40、怪事件勃発
40、怪事件勃発
「ふぅ、今日は、片付けが遅くなっちゃった
早く見回りして暖炉に当たりたいぃ」
修道服を着た女性が、たいまつ片手に、裏口や、家畜小屋などの柵の戸締りをしていた
「いいねぇ!
初々しいねぇ」
「えっ」
不意に背後から声を掛けられた女性は、振り向くのと同時にたいまつを声の方に向けた
そこには、血色は良くないが、歳の頃は10〜12才くらいの女の子が不適な笑みを浮かべて立っていた
「どっどうしたの?
そんな薄着で、迷子かな?」
修道服の女性は、声の主が、女の子と分かり、少し安心して、声を掛けた
しかし、なぜか女の子の衣装が、露出度高めの黒い衣装な事に少し戸惑う
「うおっと、ちょっと眩しいなぁ
痛くしないし、すぐ終わるから、ちょっと大人しくしててよぉ」
「えっ?」
言い終わるや否や、女の子は、視界から消え、修道服の女性の背後に現れた
「いただきまぁす」
カプッ!
「あっ、あぁぁぁ、いっ、ひぃぁぁ」
修道服の女性は、急に目は虚になり、頬を赤らめ、口は半開きにし、口の端からはヨダレを垂らし、下半身に力が入らず、ゆっくり崩れ落ちる
「ふぅ、やっぱ生娘の血は美味いな」
崩れ落ちた修道服の女性の傍らには、さっきの女の子と同じ衣装だが、見た目が20代前半のグラビアアイドルの様な女性が立っていた
「さて、そろそろ帰るかな」
そう言い残した女性が、軽いステップで跳ねると、背中から、コウモリの羽の様なものが生えてきて、夜の闇に消えていった
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「これで、この街での被害は、7人目です
今回は、北の孤児院の修道女でした」
神官服を纏った初老の男性が、同じ神官服でも、かなり豪奢な出立ちの、顔は日焼けし、体格のがっしりした、同じくらい初老の男性に報告した
「なんて事だろうねぇ
で、また、首かい?」
日焼けした男性が問い返す
「はい、これまでと同じ様に、首元には牙の様なもので噛まれた痕跡があり、発見された時には、高揚した状態で、意識のない状態で発見されたようです
そして、他の被害者同様、陽の光を拒み、夜になると元気になるそうです
ジョセフ様、多分ですが、今回の被害者も他の被害者と同じ様に、10日〜20日もすれば、傷が消え、元に戻ると思われます」
細かい報告を聞いた、ジョセフと呼ばれた男が、顎に手を当てながら、窓に向い、外を眺める
「首に牙の痕・・・血を吸われるか・・・
そんなものは、御伽話とばかり思っていたけどねぇ
でも、あれらに血を吸われるとその眷属なるとあったような・・・」
ジョセフと呼ばれた男は、眉間に皺を寄せて、石の如くに動かなくなってしまった
「いかがなさいますか?」
しばらくジョセフと呼ばれた男性がから、なんの反応もないので、痺れを切らしたかのように、報告をした男が、指示を仰ぐ
「おっ、すまんすまん
最近噂に上がっている、南外周区のローズと言う名の店にいつ行こうか悩んでしまったねぇ」
「はい?急に何をおっしゃるのですか?」
予想していなかった答えが返ってきて、焦る報告者
「いやぁ、すまんすまん
襲われた件だったなw
そうだな、嫌われてるかもしれんが、エイミーにでも聞いてみるかねぇ
すまんが、あとは任せたよ」
そう言うと、エイミーに会うのが楽しみなのか、ローズのお店に行くのが楽しみなのか、分からないが、教会と思われる建物内をいい歳した男が、少し小躍りしながら歩き出した
残された神官は、後ろを向き、ジョセフに気づかれぬように、ため息をするのだった
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「っかぁ、もう何ヶ所修繕するんだよ!
って、それに、ヒロ!
おいヒロ!
冒険者の村から帰って来てから、ずぅっと、上の空じゃねぇか?」
急にクリスから告られ、テイラー商会の全員からは、クリスとくっつけてしまおうみたいな雰囲気が出ていたので、次の日朝早くに冒険者ギルドで、クリスから逃げるために依頼探しをしていたら、ミサに声を掛けられ、北外周区の西地区にある、孤児院の修繕の依頼を一緒に受けてくれないか?と誘われ、泊まり込みと言う内容にすぐ飛びついた
それから、かれこれ1週間は、壁の修繕やら、屋根の修繕を俺は、無我夢中にやっていた
その為、一緒に依頼を受けたタガートが、俺の事を心配してくれているのだ
「いやぁ、昨日も、チラッと話しただろ
クリスからの猛アタックを受けたのとテイラー商会のみんなが怖いんだってw」
実は、昨夜、あまりにしつこく聞かれたので、夕食の時に3人に事の次第を話したんだ
「いいじゃないですかぁ!
モテるうちが華だよ!ヒロさん!
クリスは、真面目で、いい娘だよー」
アイトも、クリス側の意見なのかよ!
とか、話していたら
「ちょっと、手が止まってますよ!
って、ひっ、ヒロさんは、クリスさんが好きなんですか?
そういうのは、ヒロさんの気持ちだって、大事じゃないんですか!」
と、言いながら、ドサっと、俺の脇に木の板の束を無造作に置いた
タガートが、無言で、ミサに見えないように、ミサを指差し、頭に人差し指で"ツノ"のジェスチャーをしてきた
俺は、頭を横に振り"俺じゃない!"とアピールした
「ひっ、ヒロさん!
もっと、周りを見たら、いい人とかいるかも知れませんよ!」
と、ミサは言って、プイっと行ってしまった
なんだろう、ヤバい、ミサが機嫌が悪いかも・・・
「こっ、こりゃ、あれだな、ヒロ!
こりゃ今夜あたり、ギルドに行って、こないだの魔石の換金を催促して、気晴らしにローズさん所にでも行った方がいいんじゃねぇか?」
と、タガートが、話を変えてくれたはいいが
「ダメですよ!
あの魔石は大きすぎて、鑑定に時間がかかると買い取り所の親方さんが言ってたから、暫くはおあずけですよ!
それに、換金しても、みんなで分けるって、ヒロさん言ってましたよね!」
そうだった、先日の、冒険者の村のダンジョンで倒したバジリスクの魔石が、予想以上にデカくて、冒険者ギルドでも、手を焼いているらしい
しかも、バジリスクが出るとの事で、ダンジョンの噂も広まっていて、観光客やら冒険者が増えて、ニール達は、それこそ、蜂の巣を突いた感じで、人手を増やして、稼いでいる事だろう
「それと孤児院の修繕の依頼をヒロさんが快く受けてくれてるんだし、もう少しで終わるんだから、タガート達は、黙って手伝うの!
ヒロさん!気晴らしなら、私が晩御飯でもご馳走しますから!
さぁ、お仕事お仕事!」
冒険者の村から帰ってから、少し社交的になったと思ったミサだったが、社交的どころか、今朝からは、急にこんな感じで荒々しくなってもうたよ???
「おっ、俺はさ、ヒロさんのスキルで作った工具や道具が見れるから、全然楽しいけどね」
「あぁ、そうなんだ
じゃぁ、何か、欲しいのあったらあげるよ
それと、こんなの欲しいとかあったら、ドンドン言ってくれると助かるよ」
ははは、気持ちが滅入っていても、こうやって、自分の考案したり作った物を褒められたりすると嬉しいし
夜もクリスとの事を考えてしまうから、何かを作っていた方が気が紛れていい
「っかぁ、ミサには頭が上がらねぇかんな、怒らせない様にしっかりやるかぁ!」
ミサの機嫌をこれ以上、斜めにしないようにタガートが冗談っぽく、やり過ごす
こういったところも、仲が良い証拠だろうし、その中に入れてる事が嬉しい
ぞんなやりとりがあり、今日か、明日で終わるだろう修繕をみんなでしていると
「これは、冒険者の皆さん、修繕の依頼を受けてくれてるのですか
感謝感謝!
この孤児院の者に変わってお礼を言わせてもらいますよ
ありがとう」
修繕に夢中になっていると、豪奢な神官服を着た男性に声をかけられ、お礼を言われた
「じょっ、ジョセフ様!
お久しぶりです
お珍しいですね・・・」
ん?ミサが、急に大きな声を出したぞ
でも、喜んでいるような、嫌がっているような、複雑な表情で話しかけたぞ?
「おぉ!
ミサだったのかい?
随分と綺麗になったねぇ
どれや、近くで元気な顔を見せておくれ」
と、ジョセフと呼ばれた男は、神官らしからぬ物腰で、あっという間に俺達の前を通り過ぎて、ミサの所に移動した
そして、ミサの顔を両手で包み込み、シゲシゲとよく観察し、背中や前、横、方、胸、腕などを舐めるように?見てから、最後はお尻をパーンと軽く叩く
「ジョセフ様・・・
もう、私も大人ですよ!」
「おっwそうだったかねぇ
私には、小さい頃と何も変わらないんだがねぇ
タガート君、アイト君、いつもミサを守ってくれてありがとう」
正直、ただのスケベ親父にしか見えなかった・・・が、タガート達への感謝は、心のこもった感謝に聞こえた
「ところで、そちらの方は、初めてですかねぇ」
「あっ!そうだ!
