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第四章:犬・猿・雉 ―風を継ぐ者たち―(後編)

 “時の門”が静かに収まり、谷に再び静寂が戻った。

だが、門が閉じることはなかった。

桃太郎が悲しむ隙もなかった。

 「……何かが近づいてくる」

 かぐやが扇を閉じ、周囲の空気に集中する。

 その時だった。風の流れが反転し、谷の向こうに三つの影が現れた。

 白き狼、漆黒の大猿、緋色の大雉。三体の動物が。

 「……はやぶさ豪助ごうすけなぎ

 桃太郎が名を呼ぶ。

 三体はかつて鬼ヶ島で共に戦った、犬、猿、雉

 「時の流れを繋ぎとめる“封”となる時がきた。」と隼が険しい顔でこちらを見ていた。

 「桃太郎。少し見ぬ間に顔つきが良くなったな。」豪助が言う

 「このままでは、いずれ“時の門”が完全に開き、怨念が現在を侵食する」と梛の視線が天を見上げる。

 「ならば、俺たちが代わろう」と金太郎が言った。

 「いや、それでは真の解決にはならない」と、岩丸が唸った。「これは封印ではなく、清算のときだ。俺たち弟子が戦い、師たちを自由にする。それが、今ここに生きる者の役目だ」

 白蓮、岩丸、紅嶺――三匹の弟子たちは、静かに師の前に歩み出る。

 「隼様。どうか、最後の力を私たちにお貸しください」

 「豪助様。今こそ、拳を継ぎます」

 「梛様。あなたが見ていた未来を、私たちが切り開きます」

 三体の英雄は、しばし黙し――そして、光の粒子となって弟子たちへと力を託した。

 その瞬間、白蓮の瞳はさらに鋭さを増し、風を切る音が雷鳴のように響いた。岩丸の拳は山を割るような重みを宿し、紅嶺の翼は空を焼くような輝きを放った。

時の門が再び開いた。

仲間たちが集う。

 浦島が玉手箱を開き、時の流れを正す光を放つ。

 金太郎が地を砕いて渦の軸を断ち切る。

 かぐやが月の光を解き放ち、空に“第四の月”の紋章を浮かび上がらせる。

 そして、犬・猿・雉の弟子たちが、その力のすべてを持って“時の門”に打ち込んだ。

 ――轟音。

 天地を裂くような響きのあと、“時の門”は完全に閉じた。

 静寂のなか、光だけが残った。

 そこにはもはや鬼も怨念もいなかった。ただ、過去を受け入れ、未来を選んだ者たちの姿だけがあった。

 かぐやが天を仰ぎ、そっと呟いた。

 「これが、“四つの月”が照らす時…」


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