第31話「夏休み」
ナツキは保健室で宗藤から注意事項の説明を受けていた。
「まぁ、神崎君のことだからハメを外しすぎないとは思うけどな」
夏休みに入るにあったてのお約束の注意だ。
「学校から出る課題も忘れずにやること。……後は俺が言うまでもないが、二期制だから通知表はまだ配られない」
ナツキは頷く。
「ここからは職員じゃなくて、俺からの連絡」
「宗藤さんからの?」
「ああ。君はもう立派な紅い家のメンバーだ。悩むことがあればいくらもで聞いてくれ。何かあれば相談してくれ」
「はい」
「来年は進路で大変な時期だ。今年の夏はめいいっぱい遊べる最後の夏だろう。青春を謳歌してくれ」
「ありがとうございます」
「もしかしたら、何か組織の依頼をお願いすることがあるかもしれないが、そん時は協力して貰えるとありがたい。もちろん、事情で断ってくれても構わない」
「そうですね。それで宿題終わらないとかはまずいですからね」
「ナツキー帰りましょう」
保健室のドアが開く。
「うん、宗藤さんさようなら」
「ああ、さようなら」
ナツキは茜と一緒に暑い中下校する。
「今年はさ、合宿があるんだよね」
「部活の?」
「そう、だから。明日から宿題やろう?」
茜はバスケ部に入っている。
バスケ部の合宿で二週間ほど泊まり込みで練習するそうだ。
「それはいいよ。あ、もしかしたら刹那ちゃんが来るかも」
「おっけー。ならお菓子たくさん持ってくわね」
「いいけど、勉強会だからね?」
「も、もちろんよ。てか刹那ちゃんは毎日来るの?」
「ううん、さすがにたまにだと思う」
「そっか。あんたが行くことはあるんでしょ?」
「うん。勉強に護身術習いにね」
「そいえば、ちょっと筋肉ついてきたんじゃない」
茜はナツキの体をまさぐる。
今のナツキの体は男なので控えめであった。
ナツキは少しばかり高揚していた。
去年は例年通り、家族、茜と遊ぶだけだった。
しかし、今年は違う。『異能者』である宗藤、そして刹那。
いつもとは違う夏休みになりそうな予感がした。




