42、夜の襲撃者は少女?
42、夜の襲撃者は少女?
「さぁて、ローイ達の手伝いも終わったし、そろそろ帰ろうかしら
みんなぁ、先に帰ってるわよぉ!」
さも、鍛冶屋建設の手伝いをしたかのように立ち上がったハイエルフのフィス
今まで座っていたテーブル代わりの大木には、食べ散らかした木の実や、スイーツの残骸が、1日中ここに居たのではないかというくらい散乱している
「あぁ分かった、俺はキリがいいとこまでやってくから、帰っといてくれ」
外見では、もういつでも開店できるのでは?と思われる建物の中からローイが答える
「お前さん何もしとらんのだから
ワシらの晩飯くらいは、確保しといてくれよ」
「はぁい!
帰り道気をつけてねぇ」
ドムとライリーからも返事があった事を確認し、テーブルの上をササッと片付けて、フワリと立ち上がったフィスが、風がたなびくように歩き出した
「今日は、ダンジョン前でも通って行こうかしら」
ここ冒険者の村は、街灯などが少ないため、辺りが暗くなるのも、少し早く感じる
この時間から、ダンジョンに入る人は、ほぼいない
ただ、出てくる人はいるので、こっちにきて知り合った冒険者などが、出てこないか、興味本意でダンジョンの入り口を見ながら歩いていた
「ん?何かしら」
フィスは、ダンジョンの入口に違和感を感じたので、一旦、ダンジョン入口の前をやり過ごして、屋台小屋の影から、ダンジョン入口を観察し始めた
しばらくすると、辺りもかなり暗くなってきた
夜目の効くフィスが、微動だもせず、ダンジョン入口を凝視する
「ん?」
何かに気付いたフィスが、眉を顰め、さらに目を凝らす
ダンジョンの入口の天井から、何かが顔を出している
「少女?」
顔を出していた少女のような顔が、左右をキョロキョロ、上下をキョロキョロしている
するとその顔が一瞬、入口の中に消えたと思ったら、1匹のコウモリがパタパタと飛び出してきた
「あら珍しい
あの顔は・・・
随分久しぶりに見たわね・・・」
そう言いながら、コウモリが飛び去った方角を見る
どうやら西の方角だ
「ふー、仕方ない、追いかけよっかな」
そう言いながら、走り出したフィス
しかし、周囲の草木は揺れていない
さすがは、ハイエルフ、風の加護でもあるのだろう
村の囲いは、丸太製だが、優に2mはあるだろう
しかし、フィスは、落ちている小枝を避けるように超えていく
「あっちは街よね?
まったく、被害が小さけりゃいいけど・・・・」
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「だからさぁ、報告があって、朝まで走り通しだったのよぉ
お風呂くらい使わせてよぉ」
家の中には、フィス以外は、誰もいない、どうやら、みんなは仕事や冒険者ギルドに行っているのだろう
食卓の上には、サーヤが用意してあげたのだろう、食事の後が、フィスの食欲がなかなかな事を物語っている
「俺だって、依頼の後なんだけどな、今、準備するよ」
風呂と、シャワーのタンクに水を張り温めると、待っていましたとばかりに、俺の後ろには、マッパのフィス!
「おいおい、早すぎるよ!」
「いいじゃない、減るもんでもないし」
異性として見られてないのか、これがエルフの習慣なのか、俺の事をなんだと思ってるんだか、まったく・・・
「ねぇ、大事な報告があるんだけど、面倒だから、一緒に入っちゃう?」
「おい!」
俺が、ちょっと大きめな声を出すと、フィスは舌を出して風呂場に消えていった
「で?報告って」
俺は、フィスがひとっプロ浴びてる間にテーブルの上を片付けて、フィスの後に風呂に入った
頭を拭きながら、2人分のお茶を淹れ、食卓に着く
「ヒロは、ヴァンパイアって知ってるかしら」
フィスの口から、今、絶賛捜索中の名前が出たので、一瞬焦った
「あぁ、名前だけはね
それと、最近、その吸血鬼のせいだと思われる事件が、何件か発生しててね・・・」
その警護の強化が、昨夜から始まった事を伝えた
「ふぅーん、そうなんだ
多分だけど、その犯人・・・
ヴァンパイアのお嬢さんを見つけたわよ」
「えっ?マジで?」
チョイチョイチョイ、ちょっと待てって!
レイが、街をあげて、警護を強化して探そうとしている犯人をあっさり見つけちゃっていいのかよ!
「本当に吸血鬼なのか?
