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ソウル オブ ナイト  作者: 古狐さん
3章 世界と龍
35/50

勇者の生まれ故郷

悩みに悩みました。

結末も、途中の物語も、改良はありすぎて困るほどに⋯⋯


けど、とりあえずはいまの考えで進めてみようと思います。

「お墓があると思ってたのはあるけど、なんで急にお墓まいりなのかしら?」


 道中の馬車の中、桐龍院大地に質問をする。

 宵宮枝葉の話は家族に伝わっているの可能性はあるだろうけど、お墓に行ったからといって会話はできないし何かの遺産を渡したいとかなら拒否をしたい。


「それは⋯⋯行ってみたら分かると思います。そもそも爺ちゃんが住んでた所はそこまで大きくはなく、通常では入れないしようになっていて、外界と少し距離をおいてるのです」

「通常入れないって事は、結界の類か迷いの森みたいに地形を利用としたものなの?」

「どちらと違います⋯⋯爺ちゃんと同じ世界なら分かると思うんですが装置と言われるものです」

「装置⋯⋯って事は、この世界にも機械があるってことなの?」

「きかいってどういうものなのですか?」

「俺もそれ聞きたいかも」

「簡単な物で例えたら、私の銃が機械よ。引金を引いて撃発。それにより、撃鉄が落ちて撃針を押し出し、薬莢底部の雷管を叩き爆発後に、先端の鉄が飛んでいくって訳。他にも温冷機械や戦闘だけでなく生活に使える機械も多いよ」

「すごいんだな。きかいって⋯⋯」

「そういう機械はありませんが、景色の歪みを発生する装置で辿り着くことが難しく、あとは爺ちゃんのお墓につかわれています」

「お墓に機械⋯⋯? って事はなに、一種の迷宮でも造ったとか?」

「⋯⋯本当に爺ちゃんがいた世界の人なんだ⋯⋯。その通りです。墓参りだけなら迷宮前にあるのでそれでいいんですが⋯⋯爺ちゃんと話すなら、その迷宮をクリアーすれば出来るんです」

「それって大牙君の記録装置でも残ってるって事なのかな? ⋯⋯正直⋯⋯嫌な感じしかしないけど、誰でも使えるの?」

「誰でも使える様にすると、大変な事になるので昔は⋯⋯その⋯⋯厳選はしていました」

「昔ねぇ⋯⋯そういえば、我間君も教えてもらったっていってたなぁ。ちなみに自分の故郷にはいつから帰ってないの?」

「5年ぐらいでしょうか⋯⋯」

「ふ〜ん。って事は大地君は親から期待はされてないって事なのね」

 ビクっと反応する。

「なるほど、5年も好き放題できるなら、間違いなく大地君以外の人に目がいってるのが普通だもんね」

「その通りです⋯⋯。姉ちゃんの方が期待されています⋯⋯僕では姉ちゃんのサンドバックになるぐらいしか、取り柄がなかったです」

「う〜ん。どうも大牙君といい、君達といい、勘違いしてるなぁ。ちなみに君のお爺ちゃんも昔は弱くてねイジメられていたよ」

「え? あの爺ちゃんが?」

「うん。それはもう情けないぐらいにね。それがこの世界にきて頑張ったのよ。勇者に必要なのは実力なんかではなく強い心。だから、どんなに強敵に心が折れそうになっても、立ち向かった君のお爺ちゃんは皆が認める勇者になったんだよ」

「なら、僕でもなれるんですかね?」

「なれるんじゃない? 大牙君の血を受け継いでるんでしょ?」



 それから林を指示しながら進むが一向に村に着く様子がなかった。

「おかしいな⋯⋯順序は間違う訳ないんだけど」

 大地は地図を何度も見直している。

「ふむ。すこし休憩しよっか」

 そういって休憩に入り、各自休む。

 メルは黒猫を数匹呼び出し、辺りの散策を指示すると、休憩が終わる頃には結果がでた。

「ここから南東の方に村らしきものはあるよ⋯⋯」

「それが僕の村なんですか? どうなっているんです?」

「話を聞く限り、大地君の村のイメージではないかな⋯⋯まぁ、行ってみたらわかるよ⋯⋯」

(にしても、コレはなんか不自然な⋯⋯)


 ひとまずその村に情報を得ようと向かう事にしたのだが⋯⋯村が見えた瞬間、大地は全力で走り、村の中までいくと両膝を地面につける。


「な・なんだよ⋯⋯これは! 俺の村がどうしてこうなっているんだよー!!」

 自分の生まれ育った村が変わり果てた様子を見て思わず叫ぶ。

(う〜ん。なんだろう? 違和感を感じるんだけど気のせいかな⋯⋯)

