47、蒼い炎ふたたび
47、蒼い炎ふたたび
「久しいな」
「は、50年振りにお会いできて、嬉しゅうございます・・・
さっそくですが、にっくきジェラルドめをおびき寄せようと思っておったのですが、ワボアのヤツが人間如きに遅れをとったために、倅のルイスめしかおびき出せませんでした」
岩山を切り抜いて造られたような建物の一室、ゴツゴツのようで威厳のある大きな玉座に座る男
目は白目と黒目が逆で、頭には水牛を思わせるようなゴツい角が2本、いかにもラスボスの風体だ
玉座の前に跪く、体より蒼い炎をチラチラとゆらめかせた大きな鳥・・・鷹であろうか、その者が久しぶりの帰還の報告をしていた
「ふん、アイツは、時折り相手をみくびり、力押しをするからな
まぁ、復帰までは時間がかかるだろうが、その間に反省してくれる事を願おうぞ
して、ワボアを負かした輩もあの街におるのか?」
「はい、呼び出しまして、どのような手を使ったのか聞き出そうとしたのですが、それが飄々(ひょうひょう)と、偶然だの仲間がやったのだの申しまして、実力の程が掴めぬのです
一応、ワボアのやつを仕留めた際に使用した武具は取り上げましたが、最終的にはルイスめに気に入られる始末でして
まぁ、私にかかれば赤子の手をひねるより簡単かと思いますので、成り行きにまかせました・・」
玉座の男は、蒼い炎を纏った鷹の言葉を少し口角を上げながら聞いている
「まぁ、我らには、時間などいくらでもある
ゆっくりでかまわん
確実に版図を広げるために、かの国の王族を潰し、まずは、カストーリ国を我が手中に収めよ
引き続き頼むぞ、蒼鷹のジェームズよ」
「は!蒼魔王ラジエット様!」
ジェームズと呼ばれた蒼い炎を纏った鷹の姿をした男は、右の羽根を一閃すると姿を消した
勝利を疑いもしない蒼魔王の目が怪しく光る
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「ええ?アルジアに仕事で行くってぇ?
そんな、俺も行くよ
危ないだろうよ」
「もう大丈夫だって、お店の人達が何人もいるし
それに護衛は、イリナちゃんやミサちゃん達がしてくれるんだよ
多分ダイヤさんだって来てくれるって!」
イヤイヤ、お前、自分が神だって分かってんのかな?
(ヒロは騙されておりますw)
神であるサーヤになんかあったら、今、こっちの世界で2度目の人生を堪能してる俺にも影響が出るかもしれないじゃんか?
最悪、俺が消えて無くなっちゃうとかさ?
昨晩、レイの屋敷から走って帰ってきて、屋敷で感じた違和感をサーヤ達に伝えようとしたら、夜も遅かったせいか、もう、みんな寝ていた
朝になって、サーヤ、それと同居人のイリナ達から、テイラー商会の仕事で、アルジアに行くって事を聞かされたんだけど・・・
サーヤを俺の同伴なく、街の外の依頼に行かせていいのかどうなのか
ちょっと口論になっている
「ヒロさん、心配しすぎだって、カミラさんのとこも寄るし、タガート達も一緒だから、大丈夫だよ」
「そうですぅ
心配すんなですぅ」
まぁ、リネンやイリナ達を信用していないわけじゃないんだ、あの白髪のジイさんがなぁんか、気になるんだよねぇ
「朝から、騒々しいわねぇ
どうしたの?」
フィスが寝巻き?肌着?のまんま降りてきた
「どうしたもこうしたも、取り敢えず服着てくれる?」
俺は、目のやり場に困ると伝え
そして、サーヤ達の仕事の話をした
「へぇ、ちょうどいいんじゃないかしら?
そう、いつまでも、過保護にしちゃダメなんじゃない?」
寝起きのフィスからは肯定的な意見が出た
別に過保護に扱ってるわけではないんだけどなぁ
「ちょうどいいってなんだよ
それに、そんなに甘やかしてるわけでもないし、サーヤだってもう、大概のことは一人でやってるし・・・」
あれ?俺、子供の成長にビビって、手元から離したくないダメオヤジになってない?
「だからちょうどいいんじゃないの?
サーヤ!ヒロの事は、私が面倒見とくから、ちゃんと商人の仕事してきなさいな!」
え?何?俺が面倒見てもらうって?
なんか、俺が、駄々をこねてた感じなの?
「良かったぁ
フィスさんありがとう
このままじゃ、オジサンがいつまで経っても、独り立ち出来ないかと思っちゃった」
「そうです、独り立ちしなきゃですぅ」
こいつら!
ぜってぇ、俺を、バカにしてやがるな
「分かったよ
リネン、イリナ!しっかり頼むよ」
「うん、分かった、任せてって?