ってか、吸血鬼って見ただけで分かるのか?」
「んーそうねぇ
まぁ、ヒロよりは長く生きてるから、いろんな種族を見てきているわよ
ヴァンパイアって、最近見かけなかったんだけど・・・
ダンジョンから出てきたから、追いかけてみたら、この街に入って行ったのよ」
そうだった、フィスはハイエルフだった
って事は、何百年って生きてるのかな?
それにしても、あのダンジョンに吸血鬼が住んでいたとわね
ってなると、地下何階に住んでるんだ?
他の冒険者から吸血鬼の話題が出ていないところをみると、地下26階層より下なんだろうなぁ
この街で騒ぎになってるのがソイツなら、昨日が空振りだったのは、当然の事なのかも知れないな
なら、今夜は、出没するかもしれないって事か・・・
「なぁ、フィス、今夜警護に付き合ってくれよ
ちゃんと、ギルドには言っとくからさ」
「あら、デートのお誘い?
いいわよ
ならば、もうちょっと詳しく教えてよ、その事件のこと」
いや待て待て待て!
風呂に入ったからか、目が冴えていたが、また、眠気が襲ってきたので、取り敢えず寝させてもらうことにした
「つれないわねぇ」
そんな事を言うフィスから逃げるように俺は部屋に戻り布団に潜り込んだ
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「ワンワン!」
んはっ!やべ!しっかり寝ちまったか!
慌ててベッドから、飛び起きたが、窓からは、まだまだ、ギンギンに太陽の光が入り込んでいる
足元を見ると、シロが尻尾をプワンブワンと振りながら、こっちを見ている
「よく寝れたでしょ?」
ん?入り口から覗き込むフィスが、手元に持った薬草らしき、白い花の植物をヒラヒラさせながら話しかけてきた
「ん?なんか、いい匂いがするな
ハーブかなにか?」
「そうね、沢山使うのは良くないけど、ちょっとなら、良く寝れる薬草よ」
だから、ぐっすり寝られたのかぁ
ちょっと冷たい?クールなフィスだが、こういう何気ない心遣いはありがたいね
改めて、立ち上がり、軽くスクワットをしてみたが、全く夜勤の疲れは残ってないぞ!
「ねぇ、今夜は、その仔も連れて行ったら?
行きたがってるわよ」
ん?なんで、シロの気持ちが分かるんだ
しかし、シロの様子からして、確かに散歩をせがむ犬みたいに、物欲しそうに見上げてくる仕草が可愛いなw
「よし、じゃぁ、出かける前に飯でも食いながら、今回の件を説明するよ
一緒に行ってくれるだろ?」
「どうしようかしら
夜に起きてるのは、お肌に悪いのよねぇ」
ぐっ、ゼッテェそんな現象起きないだろ!
って突っ込みたくなったが、グッと堪えた
「なんだよ、行ってくれないのかよ
なら、行かなくてもいいから、吸血鬼の情報をちょっと教えてくれよぉ〜」
「はいはい、分かったわよ行くわよ!
お茶くらい淹れてよね」
無理矢理承諾してくれたフィスを食卓に座らせて、作り置きをマジックバッグから出し、食べながら、これまで知り得た情報をフィスに話して聞かせた
朝にフィスから聞いた、ダンジョンからの出来事と、自分の話した内容を照らし合わせてみる
「どうやら、その吸血鬼が犯人で間違いないと思うけど・・・
毎回、この街に血を吸いに来ていたって事になるのか・・・」
「そうね、私の知ってるヴァンパイアは、1度、血を吸うと、しばらくは、大人しくするらしいわよ
でも、普通なら、眷属を使用人として置いておいておくから、あまり外に出たりしないんだけどね
それに、あの子、成長期にしても、あなたが話すほど頻繁に人を襲うなんておかしいわね」
フィスが言うには、吸血鬼は、生き血を吸った人間を眷属として召し抱え、血を吸いながら、身の回りの事をさせるらしい
また、血を吸うのは、成人の吸血鬼で1月に1度ほどらしい
この街で起きている事件は、詳しく聞かなかったが、1〜2ヶ月ほどで、7人の被害なので、ちょっと多いらしい
「まぁ、あなた達も、良く疲れた時にお腹が空いたぁ、とか言うでしょ
あれと同じで、激しい行動をしたら、頻繁になるかも知れないけど
それにしても、多いわね」
「はははっ、ただの"大飯食らい"な少女だったら笑えるけど、その飯が、人の生き血ってのはいただけないよな」
吸血鬼という存在のエネルギー源が、人の血で、普通以上に多いという事は、複数の吸血鬼がいるのか、それとも・・・
「まぁ、にしても、今、この街に、吸血鬼が潜んでいるってのは間違いないんだろ?」
「ええ、間違いないわ」
ならば、今日は、気合を入れて警護しないとな
よし、鼻の効くシロを連れて行くのは決定だな
「じゃぁフィス、一緒に行って、レイやギルマスに説明してくれよ」
「はいはい
夜食は、軽めにしてよね
お肌に悪いからw」
ぐっ、エルフって自由だよな
まぁ、今夜、吸血鬼が出てくれれば、フィスに対処してもらえるだろうから、ここは、機嫌を損ねないように・・・
そして、準備を整えて出掛けた
今日も1度、中央区に集まった
レイとギルマスを見かけたので、フィスを連れて行った
「なんだって?
