男でも600日くらい禁じればイケる気がする
そもそも全ての身支度を30分で終わらせるなんぞ不可能なのだ。が────────
「あの、家族に一言なんて書いたら自然だと思います?探さないでくださいとかが無難かな…」
「そうだね、ってえ?」
「どうしたんすか?」
「いや、その、なんでそんなの書こうとしてるの?」
「そりゃぁ、あれですよ。僕、もうここに帰ってこれないんですよね?」
彼の情報処理能力は底が知れない。全く持ってどこぞの主人公とは違う。「行動を共に」というワードだけでほぼすべてを理解した。もちろん彼にもわからないことはある。それはこの自体の根本的なことだ。「何故こうなっているのか」「自分は何をしてしまったのか」「自分の性癖は何処に行ったのか」。しかし、それを無視してもとりあえず納得するのが彼。
「いや、そうなんですけどね?なんでそんな結果になるんですか?」
「え?そりゃぁあれだよ。このくだりは僕これからいろんな困難に苛まれるんでしょ?」
「何をどうしたらそんな考えに辿り着くんですか!!」
「わからん。」
「いや、わからんって…」
「しかたないだろ…」
25分が経過した中ではそんな会話が繰り広げられていた。
そして3分後彼は最後の支度に入った。
「何をしてるんですか?」
「エロ本焼却準備」
思春期男子の底板のものである。たしかに、いきなり消息不明になって部屋を調べたらエロ本が出てきてそれが自分の筐なんてなった日にはたまったもんじゃない。
「これ終われば行けるから…」
「あ、はい…」
そうして彼は家族にバレないように庭へ出た。
メラメラと燃えるソレは灰となり庭の土に埋められた。
「なんかさ…エロ本って俺のことをある意味一番知ってる奴だからさ…悲しいよな…」
知ったこっちゃねえよとは言えず上谷は黙り、埋められた庭を見つめた。