やっぱり本物の女の子とは違った気がする
「あのー…」
「…はい。」
「そろそろお話を…」
「…で、ですよね…」
先程、部屋に入ってきた。目的は風呂場でのコトについて話すことだった。
───だったのだが、2人が気まずい状況から全く話を切り出すことが出来ずかなりの時間が経ってしまったのである。
「その…」
話を切り出したのは『実は男の子』の方だった。
「まず…あの…僕…その…あの…」
しかし、これでは拉致があかないのをすぐさま感じ取った『嗅いでた男の子』の方が口を開けた。
「えーと、まずさ、自己紹介をしようぜ?な?」
「わ、わかりました…」
「えっと、俺の名前は│海藤楓太だ。」
「僕の名前は│上谷良汰です。」
「ほんじゃまあ、上谷…さん。その、どういったご趣味を…」
それはあまりにも切り込む質問だった。
「はい。僕の性癖は│女装です。」
「オートガイネフィリ…?」
「言い換えれば女装です。」
「ああ、なるほど。という事は、さっきのは…」
「はい。あれが僕の女装です。」
「な、なるほど。」
「ではこちらからも質問をさせていただきます。あなたの性癖は何ですか?」
「尻…尻フェチだ。」
「ほほう。ではもう一つ。今から尻の画像を見てください。」
「は、はぁ…えーと、ん?はぁぁぁ?いや待ってください。何が悲しくてあなたの前で尻の画像を見なけりゃならないのですか!?」
「いいんです。早く見てください。」
そのふざけた言葉とは裏腹に彼の顔は至って真面目だった。むしろ切羽詰ったような顔だった。
「わ、わかったよ。ちょっと待ってろ…」
スマホでそれを見始めた彼はあることに驚いた。
それは『全く興奮しない』ということだ。
「…あれ?おかしいな…」
「どうしました?見れませんか?」
「いや、そうゆうわけじゃないんだが…」
「まさか、全く興奮しないんですか?」
「…いや、…っ?そ、そうだ。全然興奮しないんだ。」
「はぁ…そうですか。ありがとうございます。もう見なくて大丈夫ですよ。」
「お、おう…」
上谷の顔は、わかっていた災難が本当に起きたような顔だった。
「いいですか?今からいう事は他言無用ですよ?そして、あなたの意見は無視であなたは今から我々と行動を共にしていただきます。」
全く上谷が言っている意味がわからないかった────わけではなかった。
彼の情報処理能力は異常なのである。
「うむ。要は俺は大変なことになっているのだな?」
「…!?」
彼の要約の速さに思わず圧巻したのだろう。通常理解されなくて困る方が理解出来なくて困っているのだ。
「その通りです。とりあえずついてきてもらえますか?」
「わかった。でもぉ…その、あと30分待ってもらえるか?家族に一言残したり、着替えとかいろいろやらないとだから。」
むしろそれを30分で出来ることの方に驚きを隠せない様子で上谷はそれを了承した。