遺跡内部
中々思うように執筆時間がとれませんorz
いつも通り朝早く起床して、日課のパルクールをする。
(まぁ、これだけ早朝なら静かなままでおかしくはないかな⋯⋯)
街の1番高い建物に登り、景色を堪能する。
「ん〜⋯⋯あれは⋯⋯」
街の入り口でなにやら話をしているのを確認すると、見つからないよう音をたてずに近づく。
「ちょっとまってくれよ! なんでさっきの奴らはよくて俺らは駄目なんだよ。おなじ商人だぞ!」
「悪いけど、あんたら村の関係者じゃないだろ? なら日を改めて来るんだな」
「ちょっと待ってくれよ。ここの新しい特産品の話を聞いてきたのに、追い返すなんてあんまりだ!」
商人は帰ろうとしない。
「あ〜。うっせぇなぁ!!」
そういうと剣を抜き、商人の首に当てる。
「ひ・ひぃぃ」
「今日はとても良い日になりそうだから、去れと言ってるんだぜ? それでもまだ、特産品目当てならその時は⋯⋯」
商人は腰をガクガク言わしながら、馬車にもどり引き返していく。
「おはようございます」
衛兵が鬼の形相で声の出所を見る。
「あぁ、なんだ。宵宮さんでしたか⋯⋯して? 朝早くにこちらに何か用事でも?」
誰かが分かると、一瞬見せた鬼の形相がすぐさま収まる。
「いえ、たまたま通りかかったので挨拶に寄っただけです。にしても、昨日の夜など昼の活気が嘘のように静かでしたが、いつもこんな感じなんですか?」
「そうですね。私たちは入口から不審者を通さないようにするので、毎日見張りですけどね」
「さっきの商人を帰したのはなぜです?」
「あ〜、見られてましたか⋯⋯。お恥ずかしい。あまりバラしたくはありませんが、不信感があると思いますので⋯⋯少しだけバラします。実は今日の夜、街全員で楽しめる祭を開催予定なんです。なので人数制限をしているのです」
「そうなんですね。けど、私達は今日の夜までいるかは⋯⋯ちゃちゃっとお墓参りを終わらして次の行動に移りたいし⋯⋯」
「そ・そんなこと言わずに、今日の夜にしか出せないとっておきの食材も用意していますので、絶対に楽しんでいただけると! しかも、これはサプライズ予定でしたので、バレたら⋯⋯私はここにはもういられなくなります」
(不信感があるとはいえ⋯⋯いわなきゃいいのに⋯⋯)
「分かりました。とりあえず夜まではいることにします」
「おぉ、ありがとうございます!」
「最後に聞きたいのですが、なぜ? 剣で脅すように帰らしたんですか?」
「それは、商人というのはお金に敏感だからですよ。ここで優しく帰らした場合、別の方向から侵入して特産品を奪い、自分の金にしたりする輩が多いですからね」
「なるほど。ありがとうございます。では失礼しますね」
人に見られたので、隠密パルクールはやめ、普通に歩いて宿まで帰って行く事にした。
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日が昇ると、静けさが嘘のように街が活気づいた。
みんなで朝食をとっていると、夕日がその輪の中に入る。
「おばちゃん、私のもお願いねー」
「姉ちゃん、本当についてくるの?」
「まだそんな事言ってんの? 今日は無理矢理休みをとったんだから行くっていったじゃん」
はぁっと大地が溜息をつく。
「それにね、宵宮さんのその言葉の真実を知りたいのよ。私でもクリアできないのに、本当にできるのかってね」
「まぁ、クリアするのは確定ですけど、行けるとこまでは、ビル君と大地君にまかせるよ。詰んだら私が動くつもりです」
細かい部分などを話しながら食事を済まして出発する。
「あ、アクアはこれ持ってて」
そういうと黒いカードを渡しておく。
