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読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。

「...きっと、きっといるはずだ。この山に!絶対!」

昨日、あの髪飾りを見つけてから僕は学校に行かずにあの子を探し始めた。やっと見つけたあの子の断片、学校に行ってる暇なんてなかった。

「おっ、いたいた。探したんやで、護留。」

「直途...と音羽さん。」

「山代さん、今日学校に来なかったから神隠しにでもあったのかと焦ったよ。まさか昼間から探してたの?」

立場上、二人は僕を放っておけないんだと思うけど、わざわざ探しにまで来るなんて思わなかった。そして周りを見ると、いつの間にか夜になっている事に気づいた。まだ、他あの子は見つかっていないのに。

「で?今日はこの山を探すんか?」

「ああ、昨日はこの山であの髪飾りを見つけた。だから、きっといるはずなんだ。」

「...そう。まあ、好きにすればいいんじゃない?私達は勝手に着いてきてるだけだし。」

僕は再びこの山を登り始めた。大して大きな山という訳でもないけど、それでも広い。無謀な捜索だ。でも、僕は探す。あの日見た、あの子の笑顔をまた見るために。


「なあ、護留。やっぱりやめにしないか?こんなの、無謀やて...。」

この山の中を探す事だろうか?それとも、あの子を探すこの行為自体を?どちらにしろ、やめる気はない。

「山代さん、せめて今日は一旦...。」

「言っただろ。僕が、あの子を探す事をやめる気はないって。何度言っても無駄だよ。」

ふと二人の顔を見ると、その顔は少し青ざめていた。

疲れ?それとも僕の行動に嫌気が差した?いや、どれも違う。これは...僕に、怯えている?

「どうしたんだ二人とも。なんで、そんなに怯えてるんだ?」

「だ、だってよ...俺らが話してるお前、生き霊やから。」

その言葉を聞いて、僕は混乱した。

生き霊?生き霊って確か生きてる状態の人間が魂の一部を飛ばしてるとかだったよな?いや、そんな訳がないだろ。流石に、そこまで...。

「山代さん、あなたはあの霊道を通った日から神宮寺さんの神社で寝たきりなの。今のあなたは生き霊で、日に日にその霊力が増していた。」

「いやいやいや、嘘だろ?じゃあなんで今まで...。」

「あなたを祓わなかったのは単に力不足。今のあなたは、神宮寺さんのお爺さんでも祓えない。」

その瞬間、僕の身体が動かなくなった。足元を見ると、大量の御札が貼られている。

嘘だろ、じゃあ本当に僕は...。

「これは平安時代、当時全盛期の龍神様の霊力が込められた御札。あなたは山代さんの魂の大部分が生き霊と化している。だから、戻ってあげて。」

意識が遠のく中、ふとあの霊道が視界に入った。そこには、僕に必死に手を伸ばすあの子の姿があった。


セミの鳴き声が聞こえて、目を覚ます。夕日の温かい光が差し込む部屋で、直途が僕に声をかけた。

「遅いぞ、護留。」

「...ああ、ごめん。ありがとう。」

僕は立ち上がり、自分の家へと歩き出す。

「護留?お前、どこに行く気や?」

僕は直途の声を無視し、そのまま歩く。途中から音羽さんも合流し、僕の後ろを不思議そうに追いかける。

「二人とも、ちょっと待ってて。」

僕は机の引き出しから箱を出し、その箱から10年前にあの子から貰った勿忘草の首飾りを取り出す。そして、首飾りを掛けて、あの子の髪飾りを握り締めて外に出る。

「護留、お前その顔...。」

「山代さん、あなたまさか。」

偶然かどうか知らないけど、明日はあの子が消えた日。いや、山の神に成った日。

あの子の姿を見て分かった。あの子は、あの山自体の霊力に侵され、山の神と成り、あの山に囚われた。なら僕のする事は決まった。

「行こう、二人とも。この夜で、もう終わりだ。」

今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!

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