38、ヒロ、バジリスクと戦う
38、ヒロ、バジリスクと戦う
半年前・・・
ドノバン達は、最後の荒稼ぎをするために、地下27階に挑む事にした・・・
進んでいく途中のT字路や十字路には目印をしていき、5度目の曲がり角を過ぎたところで、通路の左側に部屋の入り口を見つける
先頭を行く褐色のエルフが、静かに後続を手で制す
「ちょっと!
リザードマンみたいなのが数体いるけど、奥に宝箱みたいなのがあるわ!」
宝箱というエルフの言葉に全員の目が色めき立つ
「そのリザードマンみたいなのが、何か大きなモンスターを捕食してるわ
それも、かなり大きい」
「まぁ、モンスターが、モンスターを捕食するのは珍しくねぇと思うけどな
少し、様子を見るか?」
その場で、様子を見ることにしたドノバンだが、実はこの階層に入ってから、これまでの階層とは違う違和感に苛まれていた
「ちょっと、そっちの通路の先を索敵してくる」
ドノバンはそう言い、部屋の入り口を音を立てずに行き過ぎて、奥のT字路を見に行った
「ここは、やばいかもな、そこの通路を曲がったら、ウジャウジャいやがるぜ
まぁ、対して強くはねぇと思うが、挟まれたら大変だ
諦めて戻った方が得策だな!」
アイアンゴーレムですら一撃で倒すドノバンが言うのであれば、間違いないのであろう
みんなが、静かに頷き、来た道を静かに戻り始めた
1つ目の曲がり角を曲がった時に、何か、嫌な匂いが鼻をついた
「灯りを」
ドノバンに言われるのと同時に神官が杖で灯りを灯した
トカゲトカゲトカゲトカゲ・・・・
ドノバンが先か、リザードマンが先か、一瞬で戦闘が始まった
ドノバンにとって、リザードマンはものの数ではないが、いかんせん数が多い!
大剣で♾️を描くように振り回して、リザードマンを次から次へと薙ぎ倒す
「こりゃ、進めねぇ!
さっきの部屋まで引いて、持久戦に持ち込むぞ!」
ドノバンは、さっき奥の通路で見た奴らに気付かれて、挟み撃ちになるのなら、見付けた部屋に入り、入り口で敵の数を制限して戦った方が良いと思った
その思いは、すぐに他のメンバーにも伝わり、褐色のエルフと剣闘士が、後退を始めた
部屋まではすんなり戻る事ができた、中にいた3体のリザードマンは、褐色のエルフと剣闘士が片付けた!
「クリア!」
「よし、入る!」
部屋に入ると、入り口の大きさが限られている為、リザードマンの襲撃は、少し緩まったが、止まることはない
「このくらいなら、しばらくは俺が1人で凌げるから安心してくれ」
ドノバンがみんなを安心させようと発した言葉に続いたのは・・・
「ダメだわ
部屋の壁に穴があいています!」
入る前では角度的に気付かなかったが、西側の壁に穴が空いている
『?おかしくないか、俺の記憶が正しけりゃ、この部屋はダンジョンの最西端だぞ?
壁の色だって、階段の部屋と同じじゃねぇか?
そこに穴が開いてるわけねぇだろ!』
ドノバンは冒険者経験年数は長い方で、脳内マッピングだってそんなに下手ではない
この部屋が、階段の部屋と同じく、ダンジョンの最西端なのは理解できている
それなのに壁に穴が空いているなんて信じられない
「こっちは、俺が何とかする
そっちからの侵入に備えてくれ!」
"分かった!"と、褐色のエルフと剣闘士が、崩れた壁を警戒する
ドノバンが防いでいる入り口側は、リザードマンが途切れないが、入り口の大きさが味方して、入って来れるのが多くて2体なので、ドノバンは、確実に1体1体を切り崩し、無駄な体力を使わないようにしている
永遠に続くかと思われた、リザードマンの襲撃も、やっと収まった
「ドノバン!少し休んでくれよ
しっかし、なっ、何体倒したんだ?」
「100から先は、数えてねぇ」
褐色のエルフが、呆れたと言わんばかりに、ドノバンの働きに感嘆している
「あのぉ、このモンスターなんですが、かなりの大きさのようですね
倒された後に、分解されてここに運ばれたのでしょうか?」
最初にリザードマンが捕食していたモンスターを調べていた神官が答えた
何気なく覗き見たドノバンが、一瞬息を呑んだ
『1つ目だと?
