第15話「襲撃」
午前中は保健室でいつも通り。昼を食べて、また校外学習という形で紅い家に向かっていた。
宗藤はコンビニの駐車場に止まると端末をせわしなく操作する。
「どうしたんです?」
「……神崎君と刹那はすまないが、残りは歩いて向かってくれるか?あっちの裏路地から行っても着けるからさ」
「大丈夫ですけど……」
「面倒な連中がつけてきてるみたいでな」
「『異能者』のトラブルってやつですか?」
「ああ。二人を巻き込むわけにはいかないからな。ここで別行動する」
宗藤が姿を現し誘導するとのこと。
ナツキと刹那は車から出て、裏路地へと進む。
「お前ら『異能者』か?」
「え?」
路地裏に五、六人程度の集団がたむろしていた。
避けようとしたところ声をかけられた。
「そいつは見たことあるぜ。宗藤が連れてるガキだな」
刹那を指さす。
「俺達は黒壁の楽園のもんだ。聞いたことあるだろ?」
もちろん知っている。『異能者』至上主義。
『異能者』のみの世界を求め活動する過激派組織。
「お前ら俺達の仲間にならないか?」
「断ります」
「むさいの嫌」
「殺すのか?」
「ああ。あの人の前だぞ。それ以外あるまい」
ナツキは硬直した。
物騒すぎる発言が聞こえた。
「ん」
刹那の影がいきなり飛だした。
男が何かを投げつけたようだ。
「防ぐか」
「これならどうだ」
男がいきなり刹那の目の前に現れた。
「お前ら、こいつはやべー。距離とって戦え!」
まるで映画のようだった。
刹那を殴ろうとした男は影と接触すると、体が二つに裂けていた。
濃厚な血の匂い。
現実でみたことない血の量。
ナツキの視界は歪む。
「女のガキ狙っても無駄だ。男のガキ狙え」
刹那の影によって全ての攻撃が防がれる。
「ナツキ、手握って」
「う、うん」
迷わずに刹那の手を握る。
情けないがナツキに今できることはない。ならば刹那の指示に従うだけだ。
「ねぇ、ナツキ?私を信じてくれる?」
「え?」
刹那は恐る恐る告げる。
「私の影傷つける。でも私守るだけ」
刹那の影はナツキを含め敵の攻撃から守っている。
「でもナツキも守りたい」
「え?もう十分守ってもらってるよ」
「私、『異能』勝手に出てる。今使いたい」
ナツキはうなずく。
「今まで怖くてできなかった。でも今ならできそうな気がする」
「そっか。僕は何すればいいの」
「信じて」
「なんだ、なら信じてるよ最初から」
刹那の異能は聞いている。見ている。
危ないとは思うが、怖いと思ったことはない。
「ありがと」
『影袖の息吹』
刹那は初めて自身の意思で異能を使った。
影が伸びる。
「ぎゃ!」
「くそ」
男たちは攻撃を止め、さらに距離を取る。
一人は影を避け損ね、腕が裂け血を流す
「どうする。今のメンツじゃ厳しいんじゃねーか?」
『影袖の息吹』
「せ、刹那ちゃん!」
刹那の体がよろける。
ナツキは受け止める。
「すごかったよ」
ナツキはそのまま刹那を抱きかかえ逃げることにした。
刹那が生み出してくれチャンスだ。
「何をもたついてるんですかね?時間優先ではなかったのですかね?」
「は、原咲さん」
場にそぐわない声。
男たちの態度が変化する。
「な、なんで……」
原咲と呼ばれた老人。
衝撃のあまりナツキは立ち止まる。
幸い男たちも同様に静止している。
「同志なら歓迎する、敵ならば斬り伏せる。簡単なことにどうしてこうも……」
ナツキは知っている。
この指名手配犯を。
ニュースで見ただけじゃない。
実際見たことがあるのだ。




