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異世界で神(娘)と暮らし始めて嫁探し?  作者: 超七玉
サーヤ冒険者になる、ヒロ能力に目覚める
43/47

43、エルフと吸血鬼はお知り合い(敵対関係?w)

43、エルフと吸血鬼はお知り合い(敵対関係?w)



 中央区の警護隊の詰所には、すでにレイと秘書のジュディさんが来ていた


 捕縛された少女は、個室の取調室のような場所で、事情聴取されている


「ヒロ殿お手柄ですね」


 取調べにレイが参加しているために待機していたジュディに話しかけられた


「いやいや、俺は何にも、フィスが1人で捕まえたようなもんだよ」


 少女を知っていたフィスも取調べに参加している

 ドンテは手当ての後、すぐに別室で検査をしてから、聴取に参加するらしい

 今、俺とフェンリー、そしてジュディさんは、待合室のような休憩所のような場所でくつろいでいた


「何言ってるんですか?

 ヒロさんの突撃は、凄かったですよ!

 しかも攻撃受けても、怯まなかったのは、なんていうか・・・

 カッコよかったですよ」


 膝の上にシロを抱っこして撫で撫でしながらフェンリー


「いやいや、俺は、その、あれだ・・

 怪我がしにくくて、治りやすい体質なんだよ

 ホント、マジでw」


 いやぁ、サーヤのおかげか、マジで俺の体は頑丈なんだよなぁ


 そうこうしていると、休憩所の扉が開いた


「いやぁ、犯人が捕まったらしいねぇ

 いやぁ、参った参った、走ってきたら酔いが覚めたよ

 水を1杯もらうよ」


 と、ラフな格好のジョセフさんが真っ赤な顔で入ってきた

 マジでこの人、聖職者じゃないんじゃないかな?


「ジョセフさん、またローズさんの店に行ってたんですか?」

「おっ、ヒロ殿!

 今回は、お手柄らしいですな!

 解決祝いしないといけませんね!

 しかし、ちょっとその前に、私も参加してきますね

 ゴクゴク、ぷはぁ!」


 なんだよ、ぷはぁ!って、酒でも飲んだのかよ、まったく!


 ジョセフさんが、部屋を出てからは、ジュディさんと今後の警護隊の話やら、フェンリーが父であるギルマスの家での失敗談などを話したりしていた



「そうそう、それで今回の夜の警護強化の話になった時に

 "ヒロが来てから、問題ごとばかりだ"

 って、父がぼやいてたんです」


 えええ?俺ってトラブルメーカー的存在なの?


「フフ、何故か、同感です

 レイモンド様も、ヒロ殿と会ってからというもの、街の運営や富裕層の相手など、愚痴を言いながらも、以前より楽しんで仕事をしておられます

 ヒロ殿から、何かしらの刺激を受けているのだと思います」


 いやいや、俺は、ただの通りすがりの異世界人(言えないw)だっての!


「そう?

 俺は、この街で、楽しくやっていきたいだけなんだけどなぁ」


 と、俺はとぼけてみせた


「謙遜しないでくださいよぉ

 今回だって、結局、ヒロさんがお仲間のフィスさんを同行させたから、解決したんですよ!」

「そうそう、フィスがいてくれたからねぇ・・・

 って、フェンリーくん?

 俺じゃなくてフィスのお手柄だって事でしょ?」


 はっ、っとなって、ジュディさんと顔を見合わせて、笑いだす2人


「いえいえ、ヒロ殿の交友関係のお陰ですよ」


 笑顔でジュディさんが取り繕ってくれた 


 そんな話しをしていると、休憩所のドアが開いた


「おいヒロ!

 知恵を貸してくれ!」


 レイが入ってくるなり、俺に助けを求めてきた


 なんで、こうもレイは俺に頼むのかねぇ

 さっさと、あの吸血鬼を懲らしめて、街に来ないようにすればいいだけなんじゃないのかなぁ


 と、考えを巡らせながら渋々ついて行く


 レイに案内され部屋に入ると、すっかりおとなしくなった少女がテーブルに着いていた

 しかし、両脇をしっかりと警護隊に挟まれている

 ドアを閉める音に振り向くと、部屋の角に腕を組んで壁に寄り掛かるフィスがいた


「ちょっとアンタ!

 アタシの攻撃を受けたのに、何ピンピンしてるのよ!」


 うぉ、いきなりドヤされたが、何故か言葉に刺々しさは無かった


「仕方ないだろ

 ちょっと頑丈なんだよ、多分」

「まぉ、いいわ

 その偉い人が、アンタなら話が分かるって言うからさ

 アタシはシンディー、ちょっと助けてよ」


 ???なんで俺なの?


