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出会い 1

初めての投稿です。

至らないとこもあるでしょうが、よろしくお願いします。

 ――またか。


 その光景を見た時の、私の正直な気持ちはそれだった。

 今度は、彼は大丈夫かもしれない。

 あの子を知った後も、「妹さん可愛いね」とは言ったけど、私への態度は変わらなかったから……


 けど、それから3ヶ月――


 今、私の目の前には、右腕に私の妹をくっつけた、これから頭に"元"がつくことになる彼氏がいる。

 その彼が、彼らを黙って見つめている私を真っ直ぐに見つめ返し、口を開いた。


「ごめんな、澤木のことが嫌いになったわけじゃないんだ。お前、知ってた? 茜……クラスに馴染めなくてすごく悩んでたんだ。それでいろいろ相談にのってるうちに……その……放っておけなくて。茜には俺しか頼れる人間がいないんだ。何かお前んとこの家族、仲が良くないみたいだし……。俺、茜が好きだ、支えてやりたい。だから、澤木とは別れる」

「ごめんなさいっ、隆君がお姉ちゃんの彼氏だって分かっていたんだけどっ。どうしても気持ちを抑えられなくてっ。わ、私、隆君が本当に好きなのっ」


 すまなそうな"隆君"と、涙声なのに、笑いを堪えられずに歪な笑顔を浮かべている妹……

 こみ上げてくる思いを全て呑み込んだ私が言えたのは、


「わかった」


 だけだった。




 私には、世界に愛された妹がいる。

 私が産まれてから17年、なに一つ勝てたことがない、愛され属性の妹。

 幼い頃は堪えきれない妬みと僻み、そして恨みも湧き上がったけど、今ではそれもおこらない。

 私は正直、諦めることに馴れてしまっていた。

 けど私には、そんな環境に私以上に憤ってくれる人が2人もいる。

 中学からの5年来の親友と、私と妹の兄だ。


「何なのっ!? 山田の阿呆はっ! お前は少女マンガのヒーローにでもなったつもりかっ! 十人並みどころか百人並みの平々凡々の可もなく不可もなくの印象うっす〜い男がっ、何が俺しかいないだっ! 支えてやりたいだっ! 山田ごときの分際で雪菜と付き合えていただけでもこの世の至上だったことにも気付かないで! 身の程知らずにもお断りだぁ〜?! コロスッ! 殺すっ!! ブチ殺すっ!!!」


 放課後の私達しかいない空き教室。

 ここにはビュッビュッっと鋭く風を切る音を出しながら拳を突き出し、何度も空中にストレートを放っている美少女と私だけ。

 彼女は私、澤木 雪菜の親友である野原 真奈美だ。

 私達は見た目も中身も正反対。

 肩甲骨の辺りまである真っ黒な髪の私と、キャラメルブラウンのふわふわパーマを肩先で揺らしているマナちゃん。

 身長150センチ。よく言えば痩せすぎ、悪く言えばガリガリという女の子特有の凹凸も無い私に対して、身長162センチで女の子らしい丸みをおびた、抜群のプロポーションのマナちゃん。

 そして何より一番の違いは、彼女の容姿を100人にきけば、99人が迷わず儚げ美少女と答えるだろう美しいお顔の持ち主ということ。(1人の例外は二次元にしか興味がない人だ)

 私達は中学1年で同じクラスになって以来の友達。

 彼女は私の1人目の彼の時も、2人目の彼の時も今と同じように怒り狂ってくれた。私と一緒に泣いてくれた。

 代わりなんていない、私の唯一の愛すべき親友なのです。


「ユキっ、気にすることなんてないんだからねっ! あんなカンチガイ四流男、あの性格ドブスにくれてやりなっ!」


 素晴らしいストレートを繰り出しながら、見た目儚げ美少女が、自分のために怒りで顔を真っ赤に染め、目を潤ませてくれる。


 うん、私は幸せ者だ。


「大丈夫。何となくだけどね、うちの学校に茜が入ってきた時から……こうなるんじゃないかなって思ってたんだ。ありがとね、マナちゃん。話、聞いてくれて」

「ユキ……」


 そう、大丈夫。今まで通り忘れよう


 そう決めた私がマナちゃんを見つめてへらっと笑うと、マナちゃんがストレートを繰り出していた両手で私の両肩を力強くつかむ。

 いきなりのことに思わず「うをっ」と、乙女らしくない声がでてしまった。


 ここで「キャッ」と自然に出せたら、山田君にふられなかったかな……

 いかん、考えないって決めたのに。


 伏せていた視線をマナちゃんに向けると、彼女が私の目をジッと見つめて叫んだ。


「ユキ、これから"陽だまり庵"に行こう! 私が奢る! 思いっきり食べようっ!!」

「そうだね、久しぶりに行こうかぁ。新作ケーキあるかな?」

「私は絶対チーズケーキっ。浮気はしないんだ」

「あ、酷い。それじゃあ私がいつも浮気ばっかりしていることになるじゃん」

「ユキは新参者が好きだからね」


 私とマナちゃんは、鼻が付くほど顔をくっつけて、2人で馬鹿なことを言い合って、帰りの楽しみを思って笑ったのだった。


読んで頂きありがとうございました。

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