表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

幸せな家族(偽)

作者: 大橋 秀人

この気持ちをどう表現したらいいのか。


四十年生きてきて、本気でぶたれたのは初めてだ。


その相手が、妻だなんて。


いい笑い者だ。




(忠彦は玲子が出て行ったドアの辺りをぼんやりと見やりながら、ウィスキーのビンを煽る)




どうしてこうなってしまったのか。


子供が手から離れたとたん、別れようだなんて。


いままで二十年、順風満帆とはいかないものの、二人で何とかやってきたじゃないか。


一生のパートナーだと思っていた。


別れるなんて夢にも思っていなかった。


別れたいと言い出されたときも、吹き出してしまったほどだ。


酔っていたからかもしれない。


だが、玲子の真剣さに気付かなかった。


そもそもそれが、既に結婚生活の破綻を物語っていたのかもしれない。


相手が真剣なのかそうでないのかすら解からないことが。




(ネクタイを乱暴に解き、ふとキッチンボードに目を留める。そこには息子の新しい連絡先が書いてあった)




玲子は、正彦も承知の上と言っていた。


あいつは何を承知していたと言うのだ。


ついこの間、三人で就職祝いをしたばかりじゃないか。


玲子も正彦も、その時は笑っていたじゃないか。


笑顔の裏で、俺との別れを決意していたのか。


二人で俺をコケにしていたのか。




(忠彦は感情の赴くまま、キッチンボードに張ってあるプリントを引き剥がし、カウンターに並べられた調味料、皿、鍋などを薙ぎ払った。けたたましい音を立て、それらは床へ叩きつけられた)




勝手にしろ。


俺は悪くない。


きっと新しい男ができたんだ。


そうに違いない。


息子と手を組んで、慰謝料をふんだくるつもりらしいがそうはいかない。


訴えるのはこっちだ。


騙された。


ずっと幸せだと思っていた。


ずっと、幸せだと思っていたのに・・・・




(皿の破片が散乱した真っ暗な部屋に、忠彦は一人、突っ伏して泣き崩れた)


男性の傲慢さを描いた作品です。

反面教師的なものだと思っていただければ。

実は、夫婦喧嘩の懺悔のために書きました。


後味が悪くてすいません。

大体において、悪いのは男のほうなのでしょう…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 大橋さんの作品は情感あふれる作品でいいと思います。ただ、ちょっとオチがストレートな感じがします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