おいおい、それは間違いないのか?」
「ええ、間違いないは、ヴァンパイアだったわよ
あの子達は、魔力というか、蓄えた力によって見た目が変わるんだけど、子供っぽかったから、まだ若いのか、弱ってるかどっちかじゃないかしら」
レイが、驚きと共に確認すると、フィスは、間違いなく吸血鬼だと言い切った
吸血鬼の存在と、今、まさにこの街に潜んでいるという事実を知った、警護隊、神官達、冒険者からざわめきというより、どよめきが起こる
しかし、その正体が、子供か弱ってると聞き、集まった警護隊や神官達は、安堵のため息を漏らし、捕らえて名を上げようと、冒険者達はイキリ出した!
「あっ、それでも、普通の人間の数倍の魔力と強さがあるから、みんなは気を付けなさいね」
「・・・・・」
そんなお調子者達を嗜めるように、フィスが注意をすると、一気に現場が静まり返った
「おい、フィス!
頼むから指揮を下げないでくれよ(苦笑)
して、どうするレイモンド!」
「あぁ、ハイエルフのフィスさんが言うなら、嘘はないだろうから
ここは、事前に相手を知れただけでもありがたいな」
レイが、顎に手をやり少し悩んだ後、隣に控えるジュディと何やら話した後
「そうだな、今回は、特例として、襲撃者と思われる人物を捕らえた警護チームには、職業を問わず、特別報酬を出そう
しかし、条件は、誰も命を落とさないって事な!
捕縛が難しいなら、襲撃者を殺めても致し方ないが、こちらの被害が大きくなりそうなら、迷わず、一旦退く事をお願いする
警護にあたってくれているみんなにも、今夜からは、報酬を引き上げさせてもらう
いいか、絶対に自分達の命を優先してくれよな!」
「おおお!!!」
一旦、沈んだ雰囲気だったが、レイの言葉で、その場にいた全員の指揮が上がった
「あらら、そんなに気合い入れさせちゃって、知らないわよ
ヴァンパイアを舐めてかからない方が身のためよ」
「あぁ、そうするよ
まぁ、俺なんかじゃ、太刀打ちできないだろからねw」
フィスが、周りの盛り上がりに少し呆れるように俺に注意をしてくれた
「ヒロさん、今日もよろしくお願いします」
「ああ、よろしく
こっちは、フィスだ」
合流してきたフェンリーにフィスを紹介する
「よろしくね
あら、もしかして、フレディのお子さんかしら?」
「え?フレディ・・・?
あぁ、お父さんの知り合いなんですか?
って、父は、フレッドですが・・・
」
"あら、そうだったわねw"
などと、笑って誤魔化すフィスが、フェンリーと談笑を始めた
そんな俺たちの所に1人の男性が近づいてきた
「アンタが、ヒロさんかい?
今夜、一緒に警護をするドンテだ、よろしく」
あれ?髪は黒いけど、昨夜のダンテさんに似てるような・・・
「あ、よろしく
って、ダンテさんに・・・」
「ハハハ、ダンテは兄貴だよ
さっき、家の前を通ったら
義姉さん寝ずに"野菜漬け"を作らされたってボヤいてたよ」
あちゃぁ、俺のせいだ、ごめん、ダンテw
「いやぁ、それは、半分俺のせいかもね
って、1人?」
「あぁ、相方が、体調を崩してね
まぁ、そちらのエルフさんが一緒なら、人数的には大丈夫だろうから、一応、隊長に報告してくるよ
じゃぁ、俺が戻ってきたら、警護にを始めようか」
レイから、吸血鬼の話がされても、ちょっとのんびり雰囲気なのは、この街が、平和な証拠だろうな
俺達は、防具を確認し、ドンテを待って警護を始めた
昨日と同じルートで、外周区を回り、マリーのスラムエリアを見回り、中区を回り、何事もなく1度目の警護を終わらせた
「フィスどうだった?
