第22話「楽しい時間は一瞬で終わる」
夕方になり楽しい女子会もお開きの時間だ。
「とっても美味しかった。ナツキ、茜ありがとう」
「美味しかったね。なんかお腹減ってきちゃったよ」
「やっぱあんたのお腹はおかしいわよ」
「腹ペコ大王参上」
「じゃ、さこのまま夜ご飯食べてく?」
ナツキはしょっちゅう茜宅で夜ご飯も食べている。
「いいの?」
「大丈夫。今日ナツキが来るって言ってるからさ。刹那ちゃんはどう?」
「……」
「ごめんね、無理強いはしないからね」
「ううん。初めて、どうすればいい?」
「そうだね。梅姉さんに聞いてみたら?」
刹那が梅姉に連絡し、無事に了承を得た。
「刹那ちゃん、切るの上手」
刹那の料理の腕前である。
三人は夜ご飯を作り始めた。
「それに比べてナツキときたら」
「な、別にちゃんと切れてるじゃん」
「この具材の大きさのバラバラ具合」
「た、食べれば一緒だよ」
「だめねー。料理は見た目も大事なのよ」
茜の言う通りである。
「茜は綺麗」
「ありがと。料理を習ってるからこれくらいは当然よ」
「僕も習おうかな?」
「止めときなさい。あんたがつまみ食いしてきっと料理完成しないから」
「そこまで食い意地ありませんよーだ」
刹那は二人をじーっと見つめる。
「とりあえず甘口だけど刹那ちゃん大丈夫だよね?」
「大丈夫。量いっぱい」
「そうね。私達三人と、うちの親の分もあるからね」
カレーが完成した。
茜母から帰りが遅くなるから三人で食べてと連絡があり、仲良く食べ始めた。
そして、ニュース速報が入る。
『先日から騒がれていた爆発事件において容疑者が逮捕されました』
『また、長い間議論されていた『異能者』犯罪の罰則強化などを盛り込んだ法案がこれにより提出され可決される見通しです。今夜十時から緊急の会見が行われるとのことです』
「信じられないわね。ナツキと刹那ちゃんのおかげで逮捕されるなんて」
「僕はなにもしてないよ。刹那ちゃんのおかげだよ。影のおかげで爆発しなかったんだから」
「それよ。改めてありがとうね。私たちの命の恩人よ」
「うん」
刹那はぎこちないが笑った。
「でも、ちょっと心配」
茜が落ち込む。
「えーでも、犯罪するつもりないし関係ないよ」
茜が気にしているのは法案についてだ。
「だといいんだけどね。刹那ちゃんおかわりはいる?」
「いる」
「あ、僕も。っていいよ自分でよそるよ」
「あのね、あんたが好きによそるとなくなっちゃうでしょ?」
「さ、さすがに加減するよ」
茜はナツキと刹那の皿にカレーをよそう。
学校のこと、授業のことなど三人で喋った。
インターホンが鳴り、宗藤が刹那の迎えにやってきた。
ついでにナツキも送ってもらうことにしたのでお開きになった。
「佐霧さん今日は本当にありがとう」
「いえ、ただ遊んだだけです」
「茜、ばいばい」
「刹那ちゃん、ばいばい」
「茜また明日ね」
「うん」
挨拶を済ませ車に乗る。
「聞いたぜ。お手柄だったそうだな」
「びっくりしましたよ。あの人が犯人だったなんて」
「確認なんだが、犯人の男を触ったんじゃなくて、電池を触ったら発動したんだよな?」
「そう。勝手に破壊した」
「そうか。それはよかったな」
ナツキは首をかしげる。
犯人逮捕は良いがお店に迷惑かけたのも事実なのだ。
「前に一回、男じゃなくて異能が仕掛けられた物に発動したことがあってな。そん時は俺が止めるまで影が出たままだったからな」
「しんぽした」
「刹那、ちょっとだけ神崎君の両親に挨拶だけするから乗っててくれ」
ナツキの家に着いた。
ナツキと宗藤は車から降りた。
「神崎君、本当にありがとう」
「そんな、偶然ですよ」
刹那の異能のおかげである。それに取り押さえたのは梅原である。
ナツキだけなら気づけなかったし、逃げられていただろう。
「ああ、そっちじゃな。刹那と遊んでくれさ。ばーさんから聞いた」
「僕の異能なんて何の役にも立たないですから。役に立てるならよかったですよ」
「これからも刹那のことよろしく頼む」
宗藤は頭を下げる。
「はい。送ってくれてありがとうございます」
「ああ。また明日学校でな」
「はい」




