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私の一日は祖母たちが畑へ行く5時には私も一緒に起きるところから始まった。
起きてまずやることは宿題。
朝食までのうちに毎朝やっていた。
叔母が小学校の先生ということもあって、勉強に関してはしっかりやっていた。
このおかげで私は昔から長期休暇の宿題を忘れることも、最終日に追われることも一度も無かった。
朝食後にはさっそく外に出て遊びまわっていた。
海に行けば釣りや素潜り、親戚の漁師のおじさんの舟で漁を手伝ったこともあった。
山の方に行っては探検したり昆虫採集したり、木登りだってやったし秘密基地も作った。
一人だけなのに毎日飽きることなくいろいろなことをしていた。
私が8歳、小学三年の夏休みに毎年のことながら祖父母の家に行くと、祖父母の家から少し行ったところに新しく綺麗な家が建っていた。
祖父母の家も、ここら辺の近所の家も年代を感じさせる昔からの家屋で古臭い建物だった。
山と海、それに田んぼと木々に囲まれた田舎に、新しい家が建っていたからすぐに気が付いた。
私は朝食を済ませるといつものように出かけた。
そして、今日は山に行くために途中にある駄菓子屋に寄った。
今朝、祖父からもらった小遣いでジュースとお菓子を買って山で食べることにした。
公民館の前にある駄菓子屋。
朝早くから開いている駄菓子屋で、小遣いをもらうとよくここに来てはお菓子を買っていた。
私がいるときに他の客に会ったことがないのに、珍しくその日は先客がいた。
その先客は、アイスが入っている冷凍庫の前でジーッと中を見定めている。
女の子だった。
背は私よりも少し低く、緑ばかりのこの土地では逆に目立ってしまうでピンクと白のワンピースに麦わら帽子。
田舎には適さない少し場違いな服装で、幼いながらに思ったことはテレビで見たりするどこかのお嬢様という印象だった。
ただ冷凍庫の中を見ているだけの彼女。
買うような素振りもなく、普段の私なら何事もなく終わるのだがその時はなぜだか興味本位で彼女に声をかけた。
「アイス買わないの?」
「・・・え?」
少女は驚いたように口を開けてこちらを向いて私の顔を見た。
清楚な格好もさることながら綺麗に整った顔立ちも正にお嬢様のような感じで、日に焼けた私の肌とは対照的に白く、この世の悪いものを見たことのないような澄んだ目も、性格を表すような真っ直ぐで癖のない黒い髪も文句のつけようがないほどだった。