ヒロインが可愛ければ見るアニメの候補にはなる
「こちら3rdFoul…今入りました────」
「いや、どこに?」
「『めいどきっさ』です…」
「メイド喫茶か(ボソッ…了解した」
────────。
かれこれ10分。走りっぱなしで着いたそこは、まだ彼には少し早いだろうか、「深夜営業」の店が並ぶ通りの一角、「めいどきっさ〜♡」という、あまりにも名前に似つかぬキャバクラの前である。
「さあ…ここですよ…ハァハア…」
「あの…ここで…ほん…とに…あって…ハァハア…るんで…すよ…ね?…」
「…もちろん…で…すよ…ハァハア」
本日休業の札が貼ってあることなどお構い無しに、そこへ入って行く上谷に釣られ、まだ幼き彼は、一つ大人の階段を登る────。
店の内装は小洒落ている。バーをキャバクラにした様な、妙に落ち着いた雰囲気だった。しかし休業は休業。暗く、初見の店内が心なしか大きくなっている気がした。それもお構い無しか、その先には階段がある。いつかの七不思議を思わせる光景に、困惑する彼を他所に、上谷は前へ、
前へと進んでゆく。
時は過ぎ早「3F」。決して疲れている訳では無い。昼間なのに怖かったわけでもない…たぶん。
しかしこれ程までに疲れる階段はそうそう見つかりはしない。
その 先 には、あまり置くまでは見えない廊下がある。高校生にもなってこんなものでビビるのかと言う者も出てくるだろうが、しっかりと怖いのだ。昼間に入ったはずなのにも関わらず、光の一つもない。しかし、その先では光がほんの少しだけ差し込んでいる。久しぶりにお目にかかれる光へと、虫のように近づく海藤風太の先には一つの扉があった。
「入るぞー」
上谷がその扉を開ける────。