ヒロさん、こちら、ライフィスの教会の最高司祭のジョセフ様です」
改めて紹介された
歳の頃は、前の世界での俺と同い歳くらいか?
「初めまして、数ヶ月前にこちらの街に移住してきた、ヒロです
ミサ達には、いつも良くしてもらって助かってます」
「これはこれは、ライフィスにようこそ・・・
ん?ヒロ殿と???
もしかして、エイミーが、噂していたヒロ殿ですかねぇ?」
エイミー・・・・はて?会った事あったかな・・?
「ヒロさん、魔術師ギルドのエイミーさんじゃないですか?」
と、ミサが教えてくれた
おおお!レイモンドにプレゼンした時に同席してた、あの、謎めいた魅力のエイミーさんか!
「あっはい
以前、レイモンドさんの屋敷でお会いしましたね」
「ほぉぉ、エイミーが信用を置く御仁ですなw
私も会ってみたかったのです
まさか、ミサのお仲間とは、これは、何かの縁ですな
ちょうど良かった
そんな御仁ならば、ちと、私の相談役にもなってくだされぬか?」
???最高司祭様の相談って、俺がか?
まぁた、何かしらの面倒に巻き込まれるんじゃないのかぁ?
はぁ、なんか俺、こっちの世界に来てから、色んな事に巻き込まれすぎじゃないかな?
でも、人に頼み事されちゃうと断れないんだよねぇ
「はぁ、私などで良ければ」
「おお、ありがたい
では、ミサ達も一緒に来てくれるかな
ただし、これから見ること、知った事は、他言無用でお願いしますよ」
と、言い終わると、孤児院の隣の建物に向かった
途中で、子供達が
"司祭様だぁ"などと、言いながら近寄ると、さっきミサにした事と同じ事を子供達にもしていた
撫で回されるように見られて、最後に尻を叩かれた子供達は、みんなキャッキャっ、キャッキャっと喜んでいた
ごめんなさい、こんなに子供に好かれる人をスケベ親父と思ってしまって申し訳ありませんでした
暫くして、ちょっと大きめの個室に通された
窓には、暗幕がかけられ、昼間だというのに、蝋燭を灯している
そこには、頬を赤く染め、目は虚、目の下にはクマがあり、口は半開き、ヨダレを垂らしながら、寝ている女性がいた
どうみても、やばい薬でガン決まりの状態か、言い方は悪いが、夜の営みで、絶頂を迎えたような昇天状態にしか見えない
「変な薬でも飲んでしまったのですか?」
俺は、前者の方かと質問してみた
「ほぉ、そうゆう事もご存じなんですねぇ
確かに、様子としては、街の隅の方で流行っていると言われる、如何わしい薬を飲んだ時の症状に似てますねぇ
しかし、違うのです
ちょっと、彼女の首・・
左側の首を見てくれますかねぇ」
「あっ、噛まれてる」
アイトが、いち早く気付いた
確かに、2つの赤い点がある
よく映画やドラマ、ゲームで見た事あるよ
"チュパなんちゃら"ってやつか、"吸血鬼"ってとこか?
まぁ、この世界なら・・・
「吸血鬼とかかな?」
一瞬、ミサ達の視線を集めた、どうやら、こちらでも、吸血鬼は、そんなにいいイメージではないのか・・・
「ほお、それもご存知とわw
私も、おとぎ話程度でしか聞いてなかったし、被害者を見るのは初めてでして
最近、この街で、数件の被害が出ていて
何か情報がないか、エイミーの所に行く前に、被害者を見ておこうと思ってきてみたところでして
ヒロ殿は、何か知っている事などありますかねぇ?」
うっ、やばい、俺の"吸血鬼"の知識は、前の世界でのものだったよ・・・
じゃぁ、俺も似たような話にしておくのがいいかもな
「いやいや、小さい頃、夜更かししてると、よくお袋に、『吸血鬼に血を吸い尽くされて、吸血鬼になっちゃうぞぉ!』って、言われてたもんでね
なので、実際、見た事なんてないですよぉ」
「ほぉ、しかし、そうやって子供をあやす為に使われていたとはいえ、吸血鬼の情報が、ヒロ殿の故郷には根付いておるのですな
ふむ、興味深いですねぇ」
急に腕を組んで悩み始めてしまったジョセフさんだが、俺は、自分が、読んできたファンタジー物には、吸血鬼は出てこなかった事を思い出した
大体、ドラマや映画、それとゲームだよなぁ、やっぱり、古びた城とかに住んでるのかな?w
「あっ、これまで、数件の被害があったって言ってましたが、他の被害者は、吸血鬼になっちゃったんですか?」
俺は、俺の世界での"吸血鬼物"の大体の展開である、血を吸われて吸血鬼になると言う素朴な質問をしてみた
「あぁ、私もそこで、引っかかってるのですよ
私の記憶のおとぎ話でも、血を吸われた者は、"吸血鬼"の眷属になってしまい、連れて行かれると聞いていたのですが、此度の被害者達は・・・」
と、傷が塞がる頃には元に戻り、そんな状況になっていた事すら覚えていないらしい
傷が塞がれば、元に戻る?
ならば・・・
「もしかしたら、回復薬で治るのではないですか?」
「我々が行使する癒しの奇跡は通じなかったので、ですので、これまでの被害者は全て自然回復をしているのですが
もし、何か回復できる薬でもあるなら、お願いできますかねぇ」
俺は、マジックバッグから、超回復薬(普通のやつね)を取り出して、虚な目をする女性の口元に少し注いだ
体が火照っていて、喉が渇いているのか、"ゴクッ"と、音を立てて飲んでくれた
続けて、少しずつ超回復薬を流していくと、どんどん、女性の頬の赤みが通常の血色にすぅっと戻っていった
「はっ!
あれ?どうして?
こんな昼から、ベッドに横になって・・・
あっ!」
女性は、慌てて自分の首を左手で押さえた
「あれ?
何ともない!
確かに女の子に噛まれたのに」
「ほおぉぉ
元気になったかい?
ヒロ殿、凄いじゃないですか!」
ジョセフさんは、女性が回復した事に、メチャクチャ驚いていた
しかし、女性が発した
"女の子に噛まれた"って言う言葉に俺は引っかかった
「あっ、司祭様!
申し訳ありません
仕事に戻ります」
ジョセフさんが、そばにいる事に驚いた女性が、仕事に戻ろうとする
「ダメですよ
まだ、全快とは限らないんですから、ゆっくり休みましょう」
起きようとする女性をミサが、無理やり布団の中に戻した
気付くとジョセフさんが、いつの間にか俺の後方に来て、俺にだけ聞こえる声で話しかけてきた
「その秘薬、凄いですねw
それに、今、女の子に噛まれたと・・・
言いましたよねぇ」
俺は、ジョセフさんの身のこなしにびっくりしたが、耳元での小さい声も暗殺者のようで一瞬ビビった
しかし、俺と同じ女性の言葉に引っかかったという点に安堵し、ゆっくり頷いた
ジョセフさんは、"女の子に噛まれた"って言葉を俺から確認すると、女性の脇に近寄り、おでこにあてていた布を拾い、一度水で絞って、再度女性のおでこにあてがいながら
「私から院長には言っておきますから、今日はゆっくり休んでください
あっ、ところで、女の子とは、どんな子でしたか?」
恐縮する女性が、上目遣いで何かを思い出す仕草をした
「はい、やけに肌を露出した服装?でして、私が"迷子ですか?"と、声を掛けたら、"痛くしないから"とか、言ったと思ったら、一瞬で私の後ろに移動していまして・・・
そっそうです、私、噛まれたんです
そしたら、急に体が火照ってきて、今まで経験した事のない感覚になって、気持ちよくなって、足に力が入らなくなって・・・
そして、また彼女が喋ったんですが・・・
"生娘が・・"どうとかって・・・
あぁ、思い出しただけで、火照ってきちゃいますぅ・・・」
女性は、恥ずかしそうに下を向き、自分で両肩を抱き、体をクネクネとくねらした
これは、昇天させられた感じだなw
しかし、血を吸われるってそんなに気持ちいいものなのか?
そして、生娘の血を好むのか?
なぁんか、ホントに映画やドラマみたいだなぁ
「これは、有力な情報を得られましたねぇ
ヒロ殿、申し訳ないですが、これから、私に付き合ってもらえますか?
良いかなミサ?」
「あっはい!
