第14話「横やりの不手際」
その日の夜。警察に重大報告がなされ、警察は混乱していた。
緊急の連絡が入ったため、榊原は警察署にいた。
「ふざけるな」
机をたたきつける音が総監室に広がる。
「負傷してるとはいえ、逃走し続けていた『異能者』だぞ。あれだけ言ったのに公安はなにしてる!」
尋常じゃない怒りだ。
「『千導院』には警戒するように伝えてあります」
「そうか……」
沢田からコーヒーを渡され飲む。
榊原が怒っている理由は公安からもたらされた連絡。
指名手配犯である原咲の逃亡。
原咲が逮捕直後、公安が原咲の身柄を強制的に連行した。
警察と公安は分類は確かに同じ組織ではあるが、実態とはかけ離れている。
横取りともとれる暴挙に抗議したが聞き入れらなかった。
そして、逃亡されと来たのだ。平常でいる方が難しい。
「そうだ、総監。署に来るの優先して、見てない動画あるんですけど見ます?」
「……好きにしろ」
榊原は内容に絶句した。
「お前のことだから入手できたとて、これの正確性はあるのか?」
「工作する時間がないと思うので、本物かと」
それは創作物ではなかなかお目にかかれないもの。
監視カメラにより記録された原咲の逃走映像だった。
遭遇した職員の首を切断。
「これは深刻ですね」
「だろうな。こちらも一度洗っておいた方がいいな」
「そうですねえ」
原咲は時折立ち止まりなどはするが、迷う様子もなく的確に建物内を移動している。
一般人が気軽に立ち寄れる施設ではないのだ。
情報が共有されていた可能性がが高い。
つまり、協力者が公安内部にいるはずだ。
「あ」
沢田は一つの可能性に至る。
榊原は無言で言葉の先を促す。
「これ実は公安の仕込みってことはないでしょうか?」
「人命を使ってすることか?」
「そもそもあっさり逮捕ってこと自体に私は違和感がありました」
原咲の逮捕、逃亡は公安が予定していた自体であるという可能性。
「原咲が公安と繋がりがあり、黒壁に対してのスパイ?」
「荒唐無稽だな。俺からすればありえないと思うな」
「どうしてです?」
「あいつの狂った信念とやらだ」
沢田は榊原を見つめる。
「こいつは独自の信念で動いてる。一般人だろうが『異能者』だろうが殺してる。策を弄してえ黒壁に手を出すなら、直接黒壁のメンバーを殺すだろう」
「なるほど、刑事の勘ですかね?」
「今までの行動から基づく予測だ」
「はいはい、では洗浄優先でいいですかね?」
「ああ。任せる」




