殲滅師は異世界チートを許さない
殲滅師ラダムが謁見の間の扉を開いた時、日野辺宗也は薄笑いを浮かべた。
数十人の美女に囲まれた彼は、ラダムに向けて賞賛の言葉を投げかける。
「すごいな。ここまで感知できなかったのは初めてだ。どんなチートを使ったんだ?」
「チートではない。結界の綻びを潜り抜けてきた」
答えるラダムは厳めしい表情だった。
彼は両手を前にかざして言う。
「ヒノベ・ソウヤ……略奪した王城で酒池肉林を満喫する召喚者。千人の妻を侍らせて富と権力を好き勝手に振るう独裁者。ここまでは合っているな」
「千人じゃなくて二千五百人の妻だ。最近、隣国から調達したのさ。それと王国一の男前って情報も付け足しといてくれよ」
軽口を叩く宗也が玉座から立ち上がる。
彼は何もない空間から黄金の剣を取り出すと、ヘラヘラと笑いながらラダムに尋ねた。
「それで俺に何の用だ?」
「依頼を受けて殺しに来た」
「はっはっは! そりゃ愉快な話だな。冗談にしても最高だぜ」
「冗談ではない。事実だ」
ラダムは真顔で述べる。
ぴくりと眉を動かした宗也はラダムを注視する。
彼の視界には、ゲームウィンドウという形でステータス画面が表示されていた。
宗也はそれらの情報を読み上げていく。
「殲滅師ラダム……百二億歳のエルフ!? スキルは魔術系が多いな。ステータスは……まあ、一般人にしては高めってくらいか。こんなステータスで俺を殺せるわけねえだろうが!」
情報を確認した宗也はゲラゲラと笑う。
彼の妻達も合わせるようにして笑っていた。
馬鹿にされながらも、ラダムの態度は変わらなかった。
彼は淡々と合掌し、ゆっくりと指を離す。
すると、それぞれの指の間に魔力の糸が出来ていた。
準備を終えたラダムは疾走する。
超越的な身体能力を有する宗也は、完璧な動作で剣を振るった。
高速に迫る彼の一撃は、ラダムを一刀両断するはずだった。
刹那、ラダムの身体がにゅるりと歪む。
斬撃の軌道から逃れた彼は、指から伸ばした糸を宗也の首に巻き付けた。
そして音もなく引き絞る。
切断された宗也の首が宙を舞った。
胴体から鮮血が噴出し、手足をガクガクと揺らす。
妻達は悲鳴を上げて、或いは歓喜して謁見の間を出ていった。
首無しの胴体はおろおろと彷徨い、頭部を拾おうとする。
それを見たラダムが軽く腕を動かす。
全身にかけられていた糸によって、宗也の胴体はバラバラに解体された。
さらに破片の一つひとつが燃え上がって消滅する。
残された生首は驚愕して呻く。
「嘘……だろ。レベル999999……で、スキルもあるのに……」
「百億年を超える地道な努力が理不尽なチートをねじ伏せた。ただそれだけのことだ」
ラダムは淡々と告げて糸を引く。
宗也の顔面に無数の亀裂が走り、次の瞬間には弾け飛んだ。
「…………」
ラダムは血みどろの残骸を睨む。
日野辺宗也の魂が元の世界へ流れていく様を見届けた後、彼は謁見の間を立ち去る。
ラダムの旅は、異世界人を殲滅するまで終わることはなかった。




