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白かったはずの彼女の肌も日に焼けてだいぶ黒くなり、秋を感じさせるトンボが飛び始めていることが夏休みの終わりが迫ってきていることを教える。
もうすぐ夏休みが終わるため、彼女も今晩東京に帰ることになっていた。
その日の夕飯、祖父母が彼女の家族を招待してお別れ会のようなことをしてくれた。
彼女と私が仲良くなったのをきっかけに祖父母と彼女の両親も交流が始まり、彼女の両親も田舎暮らしを満喫していたからだ。
テーブルには田舎にも拘らず贅沢な料理が並んでいて、彼女のお母さんは泣くほど喜んでいた。
涙もろい祖母も一緒になって泣いてしまって、今でも思い出に残るいい送別会になった。
そして、帰る直前に私は彼女に気持ちを伝えた。
「・・・好きです。初めて会ったあの日から好きになりました。」
今ならきっとオブラートに包むとかあったろうけど、この時の私はそんなこと考えることなんてできなかった。
彼女は初めて会った日のように、口を開けたままこちらを見ていた。
驚いているようで、またしても口をパクパクと動かしている。
隣にいた彼女のお母さんに肩をポンポンと促され、
「あ・・・あ、あの・・・私・・・。」
少し薄暗い玄関の灯りでも、彼女の表情はすぐにわかった。
顔から耳まで真っ赤にしている。
でも、その表情からは嫌悪は感じはしなかった。
それはただ単に、私がいいように美化しているだけかもしれなかったが。。
帰る準備ができ、車から二人を呼ぶ彼女のお父さん。
「ま、またね!」
結局答えを聞く前に、車に向かって彼女は走り出した。
私は答えが聞けなかったからなのか、ただ彼女の姿を目で追うことしかできなかった。
車の横まで行きドアに手をかけたが、開けるわけでもなくそのまま立ち止まった彼女。
そして彼女はこちらを向き直し私に向かって叫んだ。
「ら・・・来年も来るから・・・絶対に来るから。
もし、その時まで私のこと好きだったら・・・私も返事するから!」
彼女はそう言うと後部座席に乗り込んだ。
走り出す車に、私は力いっぱい手を振った。
暗闇に消えていく車を見失わないように必死に目で追いかけた。
来年会ったら真っ先に思いをもう一度伝えよう。
そう心に決めた。