第16話「かくれんぼ」
それは小学生になるくらいの頃だった。
いつものように茜と遊んでいた。
「ねぇなつき、かくれんぼしよ」
「いいよ。どっちが鬼やる?」
「私隠れるから探して」
「じゃ、十数えるから」
「早いー二十秒」
「分った。ずるしちゃだめだよ」
「もちろん」
公園でかくれんぼをした。
公園の入り口に箱がおいてあった。
茜はそこに隠れた。
公園に見つけ、かくれんぼするなら隠れようと目星をつけていた。
「……茜?どこ?」
返事が返ってくることは期待していない。
ナツキはよく隠れる場所を探すが一行に見つけれない。
当時、公園の東側は住宅地が広がり、西側は倉庫や駐車場、空き地などが多かった。
無人の倉庫を二人だけの秘密基地にしていた。
公園では見つからないので、そちらに行ったのではとナツキは秘密基地に向かう。
「な、なんでガキが入ってやがる!」
茜が入っていた箱は倉庫に運ばれた。
そして、箱の中には子供が入っていた。驚くなというのが無理である。
「ごめんなさい」
茜はパニックになっており泣きながら謝る。
秘密基地に向かっていたナツキも声が聞こえ、声のする方に向かった。
「茜いる?」
「なんだ、またガキか。ここは遊び場じゃねーんだよ」
怒鳴り声にナツキも固まる。
「騒々しいですね」
「は、原咲さん?どうしてあなたがこんなところに?」
「その子供はなんですか?」
原咲は男の質問には答えず、質問をする。
原咲の方が立場が上なのだろう。男は従順に答える。
「遊び場と勘違いして入り込んできたんですよ」
「そうですか。不愉快ですね」
「本当っすよね」
原咲は杖を振る。
「え?」
腹が裂け血が溢れだす。
「アナタ達のことですよ。子供が侵入してくるまで気づかない愚鈍さ、そして愚かにもばれないとでも思ってるんでしょうか?私は一般人は嫌いですが無能な一般人はさらに嫌いなんですよ」
男は倒れ込む。
「裏切りには死を。私は処分のために足を運んだのですよ」
原咲は笑う。
「すみませんねぇ。いくら子供とはいえ見られたからには帰す訳にはいきません。安心してください。君には罪もない。痛みも感じさせることなく裂いてあげますよ」
ナツキは逃げたかったが逃げるわけにはいかなかった。
「おや、子供にしては見上げたものです」
ナツキは箱を背に原咲に相対する。
箱の中には茜がいるのだ。逃げることなどできない。
濃厚な血の匂い。
現実でみたことない血の量。
ナツキの視界は歪む。
サイレンの音でナツキは意識を取り戻した。
男たちは皆斬り刻まれ、地面に転がっていた。
ナツキは頬が少し切れていただけでそれ以外怪我はなかった。
原咲の姿はどこにもなかった。
パトカーのサイレンで逃げ出したのだろう。
「茜?大丈夫?」
ナツキは箱を開ける。茜が飛び出してくる。
「ナツキ、え?大丈夫なの?」
「大丈夫だよ」
茜は後ろの光景を目にしさらに泣きだす。
自分のせいでナツキが恐ろしい目にあった。茜の涙は止まらなった。
「ごめんね私が、私が」
「大丈夫、茜のせいじゃないから。大丈夫だからお家に帰ろう?」
「病院いかなきゃ!」
「でもそんな痛くないし、そんな怪我じゃないよ」
「ナツキ!大丈夫!ナツキ!」
ナツキがいきなり倒れた。
駆け付けた警察により迅速に対応が行われ、ナツキは病院に運ばれた。
頬の傷だけで、とくに問題はなかった。
「よかった。茜が無事で」
病院で目が覚め茜を見るなり出た言葉。
茜は再び泣きだす。
後に二人は事件の顛末を知る。
男たちは黒壁の楽園の協力者だった。組織の資金を着服したのが発覚され私刑になった。
警察到着時に原咲は逃亡した後だった。もう少し遅ければ、二人も口封じで無事ではなかった。