それは、ヒロさんからの依頼って事?
サーヤの面倒を見る依頼料出るのかな?w」
リネンがチロっと、ベロを出しておどけてきた、が、可愛いから許すw
よし、じゃぁ俺は、一人で受けれる依頼でも探そうかと思い、冒険者ギルドに向かう事にした
「あら、たまには、ワタシも依頼でも受けようかしら」
ん?自由気ままなフィスも依頼を受けるってどういう風の吹き回しだろう
そんな事を考えながら冒険者ギルドへ行くと
「あっ、ヒロキさぁん!
ギルマスが、話があるそうですよぉ〜」
ギクっ!嫌な感じがするな
俺は、ギルマスの秘密を知ってしまったから、これからの依頼も、嫌ぁな依頼を回されるんじゃないだろうか?
そんな事を妄想しながら、ギルマスの執務室に向かった
「おぅ!昨日は、お疲れさん
フィスも一緒か
まぁ、座ってくれ」
俺とフィスは、促されるまま、ソファーに座った
「大した事では無いんだがな
ヒロが昨日、王子に渡した盾があったろう?王子が痛く気に入られてな
増産に向けて、製作者と話がしてぇってなってな
あん時は、俺もテキトーに答えちまったからなぁ
ところで、本当のところ、あれは誰が作ったんだ?」
ギクっ!
一晩でそんな話になってんの?
俺が、寝てる間に作って、ドムさんに仕上げでもらったとか言えないしなぁ
俺のこの鋼石を自由に造形出来るスキルは、ドムさんに口止めされてるしなぁ
「あまり教えたくねぇってか?
まあ、いいさ
しかし、王族がドムさんに会いたいってんだから、ちょっと連れてきてほしいんだよ
ちょうど、クリスんところが、定期便を出すのに護衛の依頼出してるから、それを受けてくれ」
「分かった、じゃぁ・・・」
「はぁい、はぁい!
その依頼、私とヒロで受けるわ!」
なんだよ!普段、仕事とか嫌いなくせに、率先して依頼を受けるなんて!
「おっ、おう、フィスが一緒なら安心だな
まぁ、戻ってくるまでに、王子を騙せる言い訳でも考えとくんだなw」
「分かった、ギルマスには迷惑かけないようにするから」
仕方ない、向こうに行ってドムさんと、打ち合わせして、なんとかルイス王子を誤魔化そう
「よし、じゃぁ、クリスんところが準備出来次第移動してくれ
あと、こないだ、あのヴァンパイヤ娘の為に壁に作った通気口も確認しといてくれ」
「分かった、じゃぁ、このままテイラー商会に行って、すぐに対応するよ」
ライフィスの街から、冒険者の村までは、ゆっくり歩いて1日で行ける
しかし、街の外でなるべく夜を明かしたく無いので、明朝、出発する事にした
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次の日は、朝からテイラー紹介の荷馬車と共にライフィスの街を出た
テイラー商会からは、なんとジョージだけと言う大胆な移動だ
しかし、ジョージも慣れたもので、荷台の荷物の積み方を工夫して、フィスの座れるスペースを作ってくれた
俺は、ジョージと御者台に乗って揺られている
そろそろ中間地点を過ぎたくらいだろうか、小腹が減ってきたので、おにぎりを出して、2人に渡す
「ありがとうです
ひっ、ヒロさんのコレ、ちょっとしょっぱくて、うっうめぇです」
「嬉しいねぇ!
でもさ、実を言うとさぁ、中の具でさ、もっとしょっぱくて、栄養のあるおにぎりが作りたいんだよなぁ
気になる実でさ、俺の故郷では、"梅"って言ってたんだけどな
このくらいの黄緑の実でさ、ちょっと産毛が生えてる感じでさ」
と、俺は、右手の親指と人差し指で、ちょうどOKサインをするようにジョージとフィスに指を見せた
「えぇ、コレでも十分に塩が効いてるのにもっと味を付けるの?」
「いやいや、その実があれば、その実を塩で漬けるから、塩は少なめでいいんだよ」
酢もあればいいんだけど、確か米から作られたような・・・
もしかして、アキコマの村に無いかなぁ?
フィスが虚空を見つめて想像したのか、目をギュッと瞑った
「想像しただけで、口の中が・・・」
「おっ、俺、探してみる
なんか、前に見た事あるがも・・・
たまに赤くなってる実とか混ざってたの運んだ事ある」
おっ、いいねぇ!
