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彼女の手紙を何度も何度も、繰り返し読んだ。
封筒に書いてあった文字と便箋の文字は明らかに違った。
封筒に書かれた私の名前はしっかりとした筆跡なのに、便箋の文字は力ない筆圧で弱々しく震えている。
その字が物語っているのは、彼女が亡くなる間際に文章を書きなおしたことがわかる。
彼女は私に対して言葉にしてはくれなかったが、私を好きでいてくれた。
嬉しかった。
涙が止まらないが、ただただその事実だけが嬉しかった。
彼女は、最初手紙をなんて書いていたのだろうか。
・・・考えるまでもないが大方予想はつく。
彼女のことだから、私に対しての気持ちを率直に書いていたのだろう。
でも死ぬ間際になって彼女の性格から、相手のことを考え自分のことを忘れてくれなんて書いたんだろう。
すごく彼女らしい。
忘れようとずっと努力して中学卒業の時には思い出さなくなって、昨日田舎に来るまで忘れていた。
でも、忘れていたはずなのに心のどこかではやはり忘れ切れていなかったようで、もう二度と叶うことのない恋なのに知らないうちにあの子と別れた彼女を比べてしまっていた。
あの時のあの子に対する私の想い、ぶれることのない真っ直ぐな『好き』という想いは、手の届かない感情の奥深くにいってしまったことも知らないで。
別れた彼女に対して抱いていた『好き』という思いと確かに似ていたけど、実際は全く別物で比べるものではなかった。
私の奥底にいったあの時に抱いていた『好き』という想いは、掴むことも触ることも見ることも感じることも出来なかったために、別れた彼女に抱いた『好き』という思いとが知らず知らずに反発しあっていたのかもしれない。
そうしているうちに表面にも出てきてしまって、彼女とギクシャクしていったんだろう。
泣いたためか、彼女の想いを受け取ることが出来てスッキリできたからか先ほどまでとは違いスッキリした。
こうやって冷静に考えることも出来た。
明日、さっきの家に行って○○ちゃんのお墓の場所を聞こう。
どんなに遠くても会いに行こう。
仕事辞めて時間もあるし、まだ貯金もある。
引きずっているわけではない。
むしろ一歩踏み出すために会いたい。
あの子を想いを受け止めて新たにまた一歩進むために。
もし、別れた彼女に会ったら本当のことを伝えよう。
正直に伝えて謝ろう。
あの子が生まれ変わって私の目の前に現れた時に、情けない姿を見せないように私も生まれ変わろう。