「おいおいレイ、俺がなんの役に立つってんだよ

 それにコイツ、シロを痛めつけたんだぞ!」


 ちょっと思い出して、また、腹が立ってきてしまった


「まぁまぁ、聞いてやってくれよ」

「フィスだって、以前、戦ってたって言ってたよね?」


 腕を組んで黙っていたフィスに話しをふってみた


「まっ、まぁ、あの時も、さっきも、ちょっとカッとなっちゃったワタシもいたしね

 ここは、あなたみたいな人が話しを聞いてあげた方がいいんじゃなくて?」


 なんなんだ?街の人が襲われたんだろ?・・・

 って、大事には至ってなく、逆に気分がハイになっていたみたいだけど・・・


 でも、人を傷つけたには違いないんだからさ・・・

 って、噛まれた跡は1週間くらいで消えるらしいけど



「あぁ、わかったよ、聞くだけになるかもしれないからな

 えっと、俺はヒロだ」

「ありがとうなのさ

 じゃぁ、最初から話すね・・・」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 420年前の事・・・


 ハイエルフの森の南方に大きな湖がある

 その湖に浮かぶように存在する大きな島には、島を覆い尽くすような背の高い木に覆われた森があり、その中に村が存在する


 村にある全ての建物は、一日中日陰にあり、暗い雰囲気を漂わせている


 その中でも一際大きな屋敷で、1人の痩せ型の男が、女性に後ろから覆いかぶさっている


 しばらくすると、男は立ち上がった


「いつも、ありがとう」


 口元をハンカチで拭きながら、女性にお礼の言葉を述べた


「はぁぁ

 いえ、私達は、皆様に生き血を捧げる事が、無情の喜びですので、今日も、ありがとうございます」


 メイド服の襟元を正しながら、女性もお礼を述べた


「ところでドレックァ様、今夜もお出かけですか?」

「あっ、あぁ、ちょっと、よっ、夜風に当たってくる」


 急に話題を変えられ驚いたドレックァと呼ばれた男が、何か照れ臭そうに人差し指でこめかみをかく

 "クスっ"と、笑いながら召使風の女性が続ける


「夜風に当たりに行かれるのであれば、お花を持っていかれたら、夜風も喜ぶと思いますよ

 用意しますね」

「えっ、なっ何を!」


 いきなり花を持って行けと言われ、さらに戸惑う男の服装は農夫の様な粗末な格好をしているが、姿勢や佇まいが、育ちの良さをかもしだしている


「たかが眷属の私などがこの様な事を言うのは、本当はいけないのかもしれませんが・・・

 私達の様な者にも優しく接してくださるドレックァ様だからこそ言わせてください

 自分が心を寄せる方と結ばれるのが、ドレックァ様の幸せかと思いますよ」

「なっ、何を言ってる

 私は・・・

 いや、ありがとう、行ってくる」


 少し、顔色が良くなった?ドレックァと呼ばれた男は、召使から花を預かり、堂々とドアから出ていった


 男を見送った召使が、仕事に戻ろうと振り向くと、そこに1人の女性が立っていた


「おっ、奥様!

 あの、その、ご機嫌麗しく・・・」

「いいわ、気にしないで」


 そう言いながら、いかにも貴婦人のような女性が、階段を降りてきた


「そうよねぇ・・・

 しきたりや、家系なんて、もう時代遅れよ

 あの子達には、自由に生きてほしいものね

 すまないけど、あの子を後押ししてあげてくれるかしら、私は、もう1人の頭の固い人を何とかするわ」


 奥様と呼ばれた女性は、妖艶な笑みを召使に向け一言お願いすると、普通の人間では見る事など出来ない、庭を走って行くドレックァの後ろ姿をドア越しに見(透視)守る


「かしこまりました」


 深々とお辞儀する召使の女性



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 1人の女性が、村の外の1番大きい木の下で、足元に落ちている木のみを足のつま先でチョンッと蹴る


「早すぎちゃったかなぁ」


 夕食の片付けの手伝いを済ませ、走ってきたので、首元がうっすら汗ばんでいるが、日中は、畑仕事や家畜の世話を手伝っているので、そのくらいの汗は気にしない


「そんな事ないよ」

「ひゃっ!」


 さっきまで、周囲には誰もいなかったはずなのに、急に後ろに現れた男が、花束を渡しながら話しかける


「わぁ、キレイ!

 って、ドレクにこんな心遣いできたっけぇ⤴︎?」


 女性は、花の香りを嗅ぎながら、ドレクと呼んだ相手を勘繰る


「ははっ、サンディーは何でもお見通しだね

 召使がね」

「やっぱりね

 ちゃんと、後で、お礼を言わせてね

 でも、まずは・・・」


 サンディと呼ばれた女性は、ドレックァに飛びつくように抱きつく

 ドレックァもサンディを優しく迎え入れ、お互いの口を近づける


 お互いが納得するまで、無言の挨拶が続くと


「もう、今日も血色が良くないわよぉ

 やっぱりそれって、ヴァンパイアだから?」

「あぁ、私達は、太陽に嫌われているからね

 それに、前にも言ったけど、ちょっと君たちと食事が違うから・・・」


 "あっそうか"と、おどけてみせるサンディ


「あっ、そうだ、今日はね、ドレクに報告があるんだ

 お父さんがね、今度遊びに来なってさ」

「え?お父様が!

 え?私の事は・・・」


 突然のサンディの言葉に、一瞬喜んだドレックァが、すぐに声を詰まらす


「ドレクが、ヴァンパイアで、跡取りだって事も、ちゃんと伝えてあるわよ

 弟が、家を継ぐから、お前は好きにしろ!

 だってさ!

