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ソウル オブ ナイト  作者: 古狐さん
3章 世界と龍
37/50

ソウルイーター

 ーー数年前ーー


「もう少しで、夕日の爺ちゃんと逢えるな」

「うん。ありがとうね。ウェインが手伝ってくれたおかげだよ」

 お互いが見つめ合う。

「いやいやいや、俺たちもいるんだけど⋯⋯目の前で熱々を見せびらかさないでもらえないか?」

「ほんっと初々しいけど、息も合ってるしいいカップルよね。私もこういう彼氏ほしいわ」

「んじゃ、俺なんか⋯⋯」

「ありえないし」

「中層も終わったし、明日はこの2つの扉のどちらに入るか話し合っていこう」

 4人が見つめあって頷いた。


 交代制で休む事にして、先に夕日とウェインが寝る。

「盛った行為はすんなよ。こっちもできるんならいいけどな」

「馬鹿いわないでよ。死んでもいやよ」

 などとたわいない会話をしてがら、就寝した。


「うぅん⋯⋯」

 ふと、眼が覚める。

 周りに人の気配がない。ウェインも他の2人も居なくなっており、静けさが辺りを漂う。

「これ⋯⋯⋯⋯」

 何かを引きずった跡があり、その先には明日決めるはずだった、2つの扉のうち左側へと続いていた。

「そんな⋯⋯ウェイン! 無事でいて」

 なにも考えずに、夕日は左の扉に入っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 リビングデットーーいわゆるゾンビで1番脅威なのは、感染能力があれば感染であり、その次は本能のまま生ける者全てを喰べようとする事である。


 感染能力があるなら、間違いなくこの部屋から出ているわけで、部屋から出ないということは感染以外の何かがあるということである。


 手足を斬る。

 イモムシみたいに身体を使って、喰べようとこちらに向かってくる。

 頭を潰す。

 動かなくなり、青白い焔に包まれると一瞬、その身体の持ち主だろうと推測される人物が奥の方を見て逃げようとするが、直ぐに何かに捕まれ、殺された時の再現なのか死ぬ寸前の断末魔かは分からないが奇声を発して奥に吸い込まれていくと、再びゾンビが1匹生まれる。


 大量にいるゾンビを蹴散らしながら、メルディスは観察を続ける。

「⋯⋯これ、キリがないわね」

 ゾンビを完全に倒すと新しいゾンビなり復活している為、数が減る事はなかった。


 ただし倒した時の青白い焔のおかげで、部屋の全体は掴めた。

 実際、討伐隊だろうか、冒険者のかは分からないがゾンビになり使わなくなった錆びついた武器がかなり転がっていた。


 ならやる事は1つ、その武器をつかって壁に縫いつけるだけである。

 ただし、奥にいる何かが縫いつけられたゾンビを元に戻せると場合はゴリ押ししかなかったが、何かの反応はなかった。


「よし⋯⋯声と臭いは諦めるとしてこんなもんかな」


 奥までいくと、大きな青い炎が大きく揺らめいており、その下にはゾンビを生み出すであろう肉塊が丸く鎮座している。


「⋯⋯これ⋯⋯は⋯⋯」

 一瞬、アクアを思い出す。

 死体のゴミ捨て場なんてモノは、いい事がないのである。

 アクアの時も、呪いや憎しみなどで、徐々に周りの魂すら影響が出そうになっていたが、コレは済んだ後であった。


 次々に生まれるゾンビをひたすら、倒しながら、黒の誓書が使えない状態で、残っていた一丁の銃を取り出し、蜘蛛のカードから鋼糸を極限に細くし硬度を増して鞭のように振る舞う。


