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私の目の前に、田舎には珍しい小柄のシルエットが見えた。
背格好から見て小学生くらいだろうか。
隣には大人の女性が二人いて親戚の家にでも訪ねに来たようだ。
大人二人は玄関先で家主と思しき人物と立ち話をしている。
子供は退屈なのだろうか、そっぽを向いていた。
私も昔は祖父母のところに訪れるお客に挨拶するのは嫌いだったし、あの子の気持ちがわかってしまう。
身体は成長したのにあんなに小さな子の気持ちがわかってしまうし、思い出も忘れられない。
口元が緩み久しぶりにフフッとにやけてしまった。
私はやっぱりまだまだ子供のようだ。
そしてその子供が振り向きこちらを見た。
その瞬間私は、手に『アイスや袋を持つ』といった指示を脳が強制的終了させたようで手に持った物がすべて地面に落ちてしまった。
自分の身体では無いように石のように固まり、瞬きをすることも息をすることも忘れてしまった。
「・・・○○ちゃん・・・」
水色と白色のワンピースを着た女の子は、あの時の女の子に見えた。
女の子は私に気づいているものの、言葉を発することはなくただこちらを見ていた。
私は引き寄せられるように、固まった身体を動かし少しずつフラフラとその子に近づいていった。
「××くん・・・?」
自分の名前が呼ばれ、私はそこでやっと正気に戻った。
呼ばれた方向を見ると玄関先で話していた大人二人のうちの片方だった。
正気には戻ったがこの場を理解することは出来ず、むしろ正気に戻った今も女の子は思い出のあの子にしか見えない。
端から見えれば、小学生の女の子凝視して近寄ろうとしている男。
十二分に怪しいが女性は大声を出すことなく近づいてきた。
「久しぶりね。お元気そうでなにより。」
「え・・・ああ、はい・・・。」
女性のことよりも女の子のことで頭がいっぱいで、私の頭の情報処理能力では処理できずもっと性能の良い頭が欲しかったと悔やんだ。
視線は未だに女の子に向いていて、気の入っていないうわごとのような返事を言った私を見て女性は言った。
「○○じゃないわよ。」
当たり前のことだが、少し期待していた。
あの夏からもう20年も経って私は中身は成長していないかもしれないが、身体はデカくなった。
あの子に似ているからといって、今もあの時のままのあの子でいるはずがなかった。
受け入れられないこの状況と走馬灯のように流れるあの夏の思い出が、情報処理を一層遅らせる。
その場で立ち竦む私を、女性はその家の縁側に連れて行った。