 ドレクは、ご両親に伝えてくれたの?」

「えっ、実は・・・まだ、伝えてなくて・・・」


 "ええええ"と、驚くサンディに、タジタジのドレックァ

「あとは、ドレクだけだからね

 さっ、夜しか会えないんだから、行きましょ!」


 サンディに腕を取られ、タジタジのドレックァが、後ろからついて行く


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いかん!いかんぞ!

 人間と結ばれるなど・・・」

「なぜ、いけないのでしょうか?」


 帰ってすぐに父に、サンディと結婚したい旨を相談したドレックァが、完全否定されてしまった

 しかし、サンディからの報告を聞いて、意志の決まったドレックァは、父に問いただす


「それはだな、今までの歴史でだな、混血は、不浄とされてだな・・・

 その、例が無い・・・訳でも無いのだが、うちの一族からは・・・」

「アナタ!いいじゃないですか

 その意固地な歴史のせいで、私達は衰退して、今では、他の同族がどこにいるのかも分からぬ状態ではありませんか?

 ドレックァ達には、自由にさせてあげてもいいのではないですか?」


 まさか、母が援護射撃をしてくれると思っていなかったのか、ドレックァが目を丸くしている


「まっ、まぁ、ママの実家とも、もう100年は連絡も取れておらんのは、確かだな・・・」


 この家の当主が、ママと発言しても、誰もなんとも思わない雰囲気は、この一族の仲の良さを思い浮かばさせる


「知っての通り、わしとママは、異例の恋愛結婚なのは、お前も知っておろう

 だから、お前達にも自由に、あれだ、恋愛はしてもらいたいと思ってはいるのだ

 しかしのぉ」

「アナタ!」


 モジモジ話す当主に奥方の一喝が入る


「分かっとる!分かっとるとも

 ドレックァが良ければ、その、あれだ、その娘を今度連れてきなさい

 我らの歴史より、息子の幸せの方が、大切だからの

 他の同族から難癖がきたら、ワシがなんとかするから、その、あれだ

 気にするな」


 "ぐふぅっ"と、椅子に深く沈み込むように座る当主の顔は、どことなく、ホッとしているようにも見える


「父上!

 ありがとうございます」

「兄上!

 良かったですね!」

「兄貴の彼女、早く見せてくれよぉ〜」


 弟達が、共に喜んでくれ、ドレックァは、少し、目が赤くなる

 それを見せまいと後ろを振り向くと、昨夜、花を持たせてくれた召使が両手を胸の前で、ガッツポーズして喜んでくれている



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 サンディーの村は、ドレックァの住む村がある湖畔の東側にあり、ドレックァの一族とは仲が良い


 村をあげての結婚式となった


 他の結婚式と違うのは、式が真夜中に執り行われた事くらいだろう


 しかし、その盛り上がりは、朝日が昇る寸前まで続けられた



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ドレックァ様!おめでとうございます!」

「サンディ様!おめでとうございます」


 2人が結婚した翌年、屋敷に元気な赤子の声が鳴り響いた


「シンディー

 この子の名は、君の名前にちなんで、シンディーにしよう!」

「まぁ、嬉しい!

 アナタのような、優しい人になってくれるといいわ」


 シンディーと名付けられた少女は、不思議な事に身体能力は、ヴァンパイアと変わらないが、太陽の陽に当たっても平気と言う、ヴァンパイア一族の中でも、変わった体質で生まれてきた


 おかげで、村と屋敷を行き来する事で、これまでより、さらに村の人々とヴァンパイア達は仲が良くなっていった


 しかし、そんな平穏は、20年足らずで、壊されてしまう



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「シンディ!ダメでしょ!

 あなたは、村の子達より力が強いんだから、手を挙げちゃダメって、いつも言ってるでしょう」

「だってぇ、アイツが、ミキちゃんの、お母さんから貰った大事な帽子を獲ったんだわさ

 だから、取り返したんだわさ」


 シンディが、サンディに叱られていると思ったら、友達の為に暴力を振ったらしい


 時間的には、私が起きたばかりなので、まだ、宵の口だろう


「友達の為にした事なんだよね

 でも、シンディは村で1番強いから、出来るだけ手を出さずに解決した方が良かったかもね

 その男の子も、本気じゃなくて、その子の気を引きたかっただけかもしれないだろ、相当痛かっただろうから

 今から、謝りに行こうか?

 私も一緒に行くから、ね」


 むすぅっ、と、膨れっ面で怒るシンディだが


「アタイ、強いの?」

「あぁ、村でも、ここでも、1番強いぞ」


 何故か、強いという言葉に機嫌をよくしたらしく


「フン、仕方ないだわさ

 ちょっと、やりすぎたから、アイツに謝ってやるだわさ」

「コラ、シンディ!

 謝るのに態度が大きすぎるわよ!もう

 今、お菓子でも用意するから、ドレク、お願い」


 友達の為だからと、暴力を振るってしまった事はいけないが、シンディが、人の為に怒ったという事が、何故か嬉しくなり、夜の道を手を繋いで、大手を振ってシンディと村へ向かった



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「父上!聞いて!