もし、それがプラムでもいいから、手に入れたいな
「ジョージ頼む
もしそれだったら、それで作ったおにぎりは、1番に届けるよ」
ジョージが、笑顔で頷いた
「あっ!」
瞑っていた目を開けたフィスが、空を眺めながら声を出した
「モンスターか?」
俺は、例えモンスターが出現しても、なんの戦力にもならないくせに身構えた
すると上空から、黒い物体が、ヒラヒラバタバタと落ちてきて、目の前でクルっと回ったと思ったら
ボムっ!
「おう、ちょうどいいね
乗せてってくれだわさ」
「うおっ!」
シンディだった
手綱を引くジョージが、一瞬たじろいだ
シンディは、細身を利用して、俺とジョージの間にスッポリ入ってきた
「あっちの村に行くんだろ?
アタイは、父上に血の玉を届けるから、一緒に行ってやるだわさ」
「あらっ、調子がいいのね」
馴れ馴れしく同席してきたシンディにフィスが小言を挟む
「そう言えば、アンタにお礼がまだだったんだわさ
アンタが仕事を作ってくれたおかげで、健康な血で玉が作れるようになったし、量もいっぱい作れたんだわさ
あっ、ありがとうなんだわさ」
「あ、あぁ、俺はそんなに大した事してないけど、まぁ、良かったんじゃないか?
それと、いくらモネの頼みだからって、もう、あんな事は勘弁してくれよ!」
つい、昨日の出来事を思い出しながら注意した
「それはセンセー次第だわさ
ところで、昨日、言いそびれたんだけど、2日前に変な年寄りを見かけたんだわさ
暗がりで、誰かと喋ってたんだけど、変な気を放ってて、不気味だったんだわさ」
「それって、白髪のジイさんだった?」
俺は、クレア達が移動してきた時にダイヤが感じた事と、俺がレイモンド邸で感じた違和感から、1人の人物が何やら怪しいと睨んだ
「うーん、白かったような蒼白かったような・・・
でもね、なぁんか、前にどこかで感じた気配なんだわさ・・・」
シンディはこう見えて、ハーフヴァンパイヤ、400年は生きている
そんなシンディの記憶のどこかにいるって事は、あの白髪のジイさんではは無いのかもしれない
「そぉか、もし、思い出したりしたら教えてくれよ
ちょっと俺も気になることがあるからさ」
「分かっただわさ
それより、その食べ物アタイにも頂戴だわさ」
ついこないだ、バトったのに、この馴れ馴れしさには、呆れるを通り越して、面白さが出てくるな
「ほらよ!
情報量って事で2個あげるよ」
「ありがとだわさ
あっ、父上に新しい血の玉を届けなきゃ!
またな!だわさ!」
御者台を若干揺らしながら飛び出したシンディは、空中で後方宙返りをすると
ボムっ!と、コウモリに変化して、上空をクルッと回って、冒険者の村へ飛び去った
ふと、おにぎりとかの荷物は、どうなったのか?などと思いながら、フィスの方を見ると、どこか難しい顔をしている気がする
何か、考え事か?と思って声を掛けようとしたら
ドテッ!と、荷物に寄りかかり動かなくなった
寝ていたようだw
「おう!よぉ来たな」
冒険者の村に入り、俺とフィスは、ドムさんとライリーの新しい鍛冶屋で降ろしてもらった
「へぇ!結構、中は広いじゃん
ってか、昼からエールかよ!」
「まったく、ドワーフは、寝てるか飲んでるかね」
店に入るなり、呑んだくれてる?ドムさんに俺とフィスがボヤく
「ちょうどいい、冷えたエールをもっとらんか?」
「はいはい、今日は、ドムさんに折り入って話があるから、ゆっくり始めますかね」
と、マジックバッグから、キンキンに冷えたエールを出しながら、テーブルにつく
「あっ、ヒロさん?
ごめん、手が離せないから、オヤジの面倒を頼むね
フィスさんもテキトーにくつろいじゃってぇ」
「気にせず仕事続けてぇ
私は、ミサンガでも作らせてもらうわ
道具借りるわね」
ライリーが工房から顔だけ出してきた、フィスはいつもしているかのように工房に入って行った
「ぷはぁ、っくぅ!コレだよ、コレ!
この冷てぇのがいいんだよ!
んで、話ってのは、なんだ?
まぁた、レイモンド辺りから無理な作りモンか?」
「あっ、いや、ホラ、ドムさんに微調整してもらった俺の盾あったじゃんか?分割の!
あれがさ、王子に気に入られちゃってさ、どうやって作ったんだ?ってなって、ドムさんの作品だって事に落ち着いてさ
作り方が知りたいから、街まで来てくれってなってさ」
グビグビグビっ
「っふう、もう一杯!
んなもん、量産出来る代物じゃねぇって言って、突っぱねればいいんじゃっ・・・
おい、お前さん、今、王子って言わなかったか?