いそうか?」
「いえ、まだ、早いんじゃないかな?
それに、いくらなんでも、人が多すぎるわ」
フィスに確認したが、まだ、宵の口では、吸血鬼は活動しないようだ
「そうだ、ヒロさん、コレ、ありがとうございました」
と、フェンリーが、俺が昨日作った弁当箱を出してきた
「いいよ、フェンリーにあげるよ
冒険者をするなら、弁当箱は必需品だろ?」
「えええ!いいんですか?コレ、魔鉱石?とかじゃないんですか?」
あれ?俺、また、貴重なもの作っちゃった?
「気にしないでもらっときなさいな
ヒロに遠慮なんてしたって無駄よ
私も欲しいところだけど、大き過ぎるわw」
「おっおう!なんか、トゲがある言い方だなぁ
でも、気にしないで、貰ってくれていいよ
なんなら、明日も、カリーナさんの所寄って帰ろうよ」
"やったぁ"と、フェンリーが、ピョンと跳ねた
弁当かぁ、よく、週末にピクニックに行ったなぁ
まぁ、こっちの世界で、街の外の依頼を受けたら、ピクニックみたいなもんかw
「よし、ほらシロ!干し肉食え!
たまには、サーヤと外の依頼でも受けて、ダイヤに会いに行くか?」
「ワン!」
俺は、ふと、そんな事が頭をよぎりシロに賛同を求めた
「ホラみんなぁ手を貸しておくれ」
今日も、カリーナさんの差し入れが届いた
「あらっ、綺麗な弁当箱のお兄ちゃんも、コレ食べて頑張っておくれよ!」
「カリーナさんありがとう
明日の朝は何かな!」
顔を覚えてもらえたらしいので、明日の朝飯のおかずを聞いてみた
「明日は、みんなの大好きな、大鷲の肉が入ったよ!
カリムにしっかり仕込ませてるから期待しといてくんな!」
"おお!"とか、"やりぃ!"
と、警護隊からドヨメキがあがった
ん?大鷲って、以前、ダイヤが仕留めたやつか?
ヤバい!あれは美味いぞ!
こりゃ楽しみだ
「大鷲って美味しいんですか?」
「あぁ、美味かったな!
唐揚げにしたら、なおさら美味かったよ
なっ!シロ!」
"ワン!"と、元気なシロの返事に、フェンリーが目を輝かした!
「じゃぁ、今夜は、しっかり頑張らないといけませんね」
「ねぇ、そんなに美味しいの?
じゃぁ、私も頑張ろうかしら」
と、すでにカリムの差し入れに手を付けているフィスがやる気をだしてくれた
フェンリーも俺があげた弁当箱を大事にバッグにしまい、やる気を出した
今夜は、また違った次の日の楽しみが出来たので、休憩もあっという間に、2回目の見回りが始まった
「さぁ、大分暗くなった
吸血鬼は、夜に行動するだろうから、気合を入れて行こう!」
ドンテの言葉にみんなで頷き歩き出した
マリーのスラム街を出た時、シロがやたらと周りを伺う様子を見せ出した
「近くにいるわね」
フィスも、何かを感じたらしい
「では、私とフェンリーは、道路のこっちを
ヒロさんとフィスさんは、道路の向こう側の路地を確認しながら、進むとしよう!」
ドンテの指示のもと、1つ、2つと路地をランタンで照らしながら確認していく
3つ目の路地にさしかかった時だった
「きゃっ!」
フェンリーの叫び声が聞こえた
振り向くと、フェンリーが尻餅をついている
ドンテが路地の前で屈んでいる
「ヒロ、気を付けて!」
言うや否や、フィスが音もたてずに走り出した
必死に後を追う俺
「元気そうな子ね
痛くしないから、少しだけ我慢してね」
そんな声が聞こえたと思ったら、フェンリーの後ろの暗闇から現れた人影が、フェンリーの肩に手を置く
小さい・・・
子供か?
「あぁら、聞いたことある声だと思ったら、私達に喧嘩を売って逃げ出したヴァンパイアのお嬢さんじゃない?
滅亡したと思ったのに、まだ生きていたのね」
フィスが、身構えながら、そこに立つ少女に話しかけた
「げっ!
