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自覚してみればまた、こんなに悲しいことはなかった。

「なおちゃん、最近元気ないね」

梨沙子に指摘されるほど、私は目に見えて落ち込んでいたらしい。

自分が同性に恋しているという事実自体が受け入れがたいことだったし、なにより彼女には好きな人がいるのだ。

彼女が人魚姫になりたい、と口にするたび、全身を細い針で突き刺されるような痛みが走る。彼女の恋が叶いがたい恋であることが救いだった。そんな自分が嫌だった。

「そうだね、そうかも」

「なにかあったの」

「あった……かな？」

いっそ思いを告げてしまいたいと思った。でも曖昧に笑って、誤魔化すことしかできない。

こんな状況になって、ようやく私は彼女の言葉を理解するようになった。人魚姫になりたい。

「なおちゃんがもし何かで悩んでるんだったら絶対教えてね。なおちゃんは私の……一番の親友だから」

好きな人が大人っぽい人だからと笑顔も一人称も、ファッションも変えしまった梨沙子はそれでも私の幼馴染だった。

「ありがとう、でも大丈夫。たいしたことじゃないから」

この悩みはいくら彼女が親友だろうが、そうである限り解決できないものなのだ。