三夜
読書の皆様にこの作品を楽しんでもらえますように...。
「護留〜!腹減った〜!!」
「後もう少しで昼休憩だろ?それまで我慢しろ。」
「でもよ〜!!」
昨日は色々な事があったし、僕も直途に構うぐらいなら休んでいたい。今日もあの子を探しに行く気だけど、あまり危険そうな場所には行かないようにしよう。
「ほら、さっさと席に戻れ。僕も疲れて...。」
「ねぇ、ちょっといい?」
僕の肩を軽く叩いて、クラスの女子が話しかけてくる。
僕が何かしただろうか?とにかく、面倒事は避けたい。
「あなた、もしかして霊と...。」
彼女か僕に何か言いかけた時、チャイムが鳴った。
「...はぁ、じゃあ後で。」
「えっ、うん。」
別に怒っているわけでも無さそうだった。それに、彼女から出た「霊」という言葉。もしかして、彼女も霊と何か関係を持っているのだろうか?
「こっち来て。」
「え?うん、分かった。」
昼休憩になっていきなり教室から連れ出された。ずっと無表情だし、何を考えているか分からない。
「ちょっと待て、まさか屋上に行く気か?」
「うん、そうだけど?」
「いや、屋上は立ち入り禁止じゃ...。」
彼女は僕の言葉を無視して屋上の扉を開けて屋上に出る。
「大丈夫だよ、誰にもバレないし。」
「...仕方ないな。」
僕が屋上に出ると、そこに僕と彼女以外にも一人よく見知った顔の奴がいた。
「おっ、来たか。」
「直途?お前、何でここにいるんだ?」
「そりゃあ、お前らの話に俺も参加するからや。」
直途と彼女は何の話をするか知っているみたいだけど、僕は何も知らない。
おそらく、二人は元々顔見知りだったのだろう。
「はぁ、それで?二人は神職者関係の知り合いとかなのか?」
「いや、今日初めて話したけど?」
「は?」
「うん、私も神宮寺さんの事は知ってたけど話したのは今日が初めて。」
まあ、話した事が無かったにしろ、僕を含めて話をするという事は、おそらく僕の現状についてでも話し合うのだろう。そこまでしなくてもいいのに。
「じゃあ、単刀直入に言うけど。山代さん、あなたはもうあの人を探さないで。」
「は?何でそうなるんだ。ちゃんと理由を教えてもらいたいな。」
彼女は僕を睨みつけながら話す。だけど、そんなのは関係ない。あの子を探す事は、僕にとっての生きる理由。何よりも大切な事。それを否定されては、僕も黙ってられない。
「あなたが思ってる以上にこの町の霊は強力なんだ。だから、これ以上はやめた方がいい。」
「この際はっきり言わせてもらうけど、それは無理な話だ。それに、直途から聞いたのか知らないけど、あの子は僕の生きる理由だ。どんな理由があっても、あの子を探すのをやめる気は無い。」
僕が彼女にはっきり言うと、諦めたのか彼女は床に座った。その様子を見て、直途が立ち上がった。
「よし、じゃあ飯でも食うか!俺、腹減って仕方ないわ!」
「えっ、まあいいけど。君は大丈夫なの?」
流石にさっきあんな話をしたばかりだし、気まずい。彼女も嫌だろ。
「私の名前、「音羽 雫」。好きに呼んでいいよ。」
「えっ、あっ、じゃあ音羽さんで。」
相変わらず無表情のままだし、別に気まずくは無いのか。じゃあ、僕も特に遠慮はしなくてもいいだろう。それにしても、また一人巻き込んでしまった。いや、違うな。
僕が、この霊の世界に入ってしまったんだ。
「よし、行くか。」
今日は外に出ると、直途と音羽さんが僕を待っていた。あの後、何も話さなかったけど、おそらくは僕に着いて行くという事になったのだろう。
僕の立場からしても、直途と音羽さんがいるのは心強い。
「じゃあ、今日こそあの子へ一歩でも近付こうか。」
今回のお話、楽しんでいただけたでしょうか?ぜひ、応援よろしくお願いいたします!