4日目
「異世界転移ものとかどうだろう?」
「デジャブかな?」
相変わらずのネタ出しぽちぽちな先輩であります。文芸同好会部室にて、ちょっと曇り空で寒いのです。暖房が欲しいところであります。室内でダッフルコートを切る必要があるのは、構造上問題があるのではなかろうかなとか思いつつ、ツッコミを返します。
「昨日は転生で、今日は転移だな!」
「忙しい登場人物ですね?」
ああなるほど、その世界の住人として意識だけが前世を持っている展開ではなくて、現代から他の世界へその体ごと移動するやつなのでありましょうかね?
毎回疑問に思うのですが、異なる世界へ移動する際のエネルギーというものは結構途方もないものであると予想できるわけですが、どこからひねり出しているのでありましょうかね?
「神様パワー?」
「神様万能かよ、いや万能なんだろうけども」
どちらかというならば、ご都合主義の権化であるとか言えそうでありますが、このギミックを使用したら、だいたい全てが解決するというのはずるいような気もしますね。多用すると、興が冷めると申しますか、いやそこまでできるなら神様が直接問題解決をしなさいよとか。
「いろいろと制約があるという設定で追及をかわしているようだね」
「万能とは?」
全知全能の神様は存在しないのではなかろうかという思考実験は古くからされているわけでございますが、まあ、物語として成立するためには、なんでも解決することのできる存在が邪魔になることは、わかるわけでありまして、この辺り、うまく嘘をつく必要があるのであろうかなとか想像できるわけですね。
「あと自然現象として転移したとかもあるわけです」
「ああ、システムとして確立しているパターンですね」
神隠しとか古来から有名でありますね。自然災害としての転移であるならば、まあ、説得力があるのではなかろうかと、いや、どうしてそのような収束をするのかという疑問はありますが、単純に矛先が違っていれば、世界崩壊の危機的なエネルギーが発生しているような気がするのですよね。
「まあ、最初はかなり作為というかご都合主義がなければそもそも転移とか、起こせないわけですし」
「伏線で実は理由があってー、とかは普通にありそうではありますけどもね」
因果関係が、遠い未来にあってとかなんとか、この辺り、超常の存在やら、超越した存在とかを置いておくと、説得力が増したり、ご都合主義感が増したりするので塩梅が大切ではあります。時間を飛び越えて因果が巡ったりするやり口もあるわけですが、エネルギーをどこから用意したのか問題は相変わらずたちふさがったりするわけですが。
「細かいことはいーんだよ」
「よかねーだろ、うまくだませよ、諦めるなよ」
頭やら首やらを抱えたりひねりつつ、寒い部屋を人の熱力で温める先輩であります。小柄なので抱えやすくて、暖かいです。