 青い炎の下の肉塊を何度か切断すると、炎も削れる様に小さくなっていく。


 徐々に小さくしていくと、青い炎は人型の形に変わる。

 その見た目は20代であり、常に涙を流している様に感じた。

「⋯⋯君、喋れるの」

「⋯⋯アァ、カイホうしテくれたのカ」

「残念だけど⋯⋯。君の名前は? 一体、だれにやられたの?」

「⋯⋯オレ⋯⋯なは、ウェ⋯⋯イン⋯⋯グ! がぁあぁぁぁぁぁぁ!」


 人型に変わってた青い炎は、見えない何かに押しつぶされる様に元の大きな青い炎に戻っていった。

 至る所に磔にしていたゾンビも全て断末魔と共に肉塊の中へと消えていく。

 青い炎が大きな肉塊の中へと沈んでいく。


 巨大な肉塊はムクリと起き上がる。

 巨大な肉塊は身体中、至る所に人型の後が見え、心臓部には青い炎が揺らめいていた。

 肉塊が手を振るうとその勢いにたいして、手から肉体が融合している歪なゾンビがニュルっと出てくる。

「うわ⋯⋯キモい。これが成功してるとは思いたくないけど⋯⋯女の子に見せる映像ではないよね⋯⋯」

 メルディスに関して言えば、単体になる事は、ゆとりが出るのでそこまで脅威とは思わなかった。

 綱糸で腕を切り落とすと、接合部分のゾンビ達が求める様に伸びて直ぐに元に戻る。

「まぁ⋯⋯だよね⋯⋯落として終わりみたいになるわけないっか。なら⋯⋯!」

 錆びついた剣を手に持ち、魔法剣のイメージを持ち剣にファイアを唱えて近距離で腕の付け根に刺す。


 周りのマナがメルディスの役にたつ為、錆びた剣に集まるが、直ぐに剣が崩れ腕の周りを囲む様な丸い炎に包まれ、ボトンと手が落ちると肉塊が奇声を発した。

「よかった。小さな炎で。タイムラグも考えて近距離で刺さないといけないのがめんどいけど、流石に元は肉なんだし焼かれたらそうなるよね」


 手足と頭も焼くと、その身体使えなくなったせいか青い炎が肉塊から出てくると再び人型に変わる。


「さっきの続きなんだけど、誰にやられたの? そもそもここってそういう実験に使える場所だったの?」

「ゆう⋯⋯ひ⋯⋯」

「ん? 夕日って勇者の孫の?」

「ここに⋯⋯いるのか」

「いるよ。いまは別々の部屋だけど」

「アァ⋯⋯ナンダ、アイニイコウトシタラ、イツデモ、アエニイケタノカ」


 肉塊も部屋にある者を全て吸収し、それを糧に受肉する。

「あぁ⋯⋯なんだか、とても気持ちいい気分だ。君も偉大な私の誕生をその目で見られて光栄だろう?」

「あ〜ぁ、魂を弄び過ぎたせいで完全に堕ちちゃったのね。さしずめソウルイーターってとこかしら?」

「ソウルイーター⋯⋯いい響きじゃないか。さて、とりあえずは夕日を迎えにいこうとするか」

「迎えにいくって、どうするわけ? もう原型がない骸に歪な肉がついているだけだけど?」

「はっはっは!! 臆せずになかなか面白いお嬢さんだ。どちらにせよ。やる事は変わらないよ。ソウルイーターらしく、魂を束縛するように咀嚼するさ。まぁ、その前に腹ごしらえに君のを魂を啜ってみよう!」


 遠距離で錆びた剣を弾いて飛ばすがソウルイーターには当らずすり抜け、魔法剣をしても魔法無効化も備えているのか全然効かなかった。

「うわぁ⋯⋯この実験の完成形を見るとは思わなかったわ。ほっんと! 面倒だなぁ⋯⋯」

 それでも、相手は本気で攻撃する気は無いらしく、大雑把な攻撃のみである。

「ほらほら、私に捕まるとそのまま魂を引きずり出すぞ。頑張って避け続けなさい」

(ほんと、前の世界で成功しなくて良かったわ。けどこれで確信した。あの人達もこっちに来てるのね。しかも魔王側で⋯⋯)

