第13話「チーズケーキ」
梅姉に連れら食堂スペースにやってきた。
そこには刹那とセバスチャンがいた。
「あら、ナツキちゃんに梅姐さん。初めて見る組み合わせね」
「あぁ。宗藤が戻ってくるまでこの坊やを頼んだよ」
「了解よ。ちょうど、刹那ちゃんのために作ったケーキがあるの、ナツキちゃんもいかがかしら?」
「ありがとうございます」
「紅茶は大丈夫かしら?」
「はい、辛いの以外なら基本大丈夫です」
「そう、良かった。刹那ちゃんも見習ってちょうだいね。あんまり好き嫌いすると強行手段をとっちゃうわよ?」
セバスチャンのウィンクも無視してケーキを頬張っている。
「チーズケーキですか?」
「そうよ。下はタルト生地で割れやすいから食べる時気をつけてね」
ナツキは一口つまむ。
「お、美味しいです。クリームも滑らかでいくらでも食べれます」
「もう、お世辞が上手いんだからって……もう食べ終わったの?」
「す、すいません」
「ナツキ、大食い大王」
頬にクリームをつけながらナツキを説明する。
セバスチャンは宗藤同様驚いていた。
刹那がこうも懐いてるなんてと。
刹那がセバスチャンに慣れるには数年をようした。
「ふふ、あ。たくさん食べるんだっけね」
「え?あ、宗藤さんに聞きましたね」
「まだあるから遠慮なく食べてね」
「ありがとうございます」
二つ目を食べ終えると、刹那も食べ終えナツキの膝の上に乗る。
「紅茶残ってる」
「あ、そうだありがとう」
紅茶を飲み干すと口の中もちょうど良くなった。
「セバスうるさいけど、料理も紅茶も美味しい」
「あらーもう、うるさいって失礼しちゃうわね」
ぷんぷんと、指を頬にあて頭を振る。
「セバスチャンさんて……」
「セバスでいいわよ」
「セバスさんも『異能者』なんですか?」
「あら、知りたい?」
「いえ、言いたくなければ大丈夫です」
「そうね。とりあえず秘密かしら?想像にお任せするわ。まぁ、ナツキちゃんが特別にお願いしてくれるなら教えてあげてもいいけど」
「はは」
「相手しなくていい。いつもの親父ギャグ」
「あら何よ刹那ちゃん妙にナツキちゃん贔屓で。ずるーい、てか親父ギャグじゃないわよ、乙女ギャグ」
そんな他愛もない?やり取りの中宗藤がやってきた。
「あら、場違いなおじさんが来たわね」
「な、場違いって」
「私たちガールズトークの最中だったのにね」
ボケの乱舞に宗藤はどう対応するか悩んだ。
ガールズとは、この場に刹那しかいない。仮にナツキを入れたとしてどう分類してもセバスチャンが入るのは難しい。
もちろん、あくまで思考しただけで口に出す勇気など宗藤はない。
「親睦が深まったなら何よりだ。とりあえず、送るよ」
「はい。セバスさんケーキご馳走様でした」
「いい子ね。来る時はいつもでいってちょうだい。倍のケーキやご飯用意してあげるから」
「本当ですか?」
「えぇ。気持ちいほどの食べっぷりですもの、作りがいがあるわ」
紅い家を後にした。
「どうだった?」
「いろいろと初めて聞く内容だったので勉強になりました」
「それならよかった」
「ナツキ、私も知らないから無理する必要ない」
「それはお前が勉強したくないだけだろ。安心しろ、もうじき勉強させるから予定だからな」
「いや」
「無理だろ?俺ならまだしも梅のばーさん相手だと」
ここでナツキは一つの疑問をぶつける。
「そういえば、なんで梅姉さんのことばーさんって言うんですか?」
口調が老獪な様を感じさせるがどう見たって老人には見えないし、宗藤より若く見えるのだ。
「あーそれは俺の口からは言えない」
「刹那ちゃんは?」
「言えない。ウメネーは怒ると怖い」
「だよな。所長ですら怒られるからな」
「怒ったら怖そうですけどそこまでなんですか?」
うっすらと想像ができてしまう。
これ以上はまずいと判断した。
「今日はありがとうございました」
「いいや、お疲れ様ゆっくり休んでくれ。また明日学校で」
「はい。刹那ちゃんもばいばい」
「ばいばい」
ナツキは家の目の前で降ろしてもらうと車は去っていった。
ナツキは風呂から出ると着信があったようなので折り返しの連絡をした。
「どうしたの茜?」
「どうしたのじゃないわよ。どうだったの?今日は」
「『異能者』のこととか、勉強してた」
「へー。どんなの?」
「異能の種類とか歴史とか」
「そう。楽しい?」
「うーん。別に楽しいわけでもないけど、新しいことで勉強のしがいはあるよ」
「そっか。ナツキはナツキだよ?」
「うん。ありがとう」
梅原の言葉が蘇る。
茜がいるのが当たり前のようだが、実際これはかなり恵まれていることなのかもしれない。
「茜、高校卒業してもさ、こうして話したり遊んだりしていい?」
「はぁ?な、何よそれ。許可なんていらなわいよ。それこそ休日あんたの家突撃してあげるわよ」
「それは困るけど、ありがとう。これかもよろしくね」
「急になによ。熱でもあんの?」
「ううん、なんでもない。お休み明日学校でね」
「うん、おやすみ」