ヒロさんが良ければ・・・
それとジョセフ様、私などが言うのもなんですが、ヒロさんなら、なんとかしちゃうと思います
ですから、ヒロさん!ジョセフ様に協力してください」
ぐっ、最高司祭に頼まれるって、すげえ事だけど、ミサの俺への信頼度もすげえし、頼まれたら断れないよな
「ごめん、タガート、アイト、依頼を任せちゃう形になっちゃうけど、あらかた材料は用意してあるから、いいかな?」
「ふんっ、ローズさんの店、1回な!」
「俺は、鍵開けの道具でも、作ってもらうって事で、手を打つよ!」
"分かった!"俺は、2人に依頼とミサの事を頼んで、ジョセフさんと移動を始めた
北の孤児院を出て、一旦北中央区に向かい、そこを南下して西中央区にある魔術学院に向かうらしい
ライフィスの街は、中央区に行政を司る建物や街の警護隊の詰所、北に教会、西に魔術学院がある
街の代表のレイモンドは、その中央区に住んでいる
そして中区には、富裕層の住居がそこかしこにあり、それに見合った店などもある
そんな、俺には似合わない中央区の道をジョセフの案内で歩いている
「ところでヒロ殿、先ほどの回復薬は、普通の回復薬とは違う物なのですかな?
我らの奇跡でも回復しなく、私どもの所有する回復薬でも治らなかった症状を治すとなると、何か怪しいものを感じるのですが・・」
中央区を歩く者は、富裕層が大半の為、意外と他者に干渉しないようで、ジョセフさんは、疑問を普通の声で聞いてきた
「そんな怪しむような薬ではないですよ
南外周区の知り合いの調合師が作った回復薬です
ただ、良質で鮮度のいい薬草のみを使用して、かなり高度な抽出をすると出来るらしいです
その調合師は、超回復薬と名付けてますがね」
「なんと!あれも回復薬なのですか?
奇跡を有する我らにとっては、あのような症状を、それこそ、奇跡でも治せない症状を簡単に治されてしまっては、死活問題ですな!
まぁ、困っている人を助けるには、薬も大事と言う事なんですがね
いやいや、勉強になります」
敢えて、モネの名は出さなかった
確か、ギルマスは、モネの扱いに苦労してたからね
しかし、死活問題って事は、やっぱり教会や神官さんは、奇跡で人の病気や怪我を治した時のお礼?お布施?で成り立ってるのかなぁ?
こりゃ、あまり目立った事は、しない方がいいかも
「それは、さておき、最近起きてる・・・
取り敢えず、"吸血事件"とでもしておきましょうか
これまでの被害者は、10日から20日くらいで、自然回復していたのです
しかし、その間の記憶が全くなかったのですよ
しかし、先ほど、ヒロ殿の超回復薬とやらで回復した女性は、記憶があった・・・
しかも、噛まれた記憶と、噛んだと思われる相手まで!
ヒロ殿は、どう見ますかねぇ?」
やっぱり、そこだよね
俺は、逆に他の被害者を見てないから分からないが、さっきの女性の言葉で、結構情報を掴めた気がするするな
「①相手は少女
②生娘の血はうまい
③一瞬で移動
④そして、首から血を吸う
⑤吸われた方は、言い方は悪いですが、気持ちよくなってしまう
⑥最後は、自然回復して、全てを忘れる
こんな感じですかね?
まぁ、どう見ても、吸血鬼ですよねw」
「ほぉ、分析力もお高いのですね
確かに、吸血鬼ですね
しかし、まだ、詳細が分からないので、ここは、血を吸う者って事にしておきましょう
最初の頃の被害者は、すでに回復して、普通に生活に戻っておりますが、もし、相手が吸血鬼だったらと思い、その後の行動を観察させたのですが、全くもって、普通に戻っていると報告を受けております」
ジョセフの話では、吸われた者は眷属になってないって事だな
でも、もしかしたら、この世界だけなのか、そもそも吸血鬼と言う物が、そう言う、ただ、血を吸う生き物なだけなのかも知れないな
「って事は、夏によく出没する
血を吸う虫っています・・・よね?
それと同じって事ですかね?」
「ん?モスキーですかな?
おの吸われた場所が、少し膨れて痒くなる?」
良かった、こっちにも"蚊"はいたようだ
「そうそう、モスキー!
それと同じで、痒みが取れたら、刺された?血を吸われた事まで、忘れちゃうって感じですかね?」
「ほぉ、いやはや
ヒロ殿、柔軟なお考えですな
やはり、あなたは、只者ではないようですな!
確かに、モスキーと同じだと考えるのも一理ありますな」
ジョセフさんが、腕を組み顎に手をやり考え込んでしまった
俺は、思いつきを口にしただけなんだけどなぁ
「ヒロ殿、それともう一ついいですかな?」
ギクっ!なんか、ヤバイ事言っちゃったかな?
「先ほど、タガートくんとの別れ際に、"ローズさんの店"と、言っておりましたが、そのお店は・・・
お酒が飲めるお店のローズさんですかねぇ?」
はい?なんで、聖職者である司祭様から、ローズさんの店の事が聞かれるんだ?
「はぁ、そうです
そのお店も、南外周国にあるお店ですが、何か・・・」
「いやね、私どもの耳にも最近よく入ってきていましてね
ぜひ、行ってみたいと思っておったのですよ」
ちょっ、ちょっ、ちょっと待ったぁ!
あなた、聖職者!
「いや、でも、ジョセフさんは、司祭様ですよね?
お酒とかダメなのでは?」
「はい?ヒロ殿もご冗談を!
お酒は、誰もが飲んでいい物ではないですかぁ
まぁ、確かに飲み過ぎはいけませんがねぇ」
あれ?ちょっと、そちらこそ、柔軟すぎませんか?
しかも、ローズさんのお店が気になるって事は・・・
「でも、あそこは、女性が派手な衣装で、接客するお店ですよ?」
「ほぉ、やはり噂通りなんですねぇ
ヒロ殿、今度、そのお店をご紹介いただけませんか?
もう、行きたくて行きたくてねぇ」
ダメだ、こっちの世界は、やっぱ、よく分かんねぇ!
「まぁ、紹介するくらいは出来ますが・・・
本当に大丈夫なんですか?」
ジョセフさんは、満面の笑みで"当たり前です"と、答え
「決まりですねぇ
では、今回の件が、片付いたら・・・
いや、作戦会議をそこでするのもいいですねぇ
いやぁ、楽しみだ」
何故か、足取りが軽くなったジョセフさん
ヤバイ、俺の思考回路がいかれそうだよ
ってか、やっぱりこの人、スケベオヤジなんじゃねぇかよ!
そんな会話をしていると、西中央区の魔術ギルドに到着した
ジョセフが挨拶をしながら入ろうとすると、出てきた人が、ジョセフの顔を見るや否や、猛烈低姿勢になったところを見ると、やはりジョセフは最高司祭様なのだろうと思った
「あら珍しい!
最高司祭様が、うちに何の用かしら」
「冷たいのぉ
祖先からの付き合いだろうに
ちょっと相談があるんだ、頼むよ」
応接間に通されるや否や、魔術学院の学院長のエイミーが、ジョセフに対して厳しめの挨拶をしてきたと思ったら、存外、付き合いが長いようで安心した
そんな会話を聞きながら、ジョセフさんの後ろから顔を出すと
「あらヒロさん!
お元気ですか?
なぜヒロさんが、このエセ神官と一緒なのかはさておき
魔石の件、本当にありがとうございました
おかげで、生徒たちの実力もグングン上がるし、経済的にも潤うし、感謝のしようがありませんわ
それと、先日の魔石!
あんな大きな魔石は、生まれてこの方、見たことない大きさでした
さすがは、ヒロさんです
ちょっと、今ある、1番いいお菓子と、どうでもいいお菓子を持ってきてくれるかしら」
エイミーさんが、案内人にお茶の催促をしたんだが、どうやら、ジョークもかなりのものらしい
「エイミー・・・
最近、魔術学院の羽振りがいいと噂を聞いたが、ヒロ殿がからんでおるとわ・・・」
「あらっ、ヒロさんの事は、うちが贔屓にさせてもらってるんですから、そちらでは、干渉してほしくないわね」
プイッとそっぽを向く仕草が、なんとも素敵だ
エイミーさんは、自分で自覚しているのかな?
しかし、この部屋に入ってから、魔術の最高峰と教会の最高司祭様のやり取りが、熱すぎて、俺は、一言も喋れていないw
案内人が、全員に同じお菓子とお茶を持ってきてくれたのを皮切りにジョセフが本題に入る
数件発生している、吸血事件と、さっきの症状の回復の件をエイミーはお茶をお淑やかに飲みながら聞いていて、話が一段落した時にお茶のおかわりを所望した
「ヴァンパイヤ・・・かしらね
でも、噛まれた?血を吸われた被害者の症状が、文献や言い伝えとは、ちょっと違うような気がするわね
しかし、ヒロさん!