サイクロプス?巨人族じゃないのか?』
サイクロプスは、巨人族に属し、人やエルフなどの亜人種が住むエリアとは、また別の地域に生息している種族
と、ドノバンは、伝え聞かされていたの耳にしただけで、冒険者ギルドの図鑑でしか見たことのないその一つ目の巨人をラビリンスで、死骸とはいえ出会ってしまい、戸惑ってしまった
「ここは、ちょっと不思議な感じがするな
休息を取ったら、引き換えそう
この階層は何かあるかもしれねえ」
「そうですね、そうしましょう
なら、あの宝箱を開けてからでも・・」
"バカ、やめろ!"ドノバンの制止を無視して、罠の類を確認した褐色のエルフが、宝箱を開けていた
キィーーーーーーン
キィーーーーーーン!
甲高い金属音のような音が、鳴り響いた!
それは、うるさいと言うよりは、人間の耳で辛うじて聞き取れる甲高い音だ
「うぐぐぐぐっ」
五感が優れる褐色のエルフは、耳を押さえながらうずくまるように座り込んだ
「大丈夫か?!」
「っくそ!トラップは無かったのに?!」
ズズっズズズズっ!
遠くの方で、地響きのような地鳴りのような音がしている気がする
『どっちだ?
壁か?通路か?』
地鳴りのような音が近づいて来ているのが分かるだけに、次の行動に失敗は許されない
ズズズズズザザザザザぁ!
「シャァァァァ!」
間に合わなかった
鎌首が1mはあるだろうか?
巨大な蛇?と言うにはかなり刺々しい外見の頭が、通路側の崩れた壁から顔を覗かせて来た
"シャー!"と言う、2度目の咆哮と共に紫色の液体を口から飛ばして来た
全員、ステップのみで避ける事ができたが、その隙に、その攻撃をしてきたモンスターの部屋への侵入を許してしまった
ぬるり!と言う表現が正しいのか、頭の大きさとは裏腹に寸胴な胴体、そして尻尾
よく見れば、胴体の脇から無数に飛び出ている刺々しい物が、手足にも見えなくもない
「なんなんだコイツは?」
「もしかしたら、バジリスクかと思います」
初めて見たモンスターが何者か尋ねたら、神官の女が答えてくれた
「こっ、コイツがか?
じゃぁ、石化させられるってヤツだな!?」
「ええ、毒と石化に注意よ!」
今度は、褐色のエルフが答えてくれた
「いいか、アンタら、目印は覚えてるな!
俺が惹きつけるから、全員通路を逆走して逃げてくれ!」
ドノバンは、そう言いながら、1番通路から離れている、神官に向かってダッシュした
バジリスクが反応して、一瞬首を後ろにもたげたかと思うと、口を大きく開き、"ッカァァァ!"と音と共に鼠色の液体を噴射!
ドノバンは、神官を抱えて転がり液体を浴びる事はなかった
バジリスクはそのまま首を右に回転させて、他の2人にも浴びせようとする
褐色のエルフは、後方にステップしてかわせたが、剣闘士が避ける時に癖で、左手で弾こうとしてしまい、液体を左手に浴びてしまった
「いっでぇぇぇ」
みるみるうちに、剣闘士の右手が肘付近まで石化してしまった
気付けば、今の攻防で、ドノバンと神官は、通路の真反対になり間にバジリスクを挟む形となった
褐色のエルフは通路付近で、剣闘士に近づき肩を貸す
「分断されたか!
