8日目
「勇者と魔王という対照関係ものも書きやすそうだよね」
「変わりダネも多いですからね」
経済的な手法で問題を解決したり、敵対関係でなかったり、むしろ恋愛的な関係であったり、シリアスであったり、コメディであったり、いろいろあったような覚えもありますね。添え物としての勇者魔王コンビというものもありましたが、それは主題ではないでしょうかね?
「舞台装置としての魔王勇者も魅力的ではあるけれども、やはり、障害としての魔王に挑む勇者ものが王道ではないかな?」
「一周回って王道に見えるところが業が深いような気も致しますね」
悪役としての魔王を主人公側の勇者が倒しに行くというストーリーは王道中の王道と言えるのではないかなとか、手垢にまみれているように見えて、実際には作品数として割合的に少ないような気も致しますね。面白く表現することが難しいのでしょうかね?意外性がないとか?
「意外性がないところが意外性になる場合もあるんじゃないかな?」
「ぐるぐる考えて基本に立ち戻ってしまうやつですね」
芸がないという方もおられそうではありますが、一回くらいは基本に沿って書いてみると肥やしになる、かもしれないですね。
魔王という表記はすでに一般名詞化しているような節もありますし、今更それは宗教用語ですよと指摘する方も少ないのではないでしょうか。
「勇者は造語だっけ?」
「違います、結構昔からある言葉ですよ」
軽く調べるとわかりますが、大元は大昔の大陸で有名であった思想家の本に出ていた記述ですね。頭の良い人は惑わない、勇気のある人はおそれない、とかの意味だったはずです。その文脈で勇者という言葉が出ていた、のだそうですよ。ちなみに魔王は宗教修行を妨げる障害の象徴として設定されていますね。
「実はそれ厳密には対立していないじゃぁないか?」
「語源的にはそうかもしれないですね」
勇ましい人というキャラクターだと、宗教的な修行を収めようとするというような立ち位置にいさせられないような気もしますし、当然、それを邪魔しようとする魔王とは対立しない、のでしょうか。人々を救うためという理由で宗教を利用するというか、手段にするという切り口もありそうではありますが、それは勇者の印象とは少しずれますかね?
「まあ、勇気を持って修行をするとかならありかな?」
「ただそれだと障害ではあっても敵役にはなりにくいでしょうね」
まあ、フィクションの世界ではそのあたりの語源としての魔王というものは薄くなっていますから、悪の象徴としてもしくは親玉として配置できるようにはなっているのでそこまで深く考えなくても良いような気もしますね。逆にそこへ焦点を当てると変わった物語にはなりそうではありますが。
「各種伝統的な宗教に喧嘩を売っていくような魔王勇者ものとかどうよ」
「冗談を冗談として捉えてくれなかった場合致命傷になりそうですね」
sensitive 繊細で対応に注意が必要な内容の物語を何も考えないで書き続けることは結構面倒臭いのでは、と頭やら首を抱えたりひねったりしながら唸っている先輩はいつもながら小動物みたいで可愛いですよね、と誰かに同意を取りながら今日も過ぎていくのです。