 クスリと頬が緩む。

「どうした? 手も足も出ない事から気でも触れたか?」

「あぁ、ごめんなさい。貴方との戦闘中だったわね。別の事を考えてたわ。人間側にいなくて良かったと⋯⋯」

 前の世界では人殺しは法律上引っかかる為、どうしても対立してた親でも殺す事はできなく魔術回路を徹底的に破壊しただけであった。

 まぁ、その後にリフィに殺されたはずだけど⋯⋯あぁ、あそこで殺したのは人に転生させない為だったのかな。

「さて、物理も魔法も無効化されるって事は、どういう風に倒せばいいでしょうか?」

「なんだい? それを本人に質問するなんて行き詰まっている証拠かな? 時でも止めたらいいんじゃないかね? まぁ、そんな魔法をあればの話だがね」

「時を止めるか⋯⋯。そんなもの⋯⋯あぁ、ならアレは効くかしら」

「ほう。ならば、避けはしないからやってみるといい。いい加減、君の絶望の顔が見えないものだからこっちも飽きてきたのでね。それをすれば少しは変わるだろう?」

「そうね。これが効かなければ勝つ見込みないかも⋯⋯」

 その場を動かないソウルイーターの中心部に手をかざし風打ちを撃った直後、【瞬】で背後に回り寸分狂わず同じ箇所に風打ちを撃つ。

「ん? やりたい事とは今の触れたかどうかすら分からない打撃の事かね? ならばとても残念だよ⋯⋯⋯⋯ん?」

 後ろに向こうとしたが、ぎこちなく首しか動かなくなっていた。

「なんだね⋯⋯これは⋯⋯。あんなに殺気も何もない攻撃にこんな威力⋯⋯いや喰らうはずのない私に⋯⋯」

 全力で動こうとしても、錆びついたロボットのように徐々に固まっていく。

「風打ち【四季】の【冬】は流石に効いてるね。これは物理でも魔法でもないもの、原子を凍結ーーいや、貴方の場合はマナって言った方がいいかしら?」

「なにを⋯⋯言っているのだ。そんな事ができるやつがこんな所に」

「動く為に必要な原動力が止まるのだから、ほんとなら、そのまま死ぬんだけど、なまじ強者だから意識だけ残し、身体は動かなくなったのね。けど、大丈夫。貴方の核ともいえる魂ーーウェインだけは、浄化さしてあげる。あとは勝手に時間かけて飛散していくでしょ」

 ソウルイーターの身体に触れ、ゆっくりと核の部分に向かっていく。

「やめろ! やめろ! やめろ! やめろ!」

 目の前の女に恐怖を感じる。

「なら、お前の為に! いや、貴女様の為に働きますゆえ、どうか! どうか慈悲を!」

「それ⋯⋯何回も聞いたから、つい木霊したのね。何百回も聞いたもんね」

 核が浄化される。

「あ・アァぁ⋯⋯。これでラクに⋯⋯なれる。ユウヒ⋯⋯ゴメ⋯⋯」

 その言葉を最後にソウルイーターはただのリアルな石像になった。


 扉を開けると、3人と合流する。

 ただし⋯⋯メルディスとは距離を離れている。

 大地は、口を膨らませ、今にも吐きそうなジェスチャーをし、ビルは近づけれるギリギリの範囲におり、アクアだけは口元にタオルを巻きメルディスに近寄っていた。

 男2人を部屋に押しもどす。

 服を脱ぎ、手頃な場所でアクアに水の魔法を使ってもらい水浴びをしたのである。

(にしても、あの実験といい結構好き放題してると認識した方がいいのかしら⋯⋯まぁ、どうでもいいか⋯⋯どうせ完成させないと私を殺しにくるつもりもないだろうし)

 その傍らには静かに歪な石像が凛々しく立っており、青白い光がとてもゆっくりと飛散し辺りを照らしていた。

風打ち【四季】【冬】

メルディスが編み出した相手を殺す前提に編み出した4つの技の1つ。

原動力の元である物を停止する技。

元に戻す事は不可能であり、この世に形として生まれたモノなら全てを停止または凍死が可能。

霊体の場合、マナを凍結できるがマナ自体は無から生まれる為、ゆっくりと飛散していく。

今回のイーター戦では、凍結後核を失った為、魂の束縛が外れたが一斉に解放すると第2のイーターが連鎖で生まれる可能性もあった為、マナと共にゆっくりと魂の解放も仕組んだのである。


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