そうも簡単に、被害者を助けられちゃうのは、私達としては悔しいですわよ
ホント、凄いお方なんだから」
「あぁ、本当に驚いたよ
ここ最近の出来事は、誠に奇怪な事件という事もあり、調査も二の足を踏んでいたのが、ヒロ殿のおかげで、一気に情報が増えたよ」
仲がいいのか悪いのか分からない2人の会話が一区切りしたので、やっと、俺も口を開くことにした
「もし、被害者の話にあった女の子が犯人なら、俺らと同じ、人の形をしていて、言葉が分かるって事になるので、吸血鬼、もしくわ、噛んだふりをして、何かしらの薬を注入したとか・・・」
俺は、自分が、他の世界から来たと言う事は、これ以上知られたくないので、言葉を選びながら可能性を述べた
「ほぉ、噛んだだけで、薬を飲ませてあの様な症状にさせたと・・・
飲めば疲れがなくなり、気分が高揚すると言われている、媚薬の類いですかねぇ」
「でも、それなら、常習性があるから、薬が切れると薬を欲しがりますわよね
それと、傷口から薬を体の中に入れるのは、なかなか難しいかと・・・」
やべ!こっちには、注射器とか無いのか!?
気を付けていたくせに、前の世界の当たり前を口にしちゃうところだった
「そっ、そうですよね
飲まされたとは言ってなかった!
そうだそうだ
ならば、俺の少ない知識では、吸血鬼ってのが濃厚になっちゃいますねぇ」
ふぅ、あぶねぇあぶねぇ!
しかし、ならば、チュパなんちゃら説が良かったかもw
「なら、吸血鬼もしくわ、エイミーさんの言うヴァンパイヤだとしたら、どんな生態なんですかね?」
ここは、無理くり話を変えちゃえ!と、思い質問してみた
「そうですわねぇ
夜に行動して、人を襲って血を吸う
昼間は、どこかに隠れてるか、寝ている
あと、強靭な体を持ち、身体能力も高く、不死と言われるほど寿命が長く、混血を嫌う為、子孫繁栄が難しく、滅んでしまったと、とある文献にはありましたわね」
うーん、エイミーさんの説明を聞いていると、俺の知っているドラキュラみたいな感じだなぁ
でも、犯人(吸血鬼)が、1人なのか複数なのかも分からないんだよなぁ
「もし、吸血鬼がどこかを根城にして生活していて、人の血を生きる糧にしてるとしたら、今後は、もう少し対策しないと、みぃんな血を吸われて、みぃんなラリっちゃう・・・
じゃなかった、何日かは、動けなくなっちゃいますよね」
俺は、ごく一般的な心配を言葉にしてみた
「そうですわね
ヴァンパイヤと仮定した場合、夜に1人で歩いていて遭遇したら、大抵の人では対処出来ませんわね」
「そうだね
これは、もう、吸血鬼が現れたとして行動した方が、防衛対策がし易いかも知れないねぇ」
ジョセフさんにちょっと連れてこられたと思ったら、吸血鬼騒動に、どっぷり巻き込まれてない?
でも、なんだろ、ちょっと、ワクワクしてきちゃってる部分もあるんだけど・・・
ん?ちょっと待てよ
ちょっと、違う視点から考えると・・・
「でも、被害者が、時が経ったら元に戻るって言うと、そんなに実害は出てないって事にもなるんですかね?」
「あら、そうですわね
自然に回復したら、血を吸われた記憶まで無いのですものね
ねぇ、ジョセフこれって・・・」
エイミーが、言いかけて、ジョセフを見る
「ほぉっておく事は、あまり良いとは思えないねぇ
被害者も、今は元に戻っているから、良いかも知れないが、何度も吸われたらどうなるか分からない
それに、10日も働けないとなる者が増えたら、それはそれで大変でしょう」
そうなると、やはり、まずは、その女の子ってのを探しだすか、誘い出すかして、とっ捕まえないと、被害が続いてしまうって事か・・・
「犯人が、吸血鬼だと仮定した場合、活動は夜・・・ですよね
そして、手強いのは濃厚・・・
これは、対策には人手が要りそうですね・・・」
ライフィスの街には、街の所属で警護隊もいる
勿論、門番なども警護隊の一員だ
なので、夜の見回りもちゃんとしている・・・中央区と中区はね
外周区は、その区画、区画で、自治体のように仲間でお金を出し合い冒険者ギルドに頼んでいる所もあるが、殆どは、放置状態だ
これまで、依頼で外周区には何度も足を運んだが、街の角、四隅には、スラム街的な場所もある
流石に怖くて、足を踏み入れた事はないが、多分、完全無法地帯だろう
それらも含めて、夜の警備と、捕獲作戦となると、とんでもない数の人間が必要だろう
「では、私とジョセフの連名で、レイモンドさんに報告をする事にしましょう
そして、冒険者ギルドに街から依頼でも出してもらえたら助かりますわね」
「まぁ、私どもも、多少なり男手があるので、教会や孤児院の周りだけでも、自分達で見回りを強化しようかねぇ」
流石に街の代表格2人だ、対応が早いな
ってか、俺は、一応クリス達に報告した方がいいな
ん?
「あのジョセフさん、これまでの被害者で、男性と女性の比率は・・」
「全員、女性です
しかも、未婚・・・の女性です」
やっぱりか!被害者の女性が言ってた
"生娘の血が"って、聞こえたと言うのは、間違いなく、未経験者の事だろう・・・
実際、本人達から聞けるわけでもないが、クリスやイリナ達、それにサーヤも・・・
こりゃ、俺達男達が、人肌脱がないといけないかもな
「では、善は急げですわね
さぁ、ジョセフ
どうせ暇なんでしょうから、レイモンドさんの所に行きましょ!」
「いや、私は、ヒロ殿と作戦会議が・・・」
げっ!やっぱりジョセフさんはスケベオヤジだな
絶対、ローズさんの所に行こうと思ってたよ!
「そっ、そうですね、エイミーさんよろしくお願いします!
では、俺は、仲間の所に戻ります
そして、自分達だけでも、自己防衛しようと思います」
俺は、ジョセフさんから逃げるように、魔術学院を後にして、北の孤児院へ急いだ
「いやぁ、ごめんごめん、任せちゃって」
「お帰りなさい
こっちは、タガート達に頑張ってもらったから、大体片付きましたよ
そっちは、どうでした?」
ミサが、額の汗を拭いながら答えてくれた
本当に何事にも一生懸命のいい女であり、このチームの要はミサだなw
タガートとアイトの顔を見れば、かなり。こき使われた事は伺える
「っかぁ、もう、腰から、腕から、体中が痛えぜ!」
「はい、甘く考えてましたよ
ヒロさん、こりゃ、道具の1つや2つでは、割りに合わないですよぉ!」
口では、そう言ってるが、多分、まだまだ体力はあるはずだ
でも、これくらい愚痴ってくれた方がありがたい
「分かった分かった、残りをやり切って、今日で依頼を終わらせて、飯でも行こうや
まぁ、今日の件の話もあるしな」
"イェーイ!"と、はしゃぐ2人とは別に
「じゃぁ、さっさと終わらせちゃいましょ!
私は、あの女性の様子が心配なんで、今日も、ここに泊まります
後で、院長さんに木札をもらってくるので、ギルドへの報告はお願いしてもいいですか?
なので、今夜は、ヒロさん達で楽しんできてください!」
そう言ったミサが、俺に近寄ってきて
「晩御飯は、後で、2人きりでお願いしますねw」
と、囁かれてしまった
目を丸くして、少し固まっていたら
「おいおいこのスケベヒロ!
なぁんか怪しいんじゃねぇかぁ?」
「そうですよぉ〜
仲間内で隠し事はダメですよぉ!w」
コイツら、わざとやってるよね?
俺が、女性にうといのをぜってぇ、からかってるよね?
ん?てか、敢えてミサと俺をぞんな雰囲気にしてない?
え?まさか、これはこれで、ここでもハメられてる?
「じゃぁ、そういう段取りで行こう
あと、お前ら、終わらせねぇと帰さねぇからな!」
俺達は、しばらく、ラストスパートのように仕事を完遂(多分)させて、片付けをしているうちに、院長の所に行ってたミサから依頼終了の木札を預かり、足取り軽く、冒険者ギルドを経由した
そして、未だ、冒険者の村で鍛冶屋の建設をしているドムさんの店の近くの定番の店に向かった
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「サーヤさん、私、やっぱり、厚かましすぎたんですかねぇ」
さっきから、クリスが、シチューをスプーンで、ずぅっとかき混ぜながらボソリと呟いた
あらら、もう、パパが逃げ回ってるから、クリスさん、メチャクチャ滅入っちゃってるぅ
「そっ、そんな事ないよぉ!
多分、タガートさん達と依頼しながら盛り上がっちゃってるんだよぉ〜
それに、北の孤児院の依頼は。宿泊込みの依頼だからだってぇ」
むぅ、アタシも、まだまだ、パパのお嫁さん候補は、色々厳選するつもりだったんだけど、クリスさんが、こんなに熱心なら、クリスさんでいいと思うんだけど、決めるのはパパだしなぁ
それに、パパは、その気があるのかなぁ??