それって、この国の王子の事か?」
俺は、2杯目のエールを出しながら
「そっそうなんだ、なぁんか、最近の出来事に俺が関わってるのが多かったみたいで、呼び出されちゃって、もう、あれこれ聞かれちゃってさぁ
面倒だから、あの盾を出して見せたら、第二王子のルイス王子が気に入ったみたいで・・・
どうしよぉ〜」
さっきまで、冷えたエールに舌鼓を打っていたドムさんが、急に眉間に皺を寄せて、飲もうとしていた新しいエールのカップをテーブルにゆっくり置いた
「あのなぁ、前にも言ったが、ミスリルなんてぇのは、素人がそう簡単に加工は出来ねぇんだ
あれは、お前さんのスキルで、ある程度の形に仕上げられたから短時間で出来た代物だ
ワシが1から作ろうと思うたら、そうさなぁ、半年くらいはかかるわい」
「そっ、それでいこう!
ドムさんが半年掛けて作った盾を俺が貰い受けた事にしちゃおう」
それがいい!
俺の鋼材や鉱石を簡単に練れたり、夜、寝てる間に整形出来たりする能力は隠し通して、ドムさんの発案って事でいいじゃんいいじゃん!
「このお調子モンが!
お前さんの能力は、珍しいどころの話じゃねぇんだから、むやみやたらと見せたらあかんぞ」
「ごめん、つい、色々作りたくなっちゃってw」
フンっと、鼻を鳴らしてエールを一気に飲み干すドムさん
「しっかし、王族が、お前のあの盾を気にいるってのは、使い勝手や物珍しさだけかの?
一応、代わりに、似たように組み立て式の盾でも考えておこうかの」
「それなんだけど、こう言う形のはめ込みにして、つっかえ棒して・・・」
「フム、それなら、加工が楽だな
ちょっと試しにナマクラで試してみるか」
「分かった
トゲの方は・・・」
・・・なぜか、急に試作品の製作に取り掛かってしまい、全員が、それぞれ、作業に没頭してしまった・・・
・・・翌朝・・・
「ねぇ?お腹空かない?」フィス
「ふぅ!なんとか形になったの!」ドムさん
「やったぁぁ!修理終わったぁ!」ライリー
「っくぁぁぁぁ!朝?
おっ!新しい盾が出来た!」
寝てた俺w
四者四様の朝を迎えた
「お前さん、居眠りこかしてたと思うたら、ワシの忠告を無視しおって
なんだそれは?」
「へへへ
今度は、もっとコンパクトで仕舞いやすい盾を考えたんだ」
俺は、前の世界ではよく見かけた、風呂場で使われていたクルクル丸められる蓋を応用して、畳める盾を作った
普段は丸めておいて、背中側に取手兼杭を挿すだけだ
「まぁた、奇妙な物を作りおって、どれ調整してやる
今のドムさんは怒ってるような口調だけど、絶対物珍しがってるよな
俺は、盾の畳み方と固定の仕方を教えながら手渡した
ドムさんは、盾を丸めたり広げたりを繰り返して、可動部分のリンク部や広げた時の歯止め部分を眺めて
「おい、これは、普通には作れんだろ?」
「あっ、バレた?
可動部のはめ込みは、普通では出来ないね
溶接でも出来れば別だけどね」
そうなんだ、寝る前に想像して作る時は、組み立て不可能な構造でも整形出来てしまうんだ
起きてる時は、鉱石や鋼材を念じながら粘土のように整形出来るけど、可動部分は多分無理だ
「ヨウセツ?っちゃなんだ
まぁ、お前さんの世界の技術か何かだろうが、ワシではコレをするとなると、ちぃと手間だわな
しっかし、隙間だらけだのぉ
チョイと一工夫を入れてやるわい
この杭をチョイと反らせてみろ
チョイとだぞ」
俺は、ドムさんに言われた方向に取手兼杭を少し反らした
それを盾の持ち手側に差し込む
多少力は要るが・・・
グググっカツっ!
「あっ、盾が少し反ってスキマが無くなった!」
「じゃろ?
コレなら、魔法も炎や冷気も防げるじゃろ」
ニヒヒ出来たぜ!
流石に棘は付けられないけど、そっちは、ちょっと考えがあるから、まぁ、あとのお楽しみ
「で、ドムさんの方は、形になった?」
「フン、ワシをバカにするでないわ
普通の魔鉱石なら、鍛冶屋を集めれば作れるくらいの感じには図面が引けたわ
それがあれば、ワシが出向かんでも良かろう
ホレ!」
スゲェ!
やっぱりドムさんは一流の鍛治職人なんだろうな、一晩で、図面を引いちゃうなんて
「おい、どうせもう1泊くらいすんじゃろ
ライリーの為にも、その盾をもう一つ作ってくれんか?」
ふぅ、仕方ない、ドムさんの頼みだし、昨日は夜更かししたしな
「勿論!