レジーナ・フィス・エイブリー!
なっなんで、アンタがここにいんのよ!
アンタたちのせいでこっちは大変だったんだからね!」
「大変も何も、あなたの同族が、私達の友人にチョッカイを出すのが悪いんでしょ?
てか、フルネームで呼ばないでよ!」
フィスは、少女と少しずつ距離を縮める
そして、俺には近づくなと左手で合図しながら、会話を続ける
「うっさいわね!
人違いだって言ったでしょ!
それに、こっちは、夜しか活動出来ない仲間ばかりなのに、アンタたちは、昼も夜も攻撃してきたくせに!」
「あらら、夜しか動けないって不便ねぇ
ってかさ、先に手を出したのはそっちだって言ってるのに、ホント聞き分けがないわねぇ」
ん?まるで子供のケンカか?ってくらい、"そっちが悪い"だの、"そっちが先"の応酬だ
「ぐぅぅっ!
ほんと、アンタ達は、人の話しを聞かないわよね
確かに、アタイの仲間達は、人の血を活力にしてるけど、あれは違うって、お祖父様も言ったでしょうに!
アンタらのせいで、みんな散り散りになっちゃったんだよ!
絶対、許さないんだからね!」
少女は、捕まえていたフェンリーを放り出し、フィスに向かって両腕を伸ばした
ジリジリとした感覚を周囲に走らせながら、両掌に集中し出した少女
「ヒロ!」
フィスが、俺の名を叫びながら走り出した
と言うか、声だけが残されて、そこにフィスはいなかった
俺が、吸血鬼と思った少女が、どのくらいの強さなのか分からないが、俺の呼ばれた理由は、多分・・・
「任せろ!」
俺は、尻餅をついているフェンリーに向かって、ダッシュした
シロも俺の後ろをついてくる
少女が、俺たちの動きに気付き、右手はフィスに向けたまま、左手をフェンリーに向けようとしている
「間に合え!俺!」
俺は、左手の肘を曲げ、盾を顔の横に構え、スライディングするようにフェンリーの脇に滑り込む!
「ブラッディアロー!」
バッカァァァン!
盾に強い衝撃がありそのまま、握っていた拳で、自分の顔を強打!
「がっ!」「きゃっ」「ワン!」
首がもげるほどの衝撃だ!
「にっ、逃げろ!」
朦朧とする意識の中、俺は、フェンリーを立たせ背中を押した
うなじに"ジリジリ"とした感覚を覚え、盾を持って振り向くと
バッシーーーン
またもや、強い衝撃を受けた!
走り出していたフェンリーを追い抜くくらいすっ飛ばされた!
「ヒロさん!」
フェンリーが、駆け寄ってくるが、左腕、左肘、左肩、それと飛ばされて転げて、そこらじゅうが痛いw
盾が籠手に固定されているおかげで、腕が吹き飛ばされるくらいに弾かれた
「何よぉ〜
頑丈な盾ねぇ
って、アンタはアンタで、全くカスりもしないし!
イラつくわねぇ!」
「フン、以前と変わらない、単純な攻撃なんて私に当たるわけないでしょ
少女が俺の方に向けて攻撃をしてきたが、フィスにも攻撃していたようだ
「グルルルルル」
シロが、誰にも聞かせた事の無いような唸り声をあげている
「何よ、ペットは、大人しく主人の近くにいればいいのよ
はっ!」
少女が、シロに向かって、赤い光線?を放った
シロは、横っ飛びでソレをかわし、そのまま少女にダッシュ!
勢いそのまま、ジャンプして少女に噛みつこうとした
が、
「犬風情が、私に噛みつこうなんて、300年は早いわ!」
左手の手刀で、シロの横顔を一撃!
「キャイーーーン!」
屈み込んでいるドンテの脇まで飛ばされてしまった
プッチーン!
ダメだよ!
そりゃダメだわ!
「シロ!
こんの野郎!
見た目が少女だからって!
サーヤが悲しむだろうが!」
俺は、地面を殴るように手をつき、少女に向かって走り出す
作戦?
んなの分かんねえし!
相手は、吸血鬼!少女じゃないんだ!
1発ぶん殴ってやる!
「フン!
何ムキになってんのよ!
たかが、ペット1匹やられたくらいでさ
えいっ!」
また、赤い光線だろう
俺は、左手の盾を構えた
うん、動く!
自慢じゃないが、怪我はしにくいし治りやすい体質だ(サーヤのおかげ?)