「サーヤさん、私は、ヒロさんと、一緒にいたいだけなんですよ!
なのに、避けられてるみたいで・・・」
「ぱっ、オジサンも、まだ、亡くなったオバサンやお子さんの事があるんじゃないかなぁ」
なんだろ、ママと自分の事を他人の様に言うのって、なんか妙な感じ
「そこなんです
ヒロさんのお気持ちを大事にしたいし、亡くなられたご家族の代わりになりとかでも無いんですよ! その・・・心の支えになりたいだけなんです・・・
私じゃ、ダメなのかなぁ・・・」
クリスさん、ホント、パパの事が好きなんだなぁ
クリスさんの気持ち・・・メチャクチャ嬉しいな
クリスさんに強引に迫られた時のパパは、もしかしたら受け入れちゃうのかな?と思ったら、逃げちゃうんだもんなぁ、もしかして、お嫁さん候補を探す前に、パパをなんとかしないとダメなのかなぁ
「ダメとかじゃないんじゃないかなぁ?
もしかしたら、急に接近しなくても、自然に近づく作戦にしたら?」
「自然にですか???
ムゥ・・・」
こりゃぁ、両方鍛えないとダメだぞぉ!
よぉし!クリスさんとパパの距離を縮めちゃおうかなぁ???
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「ふぅ、放置してた冒険者の村がジムさん達のおかげで良くなったって言ってたから、視察がてら遊びに行こうと思ったら、まさか、吸血鬼騒ぎとわねぇ
現状の夜の警護隊を増やす事は可能か?」
「今現在、夜の警護は、中央区、中区の各方面共に、10人体制で、見回りと、詰所に駐屯をしてます
警護隊員の中での夜の警護への増員は、難しい状態です
随時、警護員の募集はしているのですが、なかなか、志願者が来ていただけない状態です」
つい先刻、レイモンドが、今日の業務を大体終えたところに、魔術学院のエイミーと教会の最高司祭が連れ立って、吸血事件の報告と警備強化の相談にやって来た
単純に警護の人数を増やせるか、秘書兼副代表的存在のジュディに尋ねたところ、"まず無理!"的な回答が返ってきた
街の代表を代替わりしてから、街の発展に力を注いできたレイモンドだが、決して警備関係を疎かにしてきたわけでは無かった
しかし、急に夜の警護を増やして欲しいと言われても、そう簡単にはいかないようだ
「ジョセフの話では、それぞれの事案は、単発で発生していたみたいだな?
単独犯ってなると、なかなか、見つけにくいかもなぁ・・・」
「あのぉ、レイモンド様、少し私の心の声を漏らしても?」
レイモンドが、どうしたものかと考えていると、普段は、自分の考えなど言わないジュディが、個人的な意見を言わせてくれとなった
仕事中に自分の意見を言う時は、なぜかよそよそしいジュディは、いつも、1度了解を得ようとする
レイモンドとしては、なんでもこなしてくれるジュディが、こうやって何かを言おうとする時は、自分が思い付かない様な事を言ってくれるので、必ず耳を傾ける事にしている
「あぁ、心の声を聞かせてくれ」
「オホン
ジョセフサマノホウコクデハ・・・っ!ゲホっ」
何故か、声を無理に変えて喋りだすジュディ
心の声をイメージした様だが、喉が変に詰まり、咽せてしまった
「普通に頼む」
こんなやりとりも慣れたもので、真顔で対応するレイモンド
「はい・・・
ジョセフ様のお話にあった、ヒロ殿の回復薬で回復したとの事や
吸血鬼の認識などは、やはりすごいと思います
それに、実は、先程話されておりました、冒険者の村の件にも、ヒロ殿が絡んでいるそうです
特に、隠し通路を見付けたのは、ヒロ殿のようです
ここは1つ、レイモンド様のお仲間であられるヒロ殿にご相談されては如何かと・・・」
さすがジュディだな!
俺より観察力があるんじゃないか?
そうだな、アイツを遊ばしておくのは勿体ないか・・・
「ヨシ!
もう、今日は、予定は無いよな?
どうだ?ヒロでも誘って、飯でも行かないか?」
「はい、よろこんで!」
さぁて、また、俺から何か頼んだら、アイツ、どんな顔するか、楽しみだなw
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「で?一体、あの姉ちゃんは、やっぱり、吸血鬼ってのに噛まれたのか?」
店に着くなり、エールと肉主体の物を頼んで、乾杯した
最初は、タガートとアイトの今回の依頼への愚痴をひとしきり聞かされたところで、タガートの方から本題に入ってくれた
「あぁ、あの後に、魔術学院の学院長と3人で、今回の事案の話をしてきたよ」
かいつまんで、エイミーのところでの会話を話した後に、改めて2人に"吸血鬼"についての認識を聞いてみた
「一応、ギルドにある、モンスター図鑑には載ってた気がしたなぁ
でも、あんなの俺達が、ドラゴンに出会うくらい、無い話だろ?」
「俺もタガートと同じくらいの認識だけど、出来れば、どこかに居てほしいかなぁ
ほら、昼間は寝てるんなら、宝物庫とか狙えそうじゃんw」
ふむふむ、冒険者ギルドのモンスター図鑑には載っているレベルで、存在してるかどうかも分からない
そして、宝を所有してそうってことねw
「そんなヒロは、どうなのよ」
タガートが、俺らに聞くだけじゃなくて、お前も話せ!的な感じで、持っていた、鳥のもも肉で俺を指した
この2人は、俺が違う世界から来た事を知ってるし、夕方の飯屋なんて混み合ってて、ガヤガヤと雑音だらけなので、周りを気にせず俺は、話し始めた
「実は、俺が前にいた所でも、吸血鬼って言葉はあったんだ
でも、それは、言い伝えや、迷信の類で・・・」
うーん、テレビや映画って言っても伝わんないだろうしなぁ・・・
あっ、そうだ
「こっちで言ったら、そうだなぁ・・・人形劇とかってやって来たりしないのか?」
俺は、実際に人形劇ってのは、テレビでしか見た事ないけど、例え話に使ってみた
「あぁ、たまに来てますね
遠い国の王子さんが、姫を助けたとか
勇者が、それこそドラゴンを倒したとか・・・
あれがどうかしたんですか?」
「あぁ、俺のいた所でも、よくやってたんだよ(ちょっと嘘だけどw)
んで、その、吸血鬼が、生娘の血を吸って虜にして、連れ去ったり
また、違う話しでは、吸われた奴も吸血鬼になって、街中が吸血鬼だらけになっちゃって、人間対吸血鬼で、なんとか人間が勝つとかさ」
"マジかよ"とか、"うげぇ"などと2人は答えた
「じゃぁ、今回の姉ちゃんは、吸血鬼になってねぇんだから、もしかしたら、吸血鬼じゃなくて、単なる、首を噛んで血を吸いたい奴って事じゃねぇのか?」
「それだったら、あんな症状になんないよ!
それに7人も襲ってるんだから、吸血鬼じゃなかったら、単なる危ないおかしな奴ってなっちゃうじゃんか?」
やっぱりタガートも、俺と似た事を考えるんだな
でも、アイトは、逆に吸血鬼じゃなかったら、それこそおかしいと感じるんだな
「なぁ、俺達の仲間に女性は多いし、襲われないように守りたいんだけど、2人に協力してもらう事は出来るかな?」
俺は、せめて仲間だけでも守りたいと2人に尋ねた
「もちろんいいに決まってるじゃねぇか!」
「ヒロさんについて行くって言ったじゃんか?」
「ついでに街のみんなも守ろうぜ!」
「なんなら、ランクの低い冒険者も使ってくれよ」
よし、やっぱり持つべき物は友だよな・・・
ん?なんか、2人くらい多かったぞ
って、振り向くと
「ヨッ!」
と、片手を挙げて、レイモンドが立っていた
隣には、冒険者ギルドのギルマスとジュディさんもいた
「なっ、なんでここにいるんだよ!
それに、さっきはギルマスはいなかったじゃんか!」
「ワリイワリイ、いたんだが、ちょうどレイと裏で話してたんだ」
俺は、びっくりして、不快感丸出しの挨拶となってしまった
3人は、さも、"ちょっと遅れてすまねぇな!"ってな感じの仲間のように、相席してきた
「おーい!マスター!
エールを5つ追加と、果実水頼むよ
それと、テキトーに食べる物も!」
「はい!
え?レイモンドさん?ギルマスまで!
これはこれは、ご来店ありがとうございます
おーい1番いい肉用意してくれぇ」
レイモンドは、驚く亭主に"普通でいいよ"と、言いながら、エールを受け取った
「まずは、乾杯といこう
2人は・・・門で会った依頼か?」
タガートとアイトは、レイモンドに対してちょっと緊張気味だったが、ギルマスがいてくれてるおかげで、普通に乾杯出来た
「さぁ、街のみんなを守るってところまでは、話がまとまったところだったかな?」
はい?何言ってんの?