こっちは、俺が何とかするから、そっちはすぐにでも通路に出てくれ!
多分、こいつは、通路にはデカさ的に行けねえはずだ!」
「そんな事したら、ドノバン達が取り残されちまう!
出来るわけないだろ!」
ドノバンの提案に褐色のエルフが異を唱える
多分、このバジリスクは、成体になりきれていない個体だろう
この大きさなら、なんとかドノバンなら、一太刀さえ入れられれば仕留められると睨んだのだろう
しかし、それには、鎌首まで近づかなければ無理だ・・・
「そうか、ならば・・・
一瞬でいいから、コイツの気を逸らしてくれ
一撃で決めてみせる」
「分かった
やってみる」
褐色のエルフは、目線をバジリスクから離さず、肩を貸している剣闘士を入り口の通路側に座らせ、バジリスクを牽制する
「へい!
このヘビあたま!
私が相手してやるから、かかってきな!」
褐色のエルフはそう語りかけながら、ドノバンの真反対側にジリジリと移動する
バジリスクは、舌をチロチロ出しながら、少し後ずさりして、大剣を構えるドノバンと褐色のエルフの2人を警戒している
どうやら、バジリスクも馬鹿ではないようだ、自分に攻撃をしようとしている2人が視界に入るようにしているようだ
「ラチがあかねぇよ!」
褐色のエルフの脇を1つの影が走り出す
「ファイヤーブロー!」
剣闘士の右拳が赤く燃え上がった
ボフッ!ジュッ!
シャァァァァ!
バジリスクの体が少し、くの字になる
「バカ!無理すんな!」
続いて、褐色のエルフが斬りかかる!
バジリスクは、攻撃を仕掛けてきたエルフの方に振り向き、首を少し後ろにもたげていた
シャッシャッシャッ!
褐色のエルフは連続斬りで、バジリスクの首元に赤い筋を何本も付ける
ドノバンは、バジリスクのあの動きは、さっき見ている
「また、石化か?
させるかぁ!」
ドノバンは、大きく踏みこみ跳躍する
そして勢いそのまま、大剣を横に薙いだ!
ズビシャーーン!
ドノバンの一撃は、バジリスクの首を一太刀で寸断した
「キャッ!」
残った胴体はグニャんと倒れ、神官の上にのしかかる
寸断されたバジリスクの首が回転しながら宙を舞う
「あっ」
気づいた時には遅かった!
バジリスクの首は、もう意識がないが、意識を無くす前に実施しようとした行動は行われている
毒腺から吐き出されたねずみ色のの粘液が、首の回転に合わせて散布されてしまっている
ドノバン、褐色のエルフ、剣闘士が下敷きになった神官の身を引き摺り出そうとバジリスクの体を持ち上げようとするが、意思のないドテカイ爬虫類の体は重くてビクとも動かない
ズン、ゴロゴロ
部屋中に石化の粘液を撒き散らしたバジリスクの首が、やっと床に落ちた
「くそっ!動かねぇ」
ドノバンは、石化の粘液を浴びる事に躊躇せず神官を助けようとしていたので、全身に粘膜を浴びてしまい
徐々に体が硬くなっていく中、ドノバンは、呟いた
「ワリィ!カミラ!」
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ズズズズ
何かが這いずる音がデカくなってきた
「おい、何か来るぞ!
間合いを取れ!」
通路側を警戒するジムが、壁側を警戒するブレンダ達に喝を入れる
シャー!
奇声のような声を上げながら、デカい鎌首が、壁の穴の向こう側を通り過ぎて行った
「えっ、エレノア、見たか?」
「うっ、うん、なんか凄いモンスターが、通り過ぎて行ったよ?!」
場所が場所で無ければ、肌の露出の多い、とてもセクシーな女性2人だが、今は、臨戦体制のソルジャーの様に、いつでも飛び出せる状態だった、ブレンダとエレノアは、少し、拍子抜けした感じで、後ろのジムを振り返る
「まっ、まさか・・・・
気を付けろ!