 もう、大体の村の子供達は、文字も読めて、簡単な計算は、出来るようになっただわさ」

「すごいじゃないか、シンディー

 小さいうちから、文字が読めて、数が数えられれば、行商や役人達から騙される事がなくなるな」


 "でしょぉ!"と、見た目は、まだ、小学生くらいのシンディー、これでも、先日20歳を迎えた大人だ

 胸をらしているが、母親のサンディのような容姿になるには、まだまだ、数十年、いや、数百年かかるかもしれない


「ドレックァ様、御館様がお呼びです」


 ここ数年サンディの実家の仕事を手伝いながら、子供達に文字の読み書きや足し算引き算を教える事をしているシンディと、日中の話など、サンディと3人で、一家団欒の時間を過ごしていたところに、召使から声をかけられた


「さて、夕食は終わったのに、なんだろう」

「あら、ドレク、これからお父様の所に行かれるのなら、もしかしたら、私達は寝てるかもしれないわよ」


 ヴァンパイアと人間が、同じ屋根の下で暮らすと、どうしても、生活の時間帯が違うので、夕方から夜中までは、貴重な時間だが、この屋敷の当主である、シンディの祖父からの呼び出しには逆らえない


「ああ、そうしてくれるかい?

 おやすみ、サンディ

 おやすみ、シンディ」

「父上、おやすみなのさ!」


 愛妻と愛娘に挨拶のキスをして部屋を出た


 召使とシンディの事などを話しながら、父と母の暮らす部屋の前に着いたが、召使の歩みが止まらなかった


「え?父上達の部屋ではないのかい?」

「はい、お客様がみえているので、客間に案内するように仰せつかってます」


 何かがおかしい・・・

 村の人達の来訪なら、客間など使わず、父上達の暮らす部屋でも問題ないくらい仲がいいはずだ・・・

 少しの不安が、ドレックァの頭をよぎる


「ドレックァ入ります」


 そう言葉を述べてから、客間に入ると、1人の見知らぬ女性が父上の反対側に座っている

 私は、その女性に会釈をして、父の近くに腰を掛ける


「待たせたな

 倅のドレックァだ

 ワシに何かあれば、倅が跡を継ぐので、同席させてもらうぞ」

「まったく、あなた達は、これから活動するのかもしれないけど

 普通は、夜って言ったら寝る時間なのよ

 肌に悪いんだから、早くしてもらいたいわね」


 なっなんなんだ、この女性は、父上に向かって、なんて不躾な物言いだ


 ん?よく見ると、特徴のある耳をしている・・・エルフか・・・

 確か、北の方の森にハイエルフが住んでいると言われているが・・・


「おお、これは、すまぬなフィス殿

 妻が淹れてくれた茶でも飲んで、気を落ち着かせてくれるとたすかるな

 して、こんな田舎に何の用ですかな?」

「ええ、ありがたく頂くわ

 でね、要件なんだけど、私達が住む森の近くには、村が点在してるんだけど・・・」


 父上に"フィス"と呼ばれた女性が話し出すと、今度は、何かの歌でも歌っているかのように、心地よく言葉が耳に入ってくる


 その歌が途中で途切れたかと思うと、透明のような肌のフィスと呼ばれた女性は、少し目を伏せて、話しを再開した


「あなた達、いくら、人間の血を吸わなきゃ生きていけないからって、村を2つも壊滅させる必要はあったのかしら?」


 え?!

 この女性は、何を言ってるんだ?

 父上と顔を見合わせて、驚いてしまった


「ちょっと待ってくれぬかフィス殿

 一体何の話をしておるのか、分からぬのだが・・・」

「何、しらばっくれてるのかしら

 襲われた住人達の首元には、何者かに噛まれた痕が、はっきり残ってたわよ?」


 先程までとは、まるで別人かと思われるその歌声は、終演を迎えるかのような歌声に思える


「ちょっと待ってくれぬか

 ワシらは、もう、人を襲わなくなって、かなりの時が経つ

 何かの間違えではないかのぉ」

「いいえ、間違いないわよ

 生き残った住人達だって、さっき私をここに案内してくれた女性のような状態になっていたわ

 あなた達に血を吸われると、あんな風に眷属になるんでしょ?

 どう考えても、場所的にあなた達しかいないのよ」


 この女性は、懇意にしている人間が襲われて、怒りに満ちているのが分かる

 私だって、もし、サンディの生まれ育った村の住民が襲われたら、怒り狂ってしまうだろう


 しかし、父上が言うように、我が一族は、私が生まる以前より(400年以上前)、普通に暮らす人間を襲ったりはしていないのだ


 私が小さい頃に祖父から伝えられているのは、遥か昔、この湖に浮かぶ島に移り住むようになって、その時に眷属にした者達が、この島で、家族を作り、ドレックァの一族の屋敷を囲むように村を形成して、今に至るらしい


 そして、ドレックァは、生まれた時から、必要な時は、その眷属の血を吸って育っているので、湖畔の村(サンディーの村)の住人の血すら吸った事はないし、自分たちの種族の事もしっかり教育されてきている


 ドレックァ一族と村の眷属達と、湖畔の村は良好な関係で、今までいざこざなど起きておらず、逆に、村が野党やモンスターに襲われる度にドレックァの一族と眷属が守ってきたのだ