じゃあ、今夜はニールんところに泊まって、その時、作ってみるよ
ってかさ、もう朝じゃん、朝ごはん食べない?」
「そうね、まぁた、ニールに心配かけるわよ」
朝日が眩しく目を背けながら店を出た
「おうおう、眩しくてたまらんわい」
「もう、何度目の徹夜だろ?
もう、みんなの武具の損傷酷すぎだよ」
どうやら、ドムさんの名前はかなり有名らしく、ライリーの店には、ここに滞在する冒険者のほとんどが、武具の修繕や打ち直しを頼みに来ているらしい
「徹夜は、体に良くないから、時間を決めて、夜は寝た方がいいんじゃない?」
「うーん、でも、店を出したばかりだからね 最初にお客さんの気を引かないとね
それに、楽しいから、苦じゃないしね」
へぇ、ライリーも一応は商売人なんだね
って、ドワーフも寿命が長いけど、あまり寝なくてもいいのは、それが関係あるのかな?
いやいや、普通に考えたら、寝る時間も長そうだけどね
「フンっ、生意気言いおって
こないだは、肌が荒れるぅ!などと嘆いておったではないか!
まだまだ、半人前じゃわ」
「うっさいわねぇ
オヤジが寝ないから、私も寝れないんだろ!」
バッシーン!と、ドムさんの背中に衝撃が走る
「イダ!」
「女の子にとって、夜更かしは敵なのよ!
ホント、ドワーフの男は無頓着なんだから!」
フィスに叩かれたドムが、転びそうになる
「なんじゃとぉ!オヌシは、女の子じゃなかろうが!
ワシより年上じゃろうが!」
「何よ!そこ言っちゃうぅ?
ホント、デリカシーが無いわね
ライリー行きましょ」
"ウン行こ行こ!"
ライリーとフィスが腕を組んで早歩きし出した
まさか、ドワーフとエルフって、本当は仲がいいんじゃないのか?
「まぁまぁ、ドムさんの職人魂が強いのはよく分かったから、無理にライリーに叩き込まなくても・・・」
「フン、甘やかしてもロクなことなどないわい」
腕を組んでプンプンのドムさんをなだめながら、ニールの家に向かうが、ドムさんは、ちょっぴり口角が上がっているように見える
娘のライリーが、少し逞しく見えてるんだろうなw
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「おうジムさん、懲りずにマップ作りかい?」
「おう、ブレンダか
まぁの、ヒロのやつにあんな立派な立体マップを作られちゃぁ
こりゃ、これからダンジョンに入る奴らの為にも、もっと先まで調べてやらんとな」
ダンジョンの7階層をひと調べして、近くにあった6階層への階段の部屋で休憩をとっていたジムにその階段で降りてきたブレンダが話しかけた
「ちょっと兄さん怪我してるじゃない?
ホラ、回復薬使いなって!」
「すまねぇアリア、姉御にいいとこ見せようとしてシクったw」
妹のアリアから回復薬を受け取り、左腕に斜めに走る傷に勢いよくかけるアラン
「まったく、アランは姉貴の前だとすぐに調子に乗るんだから」
「ははは、漢はいつだって女の前では、格好をつけんとな
だろアラン?」
エレノアに嗜められ、ジムにいじられ、照れるアラン
「だって、姉御はニール殿に首っ丈で、あっしの事など目もくれねーんだ
少しくらい、あっしも出来るってところを見せねぇとw」
「兄さんが、村を救ったニールくんに勝てるわけないでしょ」
パッシーンと、アランの左腕の傷に包帯を巻いたあとに"完了!"の合図とばかりに、軽く腕をアリアに叩かれる
「そうだった、そのニール殿の話しでは、昨日、ヒロさんとフィスが村に来たらしいぞ
ドムさんに用があるとかで」
「ふん、大方、ライリーから子離れ出来ぬアイツを街に連れ戻しにでも来たんだろう
ちょうどいい、コイツの刃でも撫でてもらおうかの」
ブレンダが、今朝、ダンジョンに入る前の情報をジムに伝えた
「それと、この隣の通路の最下層には、ヴァンパイアが住んでるらしいぜ」
「なぬ?ヴァンパイアじゃと?
そんな童話の世界の類の種族がこの下に住んでおるのか?」
壁をトントンしながら、さらに新しい情報を提供すると、さすがのジムも驚いた
「こないだヒロさんが、通気口を作ってただろ?
あそこから、ヴァンパイアの娘が出入りするらしい
まぁ、絶対、人間には害がないらしいから大丈夫だってよ
今、ニール殿が、号外をみんなに配らせてるよ」
「ほぉ、ヴァンパイアなぞ、おってもモンスターの類かと思ったら違うのか?
