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第7話「デザートは外せない」

「ったく。現場何してる。行くぞ」

「え、まだ食べ終わってないです。あ、お会計しとくんで総監先にどうぞ」


 緊急時、警察官とはいえ無銭飲食は犯罪だ。


「ち、早くしろよ」


 榊原は店を急いで出て、現場に向かう。

 警備を強化していたとはいえ、この爆発だ。現場は混乱していた。


「うろたえるな!無事な者は報告。周辺の道路を封鎖しろ。封鎖の次に動ける者は担架が動けるようにスペースを確保し救急隊員に任せろ。無傷な店員には事情聴取。身元が確認できるまで何としても押さえろ!」

『はい』


「遅い」

「デザートがなかなって違います。ちゃんとお仕事しながら来たんでしょうがないです」

「デザートを食うのが仕事だったとはな」


 人を殺せるくらいに鋭い視線を向ける。


「『千導院』に要請しました。激化具合を鑑みて情報レベルBを共有し、要請の受領まで確認しました」

「そうか」


 異能により現場に残っている証拠が皆無に等しいと、現行の法制度では逮捕が難しい。

 『異能者』犯罪は何より異能の種類と犯人の特定の早さが必要だ。

 榊原は追加で指示を出し始めた。


「あれって例のテロですかね?」

「恐らくな。あれだけ警察がうろちょろしてる中での事件とは。まぁ、巻き込まれなくてよかった」

「てことは『異能者』ですかね?」

「可能性は高いだろうな」

「あ。ごめんなさい。電話出ていいですか?」

「ああ、好きにしてくれ」


 助手席に座ってるナツキは小声で電話に対応する。


「どうしたの?」

「今あんたどこにいるの?」

「急にどうしたのさ茜」

「緊急速報でまた爆発事件だって」

「大丈夫だよ。宗藤さんと一緒だし、もう家に帰る途中」

「そう、明日学校でね」

「うん。ばいばい」

「女の勘はすごいな」

「心配してくれるのはありがたいんですけどね」

「贅沢な悩みだな」

「あ」

「どうした?」


 ナツキはふと思った。


「もしかして、犯人て意外と近くに住んでる人だったらどうしようと」

「あー確かにな」

「もしかしたらですよ?最近異能が発現して、それが家電の何かを爆発させるものだとしたら?」

「……」


 宗藤は黙り込む。かなり可能性の高い推理だからだ。


「でもそうだったら複雑ですよね」

「?」

「もう仕方ないんですけど、こう『異能者』の犯罪のせいでどうやっても危険じゃない僕もひとくくりにされちゃいますからね」

「そうだな。何かあれば言ってくれよ?神崎君には特別に無料でプロが相談になってあげるからな」

「学校の先生としてならもともと無料ですよね?」

「は、確かにそうだ、これは失礼した」

「そうえいえば、宗藤さんは異能を悪用したことってあるんですか?」


 宗藤の異能は聞く限りかなり、便利そうだ。


「ありまくりだ」

「え?」

「警察から捜査協力が来るだろ?犯人逮捕するとはいえ、戦闘行為は一応犯罪行為ではあるからな」

「なるほど。宗藤さんは危ないこともやってるんですね」

「まぁ、盾扱いだけどな」


 ナツキの家に到着した。


「爆発の犯人捕まるでしょうか?」

「たぶんな。これだけ派手にやってるんだ。いくらなんでも捕まるだろう。警察もバカじゃない。もしかしたら犯人の異能の種類くらいならもう特定してるんじゃないか?」

「早く捕まって欲しいです。こんな近くでも起きるなんて」

「もしかしたら学校休みかもな」

「え?」

「学校から臨時の 臨時の職員会議を行うってきたわ」

「ああ。確かにそうかもですね」

「行きたくないけど、行ってくる。休みになっても勉強は疎かにしないようにな」

「はい、送ってくれてありがとうございます」


 宗藤はそのまま学校に向かった。

 車駐車場に止めると連絡をする。


「はい。これから学校で職員会議だそうです。恐らく爆発事件の影響ですね」

「なるほど。新しい情報が入ったから共有するよ」


 電話の相手は柳原だ。


「卒業生の年齢情報が入手できてね。計算すると最低でも八年はそこにいる。該当者は六名」

「六名ですか、だいぶ絞れましたね」


 今回追っている人物は教師陣の可能性が高くなった。


「ああ。今データ送ったけどそれがその六人だ」

「ありがとうございます。では、会議に行ってきます」

「気を付けて」


 宗藤は職員室に入る。


「これから臨時の職員会議を始めます。もう皆さん知ってるかと思いますが近くで例の連続テロが起きたとのこと。警察からも気をつけるようにと連絡が入りました。それに保護者から問い合わせが相次いで、事務の方も忙しいとのことです。なので明日一日は臨時休校にしたいと思います。なのでそれについてのスケジュール合わせ等を行います……」


 宗藤には関係ないので聞き流す。


「三年の数学は一コマ足りないのは次の学力テストに大きいと思うので開いている休日の午前中にいれて欲しいです」


 三年の数学担当が発言した。

 肥満体型で体毛が濃い。

 会議が終わり、教師たちは各自作業に戻った。

 意外にも校長が宗藤のところにやってきた。 


「宗藤先生、彼の様子はどうですか?」

「彼?」

「神崎ナツキです」

「あぁ神崎君ですか」


 これにも宗藤は驚いた。

 採用時に交わした会話からあまり生徒個人個人にはあまり関心がない、そう印象だったからだ。


「いやなに、私が勤務して初めて異能を持った生徒でしてな。幸いなことに彼の異能は暴走したって誰かに危害を加える物ではないし、性格に問題があるということもなさそうなので大丈夫だとは思うのですがね」

「そうですね。学力、性格、生活態度も問題ないですよ」

「そうですか。やはり専門家から聞くと安心できますな」

「いえ、滅相もないです」


 納得した。

 生徒個人の心配ではなく、トラブルが起きないかどうかの心配だったようだ。

 翌日、宗藤はナツキの家に行くことにした。事件の情報を共有するためだ。

 内容が内容なだけに詳しいことは教えてはないからだ。

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