 なので、普通の人間を襲う事はあり得ないのだ


 そして今、父上が、自分より長く世界を見てきているフィスに対して、見た目では年長者の貫禄でゆっくりと、その事を説明した


「ええ、私達もこれまでは、あなた達を変わったヴァンパイアだけど、調和の取れた種族だと感心していたわよ

 でもね、私たちの森の近くであなた達以外に、ヴァンパイアは、いないでしょう?」


 ぐぅ、痛いところをついてくる

 サンディと結ばれる前に、父上や母上と話し合いになった時にも話題になったが、確かに私達の同族は、今どこにいるのかなんて、到底分からないほど離れ離れになっている


「そう言われてしまうと、何も返せないな・・・」

「私は、村を襲った者の痕跡を追ってここまで来たのよ」


 ありえない!

 しかし、エルフの探索能力は、全ての生き物の頂点に君臨するほどの能力だ

 しかし、私が生まれてからこれまでに、他の同族とは会った事すらないのだ

 言いがかりとしか思えなくもない

 すると、父上が2度軽く頷き


「なっならば、私がこの目で現場を見させてもらおう

 我らの同族がしたことなら分かるはずだ

 すまんが、フィス殿、明日、そちらの村にわしが向かうので、案内してくれるか?」

「分かったわ

 なら、湖畔の村で宿でも取るとするわ

 明日の夜に移動しましょ

 それと、そちらの・・・息子さん、随分と大人しいのね」


 ギクっ、いきなり話を振られたのでびっくりしてしまった


「はぁ、私は争い事が嫌いなので・・・」

「あらそっ

 なかなか、思慮深そうね?

 もし、村の住人が眷属になってる事が判明したら、あなたに託そうかしら・・・」


 そう伝え、エルフのフィスは出て行った


 エルフの去った部屋で、私と父上は、少し沈黙してしまった


 しばらくして、沈黙を破るように、母上が新しいお茶を持ってきてくれた


「あなた、先程から、私、嫌な胸騒ぎがしますの

 それにあのエルフ殿は、嘘をついているようには見えませんでしたわ」

「あぁ、おのフィス殿は、ハイエルフだろう

 敵に回したくないのぉ

 まぁ、行ってみれば分かる事だが、もし、他の同族だったら・・・」


 父上が、何かを思い悩みながら発した言葉は語尾がかすれて良く聞こえなかった



『きゃぁぁぁぁぁ!』


 既に深夜を回った頃、静かな屋敷に悲鳴が響き渡った


 バタン!


 ドアが勢いよく開き、1人の男が入ってきた


「おう!久しいな!

 というか、召使い共の教育がなってないんじゃないか?」


 入ってくるなり、愚痴を漏らす男からは、威圧的な態度が見受けられる


「あっ、あに様・・・」

「ラキュラ兄様?」


 父上には、兄弟はいなかったはず、すると母上の兄上ということか?


 確か、母上の一族は、同族の中でも由緒ある一族だったはずだ・・・


 それと、いつも、ほがらかな雰囲気の父上が、動揺?と言うか、緊張している・・・


「はははっ、チャド、久しいな!

 いい所に住んでるじゃねえか!

 よし!今日から、ここを新しい我が一族の根城にするぞ」

「なっ、なんですと!?」


 いきなりこの方は何を言っているんだろう

 この土地は、父上の何代も前から、ゆっくりと時間をかけて作り上げた土地、なぜに、そんな簡単に根城にするなどと言えるのだろう?


「ラキュラ兄様、先祖代々受け継がれたあの土地はどうなさるんですか?」

「あぁ?あそこか?

 忌々しい人間共に燃やされたわ

 お前が、チャドに嫁ぐ前に、近くに人間の集落があったであろう

 あれがいつの間にやら、大都市になってな、人間が増えたんで、遠慮なく血を吸っておったら、痛いしっぺ返しを食らったわ

 ガハハハハっ」


 どうやら、母上がいた頃は、その集落ともうまくやっていたのに、母上が父上に嫁いで来た後に祖父様と2人で好き放題しすぎて、最終的には、日中に寝ているところを、万を越える人間に屋敷はもちろん、その周辺の森林も囲まれ、火をかけられ、方々の体で逃げてきたらしい