アレは、バジリっ」
ビカーンっ!
ジムが、言い終わる前に、壁の穴の向こうが、眩く光った
「なっなんだぁ!」
「魔法?奇跡?誰かいるのか?」
焦るブレンダ、エレノアは今の光を分析し始める
「どちらにせよ、あのどデカいのが、戻って来るかも知れんから、気を抜くなよ」
ジムが一同に喝を入れる
シャーっ!
ジムの予想が当たって、喜ぶ者はいないが、壁の穴から、とんでもなくデカい鎌首が入ってきた
「来やがった!」
「ブレンダ!エレノア!
多分、口から、毒やら石化やらの何かしらを出すから、それだけは、絶対に頂避けろ!」
"リョーカイ!"''わかった"
ブレンダ姉妹は、ジムの忠告を振り向く事なく、しかし、しっかりと肝に銘じた
ダンジョンの村で、ツートップの一翼を担うブレンダは、普段はジムと普通に接しているが、ジムの経験値には、到底敵わないし、同じ頂きに立てているとは、砂粒ほども思っていない
なので、ジムの忠告は、命に関わるものとして受け止める
どんな生き物でも、弱い者は、強い者の餌食になる、それが弱肉強食
今、睨み合うモンスター、それと対峙するブレンダは間違いなく強い
お互いが、お互いの様子を伺っている
バジリスクが、ジリジリと2人を威嚇しながら横にズレていく・・・
どうやら、部屋の角を取るつもりだ
「へっ、一丁前に、後ろを守るんだな
エレノア!こりゃ、なかなかやるぞ!」
「みたいだね
じゃぁ、とりあえずいつも通りイッてみる?」
"あぁ"と、ブレンダが、応えたと思ったら、2人が左右に飛んだ(跳躍した)
バジリスクは、ブレンダに向かって牙を向ける
エレノアが、その鎌首の後ろに斬りかかる
「はやっ!」
エレノアが、視界の片隅に何かが入ったので、咄嗟に剣を構える
バッチーン!
ご太い丸太のような物がエレノアの剣を打つ!
防いだつもりが、先端がしなって、エレノアの頬をぶった
「きゃっ!」
「エレノア!」
顔を押さえて、後ろに後ずさったエレノアをバジリスクの牙を双剣で防いでいるブレンダが横目で見る
エレノアの左頬は真っ赤になっている
「よっくもエレノアを!」
双剣の舞のギヤを1段上げて、バジリスクの顔面に斬りかかる
が、そこにあったはずの顔面が、一瞬で消え、丸太のような物が唸りを上げて襲ってくる
ブレンダは、双剣をクロスに構え防いだが、しなった尻尾に肩から背中を強打され、後ろにさがる
「きゃっ!」
と、声がしたと思ったら、エレノアが床を転がりながらブレンダの方にやってきた
さっきまでエレノアがいた場所には、ねずみ色の粘液がバラ撒かれている
「コイツの動きは、なんなんだよ
ありえねぇだろ!一瞬で、前後が逆になってるって」
「バカモン!
反転したんじゃ!
そやつ、成体じゃぞ
腹の部分を見てみぃ!」
ブレンダが、バジリスクの腹の部分を見ると、長くはないが、しっかりとした足が生えていた
「なんだよ!
コイツ、トカゲかよ!」
「気を付けい!
脱皮を繰り返して、足の生える個体になったんじゃろ
鈍臭そうに見えて、機敏に動きやがるからな!」
さっきの反転は、短いが足があるから出来たのだろう
両者責めあぐねているところに、ジリジリとジムが、摺り足で近づく
「どれ、そろそろワシも参戦するぞ」
「ヨシ!
