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『××君
ごめんなさい。
あなたの気持ちに返事が出来ないまま、お別れになってしまって。
この手紙はお母さんにお願いして、私が死んじゃったら××君に渡してもらうことにしました。
でも、たったひと夏しか一緒にいなかったんだからあなたは忘れてしまうかもしれない。
だから私は、お母さんにわがままを言いました。
あなたが、私のことを忘れられてくれたのならそのままこの手紙は捨ててほしい。
でも、もしあなたが私なんかのことを忘れずにいてくれたのなら、その時は渡してほしいと。
勝手に死んでいく私のことをいつまでも引きずってほしくないから。
初めて会ったあの駄菓子屋。
あの日、私はあなたに本当に会えて良かったです。
今まで過ごしてきた私の世界はとても狭く小さいものでした。
それなのにあなたは、見たこともない外の世界へと私を連れて行ってくれました。
初めて見る生き物。初めて泳いだ海。初めて吸った味のある空気。初めて食べたアイス。
もう一年以上前なのに今もまだはっきりと覚えています。
出来ることなら今年の夏も、来年も再来年も何度も何度もあなたに会いに行きたかった。
あとお礼に東京を案内したかった。
映画を見たり、動物園に行ったり誕生日会とかもしたかった。
もしかしたら私が生きていて大人になったらあなたと結婚できたのかも、なんて思うとちょっと残念です。
本当は残念だけど、でもよかったです。
初めて男の子を好きになって、その初恋のまま死ねるのだから。
できれば、あなたには悲しい思いはしてほしくないです。
だけど、あなたは悲しむかもしれない。
私が死んで悲しんでくれる、覚えていてくれるのは嬉しいです。
私は大丈夫です。悲しくないです。
本当はもっと遊びたかったしお喋りしたかったし、あなたといっぱいいっぱい思い出を作ってもっともっと人生を楽しみたかったです。
でも大丈夫です。
生まれ変わったてもう一度やり直します。
その時のために、そのやりたいことは全てとっておきます。
死んじゃったら神様にお願いして急いで生まれ変わります。
そしたら、また会いたいです。
もう一度会えたら、あなたに私の本当の気持ちを今度はちゃんと私の口から伝えたます。
あなたに気持ちを伝えられなかったこと、私は後悔してません。
次に会うための約束が出来たから。
だから、あなたも私をいつまでも引きずらないで忘れてください。
バイバイ。ありがとう。』