「これは⋯⋯分かりました。大事に持っておきますね。にしても、いつもの黒い服にマフラーはしないんですか?」
「うん。ちょっとね。やっぱこの格好は変かな?」
スポーツブラにロングベストを羽織り、ホットパンツにサイハイソックスで決めており、腰の2本のベルトで本を支えている。
「いえ! 新鮮で言葉では表さないほど素敵です!」
「はっ!!!!」
ガクッと膝をつく。
「クレア姫! どうかなされましたか?!」
「い・いえ⋯⋯なにか、とてつもなく勿体無い事が起きてるように感じましたので⋯⋯」
「そ・そうですか⋯⋯。今日も忙しくなりそうですが、無茶をなされぬようにしてください」
「ありがとう。気にはなりますが⋯⋯今日も頑張りましょうか」
ーー大牙遺跡周辺ーー
「っというか、全然整備されてないのね。ほとんど獣道じゃない」
「おじいちゃんの墓自体は街の近くに移したからね。喜んでこの遺跡に入る人はあまりいないんよ」
「けど、今回は現れたのよね? その人達はどうなったの?」
「うーん。遺跡の中で死んだのが私達の考えかな。奥に行けるほどの腕なら罠なども作動しないでしょうし⋯⋯」
「にしても、モンスターとかは出ないの?」
「ここら周辺では、あまり見かけないかも⋯⋯まぁ、油断はできないけどね」
そうこう言いながら、進んでいくと遺跡にたどり着く。
「さて、ついたよ」
シンプルな小さい四角い箱の建物入り口があり、その入り口の前には四角い石碑が建っている。
石碑の上をパパッとはらい、綺麗にすると『Show me what you got.』と書かれている。
「英語だ」
「爺ちゃんの世界の言葉だけど、僕たちではよめないんですが、なんて書かれているんですか?」
「えっとね、得たものを見せてくださいとか、どれ程の物か拝見さしてもらおうかとかだね。まぁ、ここでいえば君達が培ってきた技能を振舞って、私の元まできてみなさいじゃないかな」
「ってことは⋯⋯」
「自分が後世に伝えていた、勇者としての自覚はずっと続いてると思ってるんだろうねぇ」
夕日も大地も肩を落とす。
「でも、廃れるのも分かるよ。正直に、この隔離された狭い世界で勇者が育つわけがない。魔王と勇者のなれ合い合戦なんて、ただの作業だし⋯⋯なによりただの刺激だけ加えてるだけだったのだろうし」
「それって⋯⋯」
「まぁ、とりあえずココを終わらそっか」
ーー遺跡内部上層ーー
シンプルな長く真っ直ぐな通路がある。
「意味もなく長い通路だなぁ」
「ビル君、ちょっとストップ」
ビルがスタスタと歩いて行くので制止する。
「メル姉? な⋯⋯」
こちらに振り向いたベルの直ぐ前に大鎌が振り子の様に出てきた。
『あはは⋯⋯残念♪ 1人脱落かとおもってたのに』
目の前に小さな妖精が飛んでいる。
『初めまして、案内役を任されているミミィだよ♪ これから皆を夢の国に連れて行ってあげるから楽しんでね。楽しんでね』
ビルが戻ってくる。
「早く言ってよ!!」
「いや、いう前にスタスタ歩いて言ってたので、罠解除されてるのかなぁってね」
夕日が、目の前で両手を合わしてゴメンねのジェスチャーをしていた。
『ちなみに罠が発動しているので、難易度はルーレットで決めるからね♪ あ! 心配しなくても大丈夫ですよ! ちゃんとeasyも入っていますので頑張ってねらってください♪」
そう言うと、10メートル先にルーレットが出現し、壁から一本のダーツの矢が出てくる。
「なるほど色分けして分かりやすくしているのか⋯⋯って⋯⋯なんだよ! EXの90%しめてるじゃん。これズリィだろ」
実際、EXが90%、ベリーハード9.99%、easy0.00%の割合のルーレットであり、針の先を綺麗に当てないとeasyになることはなく、更にEXの色の中にあったのである。