じゃぁ、オレとエレノアで、頭と尻尾を引きつけるよ!」
言い終わるや否や、鋭い攻撃を仕掛ける、ブレンダとエレノア
胴体がガラ空きのバジリスクにジムが走って間合いを詰める
「くらいやがれ!」
ハルバードの柄がしなるくらいの一撃をお見舞いっ
ズンっ!
なんとバジリスクは、頭と尻尾でブレンダ達の攻撃を受けながら、横っ腹に攻撃を仕掛けようとしていたジムには、4つの足で地面を蹴り、切られる前にボディーアタックをかましてきた!
「ぐおっ!」
既に攻撃体勢だったジムは、もろにくらい、弾き飛ばされた
「ジムさん!」
通路側の壁まで飛ばされたジムにアリアが走り寄る
一瞬みんながジムに気を取られた時、バジリスクはゆっくりとデカい鎌首を後方に逸らす
バジリスクが口を開けた時だった
「ファイアーボール!」
ズッパァーン!
鎌首が一瞬、爆発した!
部屋に焼けた爬虫類の匂いが漂う
ギギギギギぃぃっ!
「なっなんだぁ!」
ブレンダが、声を上げた時には、痛みで奇声をあげるバジリスクが、その場で暴れ回る
「ミサ!
ジムを手当!
行くわよイリナ!」
「はいですぅ!」
壁の穴から、フィス達が乱入してきた!
「あんた達!」
「やっやぁ!ブレンダw
お久しぶり!」
デカい盾を持ったヒロが、苦笑いでブレンダに挨拶する
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時間は少し遡る
「おい、アソコ
光が漏れてる・・よな?」
「ええ、横穴かしら
バジリスクがあの穴に入ったのは、濃厚ね
戦闘が始まってるわ」
バジリスクの襲撃から少し進むと、通路の左から光と喧騒が漏れてくる
フィスが言うので間違いはないだろう
「前から、リザードマンの襲撃があるかもしれないけど、さっきの奴を追いましょ」
フィスの指示で、先を急ぐ
「あら、偶然ね
ジム達がいるわよ」
通路に身を隠しながら、穴と思われた場所をフィスが確認しての一言だ
俺も、ゆっくり覗き込むと、そこは部屋になっていて、なんと、ジムさんとブレンダ、そしてエレノアがバジリスクと対峙している
「いい?
私が合図したら一気に行くわよ!
リネン、魔法の準備
ヒロはリネンとミサを守ってよ
タガートとアイトは、この通路を警戒してね
イリナは・・・好きに暴れていいけど、合図を待ってね
じゃぁみんな、粘液には気を付けて行くわよ」
全員が、静かに頷く、すでに通路の奥を警戒しているタガートとアイトは、返事がないが大丈夫なのは確認できる
「あっ!
行くわよ!
リネン!1撃お願い!」
フィスを先頭に俺達は、部屋になだれ込む!
「ファイヤーボール!」
俺の顔の横を真っ赤な赤い物が飛んでいく!
フィスとイリナは、部屋に入るなり左右に分かれる
「ミサ!
ジムを手当!
行くわよイリナ!」
「はいですぅ!」
ミサが、ジムさんに走り寄る
「あんた達!」
「やっやぁ!ブレンダw
お久しぶり!」
俺は、苦笑いでブレンダに挨拶する
分かる、分かりますよ、皆さんの頭の中は、今、ハテナ?マークですよね
って、そんな事はさておき
バジリスクを見ると、顔面の痛みで転げ回るように暴れ回っている
近づきにくかったが、フィスが放った数本の矢のうち1本が、バジリスクの右目に刺さったため、更に暴れる
しかしイリナは、そんな事を気にせず、大剣を右下に構え突進する
気付いたバジリスクが、転げ回る回転を利用して、尻尾でイリナを襲う
イリナは、防ぐ事を諦め、大剣を祓いあげるようにして向かってくる尻尾にタイミングを合わせた
ガッギィィィィン!
大剣は離さなかったが、弾かれるようにイリナの突進が止まった
「っくぅ!
