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向日葵  作者: 角達 和樹
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 会社に来ても最低限の仕事しかできなかった。


 気持ちここにあらずと言った感じで、気持ちだけどこかにふらふらと一人旅にでも行ってしまったようだった。


 必死に仕事をしたり、気晴らしにスポーツをしたり映画を見たり、酒を飲んだりカラオケに行ったり。


 出来る限り気を紛らわせようといろいろ試してはみたが、結局私は前に進むことも戻ることも出来なかった。


何もすることが出来ず、ただただその場でジタバタと足掻くことしかできなかった。 


 朝起きて携帯に目をやるが彼女からの連絡があるわけでもない。


 電車を待つ時、線路を挟んでの向かい側のホームで立っている人が彼女と重なって見えたり。


 買い物を楽しむカップルの姿が、以前の私達を客観的に見ているように思えたり。


 週末の夜に、自分以外いない自室で一人酒を飲みながら映画を見る。


 虚しいだけの時間が流れるだけで、頭のどこかでいつも彼女のことを考えていた。


後悔はしてないし、そこまで悲しいとも思っていない。


そして彼女と別れて半年が経った頃、私は仕事を辞めた。


 仕事に不満があったわけでも、人間関係が悪かったわけでもない。


給料も生活に余裕がある位もらえていたし、すぐに倒産するほど傾いた会社でもなかった。


何か問題があったわけではなく、むしろ問題があったのは自分自身だった。


感動や笑い、悲しみや苦しみ。


気が付けば日常で喜怒哀楽をあまり感じなくなっていた。というか忘れ始めていた。


 抗いようのない時間の流れの中に、ポツンと自分だけが取り残されているような気がして止まなかった。


私の中に大きく広がっていた『好き』という感情が作った隙間は、やはり埋まってはいなかった。


その隙間が作った穴から、私の中にあった他の感情がだんだんと流れ出ていって私だけを置いて行ったようだった。


 このままいけばいつかダメになるかもしれない。


そう思って私は仕事を辞めた。

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