暇潰しに何しよう
これからおっさんの歯車が狂っていきます
日々の労働が終わると
こんな辺境の田舎には遊び場はないし、
酒場までは村の中心地に行かなくては
飲む事が出来ないが
そこまで酒を好んでいない
「さて、何しよう?
暇潰しで書籍でも漁ってみるか…」
と最近とくに多くなった独り言を吐きながら
自宅の多くない書籍を探していると
手作りの本棚と壁の間に埃まみれの
書籍を見つけ、前にある書籍を避けて
その埃まみれの書籍を手にとって
埃を払う
「これ誰の字だ?男の字ではあるが
見た事ないなぁ、ま、家にあるのだから
ウチの誰かの日記みたいな物か?
人の日記には秘密がいっぱいだから
楽しませてもらおう」
などと腹黒い笑顔でパラパラと軽く読んでいく
こんな時は読み書き計算を習らわせてくれた
両親に感謝しつつ
目に止まる文章が書いてあった
「我の祠を訪れたる血族とそれが証明出来し時
我の叡智を与え、この世で覇者となれ」
これって曾祖父の日記?
なんだか物騒な事書いてあるけど
行った事あるけれど、祠の中には
大人の頭くらいの水晶があっただけで
他は何も無かった様な気がしていた。
明日は仕事を休んで祠に行って見るか?
と片道3時間の軽いハイキング気分で
保存食と水、短剣を空間魔法にしまい込み
ついでに野生動物か木ノ実や薬草を
入れる鞄を準備してさっさと寝たのである
結構木ノ実や果実、薬草が取れたなぁと
嬉しく浮かれながら祠に到着する直前に
足を滑らせ砂利に手をつき
大きな怪我をしなかった事に安堵しながら
祠に到着
祠の周りは石が敷き詰められ草木が
全くない状態でぽつんとそれなりの雰囲気を
醸し出していた
大人一人くらいならなんとか寝れる大きさで
やはり一番奥に多少ではあるが
魔力が込められていそうな水晶が一つだけ
置いてあった
祠の汚れは山頂にあるにも関わらず
100年近く経っている割りには綺麗で
石で出来ていたため頑丈そうである
中の方もしっかり入り口の扉が
閉ざされていたので軽く埃が被っていた
ので持っていた布で祠を払い
とりあえず手を合わせ
マジマジとその水晶を見ていたが
ふと持ってみたい衝動にかられ
大股に脚を開き手を水晶に当てた瞬間
水晶から眩い光が放たれ
その光と共に意識を持って行かれる感覚があった
「で?ここはどこだ?
真っ白な部屋には居てなかった筈なんだが…」
その時、背後から声が掛かった
「よく来た、我が血族よ。
して、お主はどれ程の末裔だ?」
なんだか突拍子のない質問とその老人に
呆気に取られていたが
良く見ると容姿が自分が歳を重ねると
こんな感じなのかなぁと思える程だった
でもその前に何故こんな事になってしまったのか
これからどうしていいのか考えようと
していた矢先に老人からの提案があった
「ここに来れたという事は我子孫で
間違いではないだろうな
ここは儂が晩年に様々な魔法と陣を駆使して
造りあげた場所じゃよ
正確には祠の周りに陣を敷き
儂の精神体を水晶に閉じ込め
末裔に魔法を伝授する為に待っていたのに
なかなか来ないからこのまま朽ち果てて
しまうかと思っておったわ」
なんとも人騒がせな人だ
激変の時代にこんな仕掛けを造って
自分を封印するとはなんとも
危険思想を持っていたか未練たらたらなんだか
「俺からすればあなたは曾祖父となります。
ちょうど三世代後ですね」
とこれまでの経緯や今の時代の事、
俺の置かれている状況や家督を継いだ事を
説明した
「なら暇なんじゃな?ならば世の覇者となり
桃源郷でも作らんか?」
どこからそんな発言と発想が出るのやら
しかも桃源郷って……悪くない…
そのニヤッとした顔を見られたらしく
曾祖父と色々談笑していた