タガートとアイトは、顔を見合わして、何やら含み顔のギルマスを睨んでいる
「いやいや、せめて俺達は、仲間だけでも守ろうかって決めたんだよ」
「だろ?ヒロと俺も仲間であって、パートナーだよな
んで、俺は、街の住人を仲間だと思ってるから、ヒロが街のみんなを守ってもいいんじゃないかな?」
なっ、なんだよ、そのこじつけ!
それにレイのその満面の笑みは!
ジュディさんも、さもありなん!みたいに、メガネをクイってやったぞ!
おい、いい加減にしてくれよ
「いやいや、おかしいだろ、
たった3人で、どぉしろってんだよ!」
「まぁ、もしかしたら、警護依頼が、ギルドに増えるかも?って話だったんだが、案外ヒロなら、何かいい案があるんじゃないかと思ってな」
いやいや、ギルマスなら、もっとこう、自分ところに登録されてる冒険者が沢山いるだろうに・・・
それにしても、レイのやつ、ニヤニヤしながら、俺を見てやがる
ぜってぇ、面白がってるよな!
「なんてなw
今、フレッドからもあったように、夜の警護を増やしたいんだけど、ギルドにばかり頼むと、依頼料がなぁ・・・
そこで、いつも面白い考えを実行するヒロにちょっと相談があって居場所を聞いたらここに居るって言うから、夕飯がてら来たんだよ」
そう切り出され、この場の支払いは、レイモンドが持つって言うから、俺は渋々聞く事にした
「んで、どんな相談だよ」
"おやっさん!肉追加!"タガート
「おぅ、夜の警護なんだけどな
ちょっと人手不足なんだよ
簡単に増やせて、尚且つ、質は保ちたいんだよ」
"おやっさん!果物ぉ!"アイト
ん?そんな相談?
「やっぱり、手っ取り早いのは、冒険者ギルドで夜の警護依頼を出すのが早いんじゃないかな?」
"おやっさん、エールおかわり頼む!"ギルマス
"すいません!サラダをお願いします!"ジュディ
「って、ギルマスとジュディはさておき
おい!お前ら、遠慮って言葉しらねぇのかよ!
話づれぇっての!」
「ワリィワリイww」
タガートとアイトの遠慮の無さにちょっとキレてみた
そんな俺の声に一切反応しないでサラダを頬張るジュディ
「いや、ヒロ、遠慮しないでくれていいよ
ってか、2人とヒロの信頼性が、分かって嬉しいよ
改めて、よろしくな、タガート、アイト」
何故か、厚かましい2人を気に入ったらしいレイが、再度乾杯を望んだ
「まぁ、当面は、冒険者に対応してもらってもいいんだがな
仕切る奴がいないと警護しづらいと思うんだよ
だから、今後の事も考えて正規の警護隊員を増やしたいんだよなぁ」
そうか、流石に冒険者に警護の依頼を出しても、最悪その警護役を見張るのも必要だよなぁ
「そうかぁ、俺は警護に詳しくないけど、一応、現在の警護体制を教えてもらってもいいかな?」
「ヒロ殿、警護隊の体制とは、どういった事でしょうか?」
元の世界で、施工管理をしていたから、工事の体制はよく作らされたっていうか、それをしないと見積もりも作れない、なので俺は、警護隊の全体の人数、警護隊の仕事、夜の警護の順番などの体制を尋ねた
ジュディは、紙を取り出し図解で簡単に説明してくれた
門番は、各門に5人ずつ配置されていて、交代で1人ずつ休む形で
5人✖️4地区で20人
街の警護は、各方面の警護と詰所駐屯で10人ずつ24時間交代制で、1日働いたら2日休みで
10人✖️3チーム✖️4地区で120人
中央区専属の警護隊が、10人の24時間交代制で
10人✖️3チームで30人
合計で、170人です
給金は、10日で金貨3枚です
普通に暮らすには、かなり高額かと思われます」
確かに1週間で金貨10枚なんて、中区でも、贅沢すぎるかもしれない
しかし、24時間勤務かぁ、過剰労働もいいところだ、そんな勤務態勢で働きたいとは思わないだろう
でも、1日働いたら2日休めるってのはいいかもしれない
何かあった時、2日目の休みの警備隊は予備要員として考えられるな
「門って、朝開けて、夜閉めるんだよな」
「あぁ、日没に締める感じだな
しかし、日中は交代で休憩するとはいえ、なかなか大変な仕事だよ」
レイもちゃんと門番が大変だと理解してるんだな、24時間勤務と同じ給金なのは、もっともだろう
警護の方は、本来なら、細かく班分けして、3班2交代や、4班3交代制が望ましいんだろうけど、こっちの世界の働き方が分からないからなぁ・・・
「その、門番以外の警護隊の人達は、丸1日働く事に不平は出ていないのかい?」
「あぁ、それが、聞いてみても、案外出てないんだよ
やっぱり2日休めるのがいいみたいだ」
そんなもんなのかな?レイが聞くからじゃなくてか?
確かに若い頃、突発で徹夜作業とかになった時の、みんなが出社してきてるのに、帰るのは優越感があったし、それにもう1日休めるんならいいかもって思えちゃうのかな?
まぁ、不平が出ていないのならば、体制はあまりいじらない方が良いのかもしれないな
「なら、やっぱり、夜の警護だけを冒険者ギルドに依頼するのが手っ取り早いんじゃないの?
そして、各方面の警護隊10人を5組に分けて、そこに1人〜2人の冒険者を混ぜて、4組が街の警護、1組が随時、詰所に駐屯する形が効率はいいし、何かあった時に対応しやすいかもね」
「1地区4人〜8人として、中央区と4地区で、20人〜40人かぁ
1晩、銀貨20枚として、10日で、金貨2枚なら、理由を話せばC級までの冒険者なら対応してくれるかもな
D級やE級の駆け出し連中なら飛びつきそうな感じだな」
レイは、ジュディと何かを話し始めた
これでイケるかの確認かな?
「ところでヒロ、先日のバジリスクの魔石だが、かなりの上物で、魔力もパンパンに入ってるそうだ
ありゃぁ、もしかしたら、金貨100枚くらい、いくかもしれねぇぞ」
ギルマスの言葉に、タガートとアイトが、ハイタッチを始めた
よし、それなら、みんなで分けても1人金貨10枚?か?
俺の分は、ドムさんの新しい鍛冶屋の開店祝いに回すとしよう
とか、考えていると
「でもな、価値はそれだけあるだろうが、買い手を探すのが大変なんだよ
おいそれと、その辺の商人に売って、それが、変な奴らの手に渡ってもな・・・」
へっ?どういう事?
「あぁ、そうか、悪い事に使われたら大変ってことかなぁ?」
「あぁ、俺達は、魔法や奇跡は使えねぇけど、膨大な魔力が使えるんなら、最悪、戦や戦闘にも使えちまうからな」
アイト達の話しにちょっとついていけないぞ?
何でいきなりそんな物騒な話になるのかな?
まさか?
「魔力の入った魔石って、もしかして・・・」
「なんだ、知らなかったのか?
魔法を使う時の魔力の補充や強化にも使えるんだぜ」
そうか、俺が魔石に冷気のような魔力を込めたら、冷やす事しか出来ないと思っていたけど、魔力を込めたら、それを誰かが使えるって事か?
しかも、強化にも使えるんなら、もし、リネンが全力ファイヤボールを強化したら・・・
森の1つや2つ消滅するわ
俺が変な想像をして生唾を飲むと
「どうする、それでも買い取りに出すか?」
どうするか・・・
魔石が悪用されるとかは、そんなに俺には関係してこないだろう
どうせ、戦や戦闘に出くわすわけでもないしな
それより、持っといて、俺がもしも、魔法が使えたりしたら・・・二ヒヒw
それに今までの蓄えで、金貨100枚くらいなら余裕であるから、魔石は売ったって言う体で、それをみんなに分ければいいだろう
「なぁ、タガート、アイト、魔石は、俺が預かってもいいか?
一応、買い取ってもらった事にして、みんなには俺の蓄えから、分け前を出すからさ
ギルマス、申し訳ないけど、あとでこっそり魔石を返してもらってもいいかな?」
「いいのか?
ヨシ!分かった、あんたなら安心して預けられる、余計な心配もしなくて済むってもんだ
仕方ねぇ!
他の素材や、小せえ魔石は、まとめて金貨10枚にサービスしてやるよ」
ギルマスが、声高々に喜びながら、おまけしてくれた
タガート達はどうかと、確認したら
「だと思ったよ!
俺も、あの魔石を誰かが悲しむような事に使われたら、気分悪いしな
俺は、ダンジョンの入場料が返ってくりゃいいぜ」
「だね、ヒロさんらしいよ
じゃぁ、俺は、今日約束した、鍵開けの道具でも作ってもらおうかな?」
なんていい奴らなんだ!
