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 いろんな事があって随分疲れた週がようやく今日終わる。


 昨日は本当はバイトのシフトは入ってなかったんだけど、なんでもシフトに入っていた社員の佐藤さんと、バイトの林さんが家庭の事情で休むことになったので、急遽シフトに入って欲しいと店長に頼まれた。

 特に約束もない土曜日なので、二つ返事でバイトに直行したんだけど……

 同じように頼まれたと言っていたバイト仲間の子が「店長には内緒だよ」と、教えてくれた二人の休みの理由は、ビックリするというより呆れてしまうもので……


「えっ?! 合コン?」

「ちょっ、声が大きいよっ。店長に聞こえちゃうっ」

「ご、ごめん。でも私、店長に二人は家庭の事情で有給を取ることになったって言われたんだよ?」

「それがね、佐藤さんの友達の友達の彼氏の友達が医者で、その伝手で医者との合コンが決まったんだって。

ただ向こうの予定上空いてるのが今日ってことになって、佐藤さんは親が倒れて、林さんは親戚に不幸が…だって」

「……え? 誰がお医者さんってこと? っていうか、じゃあ佐藤さん達の休みって……」

「ずる休みだよ。ちなみに医者は佐藤さんの友達の友達の彼氏の友達」

「なんで小池さんは知ってるの?」

「私昨日佐藤さんと一緒のシフトだったから、浮かれた佐藤さんに聞いたんだ。

まぁ私は稼ぎたかったから文句はないけど、澤木さんは気の毒だったね」


 そんなことでずる休みするなんて……佐藤さん達を見る目がどんどん変わってしまうなぁ。

 初めて来店してから毎日のように来るようになったあの人達のせいで、日に日に増えていく嫌味や力仕事やよくわからない場面での叱責。

 力仕事なんかは別にいいんだけど、ちくちく言われ続ける嫌味と、何がいけないのかもわからないけど怒られるのは勘弁してほしい。

 かといってお客さんにあまり来ないでほしいなんて言えないしなぁ……


 makoさんと山前院さんはあれからほぼ毎日お店に来ている。

 それもなぜか私のシフトにかぶってばかりいるタイミングで。

 それがどうも佐藤さんや、佐藤さんと仲のいい人たちには気に入らないみたいで、私はここ数日バイト中気が重いことばかりだ。


 それがなければお店に来られても気にしないんだけどなぁ


 山前院さんは、初日は意味が分からないことが多かったけど、次のときからは、注文時にお勧めをきいてくる以外は他のお客さんと変わらなかった。

 ……たまに視線を感じてそっちを向くとあの心臓に悪い微笑みを浮かべてはいるけど……

 注文品を用意しているときに話しかけられるのは緊張するけど、それだって別に困るようなことを言われるわけでもなく、ただの世間話ばかりだし。

 山前院さんがお勤めしている会社が私のバイト先から近いらしくて、今makoさんもその会社に仕事で行くことが多く、気晴らしに二人でよく来ているらしい。確かにmakoさん達はいつも十分ほどいると帰っていくから、休憩なのかな? と思っていたんだ。

 でも、そんな世間話をしているのが、もしかしたら佐藤さん達には気に入らないのかもしれないなぁ。

 でもあれくらいなら接客で他のお客さんにもやっているのに、相手がイケメンさんになると途端に仕事中にお客さんと話しすぎと注意されてもなぁ……


 学校では毎日毎日お昼に茜が教室に来る。今では私のクラスのみんなが山田君の新しい彼女だと認識している。

 それはまぁ、そのうちバレルことだと思っていたからいいんだけど……なんだかクラスの一部の男子から、妙に冷たく接せられるようになったことが気になる。

 気のせいかな?と思っていたけど、それが続けばそうも言ってられない。


 私、何かしたかなぁ?


 学校もバイトもなんだか疲れることが増えたなぁと、布団を干しながらため息が出てくる。

 せっかくのいいお天気なのにこんな気分じゃもったいない。とりあえず忘れよう……


 朝起きてお兄ちゃんをバイトに送り出して洗濯と掃除をし、最後の仕上げに布団を干したところで時計を確認。

 今日は15時に陽だまり庵に行くことになっている。

 お兄ちゃんがこの前言っていた『いい人』に会うために。

 一昨日お兄ちゃんに日曜の午後を空けておいてと言われて、「なんで?」と理由を聞いたときは、「こんな急に?! 心の準備ができてないよ」と断った。

 お兄ちゃんに相手の人はとっても忙しい人で、まとまった時間が取れるのが今日以外難しいと言われたから、なら何も無理に私に会ってもらうことないとも言ったんだけど……

 お兄ちゃんに押されて、いつの間にやら日曜に陽だまり庵に行く約束をしてしまっていた。


 そんな約束の時間が迫ってくると心臓がドキドキしてくる……うう……。

 マナちゃんに相談しようかと思って、昨日の夜電話したんだけど……。

 マナちゃんは電話越しに特大の悲鳴を上げると、速攻で電話を切ってしまった。

 え?何?とビックリしてかけなおすと、聞こえてくるのは『プーップーッ』という話中という音……

 ちょっとだけ切なくなりながらも、諦めてそのまま寝ることに。

 

 マナちゃん、あなたは親友の相談をブッチ切っていったい誰と話しているの……



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