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梨沙子は日に日に思いつめて言っているようだった。だけど同時に梨沙子は美しくなった。少女らしい愛らしさは潜み、どんどん研ぎ澄まされていくようだった。
季節が秋に変わる頃、彼女はもう私の知るかわいい梨沙子ではなかった。見知らぬ一人の女だった。
「なおちゃん、もうすぐ冬だね」
「寒くなって、いやね」
「ふふ。なおちゃん、そういっても夏も嫌いだよね」
もう彼女は以前のようにいつでもへらへら笑うこともなくなった。密やかに、同性の私でさえどきりとするように綺麗に笑うのだ。
以前の彼女の嫌いだった部分はなくなっていっているのに、私は彼女が変わるのが嫌だった。突然泣きたくなるような不安と寂しさを感じた。
私はようやく自覚した。どうして、あんなに彼女に苛立っていたのか。彼女に彼氏ができるたびに。別れるたびに。そしてそれは繰り返されるうちに彼女自身への憎しみとなった。全部、無自覚のうちに。
考えてみれば、単純で分かりやすい話だ。私は、彼女のことが好きだったのだ。彼女が適当に付き合っていた恋人たちにまで嫉妬するほど。