「⋯⋯とりあえず、注目浴びちゃうから大声はやめようか⋯⋯」

 先程、大地が言っていた事が全て真逆になっていたのである。

 人口も多く、大いに活気だっており、誰でも行き来できる様に道路まで整備までされていた。


 実家に戻ってみると、まずは、その巨大な家に驚き、その隣には道場ができており、看板には英雄技指南所と書かれている。

「いらっしゃい。英雄技指南所だよ。新規様かい?」

「な・なにやってんの母ちゃん」

「あぁ? ん? おや、5年も音沙汰ないから死んだと思ってた息子が帰ってきたよ。で、その後ろには、また新しい女の子かい」

「初めまして、宵宮枝葉と申します。大地さんと街で出会い、大牙君のお墓まいりに来て欲しいと頼まれましたので伺わしていただきました」

 営業スマイルで喋る。

 すこし間が空き、ジロジロと睨まれるように凝視してきたが、パッと切替わる。

「先祖の墓は墓荒らしに荒らされて、罠が発動しているから封鎖したよ。死んでもいいなら勝手に行ってきな」

「墓荒らしってあそこに?」

「そうさ、その時に村の備蓄もなくなったから、こうして村を繁盛させる為に隠れ里はやめたんだよ」

「なんて事するんだよ! 隠れ里は爺ちゃんの願いだったじゃないか!」

「5年も放ったらかしにしてた馬鹿に文句言われる筋合いはないよ! そんなもんは勇者になって全て手に入れてから言え!」

「く⋯⋯」


 ガラっと、奥の扉が開く。

「ふぅ、講習終わりっと、次が始まるまでちょっと休憩するよ」

「あいよ。次は1時間後だよ」

「りょうか〜い。ん? あら大地? 帰ってきたんだ?」

「夕日姉ちゃん⋯⋯」

「なんだ5年も経過してるんだし、多少変わってるかと思ったら全然じゃない。まぁ、私にも勝てないし勇者になっているとは思わないけどね」

「あれから、俺も大分強くなったさ!」

「ふ〜ん、ならすこし相手してよ。どうせ休憩なんだし」

「え? それは⋯⋯」

「遠慮なんかしなくていいって。さぁ、やるよ!」

 鍛錬場まで引きづられていく。


「さて、相手が参ったっていえば終了でいいかな?」

「⋯⋯」

「諦めて相手してよ。強くなったんでしょ?」

 そう言われ、しぶしぶ戦闘をするが、大地がサンドバックにされて戦闘は終わる。

「あんた⋯⋯更に弱くなってない? 勇者って言うより完全なサンドバックじゃない⋯⋯て、聞こえてないか」



 気絶した大地をビルが背負って、飯屋に入る。

「めちゃくちゃ女の子と遊んでたから取り巻きはどうしたのかな? そうおもってけど、そういう訳だったんだね。弟が迷惑かけてごめんなさいね」

「いえいえ、問題ないですよ」

「けど、ビックリしたでしょ。勇者と言われてた時代だったら凄かったんだけど、今では没落寸前だったからね。立て直す為に使えるものは使わしてもらったのよ」

「⋯⋯ビックリはしましたけど、子供達が世代交代すればある程度、価値観は変わるだろうし、仕方ないですよ」

「ふーん、結構冷静なんだね。なんか、もっとお爺ちゃんを頼るかと思ってたのに」

「ふふ、それはないですよ。世界に勇者の名を轟かした時点で貸し借りはないですから。大牙君は十全にしてくれましたよ。まぁ、私の事ばかりで、後の事考えてないのは、マイナスですけどね」


