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 先輩と話しながら待っていると、スペAをゲットし、ご機嫌なマナちゃんがやってきた。

 マナちゃんが来たので食べ始めてから、ふと紀行先輩といつも一緒にいる鈴木先輩がいないことに気づいた。


「先輩、今日は鈴木先輩お休みですか?」

「いや、あいつは昨日彼女ができたから今日からその子と一緒に食べるそうだ」

「えっ、鈴木先輩って先週前の彼女と別れたばっかりですよね?」

「ああ」

「もう新しい彼女できたんですか?」

「ああ、あいつには珍しいことじゃない」

「たひかにね、ひゅひゅきひぇんぱいってきゃいてんひゃあいよね」


 ハムスターのように頬袋いっぱいにご飯を詰め込んでうんうん頷いているけど、マナちゃん、そのほっぺはいくらなんでも詰めすぎだよっ。

 ご飯は口いっぱいにいれて食べる方が美味しいと断言して譲らないけど、そこまでいれなくてもいいと思うよっ。


「ひっかひはんひぇあのひぃひょはあんひゃにもひぇるのきゃね」

「さあな、俺は女じゃないから知らん。

大抵女の方から告白してきて、一月もすれば女の方から離れていくから別れる原因はあいつにありそうだけどな」

「ひゅられるのはひぇったいひぇんぴゃいのひょんなひゅきのひぇいよ」

「あれはもう病気だ。本人に治す気はないし、フラれる事も気にしてないからな。

できることなら世界中の女と付き合いたいっていう口癖が全てを物語ってる」

「ひょへにひ……」

「マナちゃんマナちゃんマナちゃんマナちゃん、何言ってるかまったくわからないからっ、まず飲み込んでっ、それからしゃべろうっ」


 口に物を詰め込むのと話すことを同時にこなすマナちゃんを止めると、一瞬キョトンとしたあとすごい勢いで口を動かして中のものを飲み込んだ。


「ゴメンゴメン、つい……」

「先輩はどうやってマナちゃんの言葉を訳してるんですか?」

「……どうやってと言われてもな……何となく分かるとしかいえん」

「そうですか……」


 幼馴染というのはこんなに分かりあってるものなのか……

 羨ましい……


 食べるのと話すのを別にしたマナちゃんが不思議そうに紀行先輩に聞いた。


「でもさぁ、彼女ができてもいつも紀行とご飯食べてたよね?

今回は特別とか? とうとうホンキになった?」


 目をキラキラさせるマナちゃんに、先輩は首を傾げた。


「本気? あいつはいつも付き合ってる間はその子だけだぞ、あれで浮気は最低だというタイプだ」

「浮気とかじゃなくてさ、今までの彼女よりその子が好きなのかってこと」

「さあ?

一緒に昼を取らないのは、その子がこれから毎日2人分の弁当を作ってくるって言ったからだからな。

料理が趣味でいつも自分のを作っているから、ついでにってことらしいが……どうした?」


 私達がしかめっ面になったのに驚いた声を出されたけど、許してほしいです……さっきの教室でのことを思い出してしまった……。

 マナちゃんもそうなんだろう、眉間のシワが凄い事になっている。

 山田君の反応からもあれは茜が勝手に来たんだろう。

 ……私への嫌がらせに。

 私と茜が姉妹なのは、山田君が周りに言ってなかったらうちのクラスで知っているのはマナちゃんと山田君だけ、私達は全く似ていないから気づいた人もいないと思う。

 平均身長ない私と違って、茜はマナちゃん位あるから160センチは超えてるだろうし、真っ黒な髪の私とは違い、茜は赤茶色の髪をしている。何より顔が全く似ていない、ぱっちり二重に大きな目、小さな鼻にプルプルな唇。

 私はマナちゃんに出会うまで茜より顔の可愛い子を見たことはなかった。

 お兄ちゃんは父親に、茜は母親にそっくりなのに、私は両親に全く似たとこがない。それが余計に小さい頃の茜に、私は親戚の子だっていう間違いを信じさせたんだろう。

 お兄ちゃんの話では、私の顔は母親の祖母と、母親の妹…叔母に似ているらしい。

 お兄ちゃんは小さい頃に何度か会った事があるらしいけど、私は一度もないから本当のことはわからないけど……


「手作り弁当ねぇ……あいつがそんなの作れるとは思えないんだけど。

山田のために5時起き〜?

しょっちゅう遅刻して生活指導に呼ばれてんの知ってるんだけど」

「何の話だ?」

「あっ……」


 しまったという顔をして「なんでもないっ」なんて言ってるけど、もう遅いと思います……

 現に紀行先輩は納得してない雰囲気だし。


「先輩、私彼氏と別れたんですけど、彼の新しい彼女が手作り弁当を作ってきてくれたらしくて、でもその彼女の事を前から知っていた私達にしてみると、本当に彼女が作ってきたのか怪しいなって事です。ちなみに鈴木先輩の彼女は関係ないので気にしないでください」


 ちょっと早口になったけど、一気に言ってにっこり笑っておく。

 マナちゃんみたいな特殊効果は持ってないけど、紀行先輩ならこうしておけば突っ込んで聞かれたくない事なんだとわかってくれる。

 今も「そうか」と言って、ご飯の続きに戻ってくれた。

 目の前のマナちゃんが口パクで「ゴメン」て言うので笑って首を横にふる。

 そのうち別れたことは言わなきゃと思っていたからいいんだよ。


 マナちゃんの言ってる事は実は私も思ってた。

 家のことは通いの家政婦任せで、きっと料理なんて作ったこともない母親と、それを見てきた茜だ。

 山田君へのお弁当も家政婦に頼んだんだろう。

 茜の手料理だと喜んでたら可哀想だけど、家政婦の作ったお弁当の方が間違いなく美味しいだろうから、彼が気づかなければその方が彼も幸せだろう。


 とりあえず、私は教室に戻ったときのクラスの皆の視線が憂鬱だなぁ……。

 山田君は可哀想だけど、質問は全部彼にお願いします……。


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