VSチェルノ
閉会式が済んだ後、色々と手回しをして、後はみんなと過ごした。
マーリンことユリは、一度故郷に戻って調べたい事ができたといい、名残惜しみながらも帰っていった。
ビルとアクアはさっきまで一緒にいた。また風打ちの応用を鍛えつつアクアとクエストをしていくとの事。ただ、無様な負け方をした罰は後でと伝えておいたら泣きそうな顔をしていた、
そして現在、流石に疲れたのかクレア姫は隣で熟睡しており、私はずっと網に獲物がかかる事を待っていた。
「クロノくん⋯⋯」
黒弐と白華ーー前の世界で呼んでいた私の家族であり一緒にいてくれた親代わりであり、戦闘の師匠と技術の師匠と呼べる人である。
ミキとヒタリと同じで魂であるが、私を拾ってくれた魔術師が人形を素体として現界さした。
ただし本当に会話もなく、ただ、命令を忠実にこなすだけの人形を現界したつもりが、2人とも意識を持っていたことにより、私は心が折れず育てられる。
それが黒弐と白華なのであり、2人がいなければ、私はこういう風に生きてはなく、もしかすると拾ってくれた魔術師の実験の為、供物になっていたのかも知れない。
ちなみにクロノ君が戦闘全般、白華は家事や気配の消し方や虚のつき方、罠などで技術担当していた。
戦闘訓練みたいな事をはじめてした後に、どうしてこういう事をするのか聞いたんだけど、返事は『みんながしてる当たり前の事』と聞いて納得する。
そして、いざ学校にいった時に体育の時などにみんな本気ではなかったので合わしていたんだけど、その事を質問すると『それは加減の練習と相手に自分の実力を見せない為』と言われたので納得する。
その後から集団で1人の男子生徒をお使いに行かしたり、頭を叩いたりしてたのを何回も見かけるので止めさしていくと他のクラスの子に呼び出しをされる事になる。
1番初めは3人。全員顎をコツンとするだけで眠り、次は7人くるがこれも撃退。
最後は30名ぐらいで、武器も所持していたが⋯⋯これも撃退して初めて気づく。
男の子にお願いしていただろうと思われる後ろで高みの見物をしていた女子生徒に話を聞こうとするが、化物と言われ尻尾を巻いて逃げた。
それをクロノ君と白華に報告したら、クロノ君は笑い、白華はクロノに対して大激怒した。
本来の表舞台では戦闘能力は必要ないとの事、ただ拾ってくれた魔術師との対決とソレ以外で身を守れる様にしておきたかったと白華に教えてもらった。
「ふふ⋯⋯なつかしいなぁ」
過去を思い出し、思い出に浸る。
(主人⋯⋯ご想像通り不可思議な現象が起こっています)
「どんな? ファル君の眼では解析できない?」
(はい⋯⋯申し訳ありません。現象というべきなのか黒服の人物が12人ほど時計の様にシェラザードを中心に歩いて離れております)
「ふむ。一時的に君の力を限定解除するから12人一斉に同じタイミングで攻撃できる?」
(可能ですが、ただ攻撃すればよろしいので?)
「うん。一撃で全力を込めて攻撃していいよ」
(それは⋯⋯相手を殺害の可能性がありますが⋯⋯)
「うーん、それはないと思う。そしてね、もし殺されたりしたらその中で不可思議事が起こった人の所に連れていって」
「⋯⋯了解いたしました」
相手からは黒猫にしか見えていない為、通り過ぎた後、悪魔の姿に音もなく戻り、同時に一斉に攻撃した。
「な⋯⋯」
一斉に攻撃したが、一斉に消滅した。
後の言葉もなく、驚く事もなく消える。
「⋯⋯ん? 化け猫が襲って来たから撃退したが、女性になった。あぁいや、たしか闘技会の優勝者か」
「こんばんは、いい夜ね。少しお話よろしいかしら?」
こうして2人は会合した。
「まぁいい夜だな。こんな遅くに帰ろうとしたら優勝者から声かけられてナンパされるんだし。で、一体なんのようだ?」
そういった瞬間に左頬に衝撃が入り飛ばされて転がる。
「とりあえず、一撃なぐらして貰ってもいいかしら?」
「⋯⋯いたいな。ってか、それ普通は言った後に実行するべきじゃないか⋯⋯?」
何事もない様に立つ。
「あら? そう? コレで思い出してくれた? クロノ君、どうしてすぐに迎えに来てくれなかったの?」
「ん? ちょっと待て。人違いじゃないか? 俺の名前チェルノだっつーの」
「そんな訳ない! どれだけ一緒にいたと思ってるのさ。そんな不思議オーラー出してるのに、見分けつかない訳ないじゃない!!」
再び攻撃をする。