「う・う〜ん」

 大地が目を覚ますと同時に次々と料理が運ばれてくる。

「大地が迷惑かけたお詫びじゃないけど、お昼は私が持つので、どんどん食べちゃって」

 美味しそうな料理が目の前に並ぶと、ビルやアクア、大地も冷たい水を飲み目をハッキリと覚まして料理を食べ始める。

「美味い!!」

「うん。美味しいね」

 食をどんどん進めていく中、メルは一向に食べようとはしなかった。

「あら? 前の世界が好きな味わいだと思うけど、お腹は減ってない?」

「そういう訳じゃないですが、ほんの少しですけどこの村に違和感があるんですよね。なんていうか、その歓迎されてないような」

 空気がピリッと変わる。

「なかなか鋭いんだね。流石はお爺ちゃんの憧れていた人って訳ね。なら正直に言ってあげるわ」

 椅子から立ち上がる。

「お爺ちゃんが憧れた宵宮枝葉さんに、この村で取れた新しい特産品である樹霊の種を使った料理の評価が気になって、ソワソワしてるだけだよ!!」

 熱く語る一方、メルは引いた。

「いや、そういう訳では⋯⋯」


「メル姉も食べてよ! ほっんとうまいよ!」

 そう言ってビルが、その食事をメルの口に入れる。

 吐き出す訳にもいかず、中身を味わうようにモゴモゴして食べる。

「⋯⋯あら、意外に美味しい⋯⋯」


「ふぉぉぉぉ!!」

「やったぜ!!」

「完全に特産品としてこの実は出せるな!!」

 周りの村人達が、立ち上がり喜ぶ。


(あれ? 感覚が変わった⋯⋯? 敵対視が完全に消えたって事は本当に料理⋯⋯?」


「そういや大地、あんたお爺ちゃんの墓参りいくって? なら私もついて行ってあげるよ」

「え? いいよ。こなくて⋯⋯」

「けど、罠が発動してる中、戦力は少しでもほしいんじゃないの?」

「う⋯⋯っというか、罠ってそんな危ないの?」

「当然でしょ。お爺ちゃんがメルちゃんに伝えたかった事があるかは知らないけど、大事な何かを伝えたいんだろうし、迷宮を先に進ませないようにする為の仕掛けだよ?」

「って事は、夕日さんも奥に何があるかとかは分からないんですか?」

「恥ずかしいけど、そうなのよ。迷宮は練習エリア・実技エリアがあって、訓練として迷宮で学んだけど、その先の実技以降は途中で無理だと判断して投げちゃった。実力も勇者に近づけないと駄目って事なんだと思うから、いま私がどれだけ通用するかやって見たいの本音かな」


(ふーむ。そこまでするって事は、余程世間に出せない代物って訳かなぁ⋯⋯もしかしたら⋯⋯私の知らない、この世界の未知なるモノかもしれないって事か⋯⋯)

「よし、本当はパーティの強化にいいと思ったけど、明日でクリアーしよう!」

 メルの眼が輝いた。


「あ、メル姉の目が変わった」


「ヤル気を出してるのは見たら分かるけど⋯⋯そんなに簡単なものじゃないよ? 罠だって作動してる状態なのに」


「あ〜余程の事がない限りは⋯⋯多分大丈夫です。まぁ、明日になったら嫌でも分かりますよ」

 ビルは止める事は出来ないと知っているので、相手に信じてもらえなくても、こう言えばいい事がいつの間にか身についていた。


「そ・そうなの?」



 その夜、いつも通り黒の誓書を開くと異変を感じる。

「あれ? 文字が映らない。エコー? これはどうなってるのか分かる?」

 返事は返ってこない。

 あれこれ考えていると、外から視線を感じ、直ぐに窓を開けて外を伺う。

「気のせい⋯⋯? いや、違う⋯⋯」

 この村に入った時の違和感はやっぱり正しかったのだろうと確信する。


 先程まで夜でも活気に溢れていた街は、いまは誰1人として外にはおらず、真っ暗な視界に何一つ音がなかったのであった。


「あ〜、これは想像通りなら⋯⋯かなりヤバイかも⋯⋯えっと、昼に出していた一丁の銃とその中には木霊と蜘蛛のカードか⋯⋯。銃の弾はこの間作った試作弾6発と空弾6発⋯⋯」


 文章が一切映らない黒の誓書を、何度かいじるがやはり反応はない。それでもいつも通りの手つきでいじるのをやめなかった。

 ページをめくっていると栞代わり使っていた、緊急用の移動カードがポロリと地面に落ちたので拾う。


 その黒いカードを見て考える。

「3人⋯⋯守りきれないかもしれない⋯⋯」

 頭の中でいくらかシミュレーションをしてみるが、本音がつい溢れてしまう。

 気晴し程度に自由に使っていい紙に、22の数字を書き簡単に混ぜて、定位置に配置すると1枚ずつめくっていく。

「あ〜もう、やっぱりパーティとかやめたほうがよかったのかしら⋯⋯」

 ベットに横になりながら、最後まで考えてそのまま眠りにおちていった。

 そのままにしておいた紙は、現代の位置に逆位置に16番が書かれており、未来の位置には13番が正位置として置かれていた。

昔、タロットカードやってたんだけど、ハマってた時に旅行とかでやってほしいと言われた時に、家にカード置いてたら、メモ帳使ってこういう風にやってた事あります♪


こんかい、久々に思い出したので使ってみましたが、この話@3〜4話程続くかも。


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