んで、また、ヒロのやつが絡んでおるのか?」
やはりヴァンパイアという存在は、普通には出会える存在ではないらしく、150歳を超えるジムでも見たことはないようだ
しかし、いつも珍しい事には、弟のパートナーが絡んでいる事の方に呆れてしまっている
「てなると、この通路から湧いて来た、リザードマンやバジリスクなどと、そのヴァンパイアが、ここの地下に閉じ込められてるって事なのかのぉ?
中で増えて大変な事にならんのか心配だわの」
「うーん、詳しくは分からないから、ジムさんから聞いといておくれよ」
"面倒だのぉ"と、愚痴をこぼしたのが、合図になったのか、ジムは立ち上がり
「まぁよい、ワシらは、キリがええから一旦出るぞ
と、この階のレアモンスターは、倒しちまったから、近道で下に行った方がええぞ」
「なんだよぉ
あの赤いスケルトンナイトは、魔石だけじゃなくて装備も高く売れるのに、先を越されたかぁ
まぁ、帰りには、沸くだろうから、それを狙うよ」
ほとんど休憩もせずにブレンダ達は、ダンジョンに入って行った
それを見送り、ジム達は、階段を登り始めた
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「ちょっ!ちょっと父上!
歩いて大丈夫なのだわさ?」
「あぁ、シンディ!
見てくれ!いつぶりだろうか?
歩いても全然疲れないんだよ
こないだくれた綺麗な玉のおかげなのか、あれを飲んでから、もう、元気がみなぎってくるようなんだ!」
えええ?
父上は、この場所を手に入れる時の戦いで、大火傷をしてからずっと寝たきりだったのに、なんで?
確か、前回、父上に作ってあげた血の玉は、アイツの血で作ったやつだったような・・・
「父上、転んだりはしないのか?
無理しちゃダメだわさ」
「いや、本当に大丈夫なんだ
火傷も、少しずつ治り始めてる
シンディ、本当にありがとう」
ええええ?そんなに急に良くなるものなの?
だとしたら、アイツの血がすごいって事?
「父上、ちなみにこっちの血の玉も飲んでみてほしいだわさ
街で出会ったセンセーと一緒に作った傑作だわさ」
シンディは、街で最近始めた、血液での健康チェックの時に吸った血の中で、健康的な血だけを厳選して、モネと一緒に作り上げたのが今回の血の玉だ
それを父ドレックァに勧める
「おっ、これまた綺麗な玉だね
一体どうやって作ってるんだい
まぁ、今は、前回の玉で、足りているんだけど、飲んでみようか?」
ドレックァがポイっと、飴でも口に含むように渡された血の玉を飲み込んだ
「あぁ、美味しいよシンディ、普通に人から血液を吸ったような感覚だ・・・
でも、先日の玉ほどではないね
先日の玉は、飲み込んだ瞬間にチカラがみなぎってきたからね
でも、ありがとう」
っくぅ!これは間違いなく材料の差!
悔しいけど、アイツの血が凄いって事だわさ
「実は、父上・・・今まで、黙っていた事があるだわさ
それと、その血の玉の出どころと作り方を教えるだわさ」
ドレックァは、いつになく神妙な娘の表情にある種の覚悟が見て取れたので、場所を変え話を聞く事にした
シンディは、父ドレックァが人間の血を吸わない事は知っていながらも、父の為に仕方なく、人間の血を吸って、血の玉を作っていた事
今までは、冒険者の村だけで活動していたが、より健康な血を求めライフィスの街に足を伸ばした事
そして、ライフィスで、問題を起こした事、それら全てをゆっくり話した
「そうだったのか・・・
私なんかの為に・・・この種族のせいで苦労をかけたね」
「苦労なんかじゃなかっただわさ!
だって、父上がいなくなったら、アタイ・・・1人になっちゃうだわさ!」
400年と言う長い年月を父の為に気丈に生きてきたシンディ
元気になった父を見て、今まで押し潰していたものが崩壊した
目を赤くして叫ぶシンディ
抱きつかれて、娘の成長に驚くドレックァ
「ははは、いつのまにか、こんなに力強くなってたんだな
しかし、そのヒロと言う人間の血のおかげで、こんなに元気になったのも、もしかしたら、サンディが、もう少し生きろと言っているのかもしれないな」
「そうだわさ、母上の分も長生きするんだわさ」
寝たきりだった父が元気になり、喜ぶシンディ
その姿を遠目に見て、喜んでいるようにざわつくモンスター達
「しかし、お前が、街に行くようになって、最近は、随分と機嫌が良く見えるけど、何かあったのかい?」
「それなんだわさ、あの街には、あの血の玉の作り方を考えてくれたセンセーや
まぁ、ある意味、アタイに仕事を作ってくれたアイツがいたり
あの忌々しいエルフもいるとは思わなかったけど・・・!
