BLってさ、本能でああなる気しないんだけど…
彼の居た部屋はもう既にもぬけの殻だった。
「────あのー、エロ本一冊燃やし忘れたんですけど…」
「これ以上は待てないです。諦めてください。」
「いやでも、ナース特集な…」
「今すぐに!取りに帰りましょう!さあ!速く!」
ナース特集を耳にした瞬間、彼───上谷の行先は海藤家へと変わった。其のスピードは光を超越したかのような、人器を超えたスピードだった。
「ちょっ…待ってくださぃ…ハァハア…」
「何ですか?そんなんでは本が見つかってしまいますよ?」
「いや…そうじゃなくて…ハァハア…速くないですかね?」
「いやいや…まだまだこれからですよ、!」
────速い。とにかく速い。いまいち追いつかない。
────────ハァハァ…
やっとの思いで着いた我が家は何故かいつもと違い、音がなかった。
そもそもうちは、わりとにぎやかな家庭なのだ。賑やかの度合いとしては一軒家で、昼だったのにも関わらず喋っていたら近所から苦情があったことが数回。
まあ、もうこの光景は不自然でしかなかった。
「コレってまさか…」
「なにかしましたか?」
「いや、見てて気づかないんすか?超静かじゃないっすか!?」
「…ああ、どこもこんなかんj…」
「いや、ここはそんなとこじゃァないんですよ」
「というと?」
「見つかった可能性があります☆」
「ヤバイじゃないですか!?もう超ヤバイですよ!?早くしないと!どうするんですか!?」
「いやそれはこっちのセリフで…」
「…────ああ、僕が取りに行くんですね?」
彼は冷静さを取り戻した。
「そうです、さっき庭に出た時みたいにっす。」
「分かりました。では、いってきます。」
「お願いしますよ。」
「任せてください。」