 祖父様とは、生き別れ、妹である母上を頼ろうと、東へ東へと人間を襲いながらやってきて、エルフの森の近くの住人に手を出してしまい、エルフを怒らせてしまったそうだ



「ってな訳でな、すまんが、ここに新たに、"ラキュラ・ド・アレクセイ"の居を構えるぞ

 構わぬなチャドよ」

「えええええ?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「どうしたものかのう?」


 頭を抱える父上の隣で、私は黙って聞いている


「いくら、我が同族の中でも、指折りの一族で、ママの実家といえ、のぉ

 ここだって、ワシの先祖が、人間達と上手くやってきて、ここまでになったというのに」


 今、叔父上は、母上と久しぶりの再会と食事を楽しんでもらっている


「父上、叔父上が由緒ある一族となると、人間のサンディと暮らす私のことは・・・」

「人間を吸うだけの存在としか思っておらんからのぉ

 シンディの事すら、受け入れては、くれぬだろう」


 はぁ、一体私が何をしたと言うのだろうか、心を寄せ、家族となったのが人間であっただけで、なぜ、同族から受け入れてもらえないのだろうか・・・


「父上、私は長男でありますので、父上のためにこの身を捧げるのは問題ありませんが、サンディとシンディは、悲しませたくありません

 少し時間をいただけますか?」


 私は、そう言って、部屋を出ようとした時だった

 父上の部屋のドアが開き、慌てた様子で母上が入ってきた


「あなた!大変です

 兄様が、先ほどのエルフの元へ・・・」


 叔父上が、食事をとって、寝ているだろうエルフに仕返しに行ってしまったそうだ


 分からない、なんでそんなに好戦的なんだろう


「兄様が暴れたら、小さな村などひとたまりもない

 ワシは、止めに行く!

 ドレックァは、ここを頼む!

 最悪の場合は、後の事を頼んだぞ」

「いえ、父上、私も行きます

 しかし、申し訳ありませんが、事情をサンディ達に伝えてから向かいます」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「父上!何かあったのですか?」


 あぁ、実は・・・


 この短時間で起きた事、また、父上から聞いた、叔父上の事をサンディとシンディーに伝えた


「えっ?村が・・・・」

「そんな、もし、その叔父上様が、暴れたら・・・村が!村ばあ様達が大変じゃないだわさ!

 どうしたらいいの父上!」


 サンディ達、人間から見たら、私たちヴァンパイヤの破壊力は、想像がつかないだろう

 それに、叔父上は、私なんかよりはるかに強いだろう

 シンディーが、心配するのも無理もない


「そうなんだ、村も、あのエルフの使者も、どうなるか分からない

 それに加え、こっちの方が大事なんだが、ちち・・・お祖父様の話では、叔父上は伝統を重んじる方で・・・

 多分、私達を認めてくれないだろうとの事なんだ」

「えええ!」「そんな・・・」


 これは、聞き入れられない事だ

 しかし、それが、種族の違う物同士で家族を形成する大変さなのかもしれない


「シンディーは、何故か昼も出歩ける

 もしもの場合は、2人はここを出て、暮らしてくれるかい?」

「あなた!何を言っているのですか?」


 黙って話を聞いていたサンディが、そんな事は出来ないと、反論する


「そうだよ!

 父上も一緒ならいいけど、一緒じゃなきゃ出て行きたくないだわさ!」

「わっ、分かった!

 いつまでも、3人は一緒だ!

 しかし、まずは、叔父上を止めなければならない

 私は、父上と村に行くから、何かあってもいいように荷物をまとめておいてくれるかい」


 争い事なんてした事のない私に、何が出来るか分からないが、なんとかしてみよう




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 家族に事情を説明して、急いで村に走ってきてみたが・・・


 酷い有様だ!


 家屋は、何軒も倒壊し、炎をあげている

 村人が、何人ものエルフに手を引かれ避難をしている


 そして、村の中でも喧騒の激しい場所に向かった


 そこでは、叔父上とエルフの使者・・・フィス?だったか?が、物凄い戦闘を繰り広げていた


 叔父上の攻撃の凄さは、地面に無数に形成された凸凹デコボコが表している


「うぉぉぉぉぉ!」


 その地形に驚いていると、叔父上が腹の底から湧き出るような声で唸り出した

 周囲の空気が叔父上の頭上に集められ、凝縮していくようだ

 そして、その凝縮した空気が、叔父上の頭くらいの大きさで赤黒く球状になっていった

 叔父上はその球をエルフに向かって投げつけた

 投げられた赤い球は、さらに凝縮を進め、エルフの直前では、拳大の大きさになり、エルフに当たった・・・


 ドゴオォン!


 土煙が上がり、地面には大きな穴が開く、凄まじい破壊力だ


「もぉ、さっきから、威力だけでは、私を倒せないって言ってるじゃない!

 って言うか、散々、村を荒らして逃げた事、許さないから・・・」


 直撃したかと思ったエルフが、涼しげな顔で、別の場所から答える


「ワレも、同じことばかりする、阿呆ではないぞ!」


 と、エルフの背後から、叔父上の手刀が、エルフの首を薙いだ!


 エルフの顔が、歪んだかと思ったら、残像だった


「あのね、夜なら、私に勝てるとでも思ったの?

 自分たちが、この世で一番強い種族と思ってる子たちを沢山見てきたけど、私達はねぇ、あなた達とは経験が違うのよ

ケイケンが!

 ほんとくっだらない」


 さっきと違う場所から涼しげな声がしたと思ったら、徐々にエルフの体が現れた


 叔父上を"子供"扱いするなんて、一体、このエルフは、どれだけの強さ・・戦闘のセンスを持っているんだろう?


「ドレックァよ、このままでは、サンディの村が、なくなってしまう

 フィス殿のお仲間が、避難させてくれておるが、叔父上にとっては、その行為すら腹ただしいようで、先ほどから、暴れまくっておる

 ワシが説得に回ってみるが・・・期待せんでくれよ」


 気配もなく、背後に近づいた父上が、言い終わるや、一瞬で叔父上の前に移動する

 何やら、説得をしているが、叔父上の雰囲気は、変わらない


 叔父上の前で、懇願するように説得している父上の肩に、叔父上が手を添えた・・・


 ビクン!