そうだっただわさ!
父上!叔父様達生きてるらしいだわさ!」
シンディは、以前、やらかした時の事情聴取中に、ハイエルフのフィスから聞いた、自分達の故郷のその後を父ドレックァに話すのを忘れていた
「なんと、そぉか、叔父上を止めるのに父上は・・・
しかし、あのエルフ殿が、あそこを再建してくれたのか・・・
ダイケムなら、私より優しいし、努力家だから、いい村造りをしているだろう
後で、行ってみたいものだね」
ドレックァは、400年前に生き別れた弟は、裏方としてよく動いてくれた
そんな、弟ダイケムの顔を懐かしげに思い出していた
「そうだわさ!
もっと元気になって、行こうだわさ!
ならば、アイツの血がもっと必要か・・・
よし!アイツ連れてく来るだわさ!」
そう言うとシンディは、父ドレックァに残りの血の玉を渡し、来た通路に走り出した
「おいおい、少しくらいゆっくりしていけばいいだろうに!」
既に父ドレックァの声など届かない所まで走っていたシンディ
「主よ!
盗み聞きをしたわけではないのだが、その・・・
出かける時は、我らも連れて行ってくださらぬか?」
「はは、シンディだけじゃなく、お前らも気が早いなw
そうだな、みんなに私の故郷を見せたいな・・・」
シンディが、駆け抜けて行った通路を見ながら、ドレックァは呟いた
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「おい、サーヤ
ダイヤの旦那の背中に乗らなくていいのか?」
「え?
だって、今回は、クリスさんのお仕事だから、ちゃんと御者台にいないと・・・」
今、テイラー商会のサーヤ一行は、アルジアに向けて荷馬車を進めて、約1/4くらいまでやって来ている
途中から、ダイヤも同行して、危なげなく進んでいる
いつもなら、ダイヤの背中に乗っているサーヤが、初の隣街への行商の一員に選ばれて、少し緊張した面持ちで、手綱かっこ(たづな)を握る男の隣にチョコンと座っている
また、心なしか、元気がないダイヤを見て、タガートがサーヤに声をかけたところだ
「サーヤちゃん、普通通りでいいんだよ
疲れちゃうよ」
手綱を握る男に優しく言われ、目が輝くサーヤ
「うん、分かった、ありがとう
ダイヤさぁん!」
と、叫びながら、御者台から飛び降りたサーヤ
「オイ!!」「サーヤちゃん!」
タガート達が、サーヤが御者台から飛び降りたので、声を荒げて心配したが、そんな心配は要らなかったようだ
ダイヤが、瞬時に馬車の横に並び、サーヤが背中に飛びつくと同時に、膝でショックを吸収した
「いいな!ですぅ
ワタシもダイヤさんに乗りたいですぅ」
と、駆け寄るイリナから、自然と距離を取るダイヤ
『オイ、娘!
絶対にあの鎧娘だけはワレの背中に乗せるでないぞ』
『ふふふ、大丈夫だって
イリナちゃんだって分かってるって、でも、いつもありがとね』
フンっと鼻を鳴らしたが、満更でもない顔のダイヤ
しばらくは、ダイヤの背中に揺られながら景色を楽しむサーヤ、1番安全な場所にいるからか、コクリコクリと頭が揺れだした時だった
『おい娘、寝てもいいが、その前に、左の奥の方から、嫌な気配を感じる
鎧娘達に教えてやるがよい』
『え?あっうん、分かった』
ムクっと起き上がるサーヤ
「ねぇ、タガートさん!
ダイヤさんが、あっちの方に変な気配を感じるから注意してだって」
「なっなに?マジでか?
分かった
アイト、それとイリナと俺で、左側を警戒しよう
リネンとミサは、右側の前後を頼む!」
タガートの指揮で、全員が一斉に散開した
ゆっくり進むと、イリナが何かに気づいた様子で
「あれ?ダイヤさん?
