こうして一行は黒い扉の中に一人一人入っていった。


【データー解析完了。システムデータ化完了】

【パーティLV平均40〜50・人数14】

【1人残機10固定】

【難易度普】

【パーティ用のダンジョンへ移行⋯】

【移行を確認。システムオールグリーン】

【ゲームを開始します】


「さてっと、とりあえず実験を開始しながら、微調整していこうか」

 解析した人数分の情報を頭に入れながら、メルディスは青白く光るモニターに映り出される一行を見ていた」

 





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