 父上の体が、雷にでも打たれたように跳ねた!


 と、思ったら、父上は、ゆっくりとエルフの方に振り向き、歩き出した


「ギィィィィィ!」


 父上は、歯軋りのような声をあげながら地面を蹴った


「父上!おやめください!」


 なんと言う事だ、争い事の嫌いな父上が、エルフに猛攻撃を始めてしまった


 しかし、エルフは、ダンスでも踊っているかのように父上の攻撃を全てかわしている


「フン、それがあなたの答えってことね

 分かったわ

 私は、謝罪を望んだんだけど、そっちがそのつもりなら、村を襲った償いをしてもらうわよ」


 そう言うと、エルフは、草笛か何かを吹いた


 これはマズイと思い、父上を後ろから羽交締めにした


「父上!

 いけません!

 私たちは、争いをしに来たわけではっ

 ぐはっ!」


 父上を説得しようとしたら、背中に衝撃が走った


「チャドの倅よ!

 父親といい、倅といい、ワレに逆らうとは、お前達は、我が一族を愚弄するか!

 フンぬっ!」


 ぐはっ!


 さらに痛みが走る!

 ぐぐぐぐっ、何かが、脳に直接入ってくる


 こっこれで、父上は、変わってしまったのか・・・


 ダメだこんな事に屈したら、サンディやシンディが、叔父上に見つかったら・・・


「うおおおおお!」


 私は、ありったけの声をあげて、脳に入り込んでくるものに抵抗した


「クソ!変わらぬか!

 まぁ良い、チャドと2人で、仕留めるとしよう」


 ぐぐっ、動きたくても動けない

 しかし、父上と叔父上がエルフに攻撃をしているのは見える


 さっきの笛が合図だったのか、至る所からエルフが戦闘に参加し始める


「みんな、これが、ヴァンパイア達の返事よ

 村の仕返しをするわよ!」


 "父上ぇ!"、最悪だ、声も出ないし、動けもしない、しかし、さっき、村人を誘導していた時とは違う、殺気に満ちたエルフ達が、殺到してくる


 あぁ、サンディ・・・シンディ・・・



「父上ぇぇ!

 応援に来ただわさ!

 ぐぬぬぬっ!エルフめ!許せないだわさ!」

「ドレックァ様、申し訳ありません

 シンディ様が、どうしてもと・・・

 シンディ様は、私どもが命をかけて守りますので!お許しを」


 目線だけで、周囲を見ると、召使達や眷属達、シンディを守るように円陣を組んでいる


「父上!動けないの?

 ねぇ、父上をお願い

 アタイは、お祖父様に加勢してくる

 父上をこんな目にしたあのエルフをぶん殴ってやるだわさ!

 とぉう!」


 そう言うと、シンディが、今まで見た事ないような身のこなしで、飛び出して行った


「シンディ様をお守りするわよ!」

「おう!」

「ウォォォォオ!」


"違う!

 違うんだ!

 父上は、操られているんだ!"


 シンディがエルフに向かって飛び出した為、メイド達や眷属、森に住むことを許されているワーウルフまで、人狼の姿で戦闘に参加してしまった



 シンディが、エルフと肉薄する


「なっ、何?あなたみたいな女の子が、こんな所にいちゃダメよ」

「うるさい!

 アンタなんか、こうだわさ!」


 シンディが、渾身のパンチを繰り出すが、軽くかわされる


 幾度となく攻撃を仕掛けるシンディだが、エルフのフィスには、全く届かない


「フン、間抜けだな!

 ゆけ、チャド!」


 そこへ、チャドが襲いかかる

 チャドは、自分の孫もろとも殴りかかった


「ダメよ!」


 エルフは、シンディを庇うように前に出て、殴りかかろうとしているチャドの腕を体を捻るようにかわし、そのまま、チャドの後頭部に肘鉄を喰らわす


 自身の勢いと、後頭部の一撃で、吹き飛ばされるチャド


 ズッシャーン!


『父上!』


 父上が、こちらに吹き飛ばされてきた


「あっ、兄様の近くにいると操られてしまう」

『わっ、私も先程から、何かに体を侵食される感じが・・・』


「さっ、さすがは我が息子、兄様に抵抗しておるんだな」


 何とか片膝立ちをするチャド


「お祖父様ぁぁぁ!」


 シンディが、飛ばされたチャドが心配で駆け寄る


 振り返ると、フィスとラキュラの攻防がまた始まっていた


「ぐぐぐっ、どっ、ドレックァよ

 このままでは、マズイ

 村は、ママと、チャダスに任せて、お前は、サンディとシンディを連れて村から離れなさい

 私達は、人間と共存できるヴァンパイアなのだ、この血を費やしてはダメだ!」


『しっしかし!』


 ダメだ、声が出ない!


