第18話「紡がれる疑惑」
翌日、図書館前で待ち合わせし、ファミレスに入る。
「改めて確認するけど、危険なのよ?」
「はい。それは覚悟してます」
「……」
「知ってる範囲でしか言えないし、どこまで正確か保証できないっていうのは言っておくわね」
朽平は独り言のようにつぶやき始めた。
「とある少女がいました。少女は『異能者』という存在はもちろん知ってたけど、大半は隠していたみたい。少女の周りには『異能者』なんていなかったわ」
今も変わらずだ。
「少女は学校でいたって普通の人物でした。学力は学年で上の中か下くらいで悪くはありませんでした。少女は進学を希望し、推薦を取りたかった。推薦枠は当然限りがあって少女は成績に関しては問題なかったけど、体が弱くて学校を休むことが多かった。届くか届かないかぎりぎりラインだった。結果的には少女は無事推薦枠をもらい、合格して進学したわ」
それはめでたい話である。それと事件とどう結びつくのか。
「少女は推薦をもらう前、一か月ほど行方不明になってたわ。普通ならこの時点で推薦なんて貰えるはずないのね」
「……推薦をもらうための失踪した?」
「少女はその一か月の事を誰にも言わなかった。秘密にしていたわけじゃなかった。言いたくても言うことができないだけ」
失踪。言いたくても言えない。推薦。
「異能で口封じされた?……言えない内容の代償として推薦をもらった?」
紡がれる一つの可能性。
「……貴重な話ありがとうございます」
「そうね。話した代わりに君の異能について質問してもいいかしら?」
「あ、はい。答えられる範囲であれば」
朽平はさまざまな内容な質問をしてきた。
中には性欲等かなり答え難いこともあった。
なんとか朽平を切り抜け自宅に帰った。
月曜日になり、ナツキは保健室にて宗藤に朽平の話した。
「異能で口封じか……ありがとう。かなり事件の真相に迫ることができる情報だ」
昼食になるまで保健室で自習。昼食を茜と一緒に食べ、午後は紅い家に向かう。
紅い家では梅原から座学、護身術についてのレクチャー。
あっという間に週末になった。
とあるオフィスビルの一室。
俗に言うペパーカンパニーであり、会社としの実態はほぼない。
「ボス、戻ってきたみたいです」
スーツ姿の女性がドアを開ける。
「公安の裏切り者は始末しときましたよ」
新調したスーツに身を包んだ原咲がおじぎをして入室する。
「だからといって紅い家と接触は看過できません」
「私は貴方に看過されるかどうかで動いておりません」
「な」
「いい、止めとけ。原咲、ご苦労さん」
「ぼ、ボスよろしいのですか?」
「あんた接触しただけで事を構えたわけじゃないんだろ?」
「はい」
「ならいい。だけど、今後当面あそこと関わるのは控えて欲しい」
「当面私も療養せねばならないので。しかし、理由を聞いても?」
「紅い家だけじゃねーさ。今大規模組織とやるなってことだ。例の法案の結末がはっきりするまでは」
「ボスの言う通りです。以前にも説明したはずですが?」
「それにな、あと数か月したら外から愉快なやつらがひっかきましてくれる」
「なるほど、?大宴会ですか」
「ああ。だからそれまでは大人しくしとけ」
「承知しました」
原咲は部屋から出て行った。