「うわっと、黙って殴られる訳ないだろ? ってかまじで勘違いだからとりあえず落ち着こう。なっ!」
「ぐぬぬ⋯⋯記憶蘇るまで殴るんだから動かないで!!」
「無茶言うな!!」
風打ちを組み込んだ技すらも使って追い詰めていく。
「ほら見ろ! 私の風打ちを簡単にいなす人間なんてそういるもんか!!」
「だ〜か〜ら〜、落ち着けっての。そのクロノとやらにはあわしてやっから」
「⋯⋯どういう事?」
そういうと、左眼だけを開くとルベライト色に輝くと雰囲気が変わる。
「⋯⋯⋯⋯はぁ、相変わらずだな。枝葉」
そこには確かに宵宮枝葉をしっている人物がいた。
「⋯⋯クロノ君?」
「あぁ⋯⋯前の世界からこっちの記憶に統合されたが、今の俺は間違いなくお前を知っている俺だな」
「なんで身体乗っ取られてるの!! そんなもん取り返してさっさと迎えにきてよ!」
「乗っ取られる? あぁ、そういう見解か。家族ごっこだけは、まだ頭はゆるいままか⋯⋯」
「ごっこって⋯⋯本気でいってるの?」
「当たり前だろ? あと身体は乗っ取られてはいない。こちら側がそもそも本当の俺だ。だから本体に意識はまかしてるだろ? 俺の人格が残るのは誤算だったがな」
反論ができない⋯⋯ジョークなどをいう性格ではなく歯をギリっと鳴らす。
「白華の方だってそうさ。お前の元にいってないだろ? ならそれが答えだ」
「なら⋯⋯なんで、その記憶のままでいいから迎えに来てくれなかったのさ⋯⋯少なくとも利用目的でも私なら役に立つんじゃないの?」
拳を強く握りしめ震える。
「はぁ、なぜ敵対してるやつを迎えにいかないといけないだ?」
「⋯⋯敵対?」
「もういいだろ? あとはまかせる」
もう片方の目も開く。
「そ♪ 今期の魔王は俺だよ。だから人間とは敵対関係ってわけ」
「それは詭弁でしょ? 実際そっちに行ったエルバなんて元は人間じゃない」
「あ〜そんなやつ沸いてたな。そうだな、あいつの代わりに言うわけじゃないが、イージーモードを更に超イージーモードにしてどうすんだよ。好敵手がいた方がまだ少しは楽しいだろ?」
「⋯⋯⋯⋯そう、ならとりあえずあんたとっ捕まえて、クロノ君とりだして拷問してやる」
その眼は間違いなく敵対心を持つ。
「いい眼じゃないか! そうそうココで俺を殺せれるなら今期のゲームは終了するよ? 頑張ってみたら?」
戦闘が始まる。
風打ちも加減なしで打ち、相手は剣一本で対応する。
「なぁ? こんなもんなのか?」
頬に思い切り蹴りを入れ、防御もせず顔で受け止める。
「もう一度言うが、おれは人じゃないぞ?」
そのままメルディスの腹に手を当てるとそのまま風打ちを打つ。
【虚空】で衝撃をゼロにするが、そのまま手を引っ込めず、服を掴み強引に投げる。
「ん〜、なんだかな。呪いのせいか、それとも無傷で俺を捕えるつもりなのか、考え甘すぎないか? まぁ現実ってわけじゃないが多少教えてやるよ」
片手剣を地面に刺す。
「黒の書『夜の章』」
刀身が黒く染まる。月の光すら刀身に写さず、その剣はただ深淵の様に真っ黒である。
(嫌な感じがする)
手を本にあて、長銃であるミラを取り出し構える。
基本スナイパーライフルのように使う用途で威力が激増するため使う機会がなかったのだが、初めて取り出す。
「お、いい銃じゃないか。撃ってみたらいい。なに、避けはしないさ」
弾を込め、風打ち乗せて撃つとその反動でメルディスは後ろに後ずさる。
「なかなかいい威力じゃないか」
(この人一歩も動いていない⋯⋯)
実際チェルノは一歩も動いてはいないのだが、その銃の衝撃波はものがたるように、地面は抉れた部分は後ろまで続いていた。
(これは⋯⋯あの剣みたいね、衝撃を受けるより吸収⋯⋯いや無効化? 虚空に似てる気がする)
「まぁってなわけだ。さてじゃあコッチからもいくぞ。一応加減はしてやるよ。せいぜい頑張って殺してくれよ」
風打ち【瞬】をつかっての間合いの詰め方、攻撃の仕方、フェイントの仕方⋯⋯全て、お互い知り尽くしてる昔の戦いだった。
「な⋯⋯んで、昔の戦い方するのよ」
「さぁ、なんでかな? 体というよりかは心がそう思っているんだろうな」
「く⋯⋯そぉ」
認めたくないけど!! 認めたくないけど⋯⋯この人が言ってた事が事実と痛感してしまう。
いままで過ごしていたクロノ君は⋯⋯この人の欠片だったのだと⋯⋯それでも⋯⋯迎えにきてほしかった! 家族として師匠として私を迎えてほしかった⋯⋯。
隙が生まれる。
が、追撃はされなかった。