「そんなぁ、あんなエルフに負けたくない!」

「おお、シンディこんな事に巻き込んですまなんだ

 しかし、エルフが悪いのではないのだ

 あの兄様を止めれば済む事なのだ」


 チャドが、シンディに説明するが、シンディには伝わらない


「おい、お前達、すまないが、2人を連れていってくれぬか?

 良いかシンディ、揉め事には、必ず原因がちゃんとあるのだ

 思い込みで決めつけてはいけないぞ

 ここは、お爺が何とかするから、父上と母上を頼むぞ

 ドレックァよ、頼むぞ、血を絶やす出ないぞ」


 召使達が、ドレックァをワーウルフ乗せ、嫌がるシンディを連れて館に引き上げ始める


 チャドは、それを見守り


「はぁぁぁぁぁぁっ!」


 と、気合を入れ直す


「チャド!

 手を休めるでないわ!」


 ラキュラが、チャドを嗜めたが、今度は、チャドが動じない


「ママ、愛してるよ」


 ゆっくりと、何かに抵抗するように立ち上がったチャドが、意を決し、ラキュラに向かって走り出す



『父上ぇぇぇぇぇぇ!』



 動けない私は、ワーウルフの背中から、叔父上に立ち向かう父上の背を目線で見ながらも、何も出来ずに嘆くことしか出来なかった・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あぁ、ドレク、シンディ・・・」


 夜の暗闇の中、遠くの生まれ故郷の村から上がる炎を見やり、そこで戦闘に参加している(巻き込まれている)であろう、夫と娘の名前を呟く



 ドタバタと、慌ただしい足音が廊下に響き渡ったかと思うと、部屋のドアが開いた


 バタン!


「グルル」


「あぁ、あなた!」

「母上ぇぇ!」


 ワーウルフは、ドレックァを床に下ろした後、廊下に出ていった


「サ・・サンディ・・・

 このままでは、叔父上に・・・

 村を出よう」

「でっ、でも、他のみんなは!?」


 自分で動く事の出来ないドレックァは、声を絞り出して、妻であるサンディ達に村を出る事を指示する


「すごく強いエルフと、お祖父様のお兄様が、凄い戦いをしてただわさ

 でも、お祖父様が、アタイ達は、ここから逃げなさいって・・」

「なんで、私達が!?」


 急な話で、サンディが戸惑っているところへ、もう1人、貴賓ある女性が入ってきた


「ドレックァ、サンディ、それとシンディ

 少しいいかしら?」

「お祖母様!」


 シンディが飛びついたのは、この屋敷の当主チャドの妻であり、今回の争いの原因のラキュラの妹のラトリ、不在のチャドに代わり、屋敷内をまとめている


「お祖母様、お祖父様が、出ていけって!」

「あら、あの人が、そんな言い方した?

 みんなよく聞いてくれる」



 母上は、ヴァンパイアの歴史、現状、そして、私達一族の歩んできた道と、父上と母上の理想など、手短く話してくれた


「いい、サンディ

 あなたには、ドレックァを受け入れてくれた事、チャドと2人、本当に感謝しているわ

 シンディも、村との絆を深めてくれて、本当にありがとう」


 母上は、そう言うと、少し落ち着いたシンディーの頭を軽く撫でた


「だからお願い

 もしもの時を考えて、あなた達は、村を出て、違う場所に居を構えてほしいの

 ドレックァには、キツイ旅になるでしょうけど、それが、家族をまとめる男の役目よ

 サンディ、そしてシンディー、あなた達ならどこでも受け入れてもらえるだろうから・・・

 お願い、生きて!」


 多分、母上は、叔父上の強さを1番知っている、だから、もしもの事を恐れているのだろう・・・

 しかし、一族の長男として産まれたのに、自分だけが逃げていいのだろうか?


「母上っ」

「お母様!

 嫁として受け入れてもらい、何の恩返しもできていないのに、私達だけ出て行くなんてっ」


 私の声を掻き消すようにサンディが、母上に詰め寄る


「サンディ!

 生きる事が恩返しと思ってちょうだい!

 ホント、男ばかりでむさ苦しかったのに、あなたのような娘ができて、私は幸せでしたよ

 シンディ!

 2人を頼んだわよ!」


 母上の意思は強い、それにサンディも強い、ここに私がいる事すら2人の目には映っていないように思われる


 しかし、ただでさえ同族がいるのかも分からない私達ヴァンパイア一族、叔父上のせいで、潰えてしまってはいけない

 ならば・・・


「サンディ、ケガが治るまでは、迷惑をかけるかもしれないが、新しい住処を探そう・・・」

「・・・分かりました

 母上、ドレクは私が責任を持って介抱します

 ですので、村を・・・村のみんなをお願いします

 シンディ!お祖母様に挨拶を」


 さっきから、会話の内容で、永遠の別れになる事を理解したシンディが、目を真っ赤に濡らして押し黙っていた


「お祖母様ぁぁぁ

 絶対、また、会うんだわさぁ!」


 

 私達は、廊下に控えていた、ワーウルフと4人で、屋敷の裏から、小さなボートに乗って東に向かった・・・

読んでいただきありがとうございます、超七玉です

ちょっと、今回、主筋と違う話をちょっと書くつもりが、長くなってしまいました

ストーリー的におら混ぜられるように頑張ります

ありがとうございました

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