バチコーン!
衝撃と共に盾が弾かれる!
腕がもげたかと思うくらいに後ろに投げ出された気がする
が、そんなの関係ない、あの顔に1発入れるまでは止まれない
カッ!と、赤く光った
また、光線だろう
「ええい、ままよ」
自分では、サッカー選手のフェイントのように右にステップしてみた
バッチーーん!
「ぐわっ!」「ヒロ!」
左肩が弾かれた!
「この!」
ヨタってしまったが、少女は目の前だ
しかも何故かしれないが、少女が、さっきより少し幼くなってる
迷いはあるが、これはお仕置きだ
何故か、俺の顔を目を丸くして見ている少女の顔面に向けて、俺は、右手の拳をぶち込む
生まれて初めて、人の顔をマジで殴った!
はずだった・・・
ぐぎっ!
ズデデデデーーーン
気付けば、シロの近くまで飛ばされていた
「なっなんなの?
私の攻撃を受けて走ってくるなんて?
普通は、弾け飛ぶでしょ?
何なの?」
左頬が、ギンギンに痛い!
ってか、左目が見えねぇ!
あれ?シロが隣にいる
くそっ!当てられなかったようだ
「あなた、ちょっとやり過ぎよ
私の恩人に攻撃を仕掛けたのは、失敗だったわね」
少女が、何かに驚くようにフィスの方に振り向く
いつもは、弓での遠距離攻撃のフィスが、ナイフを構え、猫が獲物を狙うかのように姿勢を低くしている
一瞬、風の流れが変わったように思えた・・・いや、完全に変わった
風の妖精も怒ってくれているのだろうか・・・
「ちょっ、ちょっと、なに、本気出してんのよ!
別にやっつけてないんだからいいじゃなっ」
はっ?テレポート?
一瞬、フィスが後方に体重移動したかと思ったら、次の瞬間には、少女の後ろにフィスが移動していた
首元にナイフを突き立てる姿は、いつものフィスからは想像できない
「悪いけど、大人しく捕まってもらうわよ」
「ぐぎぃ
ダンジョンで力を使いすぎてなければ、アンタなんかに遅れは取らないのにぃ!」
一瞬の出来事で、俺は声も出なかった
「フェンリー!
フィスを手伝ってあげてくれるかい?」
「わっ、分かった・・」
フェンリーが、恐る恐るフィスと少女に近付く
どちらかというと、フィスの怒りのオーラにビビってる感じか?
「フェンリー、大丈夫よ
少しでも動いたら、やっつけちゃうから
しっかり、両腕を後ろ手に縛っちゃって、足は、半歩くらいの余裕を持たせて縛ってね」
「うっ、うん」
少し、雰囲気が丸くなったフィスがフェンリーに指示を出す
その間に、俺は、回復薬でシロとドンテを治す
そして左肩を見る・・・
ポッカリ穴が空いていた
「うげっ!
治るかな?」
俺は、モナを信じて左肩に超回復薬をぶっ掛けた
心配はいらなかったようで、みるみるうちに、穴は塞がっていった
「ふぅ、まさか、こんな少女が、吸血鬼だったなんて
いやぁ、フィスさん、ヒロさんお手柄だ」
「いや、俺は何もしてないよ
フィスが1人で捕まえた様なもんだよ」
痛みは取れたが、歩きづらそうなドンテが、俺に肩を貸してくれて、一緒にフィスの元に近付く
俺達の争う喧騒を聞きつけ、何人かの警護隊員や冒険者、近所の者が出てくる
「ここじゃなんだから
一旦、中央詰所に行こう
おい、隊長やレイモンドさん達に連絡頼む」
数名の若い警護隊員が、敬礼と共に走り出した
「もう!
私にこんな事してタダで済むと思わないでよ!
父上に何かあったら、アンタら全員許さないんだからね!」
「はいはい、話しは、後で聞いてあげるから、今は大人しくしてなさいな
それと、私の恩人が頑丈な事に感謝するのね、もしも彼に何かあったら・・・・
あなた、今頃、喋れていないわよ」
"げっ"と、少女が、俺の顔を見てからフィスの目を見て黙り込んだ
ヤバい、吸血鬼を黙らせるなんて、どんだけフィスってすごいエルフなんだ?
ってか、十分に怪我してるんですけどw
ご無沙汰しております、超七玉です
ちょっと、バタバタしてました・・・
最近、キャラを増やしすぎたかと悩んだおりますが、全員が出せるように頑張ります
よろしくお願いします