切れなかったですぅ」
悔しがるイリナだったが、バシリスの尻尾からは赤い液体が溢れ出した
どうやら、尻尾が速すぎて、大剣の刃の入る角度が悪かったようだ
しかし、怪力のイリナは、尻尾の皮を肉ごと剥ぎ削いだ
「おい!
やるじゃねぇか嬢ちゃん!
ヨシ、3人で行くぞ!」
「分かった」「はいですぅ」
ジムと交代する形でイリナが入り、その実力を確認したブレンダは、ジムさんと交代でイリナを攻撃に加える
さっきまでの暴れっぷりが演技だったかのように、危険を察知したバジリスクが、戦闘体制に入る
バジリスクの外皮は硬い
さっきは、イリナの一撃で、皮を削いだが、エレノアの攻撃では、肉まで届かない
イリナの攻撃も、柔らかそうに見えて分厚い皮で守られている腹や、短い癖になかなかすばしっこい足に苦戦している
ブレンダは、片目のバジリスクの死角に入るようにして攻撃をしているが、刺々しい鎌首と牙に攻めあぐねている
隙を見てフィスが矢を射るが、今度はバジリスクも警戒しているため、急所は外されて、硬い外皮に弾かれてしまう
「リネンちょっといいか?」
「何?」
俺は、1つ提案してみた
「えっ、でも、ヒロさんに当たっちゃうかも」
「大丈夫!
俺は、逃げ足だけは速いからさ
って事で、呪文を練っといて」
そう言って、俺は、バジリスクの腹の辺りで戦っているイリナの後方にゆっくり近づいた
「ええい、ままよ!」
逃げ足は速いと言ったが、中身は50過ぎのオッサン
走るのなんて得意な訳はないが、足が、もつれないように注意しながら駆け出した!
そっ、そういえば俺、娘の保育園の運動会の借り物競走で、派手に転んだっけなぁw
おいおい、今はやめてくれよ!
命掛かってんだからな!
って、オイ!
そんな事を考えてるから、足元見ちまったよ!
ハイ、左足の踵に右足が!
引っかかるよねぇぇぇ!
「やっべ!
イリナ!どいてくれぇぇぇ」
コケそうになりながらの声は、多分メチャクチャ情けなかったと思う
でも、俺は、ヨタヨタしながらも、コケずになんとかバジリスクに近づけた?
「イリナぁ!
俺を押してくれぇぇ」
「はっ、はいですぅ!」
イリナが、クルッと反転しながら、俺の背中を大剣の腹で、叩いた?
バッチィーン!
「ぐはっ!」
バカだった
イリナは素直すぎるいい娘なのだ!
押すという単語が、なぜか叩くになってるよ!
めっちゃイテぇ!
まぁいいや
多分、俺の体は怪我をしないだろうw
俺は、イリナの愛の鞭をそのまま速度に変えて、バジリスクの腹に向かって、ミスリルの盾の棘をぶっ刺す!
グサッ!
盾の前の3本の棘が、刺さる
そして、俺の全体重を乗せる
ミシミシミシっ!
俺の体の骨の軋む音なのか、棘が食い込む音なのか分からないが、変な音がした
「今だリネン!」
「サンダーボルトぉぉぉ!」
バキバキバキぃぃぃぃ!
一瞬、部屋の空気が痺れたような気がした
どっこぉぉぉぉん!
リネンが放った、雷のような一撃が、ミスリルの盾に直撃する!
ギャァァァァァっ!
バジリスクの断末魔のような叫びが部屋を震わせる
「ヒロさん!」
ジムの手当てをしていたミサが叫ぶ!
「ぐぎゃぁぁぁ!
