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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

BLシリーズ

ダンクシュート

作者: 綾小路隼人

2月のある日。

友達を待つ間に体育館で何かしようと思い、僕は放課後に体育館へ向かった。

すると、あの人がいた。あの人は、僕よりも背が高くジャンプ力もすさまじくて、僕とは別世界のようだった。


「おっ、見ねぇ顔じゃん。誰だお前」

「えっと、1年の荒井章一と言います。あなたは?」

「俺か? 俺の名前は白沢涼太だ。お前より2個上だな。だから見たことねぇ顔だったんだな。お前、華奢な身体してんな」

「残念ながらよく言われます。僕、男なんですけどね……」


人が一番気にしていることをさらりと言ってしまうこの白沢という男に少しイラついた。

けど、彼の笑顔はその言葉を許してしまうくらいの謎の魔力があった。

違う違う、許してる場合じゃないと思ったのだけど、近づいてきて僕の頭をわしゃわしゃと撫でてくる。


「わりぃわりぃ。そんな気にすんなよ、な?」

「あ、は、はい」

「よかったら一緒にバスケしようぜ。いいだろ?」

「仕方ないですね……」


なんて、見た瞬間一緒にしたいな、なんて思ったのだけど。

しかし、全然白沢先輩からボールを奪えなくて、逆の役割になっても今度は彼がボールを奪ってしまい、僕は全然勝算が見えてこない。

お前弱いんじゃないか? と白沢先輩に言われて、絶対に勝ってやると思って必死に奪ってダンクシュートを決めようとしたがまるで身長が届かなくてダメだった。


「今度はちゃんと決めれるようになれよ、章一」

「うぅ……わかりましたよ」



その後、放課後や昼休みなど、暇な時に行くのだけれど白沢先輩は現れなかった。

あの日以来、彼を見ていない。どこへ行ってしまったのだろう。

そして、大きな学校のせいで全然白沢先輩を見掛けることはなかった。

段々とあの人は幻の人だったと思ってしまったが、そんなことはなかったと思いたい。



そして、今日この場。


「白沢先輩」

「章一、遅いぞ! お前、もうバレンタイン終わる時間じゃねぇの」

「え? そんな夜遅くない設定ですか? というか、遅いのは白沢先輩の方で……」

「わ、悪かったよ。俺が体育館に呼び出しておいて、どこにお前を呼びだしたか忘れちまってて……」

「というか、もう深夜ですよ。そして、日付変わってます」

「お前……何時間待ったんだ?」

「知りたくないですよっだ」


僕はあんなにも必死だったのに、白沢先輩は思いの外あっさりしている。悔しいな。


「悪かった。そんな怒らないでくれ。な? これ、渡したかったんだよ」

「本当ですか? これって、僕宛てのチョコですか?」

「と言っても、バレンタイン終わっちまったし、拗ねてるお前には渡さないでもいいか?」

「酷いこと言わないでください。逆にお詫びの印としてちゃんとくださいよ」

「それもそうだな、悪い悪い。章一、ちゃんと待っててくれてありがとな」


それじゃ俺はこれで、と去っていこうとする白沢先輩に僕は全力で待ったをかけた。

それはないだろう。あっさりしている人だと思っていたけれど、あまりにもあっさりしすぎだ。そして僕の返事とかそう言うのはいいのだろうか。

いや、確かに白沢先輩が好きだって印でこれを渡したかもわからないから、返事も何もないとは思うんだけど……。


「ちょっと、他に言うことはないんですか?!」

「言うことって言ったって……何だろうな? 特には思い浮かばなくて」

「じゃ、僕の方が言いたいことが残ってます。帰らないでください。バスケットボール、ちゃんとダンクシュート入れられるようにしたんですよ」

「マジかよ。信じられねぇな、やってみろよ」

「見ててください。絶対に決めて見せますから」


そう言って白沢先輩が近くで見つめる。手が震える。

電気をつけたらバレてしまうから、あまり電気がついていない。バスケットゴールが見づらくて大変だ。

これでちゃんと入れることができるだろうか。ただでさえ、緊張で手汗をかいている気がする。

ふぅ、と息を吐いて僕はバスケットゴールの方へとドリブルをしていく。

その間に、白沢先輩がとんでもないことを言い出した。


「じゃ、俺お前にお菓子やったじゃん? そのお菓子って言葉を入れて、俺に伝えたいことを伝えてくれよ」

「えぇ!?」

「お前なら出来るって、頼むよ章一」


そんなプレイ中に思考が乱れると、プレイも乱れるってことを知らないのだろうか。

あぁ、どうしよう!? 好きって言いたかっただけなのに、それにお菓子って言葉を入れて伝える!? どうすればいいんだ、なんて伝えればいいんだっ! そしてそれを言いながら僕はちゃんと決められるのだろうか。

落ち着け、僕。白沢先輩に伝えたいことは___。


「犯してもいいですかー!!」


全力で叫んだ。全力で跳んだ。全力でダンクシュートを決めた。

途中で手元が狂って、下に軽やかに落ちないで、変な風に落ちてしまい危なかった。

僕、あんなこと言ったのにそんな憐れむような目で見ないでください……!


ごめんなさい、白沢先輩。薄暗いし、白沢先輩が急いでさっき来たせいで汗の香りがしてすごくアレな気分になってたし、でも好きだから犯したいって意味であって! 別に誰でもいいってわけじゃなくてですね………。


「章一。お前の言葉、しっかり受け止めた。それに、ダンクシュート上手くなってたな! すげぇよ、あんなに跳べるなんて」

「……あ、あれ? 白沢先輩、言葉の意味わかってます?」

「ん? 何だろう……お菓子が欲しいのか?」

「違いますよ、お菓子なんかよりもっといいものです」

「あのよ、返事ってホワイトデーまで待たなきゃいけないんだろ?」

「はい?!」


もう何を言ってるのか余計にわからない。

返事ってなんだ。僕が言ったこの言葉をホワイトデーまで待たせるってことですか。


「あのよ、俺の気持ち、伝わったよな」

「な、何を僕に伝えてたんですかッ?!」

「気付けよ!」


白沢先輩がバスケットボールをダンクシュートで決めながら叫んだ。


「お前が好きだー!!」

「えぇえ!? わかりづらすぎですよ、いくら何でも……」

「で、犯していいですかってどういう意味だ?」

「お願いですから、そんなキラキラした目で見つめて聞かないでください!」

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