ヨシ、サーヤには本当の事を言って分け前を勘弁してもらって、ジムさん達には、後で、金貨10枚ずつ渡そう
ん?なんだ?レイがニヤニヤこっちを見てるぞ
「ヒロは、やっぱりいい奴なんだな
金より平和って感じか?
でも、警護の人数を増やす件では、ちょっと、俺の想像は越えられなかったかなぁ
俺は、警護隊を増やしたかったんだけどなぁ・・・」
おっ?なんだ、これは、俺を試してる感じだな?
そーかい、そーなのかい
レイは、俺を試したいんだね
ならば、もうちょい踏み込んじゃうかぁ?
「分かったよ、じゃあ考えてやろーじゃんか!」
まず、俺は福利厚生がどうなっているのか確認した
レイが"フクリコーセー?"って、不思議がる顔になったので、俺は警護隊員の寝泊まりや食事、手当なんかあるのか聞いてみたら、何も無いといわれた
こっちでは、寮って考えは無いんだね
「要するに、警護隊になると、寝る所とご飯は提供するよ!とか
結婚や出産、家族の不幸の時には、特別に休暇を出すよ!とか、手当を出すよ!とか、あったらいいんじゃない??」
「ほぉ、さすがヒロ殿!
働きたいと思わせるんですね
しかし、そうなるとお給金の他に宿泊施設の段取りや食事の費用、が嵩むかと・・・」
やっぱりそうなるよね
何事もお金がかかるもんな
「じゃぁ、確認なんだけど、今までの警護隊員への給金や運営資金はどうしてたんだ?」
俺は、そもそもの金の出所を聞いてみた
どうやら、街に入る時の入場料やギルドカード登録料、そして、レイモンド自身の商人としての売り上げを警護に回していたらしい
しかし、俺の提案した内容に着手しようとすれば、かなりの費用がかかるだろう
ここは、元の世界で、色々と嫌な事やずるい事を見てきた経験を活かして・・・
「うーん、ならば、あくまで1つの案だけど、安全を売ればいいじゃないかな?」
「おいおい、安全って、言葉を売るのか?
そんな金の無駄遣いするわけないだろぉ」
そうだよね、言葉だけじゃ売れるわけないよね
「じゃぁさ、この街に、富裕な人達ってか、簡単な言い方で、金持ちはどれくらいのいるのかな?」
「どれくらいって・・・」
レイは、眉を顰めながらジュディを見る
「持ってる資産までは把握しておりませんが、この街のには、街の始まりの頃からの住人で、先祖が商人の家系や現在も商人をしている家系が多く存在していまして
中区の中央よりに居を構えている方々は、それはそれは、贅沢をされているかと思われます
中区の外周側に居を構える方々の中にも、同様な方々もかなり存在しますし、古参新参が入り混じっておりますが、商業を生業としている方が多いですね」
ほらほら、資金源が沢山いるって事だよねぇ
ってか、中区の外周っていやぁ、クリスもそれに入るんだな
「じゃぁさ、こんな事を聞くのは、レイに失礼かも知れないけど、中区で、窃盗や強盗って起きたりしてる?」
「なんだよ、遠回しな言い方に聞こえるじゃないか
まぁ、街の代表としては、全く無い!って言いたいところだが、そりゃ、あるに決まってんだろ
中には、雇っている用心棒が手引きしたりってのも聞いたことあるぜ
そんな話は、アイトに聞いた方が分かるんじゃないか?」
"ぶっ!"と、食べてた、骨肉を吹き出しそうにしているアイトを見て、タガートが笑う
「ちょっとぉ!レイさん!俺はこう見えても真っ当な冒険者!
自分の技をそういう事には使わないよ!
だって、捕まったらギルカードを没収されるし、追放されるし、他の街やでも冒険者は出来ないし・・・
でも、まぁ、大きな声では言えないけど、外周区の4隅のそれぞれには、そう言った集団があるとかないとかって、聞いたことあるよ」
最後は意味ありげな言い方だったけど、まぁ、これだけ大きい街だ、いるだろうね
それと、アイトは、スカウトとかの職種になるのか分からないが、俺の世界にあったRPGゲームでは、盗賊って職業になりそうだもんな
「なら、夜の街の警護を強化するからって名目で、お金持ちから、毎月、"安全費"みたいな名目でお金を出して貰えばいいじゃんか!
安全を買ってもらうってのは、そういう事だよ」
「おい!ヒロって、意外と悪知恵働くんだなw」
俺の提案を聞いていたタガートが、いつもは、言わないような内容を俺が口にしていたので、驚いている
「おいおい、金の亡者共はな!・・・」
「コホンッ!」
レイが言いかけたところで、ジュディが、大きめの咳払いをした
「えぇっと、街の大事な古株さんたちはな、さっきも言ったが、自分達で用心棒を雇えるんだぜ?
それに、自分以外の人が損をする事を喜ばしいとも思っちまうような奴らだぜ
みんなの為にって身銭は切らないと思うな」
ふぅ、難しいよね、自分の財を他人の為に使いたくない!か・・・
でも、自分だけを守ろうとして用心棒を雇う・・・そして、その用心棒にやられる場合もある・・・かぁ
にしてもレイは、さっき街の住人は仲間って言ってたくせに、金持ちにはキツイ言い方するよなw
「ねぇ、この街っていうか、この国は、兵士ってのはいないの?」
俺は、ちょっとした疑問を投げかけてみた
「おいおい、いきなりぶっ飛んだ質問だな
そりゃ、いるさ、王都や北の国境を守る城塞都市アッパーガードを始めそれぞれの国境の街には、兵士が駐屯しているさ
でも、ここは、俺の先祖が、ある意味、無理矢理造ったような街だし
それにここは、兵士とかの軍備は必要ないんだよ
ってか、もしここで兵士を集めたら、反逆でも企んでるのかって、思われちまうわ・・・
ん?
って、ジュディ!」
「はい、私の記憶では、ここライフィスでは、街の創設時から、仕事は冒険者ギルドに依頼を出すと言う取り決めになっておりますので、冒険者ギルドを通さずに護衛を付ける事は、街の取り決めに反しますね」
レイは、ニヤリと口角を上げながら、エールを一気に飲み干した
「流石だなヒロ
街の代表の俺が、街のルールを忘れてたわ」
「え?なんの事?
俺は、ただ、兵士がいれば、それを警護に回せるし、兵士って言ったら、街の防衛に関わるから、国に要請してもいいかなぁって、簡単に考えただけだよ」
レイは、俺の考えとは、別の方向で、何かを閃いたようだな
「いやいや、さっきも言ったが、街に兵士は置けないんだ
しかし、金の亡者共から用心棒は、引き剥がせるかもな・・・」
レイの顔が、悪人のように悪い顔に見えたのは俺だけかな?
「へぇ、冒険者ギルドに依頼を出す取り決めってあったんだ
てっきり、採取やモンスター退治や探索依頼だけじゃ、冒険者の仕事が足りないから、ギルマスが何でも依頼にしてると思ってたよ」
レイが顎に手をやり何かを考えながら独り言のように話したあと、アイトが、そんな取り決めは知らないとばかりに発言した
「あぁ、最近じゃ、ギルドに登録する時の説明から、その事は省いちまってるな
どんな仕事でも、また、仕事を任せる冒険者が決まっていても、一旦ギルドを通すって、昔から決まってたんだ
確か、ギルドの掲示板の上に貼ってなかったか?」
ギルマスにそう言われると、見かけたような記憶もあるようなないようなw
「ジュディ、悪いが、酒の肴に、その取り決めの事をちょっと教えてやってくれるかい?」
フレッドにお願いされて、ジュディが1度メガネをクイっとしてから話し始めた
「その昔、ライオネルと言う商人が、この地に街を作ろうと発起されました
その方が、レイモンド様の先祖になります
その後、他の商人や冒険者達も噂を聞きつけ、集い始め、小さな集落を作り、集落が村と呼べる大きさになった頃に、とある冒険者達が現れたんです
名前は、フレディ、エイダン、ジェフ、そしてエルフのフィスさんです」
その話を聞いて、俺は、箸を止めて、タガートとアイトと顔を見合わせた
フィスがここに来たのは、150年くらい前だと言っていたが、改めて聞くとその年月に驚いてしまった
「そして、ライオネルとフレディの2人は意気投合し、そこに集まった冒険者達をまとめてもらうようにフレディに頼んだのです
それが、ライフィスの冒険者ギルドの始まりで、そこからずっとフレッドさんの一族でギルドマスターを担当されております
そして、当時は、商売の上手な商人がどうしても、幅を利かせてしまう為、他の商人や冒険者の立場が弱くなってしまう事を懸念して、商人と冒険者の優劣をなくす為に、全ての仕事は、冒険者ギルドを通すようにと定めたそうです」
ふーん、やるじゃんギルマスのご先祖様w
だとすると、この間まで冒険者の村で起きていた事が、ここライフィスでも、起きていたんだな
まっ、俺のいた世界でも、金持ちは何でもありだったからな・・・
「じゃぁ、本来は、用心棒とかは雇っちゃダメなのかい?」
タガートが、真面目な顔で聞いてきた
「あぁ、商人の馬車の護衛と同じく、期間を決めて、1度ギルドに依頼出してもらうのが取り決めだな
よぉし、その線で、金持ち共を・・・
じゃなかった、街の有力者達から、安全費を巻き上げてみるか!」
「コホンッ!」
レイが、費用の面は、何とかなると、またもやビールを煽ったが、言葉遣いが悪すぎたようで、ジュディが咳払いした
「そうなると、ヒロの言う、フクリ何ちゃらってやつを考えると、次は、やっぱり宿屋とそれを運営する人手の問題だな、新しく建てるのは、難しいよなぁ」
「それなら、北の外周区に最近、後継がいなくて閉めた宿屋があるし、探せば、客の入りの悪い宿屋があるだろうから、そこと契約したらどうだ」
レイが宿泊施設の心配をしたところ、ギルマスが、何とかなりそうだと提案した
「人手だけどさ、宿や食事にかかる人達は、ローズさんのお店みたく、宿の周辺の子育てとかしてる人たちを雇ったら?