イッテェェェェ!」
はい、俺は、衝撃で弾かれて、壁まで飛ばされましたw
「オイオイ、オレ達も殺す気かよ!」
バジリスクと戦っていた、ブレンダとエレノアは辛うじて、回避したが、でも、壁にぶつかっていた
「ごっごめん
加減か分からなかった」
大きなモンスターとの戦闘の経験が、まだ2戦目のリネンは、ありったけの魔力を手加減なしに雷系初歩魔法のサンダーボルトにぶち込んだのだろう
「カッカッカw
サンダーボルトでこの威力じゃと?
アリア!ワシらは、どこぞの魔女とでも、出会ったのか?」
ジムさんが、呆れて、戦闘中なのに大笑いをしている
しかし、そんな冗談ムードも、バジリスクが立ちあがろうとしている事で、途切れた
「姉貴!気を付けて!
まだ生きてる!」
腹に俺の盾をくっ付けたまま、静かに鎌首を持ち上げ始めたバジリスク
ギギギギギっ!
と、歯軋りなのか、焼けた外皮の軋む音なのか分からないが、ゆっくりと立ち上がり、そして首を後ろに下げ始めた
「気を付けて、石化の攻撃がくるわよ!」
フィスの言葉に、やっと立ち上がったジムさんを含めて、全員が身構える
「ヒロさん!」
エレノアが、叫びのような声で教えてくれた
どうやら狙いは、俺らしい!
どうする?
頼みの盾は、あいつの腹に刺さったまんまだ
俺には、モンスターの攻撃を避けきれない自信がある!(なんの自慢にもならない)
仕方ない、サーヤにもらった頑丈な体を信じてみるか?
イヤイヤ、それってフラグだろ?
「イリナ!今よ!」
「はいですぅ!」
リネンの攻撃の時に、飛ばされなかった?イリナが、フィスの掛け声で跳躍し、バジリスクの足、背中、もう一度背中!と、ホップステップジャンプの要領で、鎌首に向かって飛び上がった
『・・・ダ・メ!
はな・れ・て・・・』
!聞き覚えのある声が、俺の脳に直接話しかけてきた!念話だ!
「みんな!離れろ!」
シャーっ!
「ドリャッセェイですぅ!」
バジリスクが、口から何かを吐き出したと同時に、イリナの一閃が鎌首を分断する!
しかし、鎌首が太すぎて皮一枚繋がっていた
鎌首がねずみ色の粘液を吐きながら、そしてよじれながら倒れていく
ねずみ色の粘液のシャワーが、俺の足元をかすめて方向を変えた
「エレノア!」
粘液のシャワーがエレノアの方に向かう!
俺は、エレノアに向かって、ハリウッドジャンプする!
「きゃっ!」
なんとか、エレノアを突き飛ばせた
ビジャビジャビジャ!
だが俺は、背中に、思いっきり粘液を被ってしまった
そのまま、前のめりに倒れ込む
「ヒロさん!」
『ヒロ!』
耳からと脳から、俺の名前が叫ばれた!
バカだった、石化を直す薬を持つ俺が、石化しちまったら、石化した人を治せねぇじゃんかよ!
背中が、熱く感じてきた!
これが石化か!
俺は、動く右手でマジックバッグに手を突っ込む、石化しちまう恐怖と、なんとかしないと!と思う気持ちで、思考が焦りまくる!
モネの顔を思い浮かべ、そして、2人で作った薬を思い浮かべる
俺は、指先に当たった瓶を掴み、バッグから、取り出し・・た・・・と、思う・・・・
「くそっ!」
いっつもこうだよ!
最後の詰めが甘いんだよな・・・
「ごめん、サヤ!
まっ、マリ・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大丈夫!
あなたは、そんな事では、やられませんよ
あなたは、私の分も楽しまなきゃダメなんですよ!」
白くそして、広い部屋で、水晶に映し出される男の姿を両手の拳をギュッと、胸の前で握って見つめる女性の声は、広い空間の端まで届くほどの大きさだった・・・
お久しぶりです、超七玉です
読んでいただきありがとうございます
少し年末年始にバタバタしてしまい、投稿が滞ってしまいました
よろしくお願いします




