最終章 ―約束の門―(中編)
門の奥、四人がたどり着いたのは、時も空間も混ざり合う不思議な場所だった。
空は夜とも昼とも言えず、天と地の境界も曖昧で、あらゆる記憶が浮かんでは消える――その中心に、古の石碑が静かに佇んでいた。
「これは……“月の交差点”」
石碑に書かれた文字をかぐや姫が読み上げる。
石碑には、四つの円と、それを貫く一本の縦線が刻まれていた。
それはまるで、月と地上を繋ぐ門の象徴。そして、その中心にはひとつの名前が刻まれていた。
「伊邪那美」
四人は見覚えのないその名に眉をひそめる。
「誰だ……? 人の名前か?」
金太郎が問いかけると、風が吹き、空間に“映像”が現れた。
それは遠い昔――月がまだ“命を持っていた時代”。
地上と月は交流し、人々は知識と力を分かち合っていた。
だがある時、月に「記憶を集める力」が宿りはじめた。
喜びも、悲しみも、怒りも、全てを封じ込めてしまうその力は、やがて人々の感情を奪い、地上の世界を枯らしていった。
「ごめんなさい。このままでは、どちらの世界も崩れる」
そう叫んだのが、伊邪那美だった。
彼女は、自らの命を捧げて“月と地上を隔てる封印”を作った。
それが、今彼らが通ってきた**「約束の門」**の起源だった。
「……この世界の真実は、彼女だったのか」
かぐや姫の声が震える。
「彼女の願いが、いま俺たちをここに導いたのかもしれない」
浦島太郎が言う。
「だったら、俺たちはどうすればいい?」
金太郎が拳を握りしめる。
「また封印を強くするのか、それとも壊してしまうのか」
「選ぶんだ」
桃太郎が静かに石碑に手を置く。
「この分かたれた世界を、再びつなげるのか――それとも、このまま守るのか」
四人は静かにうなずき、中央に浮かぶ“月の結晶”に手を重ねる。
すると、力強く優しい低い声が彼らの心に語りかけた。
「お前たち四人は、、かつて“伊邪那美”の記憶から生まれた。
それぞれの物語は分かれていたが、今こうして集い、もう一度、選び直すことができる」
「結び直すか、守り続けるか。答えは、お前たちの中にある。私はこんなにも近くにいるのにその存在も想いも伝えることができない。どうか気づかせてやってくれ。伊邪那美の間違いを。」
静けさの中、光が脈打った。