『あはは♪ 文句はうけつけていませ〜ん。運も実力の内ですよ」
妖精たちが5匹ぐらい出てきてルーレットを高速で回した後は周りを飛んでいる。
「この針みたいなので、あの回ってるやつを当てればいいんだよな?」
「うん。そうだね。ちなみに回っている文字は見えてる?」
「色はなんとなわかるけど、文字は見づらいなぁ⋯⋯メル姉は見えてるの?」
「見えてるよ。んとね、ビル君は、その場だけで見ずに回転と同じ速度で目で後ろからついて行く様に見てごらん」
「お、見えた」
「『え?』」
夕日を大地も一瞬は止まって見えるが、長く見ることはできなかった。
「はい、そのまま風打ちで弾いて」
「りょ⋯⋯了解」
狙いをすまして、矢を弾いて飛ばす。
「お! ベリーハードにいけそうだ」
そう思った瞬間に周りを飛んでいた妖精が矢の軌道をズラしEXにささった。
『おめでとうございます♪ 最初のステージはEXモードですね♪』
長い通路に、ありとあらゆる罠が発動している状態になっていた。
『はい、この通路を1人でも渡れたら合格デスよ♪ 頑張ってください♪』
「よし、まずは大地君GO!!」
「無理だよ!! これ人が通れるLVじゃないよね?!」
「夕日さんは?」
「私もパス⋯⋯っていうか無理でしょ?」
一瞬アクア見るが、プルプルと震えていたのでスルー。
「最後にビル君。GO!」
「よしきた! 行ってくるよ!」
ビルが風打ちで跳ぶ。
が、大量の罠が行く手を阻み、距離を稼げず罠がビルを襲うが斬られる寸前に【虚空】で受け流し、大量の矢を弾き、そのままゴールまで辿り着く。
こちらを振り向くとビっと親指をたてる。
『え? あ⋯⋯はい。ご⋯⋯合格です♪ では、他の皆様も好きな様に渡ってくださいね』
「え? ちょっとまって! 罠の解除はしてくれないの?!」
『え? 解除するなんて一言でも言いましたか♪? 1人でも渡れば次に進めるだけですよ♪』
「そんな!」
「なるほど、そういうゲームなんだ」
メルディスが前に歩いて行く。
『お! 次の挑戦者ですか♪ 頑張ってください』
ゆっくりと歩いていき、最初の大鎌が現れた瞬間にその根っこの部分まで風打ちで跳び、天井に足をつけ、鎖の根っこを握ったまま下に跳ぶ。
その結果、天井から鎖の根っこが落ち、それに繋がる部分も剥き出しになったとこをを大鎌を回転させる様に弾く。
大鎌は他の鎖やら装置を巻き取る様に回転しながらビルがいた先の壁に突き刺さる。
「よし!」
「メル姉!! 俺の事忘れてないよね?」
「⋯⋯⋯⋯グっ」
間を空けて、親指をたてる。
『なにしちゃってるのさ!! こんなのルール違反だよ!! お前はここで失格だよ!』
「ルール? この面白くもない長い通路を渡るだけじゃないの? 私はルールにそって渡りやすくしただけなんだけど? せめてそのルールやらに壊さない様にお願いしますでも言ってくれないと分からなかったわぁ」
最後は完全に棒読みになっていた。
『うるさい! ここでは案内役の私がルールだ!』
次の瞬間には、メルディスの手に掴まれていた。
「ねぇ⋯⋯? 君って機械? それとも生身なの? まぁどちらでも、いい素材になりそうなんだけど⋯⋯一応聞くね。貴女がルールで本当にいいの?」
『ひゃ⋯⋯』
言葉がでないのか、首を横に振る。
「そっか⋯⋯なら、ルールとか勝手に決めず案内だけしてくれると助かるかな。正直に言えば、こんなゲームしなくて下に行ってもいいのよ。次、失格にされたら、もう関係なく下に行っちゃうかも⋯⋯それでオッケ?」
首を縦に振る。
「よし、じゃあ次にいきましょうか」
夕日と大地は無言で頷いた。
(大地! あんたの彼女なんでしょ? しっかりと制御ぐらいしなさいよ。いつもいつも尻にひかれて!)