この辺って、前に蒼い炎の大猪を纏った大猪と戦った場所に近いですぅ」
『フンっ、覚えておったか
おい娘、一旦降りろ
見てくる』
サーヤが、降りると、一陣の風を巻き上げ、ダイヤが消えた
「ダイヤさんが見てくるって」
「あの速さで行かれたら、着いて行けないや」
タガート達の中では、偵察や索敵は
アイトの役割だが、あくまで人間レベルなので、ダイアウルフであって風の加護を多少なりとも受けてダイヤの速度には着いて行くのは不可能だろう
「なぁ、ところで、その青い炎ってなんなんだ?」
今回のメンバーは、タガート達とイリナ、リネンの2人組の混合チームだが、一応年長者という事で、今回のまとめ役のタガートが、イリナに尋ねた
「前にヒロさん達と来た時に、遭遇した、青い炎を体から吹き出していた大猪がいたですぅ」
「ダイヤさんが互角だったんだけど、ヒロさんの体当たりと私のサンダーボルトでやっつけたんだ」
イリナの楽観的な説明と、リネンのプチ自慢で簡単に説明された
「えぇ、ダイヤさんって、コカトリスとか軽く仕留めてくるくらい強いよね?」
リサが、目をまん丸にして聞き返す
「そうなんですぅ
でも、ワタシは、カミラさんちに行ったりしてたから、ホントの最後しか知らないですぅ」
「なんか、蒼い炎が体に付いたら、死ぬまで消えないとかじゃなかったっけ?
でも、ヒロさんには、効かなかったんだよお
ヒロさんって、ホント、時々凄いよね」
リネンとイリナが、笑いながら話してる
「ダメだよぉ
ヒロさんって、いつも体当たりばっかりで、いつか、取り返しのつかない事になっちゃうよぉ」
ミサが、ヒロを心配する
「だよねー
あんな戦い方じゃ、家で待ってたら気が気じゃないよねー」
リネンがボヤく
「ホント、イリナちゃん
今度、ヒロさんに剣でも教えてくれない?
タガート達ったら、全然引き受けてくれないんだよぉ」
と、ミサが、腕を組んでタガート達を睨みつける
「イヤイヤ、いきなりイリナの大剣なんか、扱えねぇって
仕方ねぇなぁ、俺とアイトで、少しずつショートソードでも教えるって」
いきなりイリナに剣技を教えさせようとするミサをタガートが止める
「でもさぁ、ヒロさんってさぁ・・・」
そこへアイトがヒロの行動のおかしさを口にし出したのを皮切りに、一向は足を止め、ヒロへの愚痴や笑い話が盛り上がり始め
「オジサンって、そんなにダメダメなの?」
「あぁ、後先考えてないなアレはw」
「それが、ヒロさんのいいところだけどね」
「その考えがダメなんだって!」
荷馬車の業者台の男が、これでは、荷馬車を進められないと思い
「休憩にしましょうか?」
と、タガート達に声をかけた
ダイヤが同行していたので、予定より進みが早いので、問題はなさそうだ
すると、一陣の風と共にダイヤが戻ってきた
『逃げられてしまった
しかし、この間のヤツよりは小さな気配だったな
偵察か何かだろう』
ダイヤが、現場に到着するとすでに何者もいなかった事をサーヤがみんなに伝える
ダイヤの動きに反応して隠れたという事が気になる結果となり、しばらくは警戒しようとなった
「もしかして、ダイヤの旦那の体毛が短いのは、その時の戦いの影響か何かなのか?」
「そうですぅ
燃え移った炎が消えないから、体毛ごと処分するのに、ヒロさんが切ったですぅ」
自慢の体毛が短くなった事が恥ずかしいのか、ダイヤが顔を背けた
「そうだったんだぁ
まぁ、ダイヤさん、これでも食べて元気出して」
アイトが、買い溜めしておいた、燻製肉をダイヤの口元に運ぶ
『おっ、このすばしっこいのは分かっておるではないかw』
「アイトさん、ダイヤさん、メチャクチャ喜んでるよw」
"ヤーリー"と、ガッツポーズをするアイト
「おいおい、ダイヤの旦那、俺のも食ってくれよ!」
単純な考えしかできない男達が、競ってダイヤの口元に、思い思いの肉自慢が始まった
そんなやり取りをかなり離れた木々の影から見ている蒼い影
「ふぅ、危なかった
ジェームズ様の言った通り、あのダイヤウルフは、かなり鼻が効くぞ」
「あぁ、気をつけよう
もう少し距離を取るぞ」
タガート一行を遠目に監視する蒼い影達が、密かに距離を取った
『フンっ、バカどもめ、ワレが気づいておらぬと思ってか・・・
まぁ、あの程度は、羽虫にも劣るわ』
『いいの?みんなに言わなくて?』
ダイヤの心の声が、念話になってしまい、サーヤに心配される
『フンっ、安心しろ、お前だけは、どんな事があっても、絶対守ってやる』
『・・・ありがと、ダイヤさんw
でも、みんなも守ってねw』
逃げられたと言ったのは、ダイヤの嘘で、不審者を遠ざける事に成功したダイヤが、何食わぬ顔で、タガートの持ち出した巨大乾燥肉に齧り付くのだった
いつも読んでいただきありがとございます超七玉です
仕事を言い訳にしたくはないのですが、ちょっと間が空いてしまいました
しかし、思っている事を文章にするのは、本当に難しいですね
がんばります
ありがとうございました




