表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無愛想な彼に、血液と恋心をあげました  作者: れもん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/12

12話 あなたのそばで、生きていきたい

 ゼアルの家へ向かう道中、ソワソワして落ち着かなかった。意味もなくキョロキョロしたり、服のシワを伸ばしたりして、カミーユから笑われた。


 「そんなに緊張する?」


 「う、うん。10日以上会えてなかったし……。

それにもし、ドアを閉められたらと思うと……」


 「まぁ、あいつも君の気持ちは知ってるから、蔑ろにはしないと思うよ」


 やっとゼアルの家に辿り着いた。ここまで来るのに何年もかかったような気分だ。

 と、同時に気まずさもよみがえってきて、ドアすら直視できなくなった。


 「ど、どうしよう。どんな顔して会ったら……」


 「言ったじゃないか。とびきりの笑顔だよ」


 軽く言うと、カミーユはドアをノックしてしまった。

 ガチャリと鍵を外す音が聞こえ、ずっと会いたかった顔がドアから覗く。


 「カミーユ、と――」


 ゼアルの顔を見た瞬間、胸がいっぱいになって、緊張も不安も何もかも吹き飛ぶ。 気がつけば彼の胸に飛び込んでいた。


 「ゼアルッ」


 「わぉ、大胆」


 「リ、リィス……恥ずかしいから、せめて中に入ってからな?」


 カミーユのからかいを受けてか、戸惑った声でゼアルが言う。久しぶりの優しい声に、腕に力が入る。


 「リィス……まだ外だから……」


 「ははははっ。じゃあ、僕はお邪魔みたいだから、この辺で」


 カミーユの言葉を聞いて、慌ててゼアルから離れた。

改めてお礼を言いたいからだ。


 「カミーユ、本当にありがとう!」


 「どういたしまして。……ゼアル、大丈夫だよね?」


 「ああ。もうしばらくは大丈夫だ」


 「もうしばらく……?」


 私からは疑問の声で、カミーユからは低く、確かめるような声で言われて、ゼアルの顔から血の気が引いた。


 「す、少なくとも一月ぐらいは。また危なくなったら連絡するから、その怖い笑顔をやめてくれ、カミーユ」


 「そうだと嬉しいな。約束、したもんね?」


 「約束?」


 「ああ……。リィスには後で話すよ」

 

 しどろもどろに言うゼアルを見て、カミーユはゆっくりと目を細めて笑顔を作った。


 「まぁ、半分は冗談だけどね。でも、本当に危なくなったら言うんだよ?」


 「もちろんだ」


 「うん、即答。ゼアルはちゃんとしてくれるから大丈夫だね。

  じゃあ、またね」


 カミーユは私達に背を向けると、そのまま去って行ってしまった。

 ゼアルに軽く肩を叩かれて、見上げる。


 「なに?ゼアル?」


 「その、とりあえず中に入ろうか。たくさん、話したいことあるし……」


 「うんっ!」


 ゼアルに肩を抱かれながら歩く。嬉しくて嬉しくて、ずっと顔がニヤついてしまった。



 「さて、どこで話す?上?それとも……地下室?」


 「地下室がいい!」


 ここよりも地下室の方が、ゆっくり落ち着いて話ができる。

間髪入れずに答えると、ゼアルは微笑んだ。


 「わかった。じゃあ、行こうか」


 地下室に降りると、ゼアルは背中を壁に預けて座り、私を呼ぶ。


 「さ、おいで、リィス」


 「へ……?い、椅子に座らないの?」


 「この方が……ゆっくり話せると思ってさ。……嫌か?」


 「ううんっ!そっちの方がいい!」


 たまらず、ゼアルの腕に飛び込む。さっきからゼアルにくっついてばかりだ。

 私が落ち着いたのを確認すると、ゼアルは重々しく口を開いた。


 「リィス、本当にごめんな……。怖がらせてしまって……」


 「ゼアルは悪くないよ!私の方が謝らないといけないの。ゼアルの隣にいるって言ったのに、どんなゼアルでも好きって言ったのに、離れちゃって……」


 「リィス……」


 ゼアルが私の頭を優しく撫でる。確認がないのは珍しいと思ったけど、

それよりも嬉しくて、恥ずかしくて、話題を変えることにした。


 「そういえば、カミーユは"暴走"って言ってたけど、あれって何だったの?」


 「あれは……吸血鬼の本能みたいなものだ。衝動を抑えられなくなる。

意識はあったんだ。でも、それだけで、体と口は勝手に動いてた」


 「そう、だったんだ……」


 赤い目のギラつきや、ゼアルらしくない言葉遣いを思い出して身震いしてしまう。それに気づいたのか、ゼアルがソっと腰に手を回して引き寄せた。


 「ああ。そもそも俺は……初めてリィスを見た時からベタ惚れだったんだ。

だから、血液提供の日が来るのが、楽しみで仕方がなかった」


 「全然そんなふうに見えなかったんだけど?」


 思わず突っ込むと、ゼアルが照れたように顔を赤くして笑う。


 「そりゃあ、必死に顔に出さないようにしてたからな」


 「顔に出してくれたら、私も早く意識したのに……」


 「リィスの気持ちもわからないのに、表に出す勇気はなかった……」


 ゼアルは自分を落ち着かせるように一息つくと、話を続ける。


 「話、戻すな? 

  それで、付き合い始めて、ますます気持ちを抑えるのが難しくなって。

リィスの言葉を聞いた瞬間、目の前が真っ赤になった……」


 「ごめんね……」


 「リィスが謝ることじゃない。俺が、ちゃんと制御できるようにならないといけないんだ」


 「私、もしまたゼアルが暴走しても逃げない!絶対一緒にいる!」


 「リィス……」


 ゼアルの顔を、目を見てハッキリと言う。もう、あんな身を引き裂かれるような思いはしたくない。


 「俺も、暴走してしまわないように努めるよ。

だから……これからも一緒にいてくれるか?」


 「もちろんっ!」


 笑顔で答えた私にゼアルは微笑むと、額にキスを落とした。

 ビックリして固まった私に、ゼアルはどこか意地悪そうな笑みを浮かべる。


 「そういうところ、好きだよ。リィス」


 お返しに、ゼアルの頬にキスした。さすがにビックリしたようで、ただ瞬きを繰り返している。 


 「私もだよ。ゼアル」

 

 「本当に変わってるよ、君は」


 ゼアルが再び抱きしめてくる。

 壁にかけられた時計の「ⅻ」を知らせる黄色い光が、淡く、それでもしっかりと輝いていた。 

このお話で完結となりますが、余裕ができれば続編も書くかもしれません。


評価等いただけると励みになります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