51日目
「復路だな、今回の雑談テーマは」
「雑談と言い切っちゃいましたよ、この先輩は」
行ったら戻らなければならないという流れはそれほど珍しいものではないわけですが、鉄砲玉のように片道だけというような旅程もないではないですけれども、どこかでホームに戻らなければ補給がままならない、場合が多いのではないかなとも思います、関係あるのでしょうかね、物書きにとってそれは?
「初心に帰ることは大事らしいぞ?」
「それは一歩でも前に進んでからいうセリフでは?」
思い立った気持ちを大事にすることは、それはまあ大切なことではなかろうかなとは思う訳でございます。そもそも何を目的としてそれを始めたのかを途中で忘れてしまい、手段が目的と化しているる場合もないことはないわけですので。
ただ、盲目的に最初の思いに従うことが正しいとも限らないわけではありますが。
「まあ、間違ったところから始まっていた物語とかはありそうではあるな」
「おおよそ9割が間違っている人生を歩んできた先輩が言いますと含蓄があるような、ないような」
ひどいという顔をしないで頂けますか?
いつもいつも先輩の突拍子もない思いつきにふりまわせてきた私をどうぞねぎらっていただきたいものでありますよ。
「ごめん迷惑だった?」
「いえ、良い見世物でしたので。いつも笑わせて頂いてありがとうございます」
褒められたと喜ぶ先輩を見ていますと、飽きないなぁと、和んでしまいます。
こうどう力を入れても必ず起き上がるおもちゃを見ているような感じですね、そして必ず明後日の方向へと、ぴょこんと飛び上がる感じで、意外性の塊と言いますか、感性を刺激されます。
「おーデレた」
「デレてないデレてない」
むしろツンだった期間すらないような気がします。
これから戻っていく物語というものは確かに需要があるのではなかろうかなとは思うわけですよ。
故郷に戻るわけですから、こう望郷の念とか、共感を呼ぶのではなかろうかなとか思うわけです。
「田舎に二式を飾るみたいな?」
「戦闘機を買って田舎に戻るみたいに言わないでください、錦ですね」
綺麗な着物をきて立派になった姿を、生まれ育った場所に披露しに帰ってくるという流れでありましょうね。
都落ちして戻ってきて、受け入れてくれる郷土愛とかを演出する場合もありそうではありますが。
「どっちにせよ、故郷というものは良いものであるという幻想をエネルギにして歩み始めたらり、続けたりする物語は、熱いのではないかなと」
「行きはヨイヨイ帰りは怖い〜♪」
怖いながらもとーおりゃんせとおりゃんせ♪
期せずして声が揃う先輩と私でした。