勿論、子供を預かって面倒を見るエリアを併設してね!」
「いいねぇ!
ジュディ!それで募集かけてくれ、面接も頼む」
"承知しました"と、メガネをクィっとしてみせるジュディさん
「いいねぇ!
ヒロは、やっぱりこうじゃなくっちゃな」
「フン、まだまだだよ
しばらくは冒険者で対応するんだろうけど、その冒険者の中でも、やっぱり警護で働いて、安定した収入を確保したいと思う冒険者がいたら、そのまま警護隊員にすればいいし
いつかは、中央区や中区で、空いてる場所に警護隊の施設を建てて、寝泊まりや訓練なんかが出来るようにすればいいんじゃない?
あくまで、警護隊としてね」
少し納得したレイに、尚更提案してみたが
「冒険者から転向して警護隊になるのは大いに結構なんだが
軍備と思われる施設は建てられないんだよ」
と、レイは意味ありげに軍備関係は増強出来ないの一点張りだ
「なんでだよ?
もしもの時に・・・そうだなぁ、モンスターの襲撃や、野党や山賊に襲われるかもしれないし
地震や雪崩なんかの災害の時とかに人手は必要になるんじゃないか?」
俺は、ライフィスという街の大きさも踏まえて、当たり前の疑問を投げかけてみた
「それなんだが・・・
大きな声じゃ言えないんだが・・・」
と、レイが声をひそめ、俺たち3人に近くに寄るよう手招きした
「実はな、フレッドが、国王家と血が繋がってんだよ!」
ええええええええ?
何々なにぃ?
「マジで?ギルマス?」
思わず、大声で、ギルマスに問いただしてしまった
渋々顔のギルマスがゆっくり頷きながら答える
「まぁ、アンタらは、信用出来るから話すが、誰にも言うなよ
俺がまだ、冒険者になる前だったから・・・・50年くらい前・・・か、王都から使者が来てな
オヤジが王都に連れて行かれたんだよ
そこで聞かされたらしいんだが、どうやら、初代が、王家の三男坊だったらしく、跡目争いが嫌で、2人の従者を連れて家出してここに来たらしいんだよ
全く、いい迷惑だぜ」
それは、すごい事だ!!
ってか、そんな重要な話しをここでする?
俺達は、キョロキョロしてしまった
ってなると、もう、この街に王族が居るみたいなもんじゃんか!
「だけど、それと軍備が増強出来ない事が何か関係あるの?」
「それなんだが、フレッドのおかげで、ここに何かが起これば、王都からすぐに救援が来るのは間違いないだろう
だから、軍備は要らないんだ
逆に言えば・・・」
レイがこの街には、軍備が必要ない事を説明してくれた、そして一度区切り、またもや、俺達を手招きして、さらに小さい声で続けた
「もし、軍備なんか揃えてみろ!
フレッドを擁立してクーデターでも起こすのか?って思われちまうだろ?
それに、誰に聞かれてるか分からないから、絶対内緒だからな!」
おいおいおい!
そんな事、誰かに聞かれたら、ヤバいんじゃないか?
俺とタガートは、急に行儀良くなってしまい、レイとギルマスの笑いを誘った
しかし、アイトだけは、興味津々って感じで
「じゃぁさ、さっきジュディさんが話してた、フィスと一緒に来たギルマスのご先祖様の他の、2人ってどうなったの?」
おいおい、アイトくん!もう、その話を広げるのはよそうよ!
「あぁ、エイダンは、魔法使いだったんだが、魔術学院を作ったらしく
ほら、こないだうちで会ったエイミーがその子孫だよ
んで、ジェフは神官で、北中央区に教会を建てたんだってさ
ほら、ジョセフには、会っただろ?代々司祭をやってるらしいぜ」
そんな昔からの仲間だから、エイミーさんは、ジョセフさんを弄ってたのかぁ、納得したよ
「なんだ、この街って、かなり結束が堅いんだね
しかし、一気に酔いが覚めちゃったよ」
「っつぅ事で、フレッドの秘密を知っちまったから、これからは、俺達を裏切れないと思ってくれよw」
っかぁ、まんまとやられたよ、こんな秘密、荷が重すぎるよ
どうせ、ぞんな秘密を教えてくれなくても、俺をコキ使うのは変わらないくせに!
「さっ、明日からの街の防衛に気合い入れるとするか!
細かい事は、ジュディとフレッド、それとヒロ!頼んだよ!
んじゃぁ、ローズさんの所でも行こうか?」
「いいねぇ!」
おいおいタガート!今さっきまで、すごい事聞かされて、青ざめてたくせに、ローズさんの所に行く!ってなっただけで、もう、レイと肩組んでるよ!
「細かい調整は、明日する事にして、ジュディも、行くか?」
「はい、よろこんで!」
ちょっと待ったぁ!
今の、ジュディさんのメガネクイっは、今までと違ったよ
なんか、スイッチ貼った感じの目つきだったぞ!
「マスター、お代はこれで足りるかい?」
「はい?いやいやいや、レイモンド様!
これは、多すぎますよ」
飲みに行くと決まり、すぐにお会計をするレイだが、どうやらお金を多く払ったようだ
「いいんだ、みんなの分もまとめて払わせてもらうよ」
「それでも、多すぎますって」
マスターが困っていると、ギルマスが立ち上がり
「みんなぁ!今日は、レイモンドさんの奢りらしいから、遠慮せずにエールをお代わりしてくれ
ギルドマスターの俺が保証するぜ!」
"うぉぉぉぉ!"
"レイさんありがとう!"
"レイさん最高!"
"ジュディさん結婚してぇ!"
店内が、大歓声に包まれる
そしてギルマスは、マスターの肩を叩きながら、"すまんが頼む"と、頭を下げた
レイがお客達にファンサービスを始めたので、俺達は邪魔にならないように店から退出した
すると、ジュディさんが、近寄ってきた
「ヒロ殿、今回もありがとうございます
いつもお忙しいレイモンド様が、ヒロ殿とお会いしていると凄く楽しそうにしてらっしゃいます
どうかこれからも、レイモンド様の御力になってください
それと、先ほどのフレッドさんの件は、どうかご内密にお願いします」
多分、レイは誰とでもああやって接しているのだろう
間違いなくジュディさんは、ギルマスが王家の血を引いている事を絶対口外するなと釘を刺したかったんだと思う
「あぁ約束する」
俺達3人は、ジュディさんに誓った
その後、しばらくして店から出てきた、レイとギルマスとで、ローズさんの店に向かった
「ワリィが、先に行っててくれるか?
俺は、明日からの警護の依頼書を作ってから行くよ
レイ!1日銀貨20枚でいいな?」
「おう!10日単位で頼むよ!」
南の門に続く大通りに出た時に、ギルマスが一旦冒険者ギルドに戻ることになった
結構大事な依頼なのに、こんなに簡単に決めてしまうあたり、2人の信頼性が伺える
大通りを通り過ぎて、モネの店を過ぎ、もう少しでローズさんの店に到着しようとした時だった
「おいおい、随分珍しい人がこんな所で何してるんだい?」
レイが、1人の男性に声を掛けた
「やや、これはこれは、レイモンド氏、先ほどはありがとうございました
それと、ヒロ殿かな?
丁度よかった、ローズと言うお店はこの辺ですかねぇ?」
ぶっwww
最高司祭のジョセフさんだよ!
しかも、神官服じゃないし!
「まさか、司祭がローズさんの所に行くってかい?
面白いw俺達も今からそこに行くところだから、一緒に行こうじゃない!」
「ほっ!それは、重畳重畳!
よろしくお願いしますかねぇ」
はぁ、やれやれ、今夜は、一体、どんな夜になるのやら・・・
いつも読んでいただきありがとうございます、超七玉です
今回から、違った話になってます
うまくまとめられるか分かりませんが、よろしくお願いします




