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祖父母の家に帰ってきて弁当を食べるわけでも、テレビを見るわけでもなく机の上に置いた手紙を見ていた。
墓参りに行く前は窓から光が入ってきて明るかったはずが、電気も点けていない部屋はもう外と同じ夜の黒い世界になっていた。
少し古くなったピンクと白色の可愛らしい封筒。
表には『××君へ』と私の名前が子供の字で書かれている。
あの子の字は一緒に勉強した時に見た。
これはあの子の字だ
とても優しく柔らかい、懐かしい字。
すでに開いている封筒の口から見える、便箋を出した。
書いたころはもっと濃い色のピンクの便箋だったかもしれないが、今私の手にあるこの便箋はピンクだということが何とかわかる程度の色。
20年という時間の流れを感じせる。
少し怖かった。
中を見たら何か私の中で壊れてしまうのではないかって。
20年も前のことなのに期待や嬉しさではなく、怖くさからか先ほどから胸を内側からドキドキと叩く音が耳障りだ。
震える手先。
このまま、手紙を見なければたぶん私は何も変わらない。
もしかしたら、ここに来たことだって意味があったからかもしれない。
神様が引き合わせたとか、奇跡が起きたなんて。
私は奇跡とか神様なんて信じていない。
もしいるんだったら、胸倉掴んで言いたいことが山ほどある。
なんで、神様がいるのになんであの子は死んだんだ。奇跡起こせないのになにが奇跡だ、って。
信じていないけど、でも偶然にも彼女のお母さんと20年ぶりに再会した。
そして、彼女の手紙を受け取った。
便箋を開いて中を見た。