チェルノは頭を掻く。
「なぁ、あんたその書はつかわないのか? 勝負すらする気もなく、捕まえる気もなく、何がしたいんだ?」
「⋯⋯⋯⋯」
いつの間にか頬に涙が伝っていた。
「そうか⋯⋯わかった」
それを見たチェルノは少し何かを考えた後、自分の左眼に右手を差し込むと、動かしながら引っこ抜く。
「このままじゃぁ、つまらな過ぎるから少し楽しませてもらう」
そういって、右手を開くとルベライトの宝石が輝いており、チェルノの左目は再生はしていたが色は黒く染まっていた。
「この宝石がお前の欲しがっていた奴の心であり情報でもある」
そういってゴミを捨てるように前に放り投げる。
「護れるなら護ってみせろよ」
メルディスには何をするか分かっていたが、考える事もなく一直線にその宝石を受け止めにいく。
チェルノの全力の一撃と、メルディスが宝石を取ろうと跳ぶ。
「じゃあな」
メルディスが宝石を受け止める前に、全力の剣撃の圧で宝石ひびが入り砕ける。
砕けた宝石が、スローモーションのように手に収まっていく。
離脱も攻撃も何も頭にはもうなく。
ただ、その砕けた宝石を胸にもっていく。
【この馬鹿!!!!】
エコーが、全力で天衣でメルディスを包み込むが、護れる訳がなく多少の軽減はしたが、絶大な威力の前に天衣は破け、衝撃で吹っ飛ばされた。
「ふぅ、多少はスッキリしたな。って、まだ生きてるんだな! まぁなんだ、思ってたより楽しめたな」
フラストレーションを発散したチェルノは少し機嫌が良くなる。
(あぁ、私⋯⋯まけたんだ)
身体中が激痛に蝕まれる中、その家族を失った心の方が辛かった。
右を見ると、天衣がボロボロになっており、エコーの姿もない。
左を見ると、真っ暗で何も見えずにいた。
(左目⋯⋯潰れたのかな⋯⋯)
どうでもよかった。
ただ⋯⋯クロノ君の仇だけはしたいと願う。
【黒の誓書を使用しますか?】
そう頭に響く。
【黒の誓書に全て委ねますか?】
それであの人を倒せるなら⋯⋯。
【全てを引き換えに黒の誓書に力を求めますか?】
それは⋯⋯⋯⋯。
「ん? なんだ? 何か感じが⋯⋯」
ヒュンと音が聴こえたとおもったら、右腕が飛ばされそうになったので左手で右腕を掴む。
黒い線はそのままメルディスを引っ張り、チェルノにぶつけようとする勢いで間合いを詰め、侵食された左手で相手を斬ろうとするが、チェルノは左手で持っていた右手でガードする。
「⋯⋯ここにきて、ようやく書をつかったのか。じゃぁ第2ラウンド開始だな!」
左手で右腕を身体にくっつけるとジュクジュクと右腕が元に戻り、数回握りしめると再び剣をとる。
「⋯⋯⋯⋯」
黒く染まるメルディスは、意思のない人形の様に、黒いモノに動かされている状態であったが、意思のある黒い線は身体にまとわりつく様に侵食していく。
「なんだ? まだ準備中か。待ってもしょうがないしいくぞ!」
向かってくる敵に容赦なく黒い線が襲いかかる。
衝撃無効の黒の剣で弾きながら駆け寄る。
「お? おぉぉ?」
近づけば近づくほど黒い線は増えていく。
「ちと、多いな。ならこうするまでだ」
黒剣を自分の身体に刺すと、体全体が黒く覆われ、竜と人が交わった姿になる。
そのあとの戦闘はお互い消耗戦であった。
メルディスは傷つけばその場所を黒い線が侵食し、チェルノは傷つけばすぐに再生する。
「くくく、やっぱり同じ龍人同士の戦闘はつまんねぇな」
そういうと更に体を黒く染め、そのまま巨大な黒龍に変化した。
(さて、どこまで⋯⋯)
口を開き、大きく咆哮すると外界とは隔離される。
意思のないメルディスは恐れすらなく、ほぼ全身に覆われていく黒い線に動かされて向かっていく。
(馬鹿が、大砲と小石でやりあうつもりかよ!)
龍は大きく口を開け咆哮だけの風打ちを打ち、メルディスは全力で風打ちを打った。
打ち合いに圧勝する龍は一歩も動かず、惨敗したメルディスは地面に伏し、ゲームオーバーと言わんばかりに黒い線が全てを覆った。
【黒龍の欠片の情報解析が完了いたしました】
「早速実行する」
コツコツと歩き、横たわっているメルディスにデコピンを何度もする。
「いったいなぁ!! もう! なん⋯⋯なの⋯⋯⋯⋯⋯さ⋯」
目の前に、私のよく知ってる人がいた。
「さっさと起きろよ。クソガキ」
真っ暗な世界の中、昔のように接していたクロノ君が確かにそこにいた。
もっと⋯⋯うまくかきたかった⋯⋯。
いまのウチでは不可能と知る(´・ω・`)