(誰がそんな事いったんだよ! 本人にそんな事いったら姉ちゃん殺されるよ! 僕だって10人の女性と一瞬で切り離されて修行地獄に入る寸前なんだよ)
「あ、こんな事で怒るとかないので大丈夫ですよ。悪意のある言葉以外は基本聞き流されますので。ただ修行は確実でしょうけど」
ヒソヒソと喋っていた筈なのに、アクアは会話に入ってきた。
「『は⋯⋯はい』」
その後も妖精達は分からない様に邪魔をしていっているつもりだったが、一行は特に何かを言うこともなく課題をクリアしていく。
ーー遺跡中層ーー
『上層突破おめでとうございます。まぁ上層はEXとはいえ敵もいない罠だけだったのでできて当たり前なんで、そこんとこ勘違いしないでくださいね♪』
口調が嫌味を含んでいる。
『はい、中層もルーレットあるんでちゃっちゃと投げてください。今回もeasyありますよ。あと矢が刺さらなかった場合、ここで一週間程過ごしてくださいね』
「え? 刺さらなかったら、一週間って事は最悪死んじゃうじゃん!」
『1ヶ月ではないので、運よければいきていますよ。本来はここも食事などは持ってくるのが普通なんで持ってきてないのも自分達の不手際と思って諦めてくださいね♪」
ルーレットが再び回される。
が、今回は距離が20メートルに妖精が10匹以上いるのであった。
「ビル君、私が投げていいかな?」
「うん。今の俺のじゃ突破できないからお願い」
『また、お前か。本来は投げる奴を替えるのは認めれないが、もしお前が投げて刺さらなかったら場合、私達が痛めつけていいならいいよ♪ そのパッチリした目玉とか潰したいし、それで死んじゃってもいいならね。もちろん、貴女達全員手出しは無用だよ♪』
「その条件でいいよ」
矢を手に取り、投げるタイミングを計らう。
低い姿勢からサイドスローで、風打ちを使い矢を放った。
下から投げた矢は、10メートルを超えた時点から不自然に上に向きを変える。
『あははっはは♪ これは失敗♪ 失敗♪ これでお前はオモチャ♪』
ルーレット間近にいる妖精以外、外れた矢に興味を出さずにメルディスの方に向かってくる。
17メートル付近に入るとゆっくりと時計周りに矢が流れていき、妖精達が気づいた時にはもう遅い。
1番奥にいた妖精の首に矢が刺さり、そのままルーレットのeasy部分に深く刺さる。
『あ⋯⋯⋯⋯』
「やっぱり血もでてないし、機械か⋯⋯なら1匹は手に入ったし残りももらおうかな」
『おまえぇぇ!!』
「⋯⋯まさか、痛ぶる事や殺す宣言をしていたのに自分達が逆にされたからって、しょ〜もない文句いわないよね⋯⋯?」
『⋯⋯ぴゃ』
メルディスの方に向かっていた妖精はルーレットの方を見ていた瞬間に掴まれて、全て頭を引っこ抜かれることになる。
「やっぱり機械で人型となると、頭から背骨まではセットになるよね」
妖精達は簡単に綺麗に分解されていき、最後には、アクアに持たしていた黒いカードに当てていくと次々に呑み込まれていく。
「で、案内役のミミィさん? あなたはどうする? あれはeasyでいいのかしら? それともお仲間を解体したから失格です? その場合は案内役は必要なさそうなので捕獲しますが」
『くっ⋯⋯い⋯⋯easyで⋯大丈夫です⋯⋯よ♪ さ、では⋯⋯最後まで案内役しますのでついて来てください』
機械であっても、バグなのか本心なのかは不明だが、想定外の事が起こりすぎて諦めように大人しくなる。
『本当は、一定距離毎にモンスターと闘って勝ち進んでいくはずだったんですけど♪ easyモードなので素通りでいきますよ♪』
「⋯⋯⋯⋯」
ある意味同情しているのか、誰も言葉を放つ事はなかった。
足元を見ると、モンスターがこちらを見上げているのが分かる。
本当なら闘っていかなくてはいけない場所を素通りするーー動物園をまわっている感覚としか捉えれなかったのである。
「この下にいる牛男って、ミノタウルスだよね」
『はい、戦闘力も高く、上級者になったばかりの冒険者でも狩れるぐらいですよ♪』
「強さはどうでもいいんだけど、美味しいのかしら?」
「『え?』」
全員の声が揃う。
「あれ? なんか変な事言った? この世界でも牛は食べるでしょ?」
「メル姉⋯⋯牛とミノタウルスは違うよ⋯⋯」
「食べた事あるの?」
「ないけど、どう見ても美味しそうに見えないよね?」
「そんなもの料理したら分からないわよ。う〜ん⋯⋯今やっちゃうと新鮮さを失いそうだし、あとで料理してみようかな」
(だれがたべるのさ⋯⋯)
そう考えながら、中層は下のモンスター達を見ながら歩いていく。
ーー遺跡下層ーー
『はい、ココが最後の扉ですよ♪』
目の前には2つの扉がある。
『では、ルールを説明しますね♪ 1人と他の人に分かれて扉に入っていただきます♪』
「なるほど⋯⋯だから大人しく案内してたのね⋯⋯」
『さすが♪ 頭の回転が早いと理解が早くて助かります♪ 1人部屋は別名、犠牲部屋です♪ 入ったら必ず死にますよ♪』
「だからその1人を、この中から選べって事よね」
『ご明察です♪ じゃあ話し合って決めてくださいね』
「さて、どうしよっか? だれもいないなら私が1人部屋入るけど? よほど滅多な事じゃない限り死なない自信はあるし」
全員が生きて帰るなら間違いなく、その選択肢が正しいのだが、夕日が手をあげる。
「私が1人の方に入るよ」
「ちなみにその理由は?」
「一応、私なら血の繋がった娘だから助かる可能性がある事と、もう1つの扉が安全とは限らないと思うの。だから皆を最後まで守りきれるのは宵宮さんと思う」
「確かに、その可能性もあるねぇ。けど、死ぬかもしれないんだよ?」
「少なくとも、すぐに死なないよう頑張るので、その間に装置を止めてくれると信じます」
結局、夕日の案を採用し、夕日は1人で他はもう一つの方へと入る事になった。
『では、誰かさんがいかないのは残念だけど、私は1人の方に同行して死ぬ瞬間を見ますので、ここでお別れです♪ 皆さん最終地点までお疲れ様でした♪』
扉が自然と開きと青白い光が点灯し辺りを照らす。
中は狭い箱のような形をしており、入ると自然に扉が閉まり、何かが作動する音が聞こえると、ガコンとこの部屋が揺れながら動いた。
(エレベーター? どっちかと言うとゴンドラかしら)
そう考えながら、大地にある確認をとる為、質問をする。
「ねぇ大地君、この修行遺跡で死人は出てたの?」
「いえ、ないです。罠が発動したのも初めてですが、爺ちゃんがこんな事をするとは思えれません」
「だろうね。私も同じ意見」
「え?」
「まぁ、こういう機械ってプログラムという指令が組み込まれてるから、知ってる人ならイジれる人物もいるんじゃないかな」
「⋯⋯それはウチの家族の誰かがって言いたいんですか?」
「ううん。それはないと思う。まぁ、この先に答えがあると思う」
青白い光が点灯し始めると、やがて光は消え、部屋がゆっくりとスピードを落としていくのが分かる。
「なにか聴こえませんか?」
「⋯⋯ほんとだ⋯⋯なんだろ? 風の音? なにか聞こえるね」
近くに対して音が鮮明に聞こえる。
「これ⋯⋯呻き声⋯⋯しかも、なにこの数の声」
部屋が地面に達する事はなく、何かを潰す音が耳に響きながら止まる。
扉の外は、ガリ⋯⋯ガリガリと扉を引っ掻いている音がどんどん増えていく。
「3人はこの中から動かないように、ただ最初に扉を開けてほしいから、私が出たら閉めて死守でお願い。噛まれても感染などは無いと思うけど、一応無傷推奨で」
ビルも大地も真っ暗な部屋を手探りと音で扉を確認する。
「準備はいい?」
「いくよ」
ガコンっと扉が開けると、押しつぶすかのような勢いで、黒い人型の何かが入ってくる。
「風打ち【打】」
一斉に入ろうとした何かは、一撃で色々な部位を飛ばしながら吹っ飛ばされていき、これが戦闘の開始の合図となったのである。
次はもう少し早く更新したい